Diggin’Music

ディスクユニオンで働く21歳、垣畑真由が愛してやまないもの。
Photo_Toshio Ohno 
Translation_Arisa Takahashi
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SNSが生活に欠かせないツールとなったおかげで、
以前に比べて格段に個性や才能がフックアップされやすくなったこの頃。
いまストリートではどんな女の子が活躍し、
局地的に話題を集める彼女たちは何を考えて生きているのか?
今回はディスクユニオンで高校生の頃から5年間働き、
HIGH(er) magazineで音楽コラムを担当している垣畑真由さんにインタビューします。

初めてレコードを聴いたとき、なんでこんな黒い円盤から音出るの!? って思いました。

まずは自己紹介をお願いします。
垣畑真由です。大学に通いながら、下北沢のディスクユニオンでアルバイトをしています。あとは趣味でzineの制作やTシャツやステッカーなどのグッズを作ったりしています。
ディスクユニオンではどれくらいアルバイトをしてるんですか?
高校3年生からやっているので、もう5年経ちます。
ユニオンの面接ってなにを聞かれるのか教えてください。
好きなアルバムを3枚答えるんです。私の場合はちょうどルー・リードが亡くなった直後だったから追悼も兼ねて、『Transformer』と、大好きなジョニー・サンダース&ザ・ハートブレイカーズの『L.A.M.F.』と、レッド・ツェッペリンの『Houses of the Holy』って答えた気がする。
当時高校生ですよね? なかなか渋い趣味。音楽を好きになったきっかけってなんですか?
母親が結構海外かぶれなんですけど、小学生6年生のときに「どんな音楽聞けばいいかな? 」って聞いたら、ビートルズやマドンナを教えられました。そのあとTSUTAYAに行って、ロックとかポップとかいろんなジャンルのCDを20枚くらい借りて聞いてみて、そのなかではエアロスミスが一番ズバっときて、高校生くらいまではずーっとロックにハマってました。
小学生のときにエアロスミス(笑)! すごい。レコードを買い始めたのはいつ頃からですか?
はじめて買ったのは中学2年生の頃。渋谷のレコファンにCDを探しに行ったときに、レコードが目に入って。インテリアとしておしゃれじゃん! みたいな感覚で買いました。
なるほど。ちなみにそのレコードって?
確か、オリビア・ニュートン=ジョンかな。ジャケットがおしゃれで気に入って。けど家に持ち帰ったら、飾るだけじゃなくてどうしても聞きたくなっちゃって。クロスリーのトランク型ポータブルレコードプレーヤーを買いました。音は全然よくなかったんだけど(笑)。海外から取り寄せたから届くまでに時間がかかったので、その間にレコードをたくさん買って、プレーヤーで聞くための準備をしてました。
プレーヤーを手に入れたときの感想は?
もう大興奮!!!!(笑) 「なんでこんな黒い円盤から音出るの!? ママー、すごいよー!」って興奮してたら、母が「それが普通よ」って(笑)
ママ、クール(笑)! そこからレコードにハマったんですね。
中高はもらったお小遣いをすべてレコードに費やしてました。まだ中高生だからお金もなくて1800円以下のものしか買わないとかマイルールがありました(笑)。
どうやって音楽の知識を広げていったんですか?
とにかくディスクガイドを片っ端から読み漁ってました。自分で調べて聞いての繰り返し。ユニオンでバイトしていたし、知らないのが恥ずかしくて。だから、自分の担当コーナーにあるアーティストは絶対答えられるようにしようって思って、ディスクガイド片手にかなり勉強したんです。メインジャンル以外のサブジャンルまで時系列で追っていって、幅広く。ディスクガイドには載ってないような豆知識はユニオンの人たちから教わりました。
真由ちゃんにとってディスクガイドが音楽の教科書でユニオンが先生みたいだなと思いました。
そうかもしれないですね。なかでもロンドンナイトのディスクガイドは、自分にとってインパクトの大きい一冊でした。実際ロンドンナイトにはじめて行ったとき、ディスクガイドで読んでた曲がたくさん流れてきて。クラブで聞く音楽の楽しさを知りました。DJによって選曲とかも全然違うし、それぞれの個性があっておもしろいなと思って。ロンドンナイトでDJをしていたKatchin’さんって人とかに機材のことやDJのやり方を教わったりしました。
本当にかなり熱心ですね。
普段は冷めているタイプなんですけど音楽に関してとなると熱がすごくて。あとはイベントに行ったときにDJが流した曲が気になったら、曲名を本人に聞いたりして。シャザムを使って調べるじゃなくて、なんか古臭いやりかたしてる(笑)。そこから話がいろいろつながってまた広がったりするし。

集めたレコードを棚にしまったり出したりしてはニヤついてる。

真由ちゃんにとって、音楽をレコードで聴く意義ってなんですか?
もちろん、アップルミュージックやスポティファイで音楽も聴くけど、レコードって自分の手に持っていられるから。いろんなレコ屋周って探してた音楽に出会う瞬間がすごく好きだし、本当にたまらない! 集めたレコードは、棚にしまっているんだけど、棚ごとにテーマを決めて棚を並び替えたり。そういうのをしてひとりでニヤついてる(笑)。あと、レコードを聴いている人たちならではのつながりがあるのも魅力。
例えば?
音楽さえあれば、年齢関係なく大人とおしゃべりができるんですよ。そういうときの音楽の情報交換ってすごく楽しい。あとは海外に行ったときに、言葉がしゃべれなくても一枚のレコードがあると、心が通じたりすることもある。そういうのもすごく好き。もともと結構人見知りなんだけど、音楽があると自然とコミュニケーションがとれます。
あまり人見知りっぽくないけど、ちなみにどんな学生でしたか?
なんか冷めてました。小学生のときは、お遊戯会とかでも踊らないタイプの子(笑)。中学・高校は校則が厳しくて。学校が三軒茶屋っていう立地だけで、頑張って通ってました(笑)。 あと2年生のときに、同じ学校だったカメラマンのタミー・ボルピとボストンへ留学しました。すごく楽しくていい経験だったな。レコード屋やライブも行ったりして。
留学先ではどんな音楽を聴いてましたか?
日本人がまったくいない環境だったからか、すごく日本語が恋しくなって(笑)。唯一、アイポッドに入っていた日本の音楽がスピッツだったんですよ。歌謡曲とかいままでダサいと思っていたのに、妙に日本語が心に染みてそこから和モノにへも音楽の幅が広がりました(笑)。

授業中にノートに書いていたプレイリストをzineにしました。

HIGH(er) magazineとかでも音楽のコラムを書いていたりしているけど、そのきっかけは?
はじまりとしては授業中に自分のオリジナルのイラストを交えながら、ノートに音楽のレビューや今日のプレイリストを書いたりしてたのがきっかけ。「我ながらこのプレイリスト最高! 」ってニヤニヤしてた。けどそのうち「なんでこんなにいい曲なのにみんな聴かないの? 」と思って、B5のノートをまとめた冊子をコピーして配ったの。「zineみたいなのできちゃった! 」 みたいな(笑)。冊子やイラストをインスタに載せていたら、高2のときイロモノマーケット(クリエイターの作品展みたいなもの)から出展しませんか? って誘われました。
そのときはどんなzineを出したんですか?
イロモノマーケットに出すときは、写真とイラストと自分の好きな音楽の歌詞を書いてまとめた一冊にしました。写真は友達を撮影させてもらって、音楽はそのとき好きだったトッド・ラングレンの「something anything」の歌詞を書いたりして。そしたら予想より売れて、周りからも高評価だったから嬉しかった。もとからイラストやクリエイションが好きだったから、すごく楽しくて。
インスピレーションってどこからきてるんですか?
もともと、アンダーグラウンドなものが好きで。例えば、春画だったり、表向きじゃないエロティックなものやグロテスクなものに惹かれます。普通の人が見たら「なにこれ気持ち悪い! 」みたいなアートカルチャーを受け入れたくなるんですよね。あとzineでよく描いているシュールなイラストは、これしか描けないんです(笑)。かわいい絵とか描けない。

誰よりも音楽を愛する女でありたい。

今後どういう人になりたいと思いますか?
この同世代で一番音楽が詳しくて、音楽を愛している女でありたい。あとはみうらじゅんのようにカルチャーに詳しくて、おもしろいことを常に考えられる人でいたいなって思う。けどいつかは音楽が聴けるいいスペースも作りたいな。お酒を出したりもして。
音楽バーとかやってほしいです! 最後に真由ちゃんがいまハマってる音楽ってなんですか?
いまは夏だから、和モノのシティポップ、ベンチャーズやリンク・レイなどのサーフロックをよく聴いているかな。あとユニオンでヒップホップのフロアに異動になったので、ヒップホップを聴きはじめています。お店でふと流れてきた曲で、「ん? なんかこのフレーズ聴いたことあるな」と思って調べたら、好きだった曲がサンプリングとして使われていて。曲と曲がつながった瞬間、「なにこれ!!! 」ってなりました。(笑)これがきっかけでヒップホップの魅力に気づいたかも。
逆に掘るパターン(笑)! 同世代に音楽を通して伝えたいことを教えてください。
んー。なんだろう。いまいろんなアーティストが出てきてかっこいい音楽がたくさん溢れているけど、そこには必ずルーツがあるってことを知ってほしいかな。ルーツを辿っていくとそのアーティストがさらに好きになったり、音楽の幅が広がったりするから。まさに音楽の醍醐味だと思います。この音楽を掘っていく楽しさを知ると音楽の沼にずぶずぶとハマっていく(笑)。わたしは沼から抜けられません。この喜びをみんなに感じてもらいながら、いまの音楽も昔の音楽も聴いてほしいなって思います。とりあえず、ジョニー・サンダースを聴いてみて(笑)!