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上映映画をもっと知りたい! 語りたい倶楽部。#6『いろとりどりの親子』
上映映画をもっと知りたい! 語りたい倶楽部。#6『いろとりどりの親子』

GIRLS’ CINEMA CLUB

上映映画をもっと知りたい! 語りたい倶楽部。
#6『いろとりどりの親子』

2018.11.16

いま私たちが映画館で観るべき上映作品を、
本音100%でレビューする週イチ映画連載。
今週は『いろとりどりの親子』です。
自閉症、ダウン症、低身長症、LGBTなど、さまざまな“違い”を持つ親子の姿を
繊細に描いた世界的ベストセラーブックが原作。
“普通”ってなに? 本当の“個性”とは? ここで一度立ち止まって、
ゆっくり考えてみるのもいいかもです。

Text_Kyoko Endo

“普通”ってどういうこと? と問いかけるドキュメンタリー。

作家のアンドリュー・ソロモンには、ゲイの自分を認めないまま母親が亡くなった過去がありました。しかし時代が進んで、ゲイは病気や欠点ではないと社会認識が変わったことから自分を認められるようになったのです。その経験から、障がいがあるなどで親に似ていない子どもたちとその親たちを取材したのがこの映画の原作。親たちの思いにも感動しますが、そもそも“普通”ってなんだろうと考えさせてくれます。

鮮烈なのが、低身長症の人たちが障がいを治すという医師に猛反発する場面。治療という考え方はせっかく培ってきたアイデンティティを踏みにじるもの。多様性だなんだと言ったって私たちは障がいを治すべきものとしか見ていない。健常者に近づくことが幸せだと健常者は勝手に思っているけれど、違うのです。

障がいに限らずあらゆるコミュニケーションで、私たちは相手を自分の理想像に合わせようとしてかえって混乱を大きくしています。さらには自分にも同じことをして暗くなったりしている。欠点という概念が実は曖昧で、それは個性かもしれないのに。

自分のものの見方に合う映画はよくありますが、見方を変えてくれる映画はなかなかありません。これは貴重な一本です。

『いろとりどりの親子』

(2018/アメリカ/93分)

監督:レイチェル・ドレッツィン
出演:アンドリュー・ソロモン
配給:ロングライド
11月17日(土)より新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
© 2017 FAR FROM THE TREE, LLC
公式サイト

about this Movie

新しい視点を獲得できる度

★★★★★

愛の力に感動する度

★★★★★

原作を読みたくなる度

★★★★☆

PROFILE

遠藤 京子

東京都出身。出版社を退社後、フリーのライター、編集者に。『EYESCREAM』『RiCE』に寄稿。