GIRL HOUYHNHNMGirls Just Want To Have Fun!
境界線のないjiccaのものづくり。“実家っぽい”が合い言葉。
境界線のないjiccaのものづくり。“実家っぽい”が合い言葉。

we make products…what’s “jicca”?

境界線のないjiccaのものづくり。“実家っぽい”が合い言葉。

2020.11.18

大々的なPRを行うことなく、根強いファンを持つ大阪のファッションブランド〈MOI〉のデザイナー岡田奈美さん。
女優・モデルとして活躍し、センスある私服にも注目される菊池亜希子さん。
そんなふたりがタッグを組んで、なにやら服づくりを始めたらしい。第一弾発売前に、
ブランドを始めたきっかけや、服づくりに対する想いを聞いた。

Photo_Kengo Yamaguchi
Hair&make_Yuko Morie
Edit&text_Shoko Matsumoto

PROFILE

(左)岡田奈美

ファッションブランド〈MOI〉のデザイナー。2007年日本未入荷ブランド中心の子供服店「moi」をオープン。その後子供服ブランド〈MOI〉を立ち上げのちにレディースサイズも展開。好評を得てレディースオンリーの展開に。2015年メンズリメイクブランド〈ink〉とコンセプトショップ「PERK」をオープン。好きな色は藍色、好きな喫茶店のメニューはエビピラフ。
Instagram @moi_okada、@moi___official

(右)菊池亜希子

女優・モデル。『菊池亜希子ムック マッシュ』編集長。モデルとしてデビューし、映画やドラマ、舞台など女優としても活躍。著書に『みちくさ』(小学館)、『絵本のはなし』(白泉社)、『またたび』『へそまがり』(宝島社)、『好きよ、喫茶店』(マガジンハウス)、『おなかのおと』(文藝春秋)など多数。好きな色は茶色、好きな喫茶店のメニューはナポリタン。
Instagram @kikuchiakiko_official

ーまず岡田さんについて、ブランド〈MOI〉について教えてください。

岡田:昭和町で小さいセレクトショップを経営していました。当時は海外の子供服を取り扱う店が少なくて、2007年に子供服店「moi」をオープン。27歳のころですね。

ー年齢的には早いですよね。

岡田:たまたま引っ越してきた土地が昭和町で、町の雰囲気がとても気に入ったので、ここを拠点にしようと決めて。初めはセレクトだけをしていたけど、すぐに服を作りたくなりました。仕入れていても、同じパターンのところが多くて、売る方としてはマンネリを感じて。自分自身が消費者でもあるし、オリジナルでバランスよく消費者が求めるものを自分で作りたいと思い立って〈MOI〉というブランドを立ち上げました。店のオリジナルとしてやってもよかったんですけど、〝ショップオリジナル〟ではなく、やるならブランド一本でいこうと思い、店をたたんで、ブランドを立ち上げたのが2010年。ちょうど30歳のときでした。海外未入荷の子供服を仕入れている子供服店が当時はあまりなかったから、雑誌で取り上げてもらうことも多くて、東京へ呼んでもらうこともあって。ネットショップが好評だったんですが、そのお客さんがそのままブランドも愛用してくれるようになりました。一般の方も入れる展示会、受注会をあんまりブランドはやっていなかったから、珍しかったんでしょうね。卸はせずに、一般受注のみを始めてみました。もともと服が好きで、19歳から5年間ほど某セレクトショップで販売員をしていて、そのあと別のショップにヘッドハンティングされたんですが、すぐに妊娠して。子育てのために一旦アパレルの現場からは離れたんですが、人生の転機もあり、一念発起して覚悟を持って始めましたね。

ーなぜアパレルだったんでしょう?

岡田:客観的にものづくりが好きなんです。〝自分の子どもに着せる服がないから〟という理由で子供服ブランドを始めるひとは多いと思うんですけど、わたしはそこからはちょっと離れたところでものづくりをしたいと思って。素材としておもしろいものとか、プロダクトをつくりたい。子どもといえば居心地のいいカットソーみたいなものが主流だったけど、大人が着るような子ども服があってもいいじゃないですか。かと言ってよそ行き過ぎない、〝モノ〟として興味をひくような、子ども服の中に存在していないものを作りたいと思いました。最初は子供服からスタートしましたが、ダイレクトにお客さんと接していて、徐々に大人用も欲しいという需要が高まって。ただ単にサイズを大きくして作るのではおもしろくないから、大人用も細部にこだわって。幸いにも、それも受けてもらえたんですね。それでちょうど今年で10年を迎えます。

ーおふたりの出会いを教えてください。

菊池:4年前くらいだと思います。わたしが〈MOI〉の洋服をSNSか何かで見かけて気になっていて。展示会に伺ったのが最初だと思います。当時『マッシュ』という雑誌を作っていて、リサーチを兼ねていろんなブランドに足を運んでいたんです。展示会場は小さい空間だったんですが、入った瞬間に「全部すき!」と思いました。

岡田:花生師の岡本さんのアトリエを借りて開催しましたね。

菊池:光がすごくきれいでした。

ーたまたまSNSで見かけたのが出会いだったんですね。

菊池:好きな匂いがすると思って。こんなにドンピシャなブランドに出会えるなんて! とびっくりしました。試着室に忘れ物をして、届けてもらったりして。そのあとお互いに妊娠・出産で一年くらい間が空いて。少しずつやりとりをするようになって、気づいたら仲良くなっていました。

ー菊池さんが〈MOI〉に惹かれる理由を教えてください。

菊池:洋服って、この布をまといたい、みたいな、触ったその生地を身につけたいという願望がメインな気がするんだけど。しっかりと手に取る前から、並んでる佇まいに惹かれたというか。自分に似合いそうだという直感もありました。ナミちゃん(岡田さん)は、わたしとは対照的な背格好だし雰囲気も真逆なのに、それが自分にも似合いそうという間口の広さも魅力的だと思いました。

岡田:それは自分でも意識しているところなのでうれしいです。キャッチコピーとして〝着る人に染まる未来のヴィンテージ〟という、誰でも、その人自身のものになるっていうことをコンセプトにやっているので。人間が着て初めて完成する服を作りたいと思っています。

菊池:そのさじ加減が素敵だなと思うんです。手触りだったり、手仕事のクラフト感があるんだけど、ちょっとモードも感じる。なにごとも片寄り過ぎるものや極端なものがあまり得意ではなくて、どこにもカテゴライズされない感じがいいなと思いました。それでナミちゃんと仲良くなるにつれ、古着も好きなんだなということがわかり。古着に合わせたときにさらりと馴染む服、だから自分のワードローブにもさらっと馴染んでくれるんですよね。

ー〈MOI〉の服づくりのアイデアソースは何なんでしょう。

岡田:古着から着想を得ることはありますが、基本的にものを作るときに何かを見たり写真を引っ張ってきたりということがなくて。自分の経験だけ。次のシーズンはいつが締め切り、というのが先にあって、それに間に合わせるように生み出しています。特殊ですよね。シーズンごとのコンセプトがないんです。 その年に流行するシルエットや色を調べるわけでもなく、頭に降りてきたものを絵に描いて起こしていきます。

菊池:描いてなかった期間、何となく自分の中に記憶に残るものがあって、それを思い出して描いていく感じ? それとも描いているうちに降りてくるの?

岡田:うん、後者のほうが近いかな。こういうのが受けるかな、とか考えない。極端に言うと○○分で何型描いて、って言われるほうがやりやすい(笑)。

菊池:「これは一体なんなんだろう?」っていうような服がたまにあって、でも着るとしっくりくる、発明っぽい服っていうか。

岡田:自分が今まで接してきたものが服が多かったから、たまたま服に落とし込んでるだけで、もしかしたらほかの表現方法だったかもしれないですね。

ー〈jicca〉を始めることになったきっかけは?

岡田:ちょうど東京へ行っていたときに、あっこちゃん(菊池さん)から「子供服を誰かと作りたいと思ってるんだけど実現できるかなあ」みたいな相談を受けたんですよね。

菊池:普通にランチしながら、ぼんやりと思っていたことを話したんですね。子供服って、単純に〝モノ〟としてかわいいじゃないですか、小さくて。幼少期のアルバムを見返したときに、自分が着ていた服のことをよく覚えていて。大人より着られる時間は短いけど、子ども時代に着ていた服って特別なのかなと思って。思い出に残る、記憶に残る服を作りたいなと思ったんです。自分の子供に着せたいというよりも、かつて子供だった頃の自分に着せたいという感覚の方が近いかもしれない、ということを伝えました。

岡田:〈MOI〉の昔の子供服をフリーマーケットで手に入れたってのも聞いて(笑)。

菊池:ウズベキスタンの伝統的なスザンニ刺しゅうを施した一点もので。いつもうらやましいな思いながら子供に着せてる(笑)。どこかのひとが着なくなったものが巡ってくるのもいいなと思いました。

岡田:当時思い描いていたイメージ、巡り巡ってヴィンテージになっていくっていうのが、ここ10年くらいで片鱗が見え始めているからおもしろいなと思いますね。

ーそして今年いよいよプロジェクトが動き始めました。

菊池:スタートは秋冬シーズンにしたいという思いが共通してあって。だったら今年どうにか間に合わせよう!と思って急いで取りかかりました。

岡田:〈MOI〉を始めるときも秋冬からやりたいなと思っていたので、同じ感覚を持っているんだなと再確認して。秋冬は素材等でも世界観を表現しやすいんですよね。

菊池:コーデュロイとかコールテンとか、昔ながらの質感。

岡田:コロナの影響もあり、みんなを活気づけるためにもいいんじゃないかと思いました。

ー実際の作業自体はダイレクトにコロナの影響を受けたと思うんですが、そのあたりはどうでしたか?

岡田:リモートでいろいろと進めていったり、初めてのことばかりだったけど、わたしは大丈夫だという絶対的な自信がありました。

菊池:「大丈夫ちゃう〜?」って言ってくれて(笑)。ナミちゃんは、基本的にそんな感じ。

岡田:やっぱりあっこちゃんは心配してましたね。距離が遠いし、すぐ会えないから。

菊池:この業界に限らず、みんな働き方や暮らし方が変わってきているよね。人と会いたい気持ち、顔を合わせて話したい気持ちはもちろんあるけれど、ツールを駆使すればいろんなことを共有できるし、意外と距離は越えられるものかもしれないなと思いました。

ー自信があったのはなぜでしょうか?

岡田:全部に関して基本的に自信があるんです。自分で築いていかないとっていう野心家ではないけど、やらざるを得ない。やっぱり自分に自信がないと、ひとにも提案できないし、説得力がないっていうのは、この10年で思ってたことなので。そこがないと作り手として難しい。やりたいんだったらやる、あかんかったらあかん、という性格なんです。

菊池:わたしは頭の中で妄想することが多いから、やりたいことがどんどん膨らむんだけど、それをいざ実行に移すとなると時間がかかるんです。準備しなきゃ、整えなきゃと思って頭でぐるぐる考えているまま、時間が経ってしまう。ナミちゃんは、火が付くと止められないタイプだから(笑)、引っ張ってもらって進めていけました。

岡田:性格的にも正反対だからおもしろいです。自分が持ってないものを持ってるから。

菊池:〈MOI〉は自分ひとりでやってるけど、誰かの思いを形にする、力を貸すみたいなことをやりたいと思ってたと、ナミちゃんが言ってくれて。

岡田:デザインが溢れるように出てくるタイプなので、そうするとアウトプットができない時もあって。〈MOI〉とは離れたところで、ひとりでは出来ないひと、形にしたいけどよりよくしたいひと、企業であれ個人であれ、自分が力になって、誰かの力と合わさってひとつのものづくりしたいと思っていた、そのタイミングでの合致だったんです。

ー〈jicca〉ではどういうアイテムを作りたいと思っていますか。

岡田:ファーストシーズンは、括りも作らない予定。あっこちゃんとわたし、ふたりで〈jicca〉だから、ふたりのデザインを出し合ってやっていこうと思ってます。

菊池:ほぼ毎日電話をしているんですけど、仕事の話をしていたはずなのに、いつの間にか友だちとの世間話になっていたりして。そういうおしゃべりが、ものづくりのヒントになったりもするので、なんとなくときめいたものは常に共有するようにしています。女子高生の放課後みたいな感じ(笑)。〈jicca〉は単純に洋服のブランドというだけではなくて、〈jicca〉っぽいことを形にしていくプロジェクトになったらいいなと思っていて。雑誌を作ったり、ものづくりの旅に出たり、いろんなことをぐるぐる考えています。

岡田:作り方としてすごく新鮮です。今までこういうものの作り方をしてこなかったから。〈jicca〉が生まれたことで〈MOI〉にとってもいい影響を受けています。

菊池:さっきナミちゃんが言っていたことに近いけど、〈jicca〉のアイテムが、時代を越えて次の世代の誰かが手にした時に、魅力的な古着になっていたら嬉しいなと思います。私、古着屋さんで気になる洋服を見つけた時に、よくお店の方にそのブランドについて聞くんですけど、「○○年代頃のブランドで、全然有名じゃないんだけどおもしろい洋服色々作ってたんですよ〜」とか言われると、俄然気になってあれこれ調べたくなっちゃう。〈jicca〉もそんなふうに、未来の誰かに巡り巡って届いたらおもしろいなと、ぼんやり想像しています。

ー第一弾アイテムのブラウスについて教えてください。

岡田:リネンそのままの質感で表現できるような生地をまず探しました。

菊池:ヴィンテージリネンのような無骨な佇まいが理想で、さらっとしすぎない重みのある質感を意識して最初に私が選んだんですけど、ナミちゃんチェックでストップがかかって。それで新たに生地を取り寄せて選び直しました。スワッチの小さなサイズから、洋服になった時の状態をイメージするのはとても難しい。そこはやはり経験値が必要な部分で、ナミちゃんの判断を信頼しています。

ー大きい衿のデザインのイメージはどこから?

菊池:もともと大きい衿の服が好きで。自分のこどもにも着せているし、スタイみたいなものやフリルがどっさり付いた服も大好き。デザインを描いてみて、子供が着たら絶対にかわいい確信があったけど、それを大人が着たときに、どうだろうと思って。トワルを組んだときにけっこうボリュームがあって。わたしはちょっと躊躇して衿の分量を少なくしようかと思ったんですけど、逆にナミちゃんは思い切って増やしたほうがいいと言って。トワルはシーチングで作った仮縫いなので、本番の生地になった時の完成形がつかみにくくて。生地が変わると衿のボリューム感も、立ち上がり具合も変わってくるから、そのあたりのジャッジはナミちゃんやパタンナーさんに委ねました。

岡田:こういうデザインは衿の長さや分量ひとつとってもチープになったりするんです。ほどよい上品さを保つことは〈MOI〉でも染み付いてるから、アドバイスしました。

菊池:色の好みもまったく違っておもしろいです。私は絵を描く段階で、このデザインならこの色!とイメージができあがっていることが多いんですけど、ナミちゃんは色展開は絶対にあったほうがいいと言う。そもそも私とナミちゃんとで好みの色が全然違うし、選択肢があったほうがより多くのお客さんに手に取ってもらえるのだろうなと思いました。ふたりで作る良さって、こういう時にも表れますね。ひとりだと、どうしても価値観が偏ってしまうけれど、ふたりの好みが混ざりながら形になることで、間口が広がるような気もしています。

ーこれから〈jicca〉はどんなふうに進んでいくのでしょう。

菊池:ユニバーサルデザインってあるじゃないですか。バリアフリーじゃなくて、ユニバーサル。これを叶えるのは簡単なことではないのかもしれないけれど、常に意識はしていたいなと思っています。どんな立ち位置のひとにとっても馴染む服を目指したい。

岡田:洋服を楽しめるカラー展開にしているので、ちょっと冒険をしてみたいというひとにも手に取ってもらいたいです。

菊池:プロジェクト名の〈jicca〉は、その名の通り実家という意味で。実家という言葉でイメージするのって、懐かしさや愛着、ちょこっと癖のある愛すべきもの、みたいな。喫茶店のソファに座って「あー、なんか実家っぽい」って言ったりしますよね。そんな感じで“〈jicca〉っぽさ”を模索しながら、少しずつ形にしていけたらなと思っています。

Photo_Takahiro Otsuji

INFORMATION

Instagram @jicca___
HP:jicca.me