Born in 1993

1993年生まれたちの事情。
Photo_Mariko Kobayashi 
Ryutaro Izaki 
Yoko Kusano
ENGLISH

「1993年生まれ、集まれー」とは、写真家・小林真梨子から同じ歳のクリエイターたちへのラブコール。
学生の頃はあたりまえだったから意識しなかったけど、社会に出ると妙に恋しくなっちゃう同じ歳。
彼女がキュレーションをつとめた「1993」展は参加者すべてが来年25歳になる1993年生まれ。
ガールフイナムでは主だったメンバーに、この企画展にまつわること、
あんまり関係ないけどこれからのことなど、ちょっとゆるめにいろいろ聞いてきました。

MONO NO AWAREのメンバーでもある玉置周啓と加藤成順
(今回は派生ユニットのMIZとして参加)、
そして映像作家のUMMMI.の3名はキュレーションを手がけた小林真梨子自身、
今企画のオファーが初コンタクトだったらしいけど、
「きっと合うと思う」という彼女の読みどおり奇跡的な相性の良さで制作が進んでいった。

「1993」展の話を聞いて最初はどう思った?
玉置:いちばん最初にこの話を聞いたのが酒の席だったから正直…あんまり覚えてないんだけど、同じ歳の映像作家と共同でつくるっていうのは魅力だったな。音楽以外のクリエイターに興味があったから。
加藤:テーマ自体はありきたりかなって思ったけど、僕ら以外に参加する2組は同世代のなかでも頭いっこ出てる人たちだから、そこに並んで参加できるっていうのはうれしかったし、単純に楽しみではあった。
UMMMI.:映画でもなくミュージックビデオでもない映像作品ていうのがおもしろそうって。
実際このチームでやってみてどうだった?
玉置:普段からつくってるミュージックビデオだと、やっぱり音楽の方に主導権があったりするけど、今回は全然違ったし純粋に楽しめたかな。
加藤:実はこういう場合の方が産みの苦しみっていうか、できるまでがすごい大変そうだなと思ってたんだけど、すごく順調に進んでいって。
UMMMI.:すごく理想的な関係としてできたよね。いろんな奇跡が重なって必然的にできたっていうか。
どんな奇跡があったの?
UMMMI.:わたしたちのテーマでね、すごくかっこいいのを思いついたんです。「パラダイスの夜明け」っていう。20代前半まではわりと無責任でいられる部分もあるけど25歳になったらそうも言ってられないから、無責任=パラダイス、それが終わってしまうという意味で夜明け。
加藤:今回は3曲使ってるんだけど、そのうち1曲はこのためにつくったわけじゃなくて。「春」って曲は周啓が前から持ってて “愛してるよ夜明け” って歌詞があった。
玉置:UMMMI.からこのテーマを聞いてピッタリだと思ったし、もう1曲の「山道」に関しては今年の夏に釧路でカヌーに乗る機会があって、霧のなかを無言で進んでいくっていう。そのときのBGMをギターで探してたんだけど、それも今回のテーマにピタッとはまったから、これでいこうって。
加藤:映像の企画に対しては環境の音も入れたいねってことで撮影場所は山になって。
UMMMI.:いろんなことがリンクしてキャンプのシチュエーションもすぐに決まったしね。ほんと、奇跡。
とってもいい流れのなかで撮影まで進んでいった。
玉置:夜中の山はすごく寒かったー。
加藤:あんなにも人の温もりを感じた経験はなかったな。
UMMMI.:以前に偶然知り合ったキャンプマスターに同行してもらったんだけど、現場では彼にすごく助けられました!
玉置:そういえば撮影中に感じたことがあって。深夜の真っ暗闇のなかで、みんなでギュッと固まって焚き火を囲んでるときは、いま自分たちがいる空間がすっごく広く感じてたんだけど、少しずつ朝日が昇ってきて光が当たりはじめた瞬間に急にせまく感じたんだよね。夜明けがすごくつまんなかったの。
UMMMI.:夜明けって良い意味で使われがちだけど、今回はあえてちょっと逆の意味で使ってたのでそれを体感できた雰囲気はあったよね。
「25歳」については意識したことある?
加藤・玉置:ない。
UMMMI.:25歳くらいって考えてすぐに浮かんでくるのは、大好きな岡崎京子の漫画に出てくる女の子たち。時代背景もあると思うけど、彼女の漫画に登場する女の子はちゃんとお金もあってバブリーできらびやかで、大人の女ってイメージだから、いまの自分とは本当にかけ離れてるなあと思っちゃう。あと個人的には子供10人くらい欲しいと思ってるから、そろそろ産みはじめようかな、とか。
加藤・玉置:すごいな!

旧知の仲だというMONJOE(DATS/yahyel)とトラックメーカーでありラッパーの荘子it。
10代のころからのつきあいであり、現在も音楽というフィールドでは度々制作を共にする彼らだけど、
こういったカタチでのコラボレーションは初。
撮影を終えたその夜に聞いた、これまでや、今やこれから。

「1993」展に参加することになったきっかけは?
MONJOE:今年の春くらいから真梨子と仲良くなって、お互い分野は違うけど同じ歳だし何かおもしろいコト一緒にできたらいいねって話してたんです。で、今回の話を持ちかけられたんで断る理由はないなって。その時点では93年生まれのってだけでコンテンツの内容は全然決まってなかったんだけど。
荘子it:俺はMONJOE経由で話があって。映像できるの? っていうから「できるよ」って(笑)。今まで人の映像に音楽つけるっていうのはよくあったんだけど、その逆パターンは初めてだったんじゃないかな。
2人は長い付き合いなんだよね。
MONJOE:同じ高校で隣のクラスだったんだけど、2人とも同じタイミングでギター買ったんです。で、隣のクラスにもギター買ったヤツいるらしいよってなって、じゃあバンド組もうかと。
同じタイミングでギターを。そんな偶然があるんだね。
荘子it:エレキギターの音にすごい衝撃受けたんです。カッケー!って。音鳴らしただけでカッケーじゃんて。
MONJOE:そうなんだ? 俺はニルヴァーナ聴いてだったな。けどバンドやってたらすげー楽しくなっちゃって、音楽始めてからはずっとその延長線上にいる感じ。
荘子it:そうかも。ギターさわるようになって、音楽作ってみて、自分てなにかモノを作れるんだ!って思えたあの時がターニングポイントだったんだな。
今回の企画展では「25歳」を迎えるってこともひとつのキーワードだけど、意識したことある?
MONJOE:日本A代表のイメージかな…。特に意識したことないけど、ガチ感あるよね。なんとなくの子供の頃のイメージでいうと稼ぎがあって立派な大人って気がしてたし。周りがみんな社会人になってるのもあるし、スポーツとかでもすげー活躍してるヨーロッパのサッカー選手とかグランドスラム制覇しちゃってる人とか、大体同じくらいの年齢の人たちだからそういうの聞くと意識しちゃう。ガチじゃんて。
荘子it:俺も25歳については考えたことないけど、これまで意識したことがある年齢でいうと14歳だな。小学生の頃から兄貴の影響で読んでた漫画に出てくるキャラクターってやたら14歳が多くて。エヴァとかね。よく中二病とか言うけど、俺もずっと14歳からいろんなの引きずってるなー。MONJOEはそういうのなさそうだけどね、その辺カラッとしてるから。
MONJOE:ないね。
荘子it:MONJOEのそういうとこいいよね。こないだ友達と話してて、そのコは自分に全然自信がないって言ってたんだけど、MONJOEが「俺はずっと自信がある」て話してたじゃん? それってすごい強いことだと思うんだよね。そうなったきっかけとかあるの?
MONJOE:そんなの…、生まれたときからそうだけど(笑)。ずっとやりたいことをやってきて、なりたい自分になろうとした積み重ねっつうか。不安があったとしても、やりたい気持ちが勝ってればやるし。わりと直感に従ってきたタイプではあるね。
荘子it:不安でもやるってことね。
MONJOE:あ、年齢意識したことあった。ミュージシャンは27歳で死ぬと思ってたわ、そういえば。
じゃあ年齢は一旦置いといて、2018年にやっておきたいことはある?
荘子it:まとまった形で自分の音源出したいかな、ソロとして。
MONJOE:来年はどっちのバンドも大きく動く年だから忙しくなりそうだけど、そのなかでも個人ワークというか…、音楽ももちろんそうだけど、音楽以外の領域にも手を伸ばして何かしらの作品をつくってみたい。
荘子it:お!
MONJOE:自分のすべての活動、ふたつのバンドもそうだし個人としてもやってるクリエイティブワークを含めて、自分のスタンスが全部リンクするような、こういう考えや思想があるっていうのをちゃんと形にしたいと思ってる。
そんな2018年、25歳を経て将来はどんな大人になりたい?
荘子it:MONJOEはアレだよな、きれいなデブ。
MONJOE:違う! おしゃれできれいで清潔感があるヒゲのデブな。つーかそれはなりたい大人っつーか…。
荘子it:日本にはまだそういうジャンルがいないんでしょ?
MONJOE:海外のミュージシャンでいうとチェット・フェイカーとかジャック・ガラットとかみたいに、才能あってかわいくて中身繊細そうで、太ってるけどちゃんとおしゃれで愛されてる人がいるじゃん。俺からするとすごいかっこいいんだけど、日本にはあんまり見当たらないから自分が初でいけるんじゃないかと思って。
荘子it:MONJOE系男子ってことでね。きれいでおしゃれなデブというジャンルを切り開くと。
MONJOE:おしゃれできれいで清潔感があるヒゲのデブだから。ひとつでも欠けちゃだめでしょ、ここは。
荘子it:すげー語るじゃん!

櫻木大悟(D.A.N)と写真家の草野庸子が純粋に楽しめたと語る今回の企画。
もうとっくに成人はしてるから大人なんだけど、
子供のような純粋さをもって制作を楽しんだという2人にとっての「1993」展について。

今回の企画展の話を受けての印象は?
櫻木:純粋にワクワクした。
草野:基本的に制作はひとりですることが多いので、誰かとタッグを組みモノづくりをすることにおもしろさを感じました。
櫻木:普段とは違う新しい試みに、偶然性や実験性のおもしろさを見つけたいと思った。
草野:自分の作品でも仕事では世代をあまり意識したことはなかったんだけど、確かに同じ歳だからこそ共感できることがあるのか、それとも全くないのか興味が湧いてきて。どちらになったとしても自分にとっては新しい試みでした。
通常の作品づくりと違う部分はあった?
櫻木:このことが圧倒的な体験になるように意識した。
草野:写真て孤独な行為だなぁと常々思うのですが、音楽にのせることによって新しい化学反応が生まれるのが目にみえてわかって、それは不思議な感覚でしたね。
櫻木:空間をつくるのは初めてのことだったから、何もかもが新鮮だった。
特に印象に残ってることがあったらおしえて。
櫻木:お酒を飲みながら「いいじゃん。いいじゃん」て言いながら制作できたこと。
草野:かなりざっくりしたイメージでしか話し合いをしてなかったのだけど、いざ音と写真を合わせてみると、もうすぐにしっくりときて。お互いがこれまでやってきたことの延長線上で一瞬交われた感じがして、とっても楽しかった。あとやっぱり、冷えたビールを飲みながら、仕事ではない純粋なモノづくりができたなと思ってます。
櫻木:何度見直しても毎回違う印象になるってことも特徴的だったな。
今回の作品のテーマは?
櫻木:架空の事件にまつわる、生死の境界線。
草野:いろいろな物事の狭間、瞬間の怖さ、というイメージで写真を撮り下ろしたり、今までの写真の中から抜粋しました。
「25歳」を迎える2018年。何か目標などはある?
櫻木:守りの体制にならないことと、純粋に楽しむこと。
草野:自分の気持ちにいちばん素直に向き合いつつ、新しいことも吸収できる柔軟性を持ち続けたい。
同じ93年生まれで気になる人っている?
櫻木:のん(能年玲奈)。攻めてる姿勢がいい。
草野:アリアナ・グランデ!
自分たちって何世代だろう?
櫻木:粛々世代。各々、粛々と勝手にやってる感じがいいと思う。
最後に、そうそうたる1993年生まれたちを束ねた小林真梨子的「1993」展。
小林:正直、まとめるのがとても大変だったけれど今はとても楽しいです。それぞれが意見を出し合って作品をつくるということが、私自身普段あまりないので。それが新鮮でした。
この企画展を通じて感じてほしいことはある?
小林:空間に足を運んで、1993年生まれのわたしたちの空気に触れてもらいたいなぁ、ということ。そして、それぞれの表現を見てもらって刺激を持ち帰ってもらえたらと思っています。

「1993」展予告映像

監督・撮影:枝優花
出演:小西貴大
音楽:田中堅大