上映映画をもっと知りたい！語りたい倶楽部。#9『旅するダンボール』

GIRLS’ CINEMA CLUB

上映映画をもっと知りたい！語りたい倶楽部。
#9『旅するダンボール』

2018.12.07

いま私たちが映画館で観るべき上映作品を、
本音100％でレビューする週イチ映画連載。
今週は『旅するダンボール』。注目のダンボールアーティスト、
島津冬樹さんとは一体どんな人なのかがわかるドキュメンタリー映画です。
ダンボールへの愛が深すぎる。だってゴミとは到底思えないくらい、
かわいいお財布へと生まれ変わらせてしまうのだから！

Text_Kyoko Endo

好きが高じて…って大事！

SXSWに正式出品されて話題の本作。主役はアーティストの島津冬樹さん。古ダンボールで財布や名刺入れを製作していて、作品は国立新美術館などで販売されています。

島津さんのダンボール愛は際立っていて、世界中にダンボールを拾いに行きます。ご自身のウェブサイトにアップされてますがときには往復の飛行機代と多大なエネルギーを使って１枚しか拾ってこられないこともあるらしい。でもいいんです。だってそれが好きなだけだから。映画は世界各国での古物回収だけでは終わらず、ダンボールのデザインをした人を探して長崎まで会いに。感動の旅です。

でも正直私はこの作品を環境意識とか感動目的で観ることにはちょっと違和感があるのです。だって島津さんのスタンスって、ある日突然ダンボールが環境に悪いと言われたとしてもたぶん何にも変わらない。好きなものに見出した美を誰かに伝えるためにデザインした作品が結果としてアップサイクルになったのであって、島津さん自身はおそらく好きなものをずっと追いつづけてきただけ。何かをただただ好きでいたら、周囲が意味を見つけてくれるのです。自分の好きなものを好きだと言う、それこそが大事と気づかせてくれる映画です。