みんなの悩みを一気に抱きしめられる曲に。

ーまず、新曲『WE ARE』にどんな思いを込めたのか教えてください。

この曲は10代の子たちやZ世代を中心に幅広い方々から悩みを募集して、そのアンサーソングとして書いた曲なんです。集まったものに目を通したときに、恋愛や仕事だったり、友達や先生、家族との関係性についてだったり、内容は年齢や肩書きによって違えど、誰しも一つや二つ悩みがあるんだなということを感じて。その全部を一気に抱きしめてあげられる曲にしたいという思いがありました。

ー集まった悩みには何か共通点があったんでしょうか？

誰にも相談できないようなことを赤裸々な言葉でぶつけてくれる方がかなり多かったんです。根底ではみんな孤独を抱えているんだと気付いて、曲全体の大きなテーマを決めました。

ータイトルからも分かるように、この曲は主語が「私たち」になっていますよね。

一人じゃないよっていうことを伝えたくて、『WE ARE』というタイトルにしました。すべてを分かち合うことは難しくても、誰もが同じように悩んでいるから手を繋いで一緒に歩いて行くことはできる。孤独がテーマになってはいるけれど、それを嘆いたり悪いことと捉えたりするんじゃなくて、この曲を聴いているみんながその時間は隣に並んでいるような感覚になって欲しいです。

ーeillさんご自身も孤独を感じることはありますか？

もちろんあります！ 誰かと一緒にいる時ですら孤独を感じることもあるくらい。特に歌詞を書くときは外の世界をシャットアウトして一人で没頭するタイプで。でもそれって自分と向き合う貴重な時間になっているから、私は孤独をネガティブなものだとは思っていないんです。「いま感じていることを完全に理解できるのは自分だけだ」と思ったときに人は孤独を感じると思うんですけど、当たり前だけどそう考えること自体が自分にしかできないことだし。だからみんなも無理やりそうする必要はないけれど、自分と向き合うことを恐れずに安心して一緒に生きていこうね、と伝えたいです。

ーあとは歌詞のなかに「フェムテック」っていうワードが出てきたり、女性ならではの悩みが反映されている印象も受けました。

標語的に消費されているのを見かけて違和感を感じることも多いので、そこへのアンチテーゼも込めてハッシュタグをつけて「#フェムテック？」という歌詞にしています。あとは「鏡よ鏡よこの世で一番美しい者は誰だい？」というフレーズは歌詞のなかでも最初に完成した部分なんですが、自分自身の悩みを言葉にしているんです。

ーeillさん自身の言葉で歌にするために、ご自身の悩みもぶつけられているんですね。

音楽には絶対に嘘をつきたくないから、曲のどこかに必ず自分の気持ちを入れるようにしています。女の子が持ってるありのままの姿でいられることがフェミニズムだと私は思っていて、歌詞のなかで「#フェムテック？」も「“ワタシノテック”」っていう言葉に変えています。

弱い部分も、歌にすることで強くなれる。

ーありのままの自分を受け止めてオープンにしているからこそ、力強い歌詞が書けるんですね。

アーティストとしての私は皆さんに強いと思ってもらえているかもしれないけど、一人の人間としての私はすごく弱いんだと思います。悩みを人に話せなくて抱え込んじゃうからこそ、そのときの気持ちを歌にしたいし、弱っているときの自分の言葉ってすごくリアルで。私の弱い部分に共感して勇気づけられてくれる人と、ハイタッチするような感覚で歌詞を書いています。

ー具体的にどんな部分がウィークポイントだと思いますか？

思ったことがあっても行動を起こさずに、しょうがないって思って飲み込んじゃうところかも。「そうなっちゃだめ！」って歌ったりもしてるんですけど、それは自分へのメッセージも込めてます（笑）。でもそれを認めたからこそ書ける歌詞があったから、弱さ自体もポジティブに捉えることができています。

ーでは、アーティストとしてはどんな女性像を目指しているんでしょうか？

誰かを励ます存在でありたいっていうのはずっと思っています。だからステージに立っているときは強い私になれるのかも！ ハッピーもアンハッピーも全部抱きしめて、前に進んで行こうよっていうスタンスを、歌を通じて広めていけたら嬉しいです。

ー3月3日に開催された「Billboard JAPAN Women In Music」に、いま影響力を持つ女性アーティストの代表として選出されていますが、女性に向けて何か伝えていきたいことはありますか？

私の周りにも、女性であるがゆえに選択肢が狭くなってしまう状況に直面している人がたくさんいるんですが、そうなってしまう世界を変えていきたいなと思っています。シリアスな問題だけど、「うちらでバイブス上げていこ！」みたいなテンションで楽しくポップに伝えていきたいです。“人生向上委員会”とか設立したい！

ーぜひ何かガールフイナムと一緒にハッピーバイブスで何かやりましょう！では最後に、読者やファンの皆さんに向けて一言お願いします。

私はこれからもいま以上にかっこいい自分になれるような音楽をつくっていきたいし、鎧のようにまとえる音楽を届けていきたいです。2023年一発目のシングル『WE ARE』は、みんなで一緒に前に進むためのBGMのような曲になったらいいな。