A YOUNG PHOTOGRAPHER’S
PURE, DESIRE.

NYの写真家グレイス・アルホムが表現するヤングアダルトのいま。
Photo_Miri Matsufuji
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去る3月半ば、東京“第24区”と題されたアート展『DISTRICT 24』が月島に出現しました。
20代を中心とした国内外のクリエイターの作品が集ったこの展覧会にて、
ニューヨークから駆けつけて展示を行ったのが、写真家のグレイス・アルホム。
等身大の少年たちに焦点を当て、思いのままにシャッターを切る彼女のリアルに迫ります。

男の子を撮影していると、自分も彼らの一員になったようなような感覚になれる。

グレイスにとっては初の来日だと思うけど、東京はどう?
グレイス・アルホム(以下グレイス):すごく清潔な街だね! でも、日本は機械的な人が多いのかも。例えば、駅の階段に書かれた「上り」「下り」の矢印をみんなが守っているでしょ?赤信号だったら、車が来ていなくても誰も道路を渡らないし。あれには結構驚かされた(笑)。
確かに驚くかもね。もし東京に暮らすとしたら、どこに住みたい?
グレイス:原宿が好きだけど、ちょっと忙しすぎるね…。築地かな。
築地、渋い(笑)! では、グレイスが写真を撮り始めるようになったきっかけを教えてください。
グレイス:初めてカメラに興味を持ったのは中学生で、その頃はiPhoneもなかったから手軽に撮れるインスタントカメラを買ったのがきっかけ。当時はよく友達と作ったランプの上で、BMXやスケボーで遊んでいる様子を撮って近所のドラッグストアで印刷していたよ。
インスタントカメラが最初だったんですね。アートにおいて自己表現する術はたくさんあると思うけど、その中でもグレイスが写真を選んだ理由は?
グレイス:もともと絵が苦手だから写真を選んだのもあるけど、写真のほうが手っ取り早いというのもある。仮に自分の目で見た景色を絵にしようとして2ヵ月費やして描いたところで、本物には敵わないからね(笑)。
今回『DISTRICT 24』での展示写真は、メディアクリエイターやモデルとしても活躍するジュリアン・クリンスウィックスと共に撮影したそうだけど、彼とはどういう経緯で知り合ったんですか?
グレイス:最初はジュリアンからInstagramのDMが来て、「一緒になにか作品をつくらない?」って誘ってくれたんだよね。その後、たまたま私がパリに行った時にジュリアンもパリにいて、それが初対面。最近彼がサンディエゴからニューヨークに引っ越してきてさらに意気投合して、今回の写真を撮影するために2人でアイスランドに渡ったんだ。
なぜアイスランドのティーンエイジャーだけにフォーカスして撮影をしたんですか?
グレイス:アイスランドを選んだことに大きな理由はないけど、最近はアメリカよりも海外に住んでいる少年の方が気になっていて。アメリカでは潜在的に“男性的であること” を意識する子が多いけど、海外の男の子にはそういう固定概念がないところが好き。例えば、パリの男の子はファッションとして女性物のスカーフを巻いたりするしね。日本の男の子も自然体でいい感じだったよ。
あなたの写真に登場するのは男の子が主で、女性が写っているのをあまり見かけたことがありません。
グレイス:まず私の恋愛対象が女性というのもあって、女の子を被写体にするとどうしてもセクシャルなテイストになるし、、見た目だけを重視したビジュアル的な要素が強くなるのが嫌だからかな。逆に「自分は男の子にはなれない」という自覚があるから、若い男の子たちと遊んだり撮影したりしてると、自分も彼らの一員になれたような感覚になるんだよね。

ライアン・マッギンレーには、人との接し方を教えてもらった。

1年前の『オイスターマガジン』のインタビューで、写真を撮りながら彫刻制作もすると答えていたんですが、それは本当?
グレイス:あれは写真を展示するためのオブジェとしての彫刻したんだ。写真を拡大プリントしてフレームに入れて壁に飾るのは普通だからやりたくなくて、展示するに際して見せ方をアップグレードしたくて作ったの。もしかしたら彫刻が一番得意かもね(笑)。
いま住んでいるニューヨークには、作品に繋がるようなインスピレーション源はありますか?
グレイス:住んでいる場所の環境というよりも、よく遊ぶ仲間たちに影響されることが多いかな。友達と遊ぶときは、古着屋をまわったり、お酒を飲みながら何時間もおしゃべりをしたり。あとニューヨークはいつもどこかでアート展示が開催されてるから、ギャラリー巡りもよくするよ。春や夏は、友達の別荘に行ってゆっくりしたり、内緒でホテルのプールに忍び込むこんだりすることも好き(笑)。
世界を見渡しても、グレイスと同世代の20代前半のアーティストが大手ブランドとタッグを組むなど、自分の才能を上手くビジネスに繋げる若者が目立ってきている気がするけど、昨今のそういった流れについてどう感じますか?
グレイス:若者たちが大きいビジネスチャンスを手にすることはメリットがある反面、 “若手” という理由だけで低賃金でオファーするなど、企業側のコントロールのもと支配されている部分もあると思う。私は写真家のライアン・マッギンレーのアシスタントとして働きながら色々なことを学べたんだけど、誰かのもとで勉強することは大切だよね。写真のことだけじゃなく、世の中で生きるためのハウ・トゥーを教えてもらった。
師匠のライアン・マッギンレーからは具体的にどんなことを学びましたか?
グレイス:ライアンに教えてもらったのは、人との接し方や人間関係の作り方。コミュニケーションを取ることは、作品をつくることと同じように重要だからね。自分が理想とする作品をつくりたいなら被写体との信頼関係が欠かせないし、そのためには人としっかり会話する能力が求められる。あとは、自分の作品をいかに多くの人に見てもらうか、その作品の魅力をどう語るかなど。彼は芸術面だけじゃなくビジネス面も優れている写真家だと思う。
ではグレイスにとって、企業やブランドから依頼された仕事でとくにおもしろいと感じたものはありましたか?
グレイス:〈ナイキ(NIKE)〉と〈アディダス(Adidas)〉の仕事で、社内のスタジオで撮影をしたのが楽しかったかな。他の人の目を気にせずに、自分のペースで写真を撮れたから。
多くのメディアがあなたたちを取り上げるときに強調する“若さ”というのは一過性のブームになりかねないと思いますが、その中で生き残っていくために心掛けていることはありますか?
グレイス:私が60歳になった時もいまと変わらず同じような友達と遊んでいると思うから、その点に関してはあまり意識してないかな。
撮りたいと思った人には、自分から連絡を取るんですか?
グレイス:そうだね、気になる人には過去の作品を見せたり、街で声をかけて撮影をお願いしたり。私の場合、写真を撮るときはすごく神経質になってしまうタイプだから、友達と遊ぶ時はカメラを持ち歩かないようにしているの(笑)。
グレイス・アルホムという名前が世に知られていく一方で、自分の認知度を意識しすぎたり、ビジネスライクになって自分らしい作品が撮れなくなったりしてしまうことはないんですか?
グレイス:実は最近、ビジネスライクな写真撮影に疲れてしまって、あまり人から依頼された仕事は受けないようにしているんだよね。最初は、写真家として世に自分の名前が出るようになったのがうれしくてブランドのルックとかも撮っていたけど、モデルやら場所やらすべてを決める決定権はブランド側にあるから、結局自分の写真ではないと気づいて…。いまは自分の好きな作品だけを撮っているけど、もしお金に困ったらピザ屋でバイトすればなんとでもなるから(笑)。
最後に。いま、一番撮りたい子を教えてください。
グレイス:Instagramで見つけたイケてる男の子がいるの。湖のほとりに住んでいて、髪の毛はパンクロッカーみたいにツンツンで、目には眼帯、みたいな(笑)。その子を次は撮りたいなと思って、ちょうどいま連絡を取り合ってるところ。