GIRLS’ CINEMA CLUB
上映映画をもっと知りたい! 語りたい倶楽部。
#18『ビール・ストリートの恋人たち』
いま私たちが映画館で観るべき上映作品を、本音100%でレビューする週イチ映画連載。
今週は『ビール・ストリートの恋人たち』です。70年代のアメリカ、黒人差別と闘う恋人たちが描かれた
ジェイムズ・ボールドウィンの小説がバリー・ジェンキンス監督によって、いま鮮明に蘇る!
Text_Kyoko Endo
ヘイトに立ち向かう家族を描く。
2月24日にアカデミー賞が発表されますね。今週紹介するのは一昨年の作品賞受賞作『ムーンライト』を撮ったバリー・ジェンキンス監督の新作です。
ビール・ストリートはアメリカのどこにでもありそうな通り。幼なじみのティッシュとアロンゾは恋に落ち結婚前にティッシュが妊娠しますが、家族も受け入れてくれて、幸福な日々が始まるはずでした――アロンゾが警官の黒人いじめの標的にさえされなければ。
アメリカの人種差別について聞いたことがない人はいないと思います。この映画の原作はキング牧師が暗殺された1968年に黒人作家ジェームズ・ボールドウィンが書き始めた小説。ジェンキンス監督は『ムーンライト』と並行してこの脚本に取り組んでいました。小説を基にしたティッシュの独白は凛として端正です。
無実の罪を着せられた夫を支える女性の美しくも悲しい物語ですが、観てほしいのはこの作品でオスカー助演女優賞にノミネートされたレジーナ・キング演じる主人公の母。こんな大人が身近にいてくれたら……オスカー候補を決めたアメリカの映画人たちも、そんな気持ちだったに違いありません。モラルが破壊されかけているいま、目指すべき人物像と言えるでしょう。
『ビール・ストリートの恋人たち』
(2018/アメリカ/119分)監督:バリー・ジェンキンス
出演:キキ・レイン、ステファン・ジェームズ、レジーナ・キング
配給:ロングライド
2月22日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
© 2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.
公式サイト
about this Movie
衣装やヘアスタイルも可愛い度
★★★★★
ボールドウィン作品もっと出版望む度
★★★★★
脇役が何気に豪華度
★★★★☆
PROFILE
遠藤 京子
東京都出身。出版社を退社後、フリーのライター、編集者に。『EYESCREAM』『RiCE』に寄稿。