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新たな出会いがもたらす、〈ATTISESSION〉スタイリング考。VOL. 01〈6〉ディレクター 吉田恵理子さん
新たな出会いがもたらす、〈ATTISESSION〉スタイリング考。VOL. 01〈6〉ディレクター 吉田恵理子さん

新たな出会いがもたらす、
〈ATTISESSION〉スタイリング考。
VOL. 01
〈6〉ディレクター 吉田恵理子さん

2024.09.03 / TIE UP

24SSにデビューしたブランド〈ATTISESSION(アティセッション)〉のディレクターを務める四谷奈々可さん。
同世代のクリエイターたちとの連載第1弾に引き続き、弱冠26歳の彼女が“いま会いたい先輩”に〈ATTISESSION〉のスタイリングを考案してもらう、連載第2弾がスタートです。
初回の対談相手は、彼女の進路を決定づけるに至ったブランド〈6(ロク)〉のディレクター吉田恵理子さん。
吉田さんならではのヴィンテージMIXのスタイリングが、新たな魅力を引き出します。

Photo_Wataru Kakuta(TRIVAL inc. )
Text_Shun Koda

四谷さんがディレクターを務める
〈ATTISESSION〉のルックや詳細は
こちらから!

連載シーズン1、
「新生ディレクター四谷奈々可の
クリエイター訪問記。」はこちらから!

GUEST 吉田恵理子

1995年入社。〈UNITED ARROWS〉原宿本店や有楽町店などでの販売を経て、1999年より商品部へ異動。バイヤー、MDを経験したのち、〈BEAUTY&YOUTH UNITED ARROWS〉の立ち上げに携わる。その後2度の産休を経て2013年に〈6〉を立ち上げ、ディレクターに。
Instagram:@rokueriko

HOST 四谷 奈々可

1998年7月7日生まれ、石川県出身。文化服装学院ファッション流通専攻科に入学。卒業後、20年4月に「UNITED ARROWS」に新卒入社し、セールスパーソンとしての経験を積んだ後、22年春夏から〈BEAUTY&YOUTH UNITED ARROWS〉次世代ラインの企画を掛け持つ。24年春から〈ATTISESSION〉のディレクターを務める。
Instagram:@7k0512

怖いものなしの自己紹介。

ー四谷さんにとって、〈6〉は学生時代から通っていたショップであり、「UNITED ARROWS」への入社を志望するきっかけにもなった存在。そのディレクターを務める吉田さんと、最初に言葉を交わしたのは吉田さんの誕生日会だったそう。
四谷:当時はブランドを立ち上げることは決まっていて、まだ〈ATTISESSION〉というブランド名も方向性もなにも定まっていない頃でした。ブランドを作るにあたって、デザイナーさんやブランドディレクターさんのインタビュー記事を読み漁ったんですけど、確信めいたものは掴めなくて。そんな時に共通の知人から吉田さんの誕生日会にお呼ばれして、こんなチャンスは2度とないと思って、勇気を振り絞って色々とお話を聞きました。
吉田:膝がくっつきそうなくらい勢いがすごくて(笑)。まず私に話しかけてくれる後輩って、なかなかいないんです。セクションがきっちり分かれている会社なので、あまりクロスオーバーしないんですが、そうやって前のめりに「四谷と申します、ぜひお話を」という感じで声を掛けてくれたのがうれしかったです。その姿勢に、ブランドを立ち上げる覚悟みたいなものを感じました。

らしく在るためのルールブック。

ーそれから1年が経ち、今回のトークセッション。2シーズン目を迎えた〈ATTISESSION〉は、吉田さんの目にどう映ったのでしょうか。

“アップデート”をキーワードにした2ndシーズンは、秋冬らしいレザー、スエード、レース、コーデュロイ、ベロアといったマテリアルにフォーカス。ニュートラディショナル、スポーツミックススタイル、歪んだカッティングデザインなどを駆使して、高揚感を掻き立てるコレクションに仕上がっている。

吉田:センシュアルな女性像が弊社のブランドとして新しいなと感じました。その一方で掴みどころがない自由さや型にはまってないところが、〈6〉と近いのかなと。〈ATTISESSION〉のアイテムに、ヒールで引っかけたようなダメージデニムがあって、それがすごく印象的でした。女性ならわかると思うんですが、デニムのレングスが長くてヒールを引っかけて破けちゃうことがよくあるんです。それとヒールをプリントしたTシャツとか、日常からインスピレーションを得て作っているのかなっていうところも〈6〉と共通しているように感じました。

四谷:細かいところまでチェックしてもらえてうれしいです。仰るとおり、日常的な事柄からヒントをもらうことが多いです。〈6〉にも決まった女性像やペルソナみたいなものがあるんですか?

〈6〉のキーカラーである赤は、女性らしさの象徴であるリップのルージュから拝借しているそう。ルールブックには、ペンで加筆が繰り返されている。

吉田:ありますね。ルールブック的なものを作っていて。

四谷:そうなんですね、見てみたいです!

吉田:お客様には公開していなくてスタッフだけで共有しているんですが、〈6〉がスタートして2、3年目のころに作ったもので、女性像がブレないよう定期的に見返すようにしています。 マスキュリンで女性らしい、周りに左右されない強さと柔軟性が共存している、 年齢に関係なく中身が成熟しているとか、10年前に作ったものなので、アップデートしている部分は多少あるんですが、全体的なムードは変わってないですね。

四谷:勉強になります。このルールブックを作ろうと思ったきっかけは何だったんですか?
吉田:これを作ったのが、〈6〉のショップを新宿に出店するというタイミングでした。お店ができることはうれしかったのですが、私の手から離れることで濃度が薄まるんじゃないかと思って、それで店に立ってもらうスタッフたちに〈6〉とはこういうブランドですよと、共通認識を持ってもらうために作ったんです。

四谷:〈6〉にルールブックがあるのは初めて知りました。9月に初の単独店舗を新宿に出店するのですが、吉田さんは初出店のとき、どんな心境でしたか?

吉田:初出店の時かぁ、どうだったかな。とにかく楽しかったことは覚えてますね。確かInstagramの黎明期で、今みたいにブランドがアカウントを持ってお客様とダイレクトにコミュニケーションを取ってなかった時代だったんですが、〈6〉はすごくお客様との距離が近くて、熱量もすごかったんですよね。

四谷:そうだったんですね。

吉田:それもあって、〈6〉の世界観を洋服やビジュアルだけじゃなく、お客様が直接感じてもらえる場所が作れるのはすごく楽しかったです。

四谷:不安とか、苦労とかはなかったんですか?

吉田:目の前のことに精一杯すぎたのか、全然なかったですね。

四谷:ファーストシーズンのことって覚えていたりしますか?

吉田:覚えていますよ。たくさん思い出があるんですが、1年目は〈Hanes(へインズ)〉など、“日用品に社会性を持たせる”っていうのがテーマとしてあって、それをスタイリストの白山春久さんにディレクションをしていただいて具体化していきました。〈Hanes〉の3XLのTシャツをこう着たらいいよねとか。〈Levi’s®〉の701が1番最初のアイコンになって。

四谷:ハイウエストのモデルですか?

吉田:そうです、マリリン・モンローが愛したと言われているパンツですね。それで、白山さんにアドバイスいただいて、701をメインにビジュアルを作ろうと。その女性像をしっかりと表現するためにはどうしたらいいかっていうことを、注力してやりました。その甲斐あって、〈6〉の描く女性像に共感してくれるお客様がどんどん増えていって、今があるんだと思っています。

四谷:白山さんが、吉田さんのイメージをより具体的にしてくださったと。

吉田:そうですね。最初のシーズンは私も何が正解かわからなくて、直感だけで動いてた部分がありました。 それをうまく可視化させてくれたのは、白山さんの影響がかなり大きいですね。

四谷:この10年の中で、より研磨されていった部分もやっぱりありますか?

吉田:今まさに、研磨している最中って感じですね。この10年間で〈6〉というブランドが大きくなっていく中で、空手の型みたいなものが出来てきたんですね。それは良いことでもあるんですが、今の自分としてはもっと自由さを大事にしていきたい。なので、 その型を壊していこうとしています。
四谷:すごいです、10年後なんて全く想像できないですし、自分の型が出来るのはいつなんだろうって思っています。“ディレクションとは”みたいなことを学生時代に習ってたんですが、実際に大きい経済の中で実践するとなると大違い。みんなで価値観や感覚を共有するってところがまだ難しいなって感じています。まだ2シーズン目ですが、「〈ATTISESSION〉は、どういうブランドなのか?」と本質を問いただされてるような気がしていて、早くそのプレッシャーを打破したいです。

吉田:そのやる気と熱意さえあれば、きっとすぐクリアできますよ。

四谷:そう言っていただけると心強いです。〈ATTISESSION〉のビジュアルは、文化服装時代の同級生と一緒に作ってるんですが、10代の頃から好きなものを共有している仲間みたいな感じなので、打ち合わせの場だけでなく、普段の会話から「最近このブランドかっこいいよね」とか、「あのマガジン見た?」という会話が自然にできているんです。共通言語が同じチームでできているのは、すごく安心材料になっています。吉田さんに質問なんですけど、〈6〉で1番思い入れあるアイテムってありますか?

吉田:アイテムかぁ……、いっぱいありすぎて。絞りきれないから、お気に入りのシーズンでもいい?

四谷:もちろんです。

吉田:2022SSの“SHE IS HERE”っていうシーズンが思い入れ深いですね。
吉田:コロナ禍だったのですが、女性の移ろいやすい気持ちの変化に敏感でいたいと思ったんですよね。自由で媚びずに自分のためのファッションを貫いてる女性の分母がすごい大きくなった気がして。コロナの時に私の周りにいた女性たちは、フェミニストというわけではないんですが、自分の意思表示をしっかりしている方たちばかりでした。我妻マリさんや「 THE LITTLE SHOP OF FLOWERS 」の壱岐さん、LAに住んでるカメラマンのエイミーや、アーティストのクリスチャン・プーレイなどからとてつもなく大きなエネルギーをもらって。そこにフォーカスしたシーズンっていうのが印象的でした。

四谷:モデルさんのパーソナルな部分にフォーカスしたビジュアルですよね。女性が根本に宿している強さの表れが、ポジティブなムードとなってひしひしと伝わってきます。

吉田:シーズンによってはディレクションが先行しすぎてしまってアイテムとリンクしなかったり、イメージづくりが浅いなと思うことがあったりと、 そういう浮き沈みがある中で、このシーズンはすごく深い部分まで掘り下げてつくることができたんですよね。この時に改めて、もっと強いディレクションじゃないといけないなと感じました。

スタイルを形成するヴィンテージジャケット。

写真左端はボトムスでおなじみのスタプレと同素材で作られた〈LEVI’S®〉のジャケット。油の抜けた風合いがいい味を出している。左から2番目はウルトラスエードにパンチングを施し、軽量かつしなやかに仕上げた〈RENOMA(レノマ)〉の一着。テーラードに限らず、ウエスタンやワークなど、さまざまなジャンルのジャケットを愛用している。

ー吉田さんの洗練されたスタイルを生み出しているヴィンテージジャケット。今回はコレクションの一部を持ってきてもらいました。
四谷:〈6〉のビジュアルでもヴィンテージとミックスされてますが、それは最初から意図していたんですか?

吉田:はい、絶対に表現したいと思っていました。私の思い描く女性像はヴィンテージをさらっと着こなすような人でしたし、今やそれが代名詞のようになっているのがうれしいですね。

四谷:若い頃からジャケットをよく羽織られていたんですか?

吉田:「UNITED ARROWS」に入社して1番最初に買ったのが、〈Dolce&Gabbana(ドルチェ&ガッバーナ)〉のピンストライプのダブルジャケットでした。鴨志田康人さんとのPODCASTでもお話したんですが、そのジャケットに膝上30センチくらいのミニスカートをセットアップで合わせて。何も怖くなかった20代、クラシックな装いにユニークさを加味したり、自分の意思表示をするのに必要なツールでした。

四谷:私もジャケットが好きでよく着ています。ヴィンテージものは今着てもフレッシュで気分なデザインのものがたくさんありますし。吉田さんにとって、ヴィンテージはどんな存在ですか?

吉田:〈6〉にも“timemachine®”と名付けたデニムがあるんですけど、時代を自由にクロスオーバーできる楽しさがヴィンテージにはあるんじゃないかなと思います。

四谷:確かにそうですね。モノ作りのヒントにされたりもしますか?

吉田:そうですね。 でも古着を再現しようとすると失敗するんです。経年劣化で油の抜けた風合いを表現したいけど、そのままやろうとしても絶対に近づけない。現在の素材やテクニック、パターンメイキングなどを駆使して、どうすれば当時の空気感を表現しつつ、今の気分に落とし込めるだろうってずっと試行錯誤してますね。それは大変だけど、楽しい作業でもあります。

渋カジとグッドガール。
対照的なスタイリングで表現する新たな〈ATTISESSION〉。

STYLING :01

ジャケット、デニム、グローブ :すべてATTISESSION
Tシャツ:「Sonic Youth」(USED・吉田さん私物)
ベルト:HERMÈS(吉田さん私物)
シューズ:CELINE(吉田さん私物)

90年代にレギュラーで購入した「Sonic Youthソニック・ユース」のバンドTシャツ。キャッチーなプリントと、ラグジュアリーなベルトが見事にマッチ。

ースタイリングのポイントは?
吉田:これは私がファッションに目覚めた90年代の渋カジをイメージしてみました。ジャケットに対して、バンドTとダメージデニムを合わせつつ、私はトラッドとコンテンポラリーを合わせるスタイルが好きなので、〈ATTISESSION〉をコンテンポラリーと捉えて、トラッド要素として〈HERMÈS〉のベルトを合わせてみました。

四谷:めちゃくちゃ好きなスタイリングです! 私はリングと時計とネックレスっていう決まったアクセサリーしか普段つけないんですけど、バンドTにメゾンブランドのベルトを合わせるのが新鮮ですごくかっこいいなって思いました。すぐ取り入れたいです!

STYLING :02

コート:ATTISESSION
ドレス:YVES SAINT LAURENT (VINTAGE・吉田さん私物)
ローファー:G.H.BASS
スカーフ:extreme cashmere
タイツ:FACETASM(四谷さん私物)

ちらりと覗くアームのペイズリー柄や胸元のベロアが、着こなしにアクセントをプラス。メゾンブランドならではの気品が漂う。

カジュアルなスタイリングと打って変わって、続いてはドレッシーなコーディネート。
吉田:こちらは70年代のグッドガールスタイルを、今の彼女が着こなしたらどうなるだろうと思ってスタイリングしました。〈ATTISESSION〉のコートがかなりロング丈でそこに強気な姿勢を感じて。それこそ、ダメージデニムと合わせても相性いいと思うんですが、グッドガール的なドレスを合わせてもコントラストがついていいかなと思いました。

四谷:私、高校時代はアメリカ古着を着ずに、ずっとヨーロッパ古着だったので、スタイリングもこのドレスも素敵だなって思いました。

吉田:着なれてる! このドレスは昔アントワープの古着屋で買った思い出の一着なんです。今の私だったら、パンツと合わせますが、四谷さんだったらタイツでも似合いますね。

四谷:本当ですか、ありがとうございます! 想像を遥かに超えてくる可愛いスタイリングで、一気に吉田さんの世界観に変わったので、それがすごく嬉しかったです。
ー〈ATTISESSION〉のアイテムでスタイリングを組んでいただきましたが、改めて印象はいかがでしたか?
吉田:ロングコートもそうなんですけど、ジャケットも肩の落ち具合など、潔い振り切り方が〈6〉と近いのかなと思いました。心意気と言っちゃいますけど、そこはしっかりと汲み取ってスタイリングしたいなという風に思いました。

四谷:新しい発見もたくさんありましたし、自信にもなりました。贅沢すぎる時間です!

“Breakthrough Traditional Mind”

ー約2時間にわたるトークセッションを終えて、吉田さんから1年目の四谷さんに対してのアドバイスは?
吉田 :はい、色々考えてました(笑)。

四谷:(笑)。

吉田:さらっと一言でかっこよく締めようって思ったんですが、すごくいいなと思ったことがたくさんあって。今の時代、四谷さんのエネルギーがあれば、極論会社に属さずともインディペンデントなブランドを発信していくことが出来ると思うけど、上手く会社と調和しながら新世代のファッション価値を切り開いていこうとしてる。そんなところが凄く良いなと。

四谷:いやいや、そんなそんな。
吉田:まだ26歳と若いのに、ディレクターという立場で自分を表現してるのは、同世代の希望の光……とまで言っちゃうと大げさすぎるかもしれないけど、いい影響を与えられる存在であることは間違いないと思うんです。今日お話してみて、いい意味で仕事と思ってやってないというか、自分の中に確かな答えと深い情熱がある方なんだなと改めて感じました。なんか先輩風吹かせてたら、ごめんね(笑)。

四谷:全くそんなことないです。吉田さんは10年以上もブランドを続けてこられた理由ってあるんですか?

吉田:熱量かな。それは四谷さんにも感じたことでもあって、今の高い熱量をずっと絶やさないでほしいなって思います。私が心配する必要はないと思うけど。私自身もモノ作りに対する熱が冷めてしまったら、もういいかなと思ってるし。でも幸いなことに、今も琴線にふれる出会いがあって、表現したいという気持ちに繋がるからこの仕事を続けられている。年齢とともにライフスタイルは変わっていくけど、ファッションに対する熱量だけはずっと変わらないんです。
四谷:今まさに〈ATTISESSION〉を5年後、10年後にどういったブランドにしていきたいか考えているところだったので、今日お話を聞けて良かったです。ロング丈のコートとかも吉田さんに「振り切っているところが潔くていい」と言っていただけたので、このままで大丈夫かもと思えました。

吉田:会社の社訓というか、元々のコンセプトに“Breakthrough Traditional Mind”という言葉があるんですけど、それをすごく体現されてると思います。先を見据えなくちゃいけないこともあるけど、今の自由さを忘れずに日々を積み重ねていけば、10年後の明るい未来に繋がるんじゃないかなと思います。

四谷:そのお言葉に恥じないように頑張ります、今日はありがとうございました!

TODAY’S STYLING

LEFT_
Nanaka Yotsuya

トップス:VINTAGE
パンツ:LEVI’S®
ブーツ:LOEWE
アイウェア:金子眼鏡

RIGHT_
Eriko Yoshida

ジャケット:VINTAGE
インナー:OVERNEATH
スカート:CELINE
パンツ:6
サンダル:CELINE
アイウェア:Ray-Ban®