“HONNE” Talk of Three Mens.
女の子に着てほしい服を考える。
男子3人によるマジメな(?)サンセサンセ座談会。
スタイリストの梶雄太さんがディレクションするブランド〈サンセサンセ(SANSE SANSE)〉をご存知でしょうか?
一見すると普通の服なんだけど、よーく眺めてみると、一筋縄ではいかない梶さんならではのこだわりが散りばめられた、そんな服。
真ピンクのセットアップやニット、業者っぽいブルゾンなどなど、一癖も二癖もある〈サンセサンセ〉の服を主題にしながら、
ディレクターである梶さんと、モデルの松㟢翔平くん、スタイリストのシュンサクくんの3人で、
女の子のファッションについてマジメに(?)語ってもらいましたが、途中から話は脱線。結果、おもいもよらぬ座談会になりました(笑)。
Photo_Anna Miyoshi
Text_Yuichiro Tsuji
PROFILE
(左):シュンサク
スタイリスト。サッカーが好きで、イングランド「プレミアリーグ」のアーセナルのファン。最近は選手の移籍情報を追っていて、チェルシーのジョルジーニョ選手の動向に注目している。彼女募集中。
Instagram @baggiojt
(中):松㟢翔平
映画、ドラマに出演する一方でモデルとしても活躍。10月限定で渋谷にある「PELLS coffee&bar」にて「小黑滷肉飯POP UP STORE 」を開催中。彼女募集中。
Instagram @matuzakishohei
(右):梶 雄太
スタイリストであり、フォトグラファーであり、〈サンセサンセ〉のディレクター。最近は映像の撮影も手がけている。今年の7月に長女が生まれ、子育てに没頭中。
Instagram @yutakaji_
ぼくならいい意味での意地悪ができるんじゃないか。
ー梶さんと松㟢くん、シュンサクくんはどんな繋がりなんですか?
梶:松㟢くんは仕事を介して知り合って、シュンサクくんはスタイリスト同士だけど、はじめましてのときは撮影のお手伝いをしてもらったことがあって。ふたりともそこから仲良くなっていまに至るという感じですね
ーみなさんのご年齢は?
梶:俺はいま46なんだけど、松崎くんとシュンサクくんはいくつ?
松㟢:ぼくは27です。
シュンサク:24です。
梶:じゃあちょっとずつしか離れてないか。
ーいえ、梶さんと松㟢くんのあいだがだいぶ離れてますよ。
一同:笑
ーそもそも梶さんが〈サンセサンセ〉をスタートしたのはどんな経緯なんですか?
梶:岡山のアパレル会社のとあるブランドのカタログ制作に携わっていて。ある日担当の人に「誰かいいデザイナーさんいませんかね?」って相談されたことがあるんです。だから「俺がやるよ」って言ったんです。やってもいいかなと思ったから。そういうのってあるじゃないですか。そしたらトントン拍子で話が進んでいまに至ります。
ーすごい思い切りですね。デザインに関してはどんなことを考えながらつくっていますか?
梶:自分が欲しいと思う服が世の中に足りてないと思ってたんですよ。それをデザインしている人は他にいないと思ったから、もしかしたらチャンスかなって。
ーブランドのオンラインショップには「私は毎日同じ服を着る」って書いてありますよね。
梶:簡単にいうとそういう服なんですけど、もうちょっと微妙なさじ加減があるといいなと思って。いまはお客さんがマーケットをつくるような風潮があるじゃないですか、でも、もっと意地悪な服があってもいいんじゃないかと思うんです。ぼくならいい意味での意地悪ができるんじゃないかと。
シュンサク:展示会で見させてもらって、ベーシックな服なんだけど、色であったり細かなディテールに梶さんらしさがあるというか。シルエットもそうですけど。とにかくクセがあるなっていう感じで。
松㟢:最初にオーダーしたのはVネックのセーターなんですけど、色がピンクで。こういうの欲しかったけど、どこにもなかったんですよ。いろんなブランドの展示会に行くけど、オーダーするのは〈サンセサンセ〉の服だけなんです。
ー〈サンセサンセ〉は女性のバイヤーさんにも好評なんですよね。レディースファッションに関しては、どんなことを考えていますか?
梶:男は服を選ぶのに理屈っぽいところがあるのに対して、女の子は感覚的にやっていると思うんです。その服を着る理由が自分の中にあるような感じ。
ー服のクオリティとか、ブランドのステータスとか、そういうところに着る理由を見つけるのではなく。
梶:そうそう、もっと感覚的な感じが女性はするんです。そういう服の選び方と〈サンセサンセ〉って相性がいいと思うんですよ。
人の温度を知るためにファッションは実用的。
梶:ちょっと話が脱線するんだけど、松㟢くんとシュンサクくんはどういう女の子が好きなの?
ーめちゃくちゃ脱線しますね…(笑)。
シュンサク:松㟢さん普段こういう話します?
松㟢:しないんだよね。俺はタイプとかあんまりなくて、どちかというといろんな観点から見て「この子だ!」って思うタイプ。
シュンサク:ぼくはファッションとかすごい好きなわけじゃないのに、なぜか似合っちゃってる子が好きです。なんか成立しちゃってるというか。
松㟢:俺はファッションでいうと、「いまは夏だから開襟の服着ちゃおう」みたいな人が好きです。
梶:なんだろ、それ。逆に叩かれそうだね(笑)。
一同:笑
松㟢:その時々の気分を尊重するというか。トレンドだからこの服を着るみたいなのはあまり好きじゃないですね。
梶:顔はすごい好みだけどファッションはちがうとか、その逆もあるでしょ? そういう部分で、自分の理想と現実のバランスについて考えたことある?
シュンサク:最近Youtuberにハマってて、八田えみりっていう人なんですけど。
その子がファッションを紹介するんです。全身ユニクロで揃えてみたみたいなのがあって、それがすごいよかったんです。
梶:この女の子は、ファッション系のYoutuberじゃないってことだよね。
シュンサク:ひとつのブランドの情報でつくっているのが新しいなと思って。それをファッションじゃない人がやっているところにもグッときたんですよ。
ーそれが似合っているからよかったとか?
シュンサク:そういうわけじゃないんです。
松㟢:それにトライする気持ちにグッときたの?
シュンサク:そういうわけでもないんです。想像通りだったからよかったんです。
梶:ふたりとも、自分の理想の女性像の中でファッションってどれくらい作用してるの?
シュンサク:ん~、ぼくは全然作用してないかもですね。
松㟢:ぼくはおしゃれな子がいいな〜。
梶:でもさ、そのオシャレって松㟢くんの好みとシンクロしないといけないワケでしょ。最先端の情報を毎日キャッチして、ファッションにこだわっていたとしても、松㟢くんの思うオシャレってそうじゃないでしょ?
松㟢:あ~、なるほど。でも、ズルいかもしれないですけど、ダブルスタンダードですね。服が好きすぎて、毎シーズン何十万円も服にお金をかける子はそれはそれで逆に好きかもしれないです。そこまでファッションに翻弄されちゃうというか。女性が家から出る前に、鏡の前で服を悩んでる姿が好きなんです。
梶:おっ! 松㟢くんノッてきたね! いいよ!
松㟢:ビッグシルエットの服着てるんだけど、その理由が“流行ってるから”っていうだけの人はあんまり好きじゃないですね。服に全然興味なくてもいいんですけど、その人なりの理由があったら素敵ですよね。メルカリで500円のキャミソール買って、「この水色かわいくない?♪」みたいな子も好きだし。それが似合ってるみたいな。
梶:じゃあシュンサクくんとは正反対なのかな?
シュンサク:じつはぼくもズルいんですけど…。
梶:おぉ! シュンサクくんもノッてきた(笑)!
松㟢:ダブルスタンダード使っちゃいなよ!
一同:笑
シュンサク:ぼくもおしゃれじゃない人はイヤなんです。シックな感じで、必要最低限のものを身にまとっている人は好きですね。
梶:いま話してもらったのは理想でしょ? でも現実的に考えて、そういう人にいきなり会えるわけではないじゃん。だから、自分の好みもそうだし、相手の趣味趣向もそうだけど、すこしずつアジャストするというか、許容していくことも大事だと思うんだけど、そういうのはどうしているの?
シュンサク:アジャストできないからぼくは彼女がいないんだと思います…。
松㟢:逆に梶さんに聞きたいんですけど、どの部分をアジャストしますか?
梶:大前提として俺はスタイリストだから、ファッションは気にしてる。ファッションって外面的なことだけど、その人の内的な部分のヒントが出てるんだよね。見た目で判断するのはよくないかもだけど、この人はちがうなっていうのはなんとなく感じるじゃん。そういう意味で服の役割ってすごく大きいと思ってて。
松㟢:たしかにそうかもしれませんね。一目惚れしたときに着てた服とか覚えてますもん。
梶:だから最初の時点でアジャストしやすいだろうっていう人に惹かれるんだと思う。アジャストっていうよりは、お互い許容がある人というかね。自然に寄り添っていくような感じ。
松㟢:慣れていくような感じですよね。
梶:そうそう。だから温度っていうのかな? そういうのを知るのにメイクとか服が大きく関わってくるよね。ファッションというよりも実用的なことで。社会の中での存在意義みたいなことがそこに表現されているわけだから。それって服にとってもよろこばしいことだと思うんだよね。そういう認識がもっと浸透していけば、消費文化も変わるような気がするし。
ーキャラクターを表すためのファッションということですね。
梶:そうそう、トレンドの中で服をつくっちゃうとどうしても没個性になっちゃうけど、〈サンセサンセ〉はそうしたくないんですよ。そこにまみれたくない。そういう意味で俺のつくる服は難易度が高いのかもしれないですね。自分で言うのはおこがましいけど。
松㟢くんはファッションを楽しんでいる。
梶:また話は変わるけど、ファッションの系統でいうとふたりはどういう服装が好みなの?
松㟢:ぼくはこれっていうのがないんです。なんでも着ちゃう子が好きだから。「ピザを食べるときはコーラ飲むよね♪」って子が好きで。
梶:おぉ~! やっぱ松㟢くんはキレてるね! その続き聞かしてよ!
松㟢:「唐揚げにはビールがやっぱり合うよね♪」みたいな。だから毎日バラバラでいいんですよ。
梶:その話でいくと、「ピザにはやっぱり牛乳だよね!」みたいな子が俺は気になっちゃうな。「なんで!?」ってなるじゃん。そこから好奇心が一気に湧いちゃうんだよね(笑)、わかる?
松㟢:わかりますけど…。
梶:でも、それがファッションだとつまらないの。服装で奇抜な組み合わせはしてほしくないというか。
シュンサク:ぼくはピザとか食べてても、ずっと水を飲んでる子が好きですね。
梶:シュンサクくんっぽいねぇ~(笑)!
一同:笑
松㟢:すごいですね。ピザでこんなに話が広がるんだ…。
シュンサク:このルックでいうと、この白シャツのスタイルが好きですね。こういうの着てても、実はドレスも似合いますみたいな子が。
梶:そういうところがスタイリストっぽいよね、シュンサクくんは。松㟢くんはどれも好きなんでしょ?
松㟢:そうですね。気分によって着る服が変わる子がいいんで。
梶:じゃあさ、今日は〈サンセサンセ〉だけど、明日はもっとイケイケな服でもいいってことでしょ? その日のファッションを謳歌してれば。
松㟢:そうです。またビックシルエットの話になりますけど、流行ってるから着るっていうのはあんまりおもしろくないなと思って。「テネット、いま話題みたいだし見ておく?」っていう子よりも、「時間が逆戻りしちゃうらしいよ? やばくない?♪」って見にいくほうが楽しいじゃないですか。いろいろ楽しんでいる子って素敵ですよね。
梶:松㟢くん、ファッション好きだねぇ~!
一同:笑
梶:松㟢くんは破滅型だね。いろんな服を平等に楽しんでいる子が好きってことは、松㟢くんへの気持ちも離れていきやすいかもしれないよ?
松㟢:たしかに、それはありえますね…。でも、テレビとか見ながら「那須川天心かっこいい~♪」って言ってる女の子に嫉妬したいです(笑)。「俺で大丈夫ですかね?」っていう恐れを感じたいというか。そうじゃないと、だらしなくなっちゃうんで。
梶:もし彼女と本当に知り合いだったらどうする?
松㟢:そうなるとだいぶ話は変わりますよね。でも、「ご飯行っていい?」ってちゃんと確認してほしいです。隠れてコソコソ会うのはやめてほしい。
梶:そうだよね。知り合いだったら、会うのはもう必然だよね。シュンサクくんはどうなの? 顔はすごい好みだけど、ファッションは全然タイプじゃない女の子から猛アプローチされたらどうする?
シュンサク:本当にニガテなファッションだったら身を引くかもしれないですね。ぼくはイケイケな服があまり好きじゃないので…。もしくは、一回ベーシックな服で来てほしいです。
松㟢:めんどくせぇ男だな(笑)! ドレスコード指定ってこと?
シュンサク:だって、ずっとニガテな服だったらしんどいですよ…。
梶:でもさ、逆にシュンサクくんがその女の子といることで変わっていくかもしれないよ? それが怖いのかな。臆病であるっていう捉え方もできるかもしれない。そのあたりどう?
シュンサク:自分の場合はまず体力がないんで…(苦笑)。でも、変わってしまう可能性もあるかもしれません。
飲み会とかですぐにサラダを取り分ける子は看板。
梶:じゃあさ、〈サンセサンセ〉を着る女の子ってどんな子だと思う?
松㟢:焼肉食べに行ったときに、焦げた肉を自分のほうへ寄せる女の子だと思います。
一同:笑
梶:なんだよ、それ(笑)!
松㟢:ぼくはそういうマインドの人が好きなんですけど、絶妙なポイントじゃないですかそれって。サラダが来た瞬間にすぐさま取り分け始めるのとかとは、ちょっと違うんですけど……。〈サンセサンセ〉もそういう絶妙なポイントがある服というか。「ポケットがこの位置にあるからいい」みたいなことだと思うんですよ。だから、〈サンセサンセ〉の服を着る子はそういう細かいところに気づけるタイプというか、人の痛みが分かる子(笑)。
一同:笑
梶:うんうん! いいね、松㟢くん! そうなんだよ、本当に絶妙なところなんだよ。要するに人の痛みが分かる服であり、人の痛みが分かる子が着る服ってことでしょ? やばいね。
松㟢:本当に絶妙なんですよ。想像しやすい服だけど、探すとないんです。だから買っちゃう。
梶:松㟢くん、プレスと営業やってよ!
一同:笑
梶:だけど俺もそう思ってつくってる。そうじゃないと売れないからね。買う理由がある服をつくって勝負したいから。でも、本当に素敵な女の子っていうのは、過剰すぎるような自己主張はしないと思うんだよね。なんというか、男がその人の本当の魅力に気づけるか、もしくは気づけないかみたいなところで。そういう意味で話をすると、俺は結婚してから自分の奥さんの魅力をどんどん再発見していったの。さらなる奥行きに気づいたというかさ。最初から「私はこういう人間です」みたいな看板が立ってなかったからさ。
松㟢:あっ、それいいですよね! 看板が立ってないって大事かも。飲み会とかですぐにサラダを取り分けるっていうのは看板立てちゃってますよね!
梶:うちの奥さんは看板が立ってなかったんだよね。もちろん魅力的だから付き合いたいと思ったし結婚したんだけど、一緒にいればいるほど奥のほうにすごくいい看板みつけちゃったんだよね。
松㟢:その看板の光をうっすらキャッチしてたのかもですよね。
梶:そうかもしれない。だけど、若いとそれを見落とすことはあるじゃん。そういう意味で〈サンセサンセ〉は看板がない服かもしれない。これでまとまりました(笑)?
ーまとまったような気がします…(笑)。
梶:シュンサクくんはいまの話わかった?
シュンサク:全然わからなかったです…(苦笑)。
一同:笑
松㟢:さっきシュンサクがパンツのバックポケットに文庫本を入れてたんです。これも一瞬「看板かな?」って思ったんですけど、本当に読むから自然に入れてたんでしょ?
シュンサク:そうです。暇なときに読むために。
松㟢:大学生のときに俺は文庫本をポケットに入れちゃってたんです。たぶんそれは看板なんですよ。でも、それを通学の電車の中とかで読んでたら看板じゃなくなるというか。
梶:そうそう。要するに入れちゃってるのはデザインなわけでしょ。シュンサクくんの場合はデザインじゃない。その違いを見分けるのが難しいんだよね。
松㟢:俺もブルーボトルとか行かないで、「コンビニのコーヒーでよくない?」って言ってる自分は看板な気がします。だから最近リハビリしてて。
梶:どこに行ってるの?
松㟢:ビルズに行ってます。
一同:笑
梶:松㟢くんさ、半年後〈サンセサンセ〉着てないでしょ? まぁ、それはしょうがないか(笑)。デリバリー届いたときには気分変わってて、ソッコーでメルカリに出品されてたりしてね。自分で「松㟢着」って書いたりして(笑)。
一同:笑
ー最後に、これまでの話を踏まえた上で、それぞれ自分の好きな有名人に〈サンセサンセ〉のどの服を着てほしいか聞きたいです。
シュンサク:悩みますね…。
松㟢:どれがいいかなぁ。
ーじっくり考えていただいて大丈夫です。
松㟢:いや、俺はもう戸田恵梨香さんっていうのは決まってるんです。
一同:笑
松㟢:あとは服だけ。シュンサクは誰?
シュンサク:蒼井 優さんです。
梶:ブレないねぇ! お前ら最高だな!
シュンサク:蒼井 優さんにコレ着てほしいです。
梶&松㟢:おぉ~!
シュンサク:これ着て、公園で水飲んでてほしいです。
梶:松㟢くんは決まった?
松㟢:戸田恵梨香さんはコレかな。シチュエーションとか関係なく、普段着としてこのパンツを穿いていてほしい。
梶:そこはなんかこじんまりしてていいね。
ー最後に梶さん、いかがでしょうか?
梶:俺はやっぱり、このセットアップを和田アキ子に着てほしい。
一同:笑
梶:これ着て紅白出てほしいよね。
松㟢:絶対に似合う。着こなせますね(笑)。