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PHEENYの秋元舞子が語る、古着への愛とリスペクト。
PHEENYの秋元舞子が語る、古着への愛とリスペクト。

One and only.

PHEENYの秋元舞子が語る、古着への愛とリスペクト。

2018.10.25

フィーニー(PHEENY)〉の秋元舞子さんが
筋金入りの古着好きであることは、ファッションシーンでは有名なお話。
ブランドのデザイナーとしても、いち個人としても古着を愛してやまない彼女が、
自身のスタイルを語る上で欠かせない3つのアイテムとは?
そして、古着との出会いと遍歴、〈フィーニー〉に与える影響まで、
秋元さんを取り巻く古着の世界に触れてきました。

Photo_Haruki Matsui

Masterpiece for Maiko Akimoto

マイスタイルに欠かせない、
3つの古着。

01_THERMAL TOPS

ラウンドした裾、が絶対条件。

持っているサーマルはすべてハニカムのタイプ。なぜかワッフルよりハニカムの方が好きなんですよね。あと外せないポイントは、裾がラウンドしていること。裾の形ひとつで着たときのニュアンスが全然違うんです。一枚で着てもいいですし、短めのアウターとレイヤードしてもいいですし。〈フィーニー〉でサーマルをつくるときも採用しています。そういえば、以前仕事で約800枚のサーマルのなかから探したんですけど、ラウンドしているものは本当に少なかったんです!

02_GRAY SWEATSHIRT

スウェット第1号は、いまだに現役。

スウェットはグレー×無地が自分の定番。やっぱり古いものがいいって思っちゃうから、ガゼット付きが多いですね。無地で両V(※ガゼットが前後両方の襟元についていること)だったらなお良し! と言っても現行の〈ヘインズ〉も普通に着るので、選ぶ基準はサイジングと、テロッとした生地感。タイトなものはパンツにタックインしてきれい目に、ルーズでダメージが入っているものはワンピースのような女性らしいアイテムと合わせるなど、キャラクターごとに使い分けています。ちなみに、広げて撮影したものは自分が初めて買ったヴィンテージスウェットで、いまだに愛用中。縮んだり伸びたりしていて、パタンナー目線でも「最初はどんなパターンだったんだろう?」といろいろ想像してしまいます。

03_ALL IN ONE

サイズが合えば資料として買う!

最近集め始めたのが、オールインワン。普段は上身頃は腰に巻きつつ、寒くなったらそのまま着られるからアウターいらずで便利ですよね(笑)。とにかく小さいサイズが少ないので、合うものが見つかれば買うようにしています。下北沢の「VELVET」のオーナー高相さんが私にとってのつなぎ師匠で、彼が「上からモヘアニット着るとかっこいいよ」って言っていたので、冬はそうしようかなと! ちなみに、右から2番目のつなぎは実際に〈フィーニー〉の2019春夏の製品にサンプルとして使用しています。ミルスペックをオリジナルで作成したり、細部までこだわって作りました。

Talking about vintage wear

秋元舞子の古着遍歴。

―初めて古着を買ったのはいつ頃ですか?
秋元舞子(以下秋元):たしか15歳くらいですね。
―ご出身はどちらですか? 地元に古着屋が多かったとか?
秋元:出身は埼玉です。私の場合はフリーマーケットにハマったのがきっかけ。新宿中央公園とか西武ドームのフリマで掘り出し物を見つけてくるのが楽しかったのを覚えています。週末は原宿や渋谷の古着屋さんをまわったり。
―高校生のころから古着にハマっていったわけですね。
秋元:そうですね。そこが自分のなかでの第一次古着ブームというか。ちょうど時代的にも古着が流行って、雑誌でもよく古着屋特集が組まれていたんです。そこにあるマップを見ながら「デプト」や「G2?」などに行っていました。
―その頃に買った古着で思い出深いものはありますか?
秋元:高校生のときに買ったスイス軍のボーダーロンT。それは薄い生地感が自分にとっては最高で。穴が開いちゃってるんですけど、愛着が湧いていまも着てますね。
―高校卒業後は文化服装学院に入られますよね? 在学中は一旦古着から離れることもありましたか?
秋元:ありませんでした。周りの人はデザイナーズブランドを好んで着ていましたけど、私はあまり興味がなくて。でも〈グリーン(green)〉は大好きでした。デザインされた服が多いなかで、あそこだけは古着を再構築することで新しいものを生み出していたんです。そういうアプローチがあることを教えてくれたのが〈グリーン〉でした。
―〈グリーン〉といえばミリタリーアイテムが真っ先に思い浮かびます。当時から秋元さんもミリタリーには詳しかったんですか?
秋元:当時はまだ全然知識がなくて、古着との向き合い方が変わったのは「ミスターハリウッド」に就職してからですね。
―「ミスターハリウッド」だと周りは男性が多いでしょうし、古着の見方も女性とは異なりそうです。
秋元:全然違いました。タグひとつで年代が識別できるというのもそれまで知りませんでしたし、古着を年代で見るという考え方もあそこで学びました。(〈Nハリウッド〉デザイナーの)尾花さんがアメリカで買い付けてきた資料用の古着を元にパターンを引いていて、「70年代のシャツの雰囲気にしたいから、シャツの襟は縦長でポイントも尖らせて」という要領で指示されていたので、それがとても勉強になったんです。
―でも古着の歴史を学ぶのって大変ですよね。
秋元:難しいですね…。正直私はいまも年代とか細かいうんちくはあまり気にしていないんです。たしかに古いものにグッとくるんですけど、それはあくまでも、長い年月誰かの手元にあったものが、巡り巡って私のところにやって来たというストーリーによるもので。
―それこそ、過去にインタビューさせていただいた「デプト」のeriさんも「古着的価値には全然興味がない」と言っていました。
秋元:そうなんですね! 安心します(笑)。古着を一緒に買いに行くメンバーのなかに古着に詳しい人がいて、その人から「これは何年代のどこどこ軍の…」って教えてもらったり。お店の人に聞くこともあるんですけど、すべては自分がそのアイテムにより愛着を持てるようになるための情報でしかないんです。前の持ち主のことを想像するのって楽しいじゃないですか?
―たしかに。でも、古ければ古いほど、着込めば着込むほど服の状態も悪くなりますよね。それは気になりませんか?
秋元:むしろ、ダメージがすっごい大好物で。特にスウェットは、袖口がボロボロで穴が開いてたり、シミがついてても全く気になりません。それもデザインのひとつというか。アメリカの強いタンブラーで回したからこんなに縮んだのかなって考えると、アメリカへの強い憧れもあって「うぉーーー!」ってなります(笑)
―好きなアイテムを挙げるとするならば、今回撮影させていただいたサーマルやスウェットのようなスタンダードなアイテムが多いですか?
秋元:いわゆるアメリカのカジュアルウェアのTシャツ、サーマル、スウェット、デニムと、あとは軍モノ。デザインが入った服は買っても結局着なくなることが多いので、日常で着られるものを選んでしまいます。だから、サーマルにしてもスウェットにしても、同じようなアイテムをついつい買っちゃうんですよ。古着に対しての財布の紐は緩いですね(笑)
―ファッション以外のアメリカンカルチャーから影響を受けたことは?
秋元:〈リーバイス〉の517と606はストロークスの影響で穿くようになりましたね。あとは、ボーカルのジュリアンがゴーストバスターズのTシャツを着ていて同じものが買ったことも。ほかには、エル・ファニングが持つ世界観がとても好きで、『20th Century Women』で彼女が黄色いTシャツを着てるのを見て、黄色いTシャツを買いに走ったこともありました(笑)
―ご自身で着る古着を買うときに、必ずチェックするポイントはどこですか?
秋元:サイズ感。タイトでもルーズでもいいんですけど、自分の身体とスタイルに馴染むもので、「これは明日着れる!」って感じたら買うようにしています。
―着こなしにおいて意識しているところは?
秋元:カジュアルなアメリカ古着が好き過ぎて、全身それになっちゃうんですよ。うっかりするとハマちゃんみたいな(笑)。だから、足元だけはちゃんとした靴を合わせるようにしています。靴さえきれいにしていれば、あえてボロボロの古着を着ているんですよっていうボーダーを自分のなかで引けるので。今日の撮影で履いていたのも、〈セリーヌ〉や〈マノロブラニク〉のシューズです。
―よく足を運ぶ古着屋ってありますか?
秋元:幡ヶ谷の「PALETOWN」と下北沢の「film」が好きですね。どちらも、希少性とかを前面に出すのではなく、単純に雰囲気がいいもの、すぐに着られるものをセレクトしているというスタンスに親近感を感じます。あと、最近いちばんのお気に入りは代々木上原の「Swallow Equipments」。ヨーロッパの軍物なども豊富で、スタイリングもとても素敵なんです。でも最近は、都内の古着屋で買うことが少なくなってきました。
―遠方に行かれるということですか?
秋元:千葉や埼玉にある古着の倉庫や、リサイクルショップに近い古着屋さんに行くのにハマっています。休みの日にドライブ感覚で友達と行って、銭湯に入って帰ってくるのが最近の週末の楽しみ(笑)。体育館みたいな大きさで、全部見るのにすごく時間がかかります。でも、何かしら掘り出し物が見つかります。
―あまり日本の古着屋っぽくないですね。
秋元:はい、発掘する系なんです。あと、マスクする系(笑)
―最近は古着をECで売るお店も増えてきましたよね。フイナムも「フイナムズ」という古着を販売するキュレーションサイトをやっていますし。秋元さんもECは利用されますか?
秋元:海外のECはよく利用しますよ。日本で高いものでも、海外だと意外と安かったりするから、好きなお店は常にチェックしています。
―秋元さんから見て、古着を素敵に着こなしている方って誰でしょう?
秋元:オールインワンのお話で名前を挙げた「VELVET」の高相さんは、世界観がしっかりしていてかっこいいです。あまり周りの目を気にしていないし、好きなものを好きなように着ているのもすごい。あとは「ペールタウン」の(谷川)浩志くん。フィッシングベストにキャップを被ってて、本当にアメリカのおじさんの日常みたいなんですよ。
―女性では?
秋元:お会いしたことはないんですけど、双子の小田貴子さんと寛子さん。流行に流されず、自分たちが好きな古着をめちゃくちゃ楽しんで着ているなという印象。しかも、身長が高いから、難しいアイテムの着こなせちゃうという! うらやましいです。
―〈フィーニー〉と古着の関係についても聞かせてください。
秋元:ブランドが始まったときから、〈フィーニー〉のベースには常に古着がありますね。そのシーズンに自分が頻繁に着ていた古着をサンプルに使って製品にすることもあります。
―この秋冬シーズンにそうやって形になったアイテムはありますか?
秋元:サーマルのコーディネートで合わせていたパンツですね。先程お話したように606がすごい好きなんですけど、冬は寒いからなかなか穿けなくて、以前作ったレッグウォーマーを上から合わせていたんです。そのスタイリングが気に入って製品にしました。
―多くのデザイナーが古着をサンプルにして服作りを行っていますが、そのなかで〈フィーニー〉らしさを表現するために心がけていることは?
秋元:私にとって古着は完璧すぎる存在で、どれだけそれっぽい製品を作っても、本物の経年変化が生む佇まいには足元にも及ばないんです。それに、そこまで完璧なものを消費者が求めているかというと、それもまた別の話で。〈フィーニー〉においては、古着からインスピレーションをもらいつつ、素材を工夫することで着心地をよくしたり、本来はないディテールを追加して現代的にアップデートすることで、古着を買わない方にも手に取ってもらいやすい服を作りたいですね。だから、噓くさくなるような加工はせずに、お客様の手に渡ってから古着のように育てていただければうれしいです。

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