憂さ晴らしは表現すること。制限があるからこそ伝えられる純度の高いメッセージ。

ー今回のストーリーは、自粛期間中に撮影したんですよね？

小林：はい。今回の撮影チームですが実はフイナムの記事で一度撮影した人たちなんです。現場にいたひと全員といい空気感でやれて、またやろう！ って言ってたときにロックダウンになっちゃって。仕事もできないしずっと家にいなきゃいけない、仕方ない状況だったとはいえ何もしないままじっとしてるのも違うような。何か表現することで憂さ晴らしをしたいって思ったとき、僕たちにとってのそれはやっぱり撮影だったんですよね。なのであのなかで安全にできることのなかで考え、“STAY HOME”をテーマにしたストーリーを僕の改装中の家で撮影しました。

ースタジオかと思っていましたが、ご自宅だったんですね！

小林：そうなんです。やっぱり今回の期間はインプットする時間が長くて、毎日映画を観たり雑誌を読んだり吸収する時間が多かったのに対してアウトプットすることがなくて、それは僕にとっては不健全なことだったんですよ。なのであのなかでできる表現をするしかなかったんです。それにみんなが賛同してくれてできたのがこのストーリーで。今回は、1900年代初頭の頃の作業着や仕事着としてエプロンをしていた強い女性をテーマに表現しました。しかも僕以外のスタッフが全員女性だったという偶然もあり…。よーく見るとすべてのスタイリングにエプロンを取り入れているんですよ。

黄瀬：それぞれのスタイリングごとに違ったキャラクターが宿っていますよね。今回の撮影で改めてエプロンにそういう強い女性の象徴でもあることに気付かされました。“お母さん”のものだとイメージしてたから、“強さ”を秘めたものであることを忘れていました（笑）。しかも現物を見たら、アイテムとしてもかわいいんですよ。

ースカートのようなものもあるんですね。

黄瀬：そうなんですよ！ 新さんが思い描いていた頃の女性像っていまのコロナでぎゅーんと気持ちが沈んでいたときに必要なマインドだったと思うんです。家ってダラダラしがちだけど、ものとしてもオシャレだしこれを巻いたらやる気スイッチが入るとか、ファッションにしてしまえば、結構たのしめるじゃん？ って撮影しながら思えてきました。

小林：ワンショルダーのエプロンもあるんですよ。ほぼワンピースのように着れるんですが、かわいいですよね。昔からエプロンが好きで古着を中心にいいものを見つけたら集めるようにしてるんです。

黄瀬：色鮮やかなエプロンを着けてたら、気分も上がるし料理もカラフルなものを作りそうですよね？

ーそういう意味で、例えばストライプのエプロンを着けてる子はエスニック系の料理を作ってそうですよね。タジン鍋を使っていそうな…。

小林：（笑）。それなら、白いスタイリングはダイナーにいそうな子にも見えてきました。

黄瀬：チェックのスタイリングはモンブランを食べてそうですね（笑）。

ーフイナムの記事からの流れと伺いましたが、モデルの花梨さんを引き続き起用したのはなぜですか？

小林：美大に通ってるそうで、最近彼女がコラージュの作品を作り始めたんですよ。それを知ってたからまた会ってみたかったんです。作品もチェックしてるんですけど、かなり素敵なんですよ。一目でハイセンスなのは感じ取れますよね。

黄瀬：それこそアートに対する造詣が深いから、これだけ各スタイリングに対して別のキャラクターの部分を出せたのかなとも思いますしね。

小林：コラージュに使う素材ひとつとってもストーリー性があるし、その作品に向き合う考え方は僕も共感できるんですよ。すごく魅力的な子なので、今度ぜひガールフイナムで取材してくださいよ！