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新生ディレクター 四谷奈々可のクリエイター訪問記。vol.02 “作るひと” 甲賀加純さん(KOWGAデザイナー)
新生ディレクター 四谷奈々可のクリエイター訪問記。vol.02 “作るひと” 甲賀加純さん(KOWGAデザイナー)

Talking about FASHION, etc...

新生ディレクター 四谷奈々可の
クリエイター訪問記。
vol.02 “作るひと” 甲賀加純さん(KOWGAデザイナー)

2024.04.25 / TIE UP

若干25歳にして、今春デビューするブランド〈アティセッション(ATTISESSION)〉のディレクターを務める四谷奈々可さん。
学生時代から服に向き合い続けてきた彼女が、ブランド立ち上げにあたり、“いま”会いたい人とは。
同世代や先輩クリエイターから刺激を受けるべく始まった全3回にわたってお届けする連載。
第2回の対談相手は、四谷さんの2歳上の先輩であり、同じ25歳でブランドを立ち上げた〈コウガ(KOWGA)〉のデザイナー甲賀加純さん。
同世代のデザイナーならではの悩みやカタルシスについて語ってくれました。

Photo_Kai Naito
Text_Shun Koda

四谷さんがディレクターを務める
〈アティセッション〉のルックや詳細は
こちらから!

GUEST 甲賀 加純

1996年静岡県生まれ。2021年秋冬、ストリートスタイルを軸に自身が思い描く新しい女性像を打ち出す〈コウガ〉をスタート。2023年8月には韓国でポップアップを開催するなど、国内外問わず注目を集めている。
Instagram:@kowga_

HOST 四谷 奈々可

1998年7月7日生まれ、石川県出身。文化服装学院ファッション流通専攻科に入学。卒業後、20年4月に「ユナイテッドアローズ」に新卒入社し、セールスパーソンとしての経験を積んだ後、22年春夏から「ビューティ&ユース ユナイテッドアローズ」次世代ラインの企画を掛け持つ。24年春から〈アティセッション〉のディレクターを務める。
Instagram:@7k0512

25歳からスタートした
ファッションデザイナーの仕事。

ー甲賀さんの行きつけである下北沢のバー、「リトルソウル」に訪れた今回。マスターのおすすめ、マスカットスプモーニで乾杯しつつ、まずは今日のスタイリングの話から。
甲賀:奈々ちゃんは、私がカモ柄のジャンプスーツとか着てきそうって思ってるかなと思って、あえて綺麗めにシャツを着てオシャレしてきました。ミリタリー女って思われないように、奈々ちゃんのイメージに合わせてきた(笑)

四谷:そんな風に思わないですよ(笑)。私は加純さんがデニムをよく穿いてる印象だったので、デニムにしました。トップスは自分らしい感じで合わせてます。

甲賀:トップスは〈アティセッション(ATTISESSION)〉?

四谷:そうです。

甲賀:めっちゃかわいい。
ー文化服装学院の先輩・後輩という2人は、2歳差であるため学生時代の面識はなかったそうですが、“25歳でブランドを立ち上げた”という共通点が。〈コウガ〉を立ち上げる当時の心境はどうだったのでしょう。
甲賀:〈マジック スティック(MAGIC STICK)〉でレディースの企画をさせてもらっていて、服作るのって楽しいなと思いつつ、25歳になったので今後どうしようって考え始めていて。社長から「サポートするからウチでブランドをやらないか?」って誘ってもらえたのが最初。

四谷:そうだったんですね。やるかどうか迷いはなかったですか?

甲賀:全然なかった。そんなチャンスなんて滅多にないだろうし、一番やりたいと思える仕事だったから。

四谷:25歳で自分のブランドを始めるプレッシャーって感じなかったですか?

甲賀:あんまり感じなかったかも。〈ティー(TTTMSW)〉の玉ちゃんとか十代の頃からブランドやってたし、同世代の女性でブランドやってる子ってほんとに少なかったから、メンズに負けないように頑張ろうみたいな心境だったと思う。

四谷:そうだったんですね。加純さんって学生の頃からあまりスタイル変わってないのがかっこいいなって思ってました。

甲賀:ほんと? 嬉しい。

四谷:2つ上の先輩なので学校の在籍期間は被ってなかったんですけど、共通の知人もいたから存在は知っていて。当時の文化(服装学院)ではストリートが流行っていて、その走りが加純さんだった印象です。

甲賀:私が入学した頃はケンドリック・ラマーとかが流行っていたもんね。高校生くらいからマインドは変わらないかも。メンズ服を着て、だけど女の子っぽいモチーフとかは好きで取り入れたりするし。

四谷:そのバッグなんかまさにですよね。ミリタリー要素とかわいいハート形の掛け合わせ。

甲賀:そう、ミリタリーのタクティカルポーチをハート型にして。〈コウガ(KOWGA)〉のコンセプトもそうなんだけど、スポーツとかミリタリーとかの要素はずっと大切にしてるかな。奈々ちゃんって、このデザイナーから影響を受けたみたいなのある?

四谷:ファッションに目覚めたきっかけは、〈ヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)〉でした。加純さんは誰ですか?

甲賀:わたしはフィービー・ファイロ。フィービーの〈セリーヌ(CELINE)〉時代がちょうど文化に通ってた頃で、服もめっちゃ買ってたし、インタビューとか読んでマインドも尊敬してる。

四谷:どんなこと書いてたんですか?

甲賀:うろ覚えだけど、フィービーも「男性的な要素の中に、自分の女性像を投影させてる」みたいなことを話してて、すごく共感できるなって思った。
四谷:今の〈コウガ〉にも通じるところがありますね。それで言うと私はミウッチャ・プラダかな。現実味のあるワードローブが軸にありながら、女性らしいときめきみたいなのを感じるんですよね。作る洋服だけじゃなくて、カルチャーとか、色んな方面に対する旺盛な好奇心とかも素敵だなって思います。
ー互いのルーツを知ることでより理解が深まってきた様子。四谷さんから先輩の甲賀さんへ、デザイナーならではの質問を投げかけます。
四谷:こないだの展示会で感じたことなんですけど、ストリートを軸に女性らしさのエッセンスがミックスする、っていうコンセプトを何シーズンもブレずにやってるのはすごいなと思って。それって難しいことだから、改めてどういうことを意識してるのか、聞いてみたかったです。

甲賀:そんな風に思ってくれたんだ嬉しい!

四谷:思いますよ! ジャケットやスカートのサイジングだったり、メンズ要素があるけど、フリルだったり、女の子がキュンってする要素があって、そういうところが加純さんらしいなって。

甲賀:100点の感想(笑)! 意識してるのは、コンセプトがブレないように、いつも見返すようにしてることかな。

四谷:やっぱりそういうのは大事ですよね。

甲賀:あとは自分がいいなって思ったら、信じてブレずにやる。

四谷:そっかぁ。デザインが煮詰まったらどうしてるんですか?
甲賀:出ない時は悩んでも仕方がないと思うから、雑誌とかインスタとか見て、自分がいいなって思うものを見るようにするかな。とりあえず、色々インプットしてから、あとでちゃんと悩む。逆にどうしてるの?

四谷:私も一旦、手を止めて考えるのをやめます。それか文化の図書館に行きます。

甲賀:図書館懐かしい! 図書館で何するの?

四谷:雑誌読みますね、刺激を受けることもありますし、リフレッシュにもなるので。

甲賀:そっか、一回距離取ってみるのは大事だよね。
ーファッションデザイナーは華々しい仕事のように思えて、苦労の連続。服を作る側の難しさ、そして、それを乗り越えた先にある喜びはどんな瞬間に感じるのでしょう。
甲賀:サンプル作って、展示会を終えたと思ったらすぐ次のシーズンのことを考え出さなきゃいけないから、毎回サイクルが早いのが大変だなって思うかな。それも覚悟の上でブランドを始めたから、平気なんだけど、そこかな。

四谷:今ローンチのタイミングで、仕入れもやって、イベントもあって…って考え事が多くて、それが楽しさでもあるんですけど、迷うことが多いのが難しさですね。

甲賀:どこまでやったら自分が納得できるか、みたいな?

四谷:そうですね、迷宮入りみたいな。

甲賀:そういう時も図書館行くの?
四谷:はい(笑)。逆に嬉しくなる瞬間ってどんな時ですか?

甲賀:上がってきたサンプルを、展示会で初めていろんな人が試着してくれている姿を見れるのがやっぱり嬉しい。

四谷:嬉しいですよね。あと街中で着てる人を見た時、嬉しくないですか? 本当に気に入ってくれて買ってくれたんだって、不思議な気持ちになります。

甲賀:嬉しいね。こないだ群馬のスキー場に行った時に私の作ったレザーを着てるオシャレな方がいて、すごく嬉しくて声かけたかったんだったけど、私が上下スウェットでアイス食べてたから流石に声かけられなかった(笑)。

四谷:そういう時は遠目から見ちゃいますね(笑)。でも群馬で自分の作った服を見るって嬉しいですよね。

甲賀:そうだね、自分のいる場所から遠くてもちゃんと着てくれてる人がいるんだってじんわりする。

作ろうとしても作れない
アイデアの源泉。

ー雑誌や映画など、さまざまなモノからインスピレーションを得るなか、源泉とも言えるのがヴィンテージ。そんな2人が偏愛するヴィンテージアイテムを持ってきてもらった。
甲賀:まずはベスト。これは最初からポケットが取れた状態で売っていて、珍しいなって買った。前も後ろもポケットがなくて、色が褪せてるのもいいし。これはドレスとかに合わせたいなって思ってる。

四谷:いいですね! なんでポケットを取ったんだろう。

甲賀:そういうのも考えるのも楽しいし、服作るときのアイデアソースにもなるし。これは大阪の「コピーアートコレクティブ(CopyArt Collective)」で買った。

四谷:このTシャツも加純さんっぽくてかわいい!
甲賀:めっちゃかわいいよね。ジャマイカの国旗をタイダイ染めで表現していて、今自分の中でジャマイカがムードだから、見つけた瞬間、即買いだった。

四谷:このくらいのちょっと大きめのサイズってどう着ます? 難しくないですか?

甲賀:普通にインせず着ちゃうかな。これでヘビーオンスだと難しいかもだけど、生地もテロテロで薄いから着やすいと思う。
甲賀:これも大阪の「ピグスティ(Pigsty)」で買ったフットボールTシャツ。大阪って古着店もめっちゃ多いし、しかも安い。これはプリントがクラックした感じが気に入って、カラーリングも好き。こういうヴィンテージのスポーツアイテムは好きでよく集めてるかな。奈々ちゃんのは?
四谷:〈オーシャンパシフィック(Ocean Pacific)〉のTシャツで、旧タグなんです。

甲賀:かわいい。フェードしてる感じもいいね!

四谷:裏もプリントが大きくてかわいくて。着丈が短くて、身幅広めなので着やすいんです。去年の夏に買ってよく着てました。去年はシンプルにデニムで合わせることが多かったんですけど、ちょうどお尻が隠れるくらいの丈感だったのでバイカーパンツにサンダルを合わせたり。

甲賀:似合いそう! もうひとつは?

四谷:次は〈ナイキ(NIKE)〉のスウェットです。最近、私もスポーツアイテムが好きで買うことが多くなりました。結構ジャストサイズなのが気に入ってます。
甲賀:それもかわいい。よく見るとリブの部分がピンクがかってるけど色抜けてるの?

四谷:前の持ち主が赤い服と一緒に洗って、色が移ったのかなって思ってます。

甲賀:古着ってそういうところが魅力だよね、自分でやっちゃったらショックだけど。古着からアイデアもらったりもする?

四谷:ディテールはそうですね。ヴィンテージを忠実に再現したりはしないですけど、機能的な部分を取り入れて、理想的なデザインに調整していくって感じですね。サイズ感も参考になります。

甲賀:ヴィンテージって、こんなディテールがあったんだって新しい発見があったりするよね。新品には絶対にないであろう色合いとか、古着ならではのエイジングとか、前の持ち主がリメイクしたアンバランスなサイズ感だったり。そういうのは作ろうとしてもなかなか作れないから、それを古着の中から探すのが好きかな。

ブランド名、ロゴ、SNSに込めた思い。

ーベクトルは異なっていても、深い根っこの部分は共通している〈コウガ〉と〈アティセッション〉。ブランド名やロゴにはこんな思いが込められているそう。
甲賀:私自身の名前でもあるんですけど、作っている洋服はメンズ的な要素が大きいのですが、そのなかでもエッセンスとして女性的な上品さは大事にしていきたいと思い、「気高く」と「雅な」の“高雅”ともかけています。

四谷:〈アティセッション〉は姿勢のアティテュードと、執念みたいな意味を持つオブセッションの造語で。コンセプトを決める時に、いくつか単語を並べてたんです。ベーシックとか、クラシックとか。その中のひとつに、“カウンターアティテュード”っていう単語があって。それはアンダーグランドカルチャーみたいな意味合いもあって、ベーシックな中にも少しツイストを加えたいなって想いがあり、このブランド名にしました。

甲賀:しっかり考えられてる。
四谷:あと、〈カルバン・クライン(Calvin Klein)〉の香水に「オブセッション」っていうのがあって、それが90年代にケイト・モスの広告で再燃するんですけど、そのビジュアルを撮影したのが、ケイト・モスの当時の恋人のマリオ・ソレンティで、2人ともまだ10代の頃だったんです。若くして大役を任されるっていうところが、今の自分に求められていることと近いなって思ったっていうのもあります。

甲賀:色んな要素が絡んでるんだね。

四谷:そうですね。私〈コウガ〉のロゴも好きなんです。
甲賀:これは高校生の時から大好きだった、Big-o(オオスミタケシさん)につくっていただいて。もう亡くなってしまったんだけど、この業界を紹介してくれたのもオオスミさんで。「長く愛されるクラシックな要素を大事に作りました」って言ってくださって、このロゴは変えずに長くブランドを頑張っていきたいなって思ってる。

四谷:素敵なエピソード。いつ見ても洗練されてるデザインだなって思います。

甲賀:奈々ちゃんのロゴは?
四谷:私のロゴは、「ジャックポット(jackpot)」で働いてる和田佑司くんにお願いしました。〈アティセッション〉にはデニムやシンプルなカットソーといったベーシックなアイテムもあるし、今私が着てるようなアシンメトリーのトップスもある。枠にハマらないスタイルと、平行じゃなく波打っているようなロゴのデザインが一致していてすごく気に入ってますね。

甲賀:バランス感がいいよね。

四谷:かわいいですよね。女の子の準備の様子をイメージして、ネイル行ったり、メイクしたり、男性よりも準備に時間がかかる様子と高揚感っていうのを表現してくれたみたいで、その日常的なイメージと私たちが表現したいワードローブが紐づいているところもお気に入りです。
ー作る洋服やロゴと同じように、SNSもまた世界観を表現をする上で欠かせないツールのひとつ。それぞれのインスタグラムの仕掛けを知ってから見てると、視点が変わって面白い。
四谷:インスタとかたくさん情報が溢れている中で目に止まるようなビジュアルにはしたいなと思っていて、ムード感は大切にしてます。デニムっていうのはわかるけど、ディテールがどうなってるかまではそんなに分からないみたいな。

甲賀:私の場合も近くて、ムードを伝えることを大切にしてるかな。〈コウガ〉はレディースブランドなんだけど、メンズ服と並ぶことも多いから、 メンズに着てもらったりして、提案したいイメージを伝えるツールっていう使い方かな。 ブランドの服を見せるっていうよりは、表現したい女性像が伝わるようにキャスティングしたりもしてるし。

四谷:〈コウガ〉の目指す女性像ってどんな人なんですか?
甲賀:女性像か。ここ3シーズンくらいお願いしているモデルが、バレリーナのケネディって子なんだけど、その子のライフスタイルとかマインドは〈コウガ〉の目指すビジョンにすごく一致してるなって思う。バレリーナを目指して海外へ行ったりしてるけど、スナックでバイトしたりギャップがあったりして(笑)。

四谷:ギャップかぁ。分かるかもしれないです。

甲賀:奈々ちゃんは?

四谷:もともと90年代のファッションが好きっていうのが根本にあって、 ケイト・モスとキャロリン・ベセットがそれに近いかもですね。ブランドのコンセプトにも可憐さと自立心みたいなタグラインを入れていて、愛嬌はあるけど、自分の好きなものを理解している強さを持っている女性を表現したいなと思っています。

甲賀:言葉にするとアイデンティティのある女性かな。
四谷:表面的じゃなくて、内面的な強さってところは、〈コウガ〉と共通してるのかなって思いました。

甲賀:確かに確かに。

裏原を超えるムーブメントを。

ーフィロソフィーが似ているように感じる〈コウガ〉と〈アティセッション〉。もしコラボレーションするなら、どんなアイテムを作る?
甲賀:〈アティセッション〉は奈々ちゃんらしい人物像が表れていると思っていて、キュートだけど、ネイルもちゃんとして凛としているというか。だから、スーツ地のワンピースとか、洗練されたアイテムが作れたら面白そう。

四谷:素敵ですね。

甲賀:そこにはスポーツとかの要素は足さずにキレイな服を作って、それに〈コウガ〉の服を合わせても違和感がないようなワンピースを作りたいですね。

四谷:お互いワードローブを作るっていうブランドだと思うんですけど、少し背伸びするようなハイラインなアイテムをこの世代で作るっていうのは面白そうですよね。同世代に「欲しいけど、なかったな」って思ってもらえる洋服を作りたいです。
ーコラボレーションにも期待しつつ、最後に同世代ならではの見据える展望を伺った。
甲賀:裏原みたいな東京ならではのファッションカルチャーを自分たちの世代で発信してシーンを盛り上げたいなって思いますね。

四谷:裏原のムード感って私も好きなんですけど、どうしてもメンズ寄りだと思うから女性でそういうシーンを作っていけたら嬉しいですね。

甲賀:そうだね、頑張んなきゃ。

TODAY’S STYLING

LEFT_
Kasumi Kouga

ジャケット:VINTAGE
シャツ:KOWGA
パンツ:LEVI’S® × ERL
シューズ:Maison Margiela

RIGHT_
Nanaka Yotsuya

ジャケット:VINTAGE
トップス、パンツ:ATTISESSION
シューズ:UNITED ARROWS