The Next Episode
#01 TODAYFUL / 吉田怜香
自分に嘘をつかずになりたい姿をイメージする。
ファッションの世界は華やかに見えますが、そこで成功するには才能と同じくらいタフさも必要。
光るセンスで周囲の視線を惹きつけ、なんか素敵でついていきたくなる魅力的な女性たち、
いま日本のファッションシーンのなかでは、彼女たちがオピニオンリーダーとなって
いつしかブランドを立ち上げ、常に私たちを刺激的にリードしてくれています。
そんな力強い彼女たちに迫るインタビュー連載がスタート。
初回は、「おしゃPオーディション」で自身初のブランドを持つことになった吉田怜香さんです。
Photo_Satomi Yamauchi
ABOUT BRAND
〈トゥデイフル(TODAYFUL)〉。充実した一日を過ごすをコンセプトに、吉田さんがディレクションする感度の高いアイテムを展開。自分が着たい服をテーマにゆったりとしたメンズライクなサイズ感とヴィンテージテイストを落とし込んだトレンド感度の高いアイテムやコレクションは、20、30代の女性から圧倒的な支持を集めている。Instagram @todayful_
ABOUT DIRECTOR
吉田怜香。1987年8月6日生まれ。『JJ』主催の「おしゃPオーディション」でグランプリを獲得し〈アングリッド(Ungird)〉を立ち上げ2年間ディレクターを務める。現在はオリジナルブランド〈トゥデイフル(TODAYFUL)〉のデザイナー、ライフスタイルショップ「ライフズ(LIFE’s)」のディレクターとして人気を博す。Instagram @4848r
吉田怜香さんのNOW & THEN
現在、ディレクションする〈トゥデイフル〉に至るまでに、自身で振り返った上でターニングポイントとなる3つの出来事について伺いました。
3 TURNING POINTS IN HER LIFE:
01 – 2006年。神戸にあるセレクトショップ「CANAL JEAN」でショップスタッフとしてアルバイトスタート。
02 – 2010年。おしゃPオーディションで優勝、アパレルブランド〈アングリッド〉を立ち上げる。
03 – 2013年。〈アングリッド〉から離れ、個人でセレクトショップ「ライフズ」をオープン。
MOMENT 01 – in 2006
ここでの経験がなければ、いまアパレルを続けていない。
路面店でゆっくりお客さんと会話しながら接客する楽しさを経験できました。自分が提案した服でお客さまが喜んでくれたり、自信を持つ手伝いができたり、ショップ店員のやりがいもたくさん感じられました。その後、自分でもセレクトショップを開きたいと思っていて「ライフズ」と〈トゥデイフル〉を同時にオープンさせました。もし別のアパレルブランドでショップ店員をしていたら、いまこの仕事をしてないかもなとも思います。
MOMENT 02 – in 2010
直感を信じて挑戦したオーディション。
受けようと決めたのは直感でした。紙面でオーディションを知ったときに体がざわついて。グランプリを獲得できるかどうかは賭けだったけど、自分のセンスにはある程度自信がありました。もし落ちていたとしても受けといてよかったと思うんじゃないかな、受けなかったらきっと後悔して自分の選択に言い訳をしていたと思う。やってみたいことは絶対に挑戦した方がいいです!
MOMENT 03 – in 2013
自分の手が届く範囲でしっかり見るということ。
〈アングリッド〉はグランプリを獲得して手に入れることができた大切なブランドで、ディレクターを離れる決断には勇気がいりました。でもいま振り返るとそれもまた自分らしい決断だったとも思います。人生は一回きりだし、自分らしくいる選択をする。当たり前のようですが違和感を感じたときによく考えて、自分の心に従って行動に移すべきだと経験して思っています。日々心地よく過ごすために。
初めて働いたお店で自分らしいファッションが何かを知る。
- ーもともと服を好きになったのはいつからですか?
- 高校生の頃から好きで、ショップ店員への憧れがありました。買い物に行ったお店のお姉さんに憧れていたんです。おしゃれしてきれいにメイクしていて。そうやって毎日仕事できたらいいなと思っていました。
- ーそこから実際に働くようになるのは?
- 大学一年生からです。神戸にある「キャナルジーン(CANAL JEAN)」というセレクトショップでアルバイトし始めました。LAのインポートブランドを扱うお店で、路面店だからお客さんひとりひとりにじっくり接客ができたことはよかったですね。ファッションビルに入ってるショップだと接客のスピード感というか回転率を高くすることを求められてしまうけど、ここではもう少し深い繋がりを大事にした接客の楽しさに気づくことができました。とにかく服に囲まれている時間がたのしくて大学に行くよりお店にいる時間の方が長かったような気がします。就職活動の時期になっても、好きな服、好きなヘアメイクでいられない自分は想像つかなかったし、これが天職だなと思ってたんです。
- ーということは、売れたんじゃないですか?
- どうだろう? でもいわゆるカリスマ店員とかの雰囲気ではなかったです。もっとローカルな感じで、顧客さんとゆっくり話しながら、提案しながら買ってもらうようなお店でした。いい意味でゆったりと過ごせたんです、空いた時間にディスプレイとかトルソーのコーデを考えるのが好きでした。いろんな服に触れて吸収して、じっくりファッションに向き合うことができた貴重な時間。最初にこういうお店で経験できたのは大きかったです。
- ー神戸のセレクトショップから〈アングリッド〉へどう繋がっていったのでしょうか?
- まず大学在学中に『ViVi』の読者モデルをしていました。通ってた大学は読モが多く、私も声をかけていただいて。そのうち並行してブログを書くようにもなりました。当時だと関西はデコログが流行っていたんですよね。趣味感覚でコーディネートや恋愛事情とかいまのインスタより身近でどうでもいい内容、もっと日常的なことを頻繁にアップしていました。ただそのブログがサイト内のランキングで1位になったのをきっかけに、たくさんの方に知ってもらえるようになりました。
- ー学生時代からおしゃれな人として有名だったんですね!
- そのうち、自分のブランドをやりませんか? と声をかけていただくことがあり…。初めて自分のブランドをもつということを意識し始めた頃、仕事帰りにたまたまコンビニで立ち読みした雑誌で、マークスタイラーのブランドプロデューサーのオーディション企画が目にとまったんです。そのときすでに同じ『ViVi』の読者モデル出身の先輩たちが、〈ムルーア(MURUA)〉や〈エモダ(EMODA)〉で活躍していたのを知っていたので、もし自分のブランドをやるなら、こっちに挑戦してみたいなって直感で、オーディションを受けることにしたんです。一次、二次、三次と進み、半年くらい経過しながら3名まで残って最終結果は神戸コレクションで発表。で、無事グランプリを受賞したんです。地元での開催だったから家族や友達も応援してくれてうれしかったのを覚えています。
- ー感動的ですね! ところで吉田さん、松本さん、荻原さん、みなさん関西出身で読者モデルも経験していたのにファッションブランドのディレクターへと進むのは何故なんでしょう?
- 東京ほどチャンスがないというか、関西の読モって人気が出たらブランドを作る傾向にあった気がします。東京の子は歌手になったり、芸能人になることの方が多かったと思うんですが。
- ーグランプリ受賞の特典として、自分のブランド〈アングリッド〉を持つことになったということだったんですね。これは何歳のときでしょう?
- 23歳。受賞した一週間後には上京することに。いま振り返ると、無知でがむしゃらでした。ただの販売員だったわけなので。販売経験は服づくりに役立ったけど、名刺の渡し方もパソコンの使い方もわからないまま社会に出たような感じでした。
- ー実際に始動してみて自分が思い描いたブランドを持つこととはリンクしましたか?
- 自分の思う通りに、好きなことを実現できると思っていたんですが、実際に始動すると母体がちゃんとした企業だったこともあって、ギャップを感じる瞬間もありました。次々とファッションビルへの出店が決まっていったのですが、私のイメージでは、自分が働いていたような路面店への憧れがあったので、思い描いていたこととは異なり出店を純粋に喜べなかったんです。
- ーもともとギャルファッションに興味や憧れこそあったけど、実際に最初のアパレルの入り口としてショップ店員を経験したのは海外のインポートを扱うローカルのセレクトショップだったという時点で、実際にセンスを磨く場所が違ったというかもうルーツが異なってたんですね。
- そうなんです、マインドが変わっていて、そこから感じるギャップがあったんだと気づいたんです。
- ーその状況下、どこの部分で吉田さんのやりたいことを実現していました?
- 服に関しては自分が着たいものを作れてました。学んだことも本当に多かったです。ただ売り上げは好調だったこともあり、事業拡大が会社の方針で出店数もどんどん増えていき…。もちろんブランドとしては悪いことではないし、喜ぶべきことなんですが、自分の手の届く範囲でブランドを展開していきたい私の思いとは離れていってしまって。方向性が違うまま続けるのはお互いにとって良くないし、〈アングリッド〉から離れて、自分のイメージを実現できるブランドを始めようと決意しました。
- ーなるほど。そこで決断できたということですね。
- そうですね。何事においてもですが、自分の気持ちに正直でいるように常に心がけてます。あと、自分が諦めたことを別の誰かがやってしまうのを想像したとき悔しいと思うのであれば、そうならないように動きたいですよね。
- ーその勇気がすごいです…。そうして26歳のときに立ち上げたセレクトショップが「ライフズ」ということですね。
- はい。最初はオンラインショップという形でスタートして、半年後くらいに路面店を出店しました。服以外のものも取り扱いたかったから箱としてショップの名前を「ライフズ」、オリジナルのアパレルウェアを〈トゥデイフル〉というブランド名でやろうと決めました。
- ーウェアもあって、蚤の市で見つけたようなお皿とか小物とかも置いてある感じがニューヨークの街にあるセレクトショップの雰囲気と似てるなと思いました!
- ありがとうございます。服だけ置くより店全体として雰囲気を楽しんでほしいので、ただファッションがおしゃれになるだけじゃなくてその人自身のセンスが磨かれるような場所をつくれたらなって思いながらお店づくりをしています。「ライフズ」は来てくれた方の日常や人生が交わる場所に、〈トゥデイフル〉は着た人の一日が充実するといいなという願いを込めています。
足し算のUNGRIDと、引き算のTODAYFUL。
- ーブランドだけを見ると、〈アングリッド〉から〈トゥデイフル〉へ移ったことはファッションど真ん中をやっていくよりもっとライフスタイルに根差したブランドをやりたいという意志を感じたのですが、それ以前に立ち上げの理由としては吉田さんを取り巻くものづくりの環境を変えたかったというところが大きいということですね?
- そうですね、〈アングリッド〉時代から私が着たい服を作るということはブレずにディレクションしているのですが、時代のながれだったり、私自身年齢を重ねるにつれ、服だけじゃなくて、インテリアやライフスタイルをより良くしていくことにも興味が出てきたんだと思います。
- ー両ブランドとも吉田さんがそのとき着たい服が共通した軸でしたが、テイストは変化していますよね。この2つのブランドの違いを挙げていただくなら?
- 〈トゥデイフル〉の方が削ぎ落とされている感じでしょうか。23歳と33歳で着たいものが違うから変わるということもありますが、結果だけ見るといまの方がシンプルで、引き算を覚えたという感じがあります。逆に昔は足してたな〜って思いますね(笑)。でも振り返っても好きなものや根本的なマインドは変化してないんですよ。そのときそのときでかわいいと思うものを表現するという意味ではやってることは変わっていないんです。
- ーギャルファッションのど真ん中の格好をちゃんと楽しんでいたとして、後にまた別のスタイルへとハマっていくとき、ちょっとくらいその昔のスタイルを引きずりたくなりませんか? 例えばネイルだけは名残でスカルプしていたい…とか。
- (笑)。全然ないんです。むしろ引きずりたくないと思っているかも。〈アングリッド〉を立ち上げたときは23歳で時代のムードもとにかく濃いメイクが流行っていたんですよ。振り返ると自分でもギャルだったと思うんですが、当時は真顔でただおしゃれしてるだけなんですけど? って思ってたんです(笑)。それであるとき、ただ外見だけで考えたとき、自分が30歳になったとき、40歳になったとき、こんなふうになってたいなぁっていう、なりたい自分のイメージを持つことは大事だと感じてます。
- ーいまのこうなりたいってお話から一瞬脱線しますが、ちなみにいま吉田さんから見てセンスとカリスマ性を持ち合わせた、気になる人はいますか?
- 会ったことないんですが、インスタでフォローしている柳瀬美央さん。普段から気になる子はチェックしててフォローするようにしているんですが、最近すごいこの方、若いんだということに気づいて。服もヘアもメイクも載せ方も、23歳ですでに自分に似合うものがわかっていて、とにかくセンスがいいんです。
- ーブログのバズりから〈アングリッド〉立ち上げ、そこから「ライフズ」へ。一貫して濃いファンがいますよね、センスとカリスマ性があるのは前提としてご自身でも何故だと思いますか?
- なんでしょう…。当時ブログにのせていたコーディネートを振り返ると、ギャルっぽいヘアメイクで、インポートとか古着をMIXしているスタイルが珍しかったのかな? 古着は青文字系! みたいな線引きがなく、好きな服を自由に合わせるバランスが、私っぽさとしてウケたんだと思います。〈アングリッド〉を立ち上げたときお客さんから言われたのが「こういうテイスト好きだったんですけど、いままで買うところがなかったからうれしい」とか「いままでふんわり思ってた好きなムードが〈アングリッド〉ではっきりとしました」とか「メンズっぽいサイズ感が新鮮」とかで。私の場合は “自分が着たい”をブレない軸として考えなければ服を作れないんじゃないかな。そうするから正解が見えるというか。
世のなかのムードを柔軟に掴むことは大事。
- ー軸は変わらないけどテイストや好きなものは変化してきたということで、最初は雑誌や一緒に働いているショップ店員の子や周りからインプットしていったところから、どう変化していきました?
- 若い頃はいまのように情報が溢れてなかったし、雑誌や一緒に働いているショップ店員仲間たちからインプットしていました。海外にも行ったことがない頃は、カタログの写真をみてイメージを膨らませる感じでしたが、仕事で実際にいろんな国に訪れる機会も与えてもらったことで、「ああ、こういうことだったんだ」という紐付けることができたのは大きかったです。それぞれの街の空気感の違いとか。ニューヨークっぽい、ロンドンっぽい、いままでふわっとしかわからなかったことも肌で感じることで、身につく感覚があります。私にとって、海外で見たことない景色やデザインに触れることは、センスを磨くうえでも、服をつくるうえでも欠かせないインプットです。経験できたことが多くなったことがいちばんの変化ですよね。
- ー着たい服を作る上で世のなかのムードを掴むことは大切だと思いますか?
- もちろん、それは私自身も大事にしている部分です。でもファッションのトレンドを意識するというよりは、なりたい女性像とか空間づくりのムードにたいしての意識が大きいです。そのムードを反映させたものを〈トゥデイフル〉の服で表現するような感じです。例えばLAカジュアル!とか具体的なテイストのコンセプトを決めてしまうと、気分じゃなくなったときデザインするのがしんどくなってしまうから、あくまでも“自分が着たい服”というのを軸に、その時々で表現したいムードに柔軟でいられるところも自分のブランドのいいところなんだと思います。
- ーこれからの〈トゥデイフル〉について何か考えていることはありますか?
- あっというまに8年目になりますが、何歳まで出来るだろうって思うこともあります。昨年子供が産まれて、このままバリバリ仕事してたら体がもつかな…とも思ったり(笑)。やるからには手を抜けない性格だし、こだわりも強いのでなおさら。なので自分が納得できるものづくりができる範囲でこれからも続けていけたらいいなと思っています。お客様が、大事な生活費のなかから私のブランドにお金を使ってくれるなら、そのプライス以上に値打ちのある服にする責任があると思っているので、ベストを尽くして服づくりをしていきたいです。
吉田怜香さんも物欲NONストップ!
お買い物は「一目惚れ派」という吉田さんに、いまお気に入りの私物を3点ご紹介いただきました。
J.Hannah
ジェイ ハンナのネイルポリッシュ
アクセに合う色味がかわいい。
LAのジュエリーブランドがつくっているネイルポリッシュ。もともと海外旅行の際に買っていたんですが、代理店を調べて「LIFE’s」にも置けるようになりました。私も8本持っていて、なかでもこれはお気に入りの3色。LEMAIRE
ルメールの小物入れ
迷ったときは…!?
大小どちらか選べなくて、結局どっちも買っちゃいました(笑)。用途で探していたというよりは形に一目惚れだったので、大きい方は何を入れようかまだ迷っています。小さい方は名刺入れにしたいなと思ってます。THE ROW
ザ・ロウのシューズ
春らしい足元に。
今シーズン買った〈ザ・ロウ〉のシューズ。シンプルなデザインでどんな着こなしにもマッチしそうな一足です。ホワイトが春っぽいので、白のワントーンコーディネートに合わせてさらっと履きたいですね。