MURA MASAの盟友としても知られるR&BシンガーNAO。大盛況の初来日公演をレポート!
会場に集まったオーディエンス全員が笑顔で帰路に着いたことが想像できるような、文句なしに「楽しい」ライヴだった。いい意味でイメージを裏切られた――そんな人も多かったのではないだろうか。
エラ・メイやジョルジャ・スミスなどイギリス発の女性R&Bシンガー新世代が世界的な注目を集める中、もっとも未来志向の冒険的なR&Bで評価を獲得してきたのが、イースト・ロンドン出身、ムラ・マサの盟友としても知られるネイオだ。2016年のデビュー・アルバム『フォー・オール・ウィ・ノウ』では“ジェイムス・ブレイクと90年代R&Bの衝突”と評されるスタイリッシュなサウンドを提示し、2018年10月に送り出されたセカンド『サターン』ではケンドリック・ラマーなど現行のUSメインストリームからの刺激も取り入れている。初期の作品はダークでミステリアス、『サターン』はディープでメロウというイメージが強いが、待望の初来日公演で見せた素顔はそのどちらとも違った。
ステージに登場したネイオは、ライヴを心の底から楽しんでいるような笑顔を浮かべながら、思いきり歌い、踊り、観客を煽る。『サターン』のジャケット写真に象徴的に登場する白い風船を観客に手渡しで配ったり、しきりにコール・アンド・レスポンスを求めたりと、エンターテイメント的なショーとしての演出も忘れない。そして何より、そのチアフルで親しみやすいキャラクターを武器にグイグイとオーディエンスを自分の世界に引き込んでいく様は、彼女のステージ・パフォーマーとしての地力の高さを感じさせた。
もちろんその歌声も素晴らしかった。彼女の声質は甘くコケティッシュだが、ライヴでは迫力が数段増し。クワブスとのデュエット曲『サターン』では二人分のパートを一人で全部歌い切ってみせたが、男性シンガーの低音から自身の高音パートまで自在に声を操る姿は、彼女のシンガーとしての力量を見せつけるものだった。
若い頃はジャーヴィス・コッカーやクワブスのバック・シンガーを務めるなど、下積みも長かったネイオだが、地道に研鑽を重ねてきただけにライヴではシンガー/パフォーマーとしての真の太さのようなものが感じられた。アーティストの真価はそのステージ・パフォーマンスで測られるという見方に立てば、ネイオの初来日公演は誰もが彼女を「本物」だと認めるのに十分な輝きを放っていたと言えるだろう。(文:小林祥晴)
NAO
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