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21世紀を生きるグラムドラァグクイーン、YVES TUMOR。突然開催された初来日ライブをレポート!
2018.12.21 Fri

21世紀を生きるグラムドラァグクイーン、YVES TUMOR。突然開催された初来日ライブをレポート!

Photo_Masanori Naruse

 
 
テネシー生まれのYVES TUMOR(イヴ・トゥモア)が「WARP」に移籍後リリースした『Safe In The Hands Of Love』は、いまも多くの謎に包まれている。トゥモアが愛聴していたグランジ的な激しいサウンドもあれば、R&BやHIPHOPの要素も随所で顔を覗かせるというその内容には、いまだハッキリとしたジャンル名が付されていない。さらに、エクスペリメンタル・ミュージックのシーンから出てきたアーティストであるにもかかわらず、チャート・ソングも顔負けのキャッチーな側面を前面に押しだしていたことも、驚きと戸惑いを抱かせるものだった。

そうしたカオスを象徴するのが、「ピッチフォーク」にアップされた『Safe In The Hands Of Love』評だろう。9.1という高得点をあたえたこのレヴューは、普通に考えたらつながりを見いだせないプルリエントやボーイズ・II・メンをひとつの原稿内で登場させるはめになった。おそらくこうした状況は「多くの人は私の存在が何なのか困惑してると思う。けどそれでいい」と語るトゥモアにとって本望かもしれない。

このような作品を出した後の来日公演ということもあってか、12月20日の「Contact」には多くの人々が集結した。斜に構えたような業界人やアーティスト、ヴェルサーチェのド派手なマルチプリントTシャツを着こなすオシャレさん、仕事終わりに寄ったのであろうスーツ姿のサラリーマンまで、客層も実に多様だ。

Photo_Masanori Naruse

 
 

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そこへ登場したトゥモアは、とてもアグレッシヴにステージ上を動きまわる姿が印象的だった〈グッチ〉のブルゾンでキメた細身の体をくねらせたかと思えば、ヴィンス・ステイプルズみたいに挑発的なステージングで観客をアジテーションしてみせる。その一方で、「ありがとう」と日本語でお礼を伝えるなど、チャーミングなところも際立った。大量のスモークとフラッシュの中で佇む姿は人外感を醸していたが、近寄りがたい雰囲気を出すことはない。そんなトゥモアと呼応するように、前方の観客は終始踊りつづけ、祝祭的な空気を演出していた。『Noid』のときは“Sister, mother, brother, father”を合唱する者がいたりと、さながらアンダーグラウンドなロックンロール・ショーと言える瞬間も多く見られた。

音はバックトラックだが、それでもトゥモアの多彩な音楽性は十分に堪能できた。『Safe In The Hands Of Love』の中域を持ちあげる歌モノ的なプロダクションとは異なり、この日のライヴはノイジーなサウンドも目立つなど、引きだしの多さがうかがえた。それを聴いていると、インダストリアルR&B、エクスペリメンタル・グラム、プリンスとポップ・グループの邂逅など、さまざまなフレーズが頭によぎったが、どれもピンとこない。そのすべてを煮詰めた音楽こそ、トゥモアが鳴らしているものだからだ。ライヴに行けば少しは謎が明かされるかも? と期待していたが、魅惑的なミステリーが深まるだけだった。しかしこれも、“それでいい”のだろう。(文:近藤真弥)
 
 

YVES TUMOR
Instagram @yvestumor