Girls Just Want To Have Fun!

DAOKO interviewed with
Porter Robinson & MADEON

やっと会えたね!
日仏米、エレクトロ界の若き天才たち。
Photo_Atsuko Kitaura 
Interview & text_Takao Ookubo
ENGLISH

女子高生でありながら鮮烈なメジャーデビューを果たし、
いまや世界で話題を集めるほど大きな存在へと成長したラップシンガー、DAOKO。
彼女がクラブミュージックと出会ったのは15歳の頃。
キッカケはポーター・ロビンソンの楽曲『Spitfire』だったそう。
今回はそんな彼女のルーツであるポーター・ロビンソンと盟友、マデオンの来日に合わせて、
DAOKO自ら2人の取材を決行。
以前よりSNSを通して親交のあった3人だからこその、とっておきのインタビューをお届けします。

DAOKO
はじめまして、やっと会えましたね。
ポーター・
ロビンソン
(以下、ポーター)
はじめましてDAOKO。本当だね。
DAOKO
ポーターとマデオンが共作した新曲『SHELTER』を引っさげての来日ライブ、私もお邪魔させてもらいました。さっそく次の日に取材させてくれてありがとうございます。
マデオン
来てくれていたんだね! ありがとう。
DAOKO
ライブでは曲はもちろん、映像も素晴らしかったです。デジタル的な素材の上に、手書きのアニメーションを描くなど、二次元と三次元がうまく融合されているのに驚かされましたね。その映像が音楽と見事にリンクした圧巻のライブでした。映像はどのように作られたんですか?
ポーター
基本、2人でアイディアを出し合って作ったよ。マデオンが中心となって素材を集めて、編集は僕が中心。
DAOKO
なるほどー。私自身もライブは、アニメーションなどの視覚的要素を合わせた「総合芸術」という形を目指しているので、本当に感動しました。
ポーター
僕らもDAOKOのライブもすごく興味あるんだ。ぜひ観てみたいよ。
DAOKO
ぜひぜひ! さて、まずは世界的なDJ&プロデューサーである2人の関係性からお伺いしたいです。
ポーター
約10年前、僕が14歳でマデオンが12歳の時にネットで知り合ったんだ。当時、僕らはネット界隈で一番若い音楽プロデューサーだったから、よき友でありライバルだったね。
マデオン
お互いちゃんと会話をしたのは、2015年に僕が『Adventure』というアルバムを完成させた時だったかな。完成版をポーターに聴いてもらって、曲について2人でたくさん語り合ったね。その時に改めてお互いの音楽の趣味が一致しているって気がついたんだよね。いつかコラボしたいねって話していたけど、なかなか実現できるプロジェクトもなくて。
ポーター
楽曲についても相思相愛だったし、いつかマデオンと曲を作らなきゃいけないって思ってはいて。いままで一緒にツアーを周ったこともなければコラボもしてこなかったけど、お互いこの世界で10年というキャリアを経て、やっと今回の『SHELTER』で実現できたんだ。お互いの感性は十分に理解していたから、制作中も脳内で会話している感じだったよね(笑)。
マデオン
一心同体のシングルプロデューサー状態だったね(笑)。基本はポーターがサビで、僕がそれ以外を担当したんだ。
DAOKO
『SHELTER』はリフがすごく頭に残る中毒性に惹かれました。あとすごいのが、ポーターが脚本を担当してA-1 Picturesがアニメ制作をしたMV! 私の周りのDJやクリエイターの人たちの間でも話題になっていました。
ポーター
ありがとう。そもそも『SHELTER』が生まれたのは、2016年からアメリカで始まったアニメ配信サービス『クランチーロール』からオリジナルアニメ制作の提案をもらったことがきっかけなんだ。すごくテンションが上がって、話をもらったその夜から『SHELTER』のストーリー作りに取り掛かったよ。地球の終わりが近づく中でのある父親とその愛娘の話なんだけど、父親は仮想現実装置付きの脱出ポッドを作って、娘を宇宙に避難させるんだ。そして娘は仮想現実の中で生きながらえる。ストーリーを要約するとこんな感じかな。自信作だから、とにかく観てほしいね。
マデオン
ポーターが僕にアニメーションの『SHELTER』に合う音楽を一緒に作らないかって誘ってくれた時、すごく胸が高鳴ったのを覚えているよ。「家族」や「無償の愛」というテーマ、アニメの脚本、そして僕らの音楽。全てが1つに合わさって最高の作品になったと思う。
DAOKO
『SHELTER』を聴いてすぐにTwitterをフォローしようと思ってアカウントを開いたら、すでにポーターが私をフォローしてくれていたのにすごくビックリして。思わずDMをお送りしちゃいました(笑)。そもそも私を知ってくださったキッカケってなんだったんですか?
ポーター
TeddyLoidの『ME!ME!ME! feat. daoko』だね。僕のアニメ好きが高じて知ったということもあるんだけど、それ以前にMVがアメリカでも話題だったんだ。映像に驚かされたのはもちろんだけど、何よりDAOKOの綺麗な声が忘れられなかったんだ。他にもたくさん聴いたしMVを観たよ。DAOKOの、デジタルとファンタジーをMIXした世界観が僕のドンピシャだったんだ。
DAOKO
TeddyLoidの『ME!ME!ME! feat. daoko』は、海外でも話題になっているというのは聞いてはいたんですけど、実際に現地の温度感ってわからないから実は不安だったんです。でもポーターの耳に届くぐらいポピュラーな曲になっていたのは驚きですね。嬉しいです。
ポーター
他にも『さみしいかみさま(GIRL Side-A)』もお気に入りだね。DAOKOの囁いているような歌声がカッコよくて心地いいから。
マデオン
僕の場合は一緒にプロジェクトを進めている時にポーターからDAOKOのことを教えてもらったんだよね。僕は『かけてあげる』が好きかな。あのファンキーかつ低音なビートに、甘くて優しいボーカルが調和された感じが、とても個性的で好きだよ。
DAOKO
マデオンにも紹介してくれているなんて光栄です。そもそも私がポーターの音楽を知ったのは、2011年に出た『Spitfire』っていう曲だったんです。当時、私はまだ中学生でクラブミュージックに出会っていなかったんですけど、ボーカロイドなどで曲作りをしたものをニコニコ動画に投稿するようになっていて。ちょうど、日本ではダブステップが流行り始めたときで、色々とディグっていく中でポーターの曲を見つけました。初めて聴いたときに、音の迫力に圧倒されたのを覚えています。それがきっかけでクラブミュージックを意識し始めたので、いまの自分の音楽にはポーターの影響ってすごく大きくて。
ポーター
中学生の時っていうのが驚きだね。僕もマデオンも12、13歳から音楽を始めていたから、何か通ずるものを感じるよ。業界では最年少ぐらいだったから、同時期からキャリアをスタートさせた人がいるって知って嬉しいね。
DAOKO
私もです! ポーターもマデオンも、Twitterでは日本人のアーティストを結構フォローしていますよね。好きなアーティストっているんですか?
マデオン
中田ヤスタカにはすごく影響を受けたね。その流れでパフュームはお気に入りで、新曲『TOKYO GIRL』のMVも最高だったよ。ダンスなどで視覚的にも楽しませてくれるところがポイントだね。
ポーター
僕は高木正勝をリスペクトしている。好きなアーティストのトップ5に入るぐらいだね。ダフト・パンクやカニエ・ウエストと並ぶぐらい好きなんだ。
DAOKO
その並びに高木正勝さんが入ってくるんですね。日本独特のエモーショナルな感じが好きなのかな。2人は日本の音楽のどこがおもしろいと感じますか?
マデオン
日本のポップミュージック、いわゆるJ-POPは欧米の音楽より手の込んだコード進行を使っているから、すごく勉強になるんだ。あと他の国では聴けないような実験的な構造の曲が多い。例えばコーラスのような、アナログな曲調を新しいデジタルなコード進行とMIXさせたりね。
ポーター
僕は日本の音楽の魅力は大きく分けて3つあると思うんだ。1つ目はコードやメロディの感性がとても美しいってこと。日本の方が欧米の音楽より感情的な曲が多いと思うし、甘くて苦い、そしてノスタルジックな感じが多い。2つ目は、テクノロジーを駆使したファンタジーな世界観。これって日本特有の音楽の特徴だと思う。すごく感動させられるんだ。3つ目は、卓越した“kawaiiカルチャー”と、その音楽。これは他の2つほど重要ではないと思うけど魅了されるね。
DAOKO
確かにJ-POPって海外の影響は大きいはずなのに独特ですよね。島国特有というか…。おそらく日本童謡や民謡で使用されている“ヨナ抜き音階”という日本固有の音階が関係しているんだと思うんです。この音階を使うと、どこか心に残る、エモーショナルな感じになるらしくて。
ポーター
最初は理解できなかったけど、いまは日本の伝統的な音楽も勉強しているよ。演歌の曲の書き方とね。
DAOKO
各国の伝統的な音楽って、知れば知るほどおもしろいですよね。では最後に音作りのこだわりや、曲作りのインスピレーションの源を教えてほしいです。
ポーター
僕は基本的に何からでもインスパイアされるんだ。例えば、僕が書いたコード進行、新しく発見した楽器の音、サンプル、ドラムループ、映画など、。なんでもありだよ。
マデオン
ポーターに賛成だね。本当になんでもありだと思っている。あと僕の場合は視覚芸術からインスパイアを受けることも多いかも。ある写真を見て感動したら、そのイメージを曲として表現することもあるよ。
ポーター
何よりも音楽で人々の心を動かし、感動を与えることを大切だと思っている。これが僕の最大の目標なんだ。
マデオン
僕は音楽を通して、みんなの心の拠り所を作りたいなって思うよ。
DAOKO
昨日、2人のライブに来ていたお客さんって、クラブ好きっぽい人もいれば、アニメ好きっぽい人もいておもしろかった。クラブとアニメって対局にあると思われがちだけど融合できる世界観だと思うんです。その架け橋的な存在なのが2人なのかな。あとライブでもMVでもアニメーションと映像、そして音楽を合わせた総合芸術を目指すっていう部分が共通していてすごく嬉しいです。この対談をきっかけに3人で一緒にできたらすごく嬉しいです!
マデオン
おもしろそうだね!
ポーター
同感だね。ありがとうDAOKO!