上映映画をもっと知りたい! 語りたい倶楽部。 #126『わたしの知らない子どもたち』
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GIRLS’ CINEMA CLUB

上映映画をもっと知りたい! 語りたい倶楽部。
#126『わたしの知らない子どもたち』

2026.09.23

実際に見ておもしろかった映画しか紹介しないコラム。
今回ご紹介するのは10月公開の『わたしの知らない子どもたち』。
秀作ラッシュの9月に10月公開作をメインで紹介するのは、
これが秀作中の秀作というだけでなく、この原稿を書くためにメモを見ただけでも泣けてしまう映画だから。
映画ライターになってから映画で泣くのは5年に一度あるかないか、
というすれっからしがこの有様。
感動メーターお察しください。

Text: Kyoko Endo

知られてこなかった孤児や女性の物語に光をあてる、西川美和監督の最新作

主人公は親の反対を押し切って疎開に来てしまった琴子。軍に率いられた政府とそれに追随する当時の日本社会は、子どもたちまでをも「小国民」ともてはやして戦争に協力させ、都会の子どもも「君たちも疎開戦士になるのだ!」など適当な言葉でそそのかして田舎に行かせた経緯がありました。保護といえば聞こえはいいが、国防がガタガタで防空できなかった。空襲が当たり前になるから足手まといにならないよう都会を去れってことです。

しかし疎開先では地元の子どものいじめに遭い食料も不足、現実を知った琴子は脱走を測りますが、その夜見たのは市街地の大空襲でした。ここでタイトル。そして戦後、食べ物を投げてくれる米兵に節操なく手を振る子どもたち。同級生たちが帰っていくなか、琴子を迎えにくる大人はいません。しかし孤児施設には行かない琴子。やっと会えた兄はPTSDで覚醒剤中毒になっています(ヒロポンって軍需工場労働者を眠らせず働かせたり兵士を興奮状態にするために戦時中にじゃんじゃん使用されたので戦後社会にもすぐ蔓延しちゃったんです)。いつの間にか家があった土地も知らない大人に乗っ取られてしまい、浮浪児たちと生きていくことになるのです。

西川美和監督は前作『すばらしき世界』で長期収容されていた刑務所を出て社会に馴染もうとする元受刑者の物語を撮っているのですが、その原作『身分帳』の主人公は戦争孤児で、生き延びるために窃盗などをやらざるを得ず、要領も良かったためにヤクザに気に入られて組員になってしまった経緯がありました。無数の孤児たちの身の上を監督が独自に調べたことから『わたしの知らない子どもたち』は生まれています。

『身分帳』は実話を元にしたノンフィクションノベル。犯罪小説で人気だった佐木隆三さんに「俺の物語を書いてほしい」とこの元受刑者がコンタクトしてきたそう。この元受刑者さん、靴磨きや万引きや窃盗で生き延びて、孤児施設に入れられてもシノギで得た金で職員と交渉するなどタフで抜け目なく、愛嬌があって女性にもモテたようです。少年院でレイプされるなど壮絶な生活環境がごく普通のことみたいにドライに書かれているのにおののきます。

『わたしの知らない子どもたち』の琴子は少女でいることに身の危険を感じて少年として生きていくのですが、この『身分帳』のモデルになった元受刑者と同じような身の上の浮浪少年、正吉と出会って仲間になります。この子どもたちの躍動感が素晴らしい。『動くな、死ね、甦れ!』を彷彿させる生命感です。また正吉が子どもなのに漢気があるいいやつ。何も持っていない子どもたち同士の友情にも感動させられ、悲惨な戦後を描きながら悲壮にはなりません。

一方、大人たちものうのうと生きているわけではない。琴子たちを疎開させ指導してきた教員の曽根先生は特攻に出撃する直前の恋人に会って妊娠して、子どもを養うために仕事先を探したけれど騙されて慰安施設で働くことになってしまいます。演じているのは二階堂ふみさん。しかしこのシーン、騙す側の赤間麻里子さんの台詞もすごいんです。

台詞がすごいと言えば、岡田准一さん登場時の台詞もすごい。彼の役は正吉たちを手下に隠匿物資を窃盗させるヤクザ。『永遠の0』で特攻兵役を演じていた彼にこの役をキャスティングしたのもすごいが岡田さんがこの役を受けたのもすごい。監督、スタッフ、キャストの気概を感じます。まさしく知られてこなかった孤児や女性の歴史に光が当てられているのです。

日本には悪いことした過去なんかないんだ!と天真爛漫に過去を改竄しようとする人々もいますが、過去の誤りを見つけて現在の行動を修正しなければ進歩はないですよね。学生時代、試験勉強では自分の弱点やミスを見つけて克服して学力上げて……ってことをしていたはずなのに、なんで国の弱点やミスからは目をそらす? 歴史修正主義者はもしかして受験したことないんか? と思うけど、監督は綿密な取材の成果を脚本に落としこんでいるので、当時の女性や子どもや帰還兵に起こっていたことは修正主義の人にも理解しやすいはず。偏見がなければ。

少女の身でありながら少年に混じってがむしゃらにいっぱしの不良として生きていく琴子のけなげさ、戦争孤児として頑張って生きているのに裏社会にしか生きる場を与えられない正吉、子どもたちを戦争に加担させる愛国教育をしてきたことを恥じて必死に琴子を探す曽根先生。役所広司さんや田中裕子さんの名演も。150分驚いたり感動したりするシーンばかりで呼吸がやばいかも。ハンカチ持って劇場に行ってください。

『わたしの知らない子どもたち』

脚本・監督:西川美和
出演:小八重葵美、二階堂ふみ
(2026/日本/150分)
製作・配給:K2 Pictures
10月16日(金)全国公開
©2026 K2 Pictures・AOI Pro.

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PROFILE

遠藤 京子

東京都出身。
出版社を退社後、映画ライターに。『EYESCREAM』、『RiCE』、『BANGER!!!』に寄稿。

Instagram @ cinema_with_kyoko
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