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彼女のダンステリア ギーセン珠理 / 編集者・動画ディレクター
彼女のダンステリア ギーセン珠理 / 編集者・動画ディレクター 短編映画のような世界観で、伝えたいメッセージを込める。

彼女のダンステリア
ギーセン珠理 / 編集者・動画ディレクター
短編映画のような世界観で、伝えたいメッセージを込める。

2020.07.31

“ガールとカルチャーがドッキング⁉︎”
これは私たちのアンセム、シンディ・ローパーの日本盤LPレコードの帯にあったキャッチコピーから。
一見むちゃくちゃに読み取れるけど、でもだんだん愛着が湧いてきました。
男子に負けず刺激的なクリエイションを提示する人たち。
編集部員が心からファンになったアーティストと向き合い、
彼女たちが何を思い、何のためにクリエイティブでいるのかについてしっかりと聞いてきました。

ギーセン珠理、編集者・動画ディレクター。雑誌『ViVi』を始め、ウィメンズのファッション雑誌のエディトリアルを手掛ける師匠のもと経験を積み独立。最近は、大親友の森星ちゃんと一緒にYouTubeチャンネルを開設し、毎週土曜日に動画を配信している。2人の好きなものを詰め込んだあの動画の世界観は、珠理ちゃんがイラストを描いたりバックサウンドを選んだりして表現している。

Instagram @juliegiesen

▶︎▶︎彼女のライナーノーツはこちら

ー珠理ちゃんと森星ちゃんが一緒に配信しているYouTube、大好きで毎週土曜日にチェックしています。
ありがとうー! これは私と星で“動く雑誌”としてやりたいことを表現できる場所にしようって話していて、2人が編集長みたいな感じで内容とか考えながら作っているんだ。
ー動画を観てると、星ちゃんが話しているなかで珠理ちゃんの笑い声が聞こえてきて、珠理ちゃんが撮影してるのかな? と思っていたんですが…。
そう! 撮りながら楽しくなって私の笑い声も入っちゃった(笑)。でもそれもおもしろいから活かそうかなって。最初は動画の制作会社と星と一緒にやっていたんだけど、ディレクションしていくなかで頭のなかにはしっかりあるイメージを伝えることを難しく感じてしまって…。なんというか日本にはいま人気のYouTubeアカウントがたくさんあるけど、それと私たちがYouTubeでやりたいことって違うというか。もちろんビュー数を気にすることは大事だけどそれより私たちの感性を出すことの方が大事にしているの。そんなこともあり、だんだん自分で何でもやりたくなって最近は撮影も私がやるようになったって感じかな。
ー確かに日本にはいま独特のYouTubeカルチャーが形成されてきていますよね、見た目や構成の話で言うならバナーにわかりやすく大きな文字でドーンと見出しを入れたり、強烈なタイトルを付けたり…。内容もイメージや世界観を伝える動画というより、メソッドとかレシピとか実用的なものが人気のような。
もともと始めた時点で、国内だけじゃなくてインターナショナルに発信したいと思っていたから、その“日本らしさ”に捉われすぎないようにしているのかな。それにファンを何万人も獲得したいって気持ちよりもコアなファンができるといいなと思って取り組んでいるしね。このYouTubeだけは好きです! とか言ってくれたら最高。
ーですね! 現場でもいまチェックしてるYouTubeの話になると必ず名前を聞くくらい、多くの人にインスピレーションを与えているコンテンツなんだと感じています。やりたいことがたくさんある星ちゃん、それを表現する珠理ちゃん、というのもいい関係ですね。
本当に! 星はいつもクリエイティブなエネルギーに満ち溢れている人で。ただそれを彼女自身が説明しようとすると言葉選びとかまですごく考えすぎちゃうから、そこは私が汲み取って一緒に考えて表現しているの。私にとっては星はミューズであり、仕事仲間であり、友達であり。好きなテイストもセンスも全部一緒だったから、いまの私たちの世界観をつくりあげていくことができたんだ。
ーお互いの感覚が近かったというのは大きいですよね。2人が出会ったのはバリなんでしたっけ? もともと親友だったタミーちゃんに会いに行っていましたよね?
そうそう、去年の年末のことかな。タミーは引き寄せの女神! バリの山のなかで大晦日、10人くらいでヴィラに集まって何にも飾らないし気取らない空気感のなかで過ごしているときに星と出会った。あの大自然で会えたのはよかったな。最初から深く知り合うことができたし、東京で出会うのとでは印象も絶対に違ったと思うから。

バリは第2の故郷! 好きな人たちと出会えた大切な場所。

ーそこで実際にどんな時間を過ごしてどんなことを話したのか覚えてます?
音楽を聴きながら自分がいまどんなことを思っているのかを自由に絵に描くペインティングセラピーをやった! そこで星が真っ赤の絵を描いたの、全部が赤いお花みたいな。「いま心のなかがめっちゃ燃えてて、情熱に溢れているから赤しか使えない」って言ってたのがおもしろかったな。一方で私はカラフルでハッピーな絵を描いててさ。とくにこんな話しをしたと言えるほど会話もしてないし、仕事の話は一切してない。けど、そこをすっ飛ばしたからこそ星のこと、例えば何が好きなのか、どんな価値観なのかとかもっと深い部分から知ることができたんだ。
ー最初の出会いで芯の部分まで深くコネクトできたことはすごくレアな気がします。その後、東京で再会したと思うんですが、バリで会ったときと印象が変わっちゃわないかなとか考えなかったですか?
考えなかったかな…。だし、あのバリで人と接したあの感覚を忘れないようにしたいって思いもあって、それは星も同じだから、私たちが会うと「バリみたいだね」っていつも話すの(笑)。だから全然大丈夫だったし、不安もまったくなかったな。一緒にいて居心地がいい理由なのかも。
ー東京がそうさせているのかはわからないけど、実体験でも東京で出会うといろんなものを纏っている状態で“はじめまして”をするからなかなか初対面で深い関係までたどり着けないんだろうな…。そう考えるとやっぱり2人はバリで出会えてよかった!
それって東京が物質に溢れているからなのかな? バリはやっぱ比べるとものが無いし、でもいいって思えるの。というか、私も本当はそっちの方がいいんだよね。だからこそ物事がクリアに見えてくるの。バリ大好きで、あそこで初めて出会った人はずっと仲良いし、他にはない強いコネクションを感じる。
ーバリももちろんですが、やっぱりタミーちゃんとの関係も大事な気がします。
私、本当にタミーがいないと生きていけないの(笑)。人として尊敬していて、学ぶことが多い。似ているところは似ているし、全然違うところもあるから。そもそもタミーに出会ってなかったら、バリにも行ってなかっただろうし価値観もここまで変わることはなかったんじゃないかな…。
ー実際にどう変化したんですか?
いままではもう自分が見ている世界は十分大きいって思ってたの。モデルを始め、いろんなクリエイティビティに挑戦してきたし、自分のビジョンはあったし、やりたいこともあったから。でもバリに行って自然に触れたり現地の人とコミュニケーションをするなかで、やっぱり狭いところしか見えてなかったということに気付かされた。
ーバリこそ面積で言ったら小さいのに…!
本当に(笑)。小さなことに幸せを見出せるようになったのかも。物に囲まれてすぎて見えてなかった部分が、自然に身を置くことで自分も自然の一部なんだと気付かされるし、求めすぎちゃダメだと感じるの。もちろんお金は稼ぎたいしやりたいことはやっていくけど、貪欲になりすぎちゃダメ。

毎週土曜日に公開されるYouTubeを編集中。作業はこうやってベッドの上でも…❤︎

ー貪欲すぎず、でもお金は稼ぐ。その話で言うと、珠理ちゃん雑誌の編集もやっているんですよね?
やってるよ! 『ViVi』のエディトリアルをやってる師匠に出会って2年間お世話になってた。それこそ私を取材したいって言ってくれていて、タミーを通して出会うことができたの! 高校生くらいからモデルをやっていて、そのときからライターさんの仕事ぶりを見て「デキる女だな。自分もああなりたいな」って思って。正直、ライターや編集って自分でコネクションとセンスがあればできることだと思うけど、ちょっと古い考えかもしれないけどアシスタントとして経験を積ませてもらって良かったし、周りには心から感謝してる。アシスタントをした私がいなかったら、いまYouTubeをやってないかも。
ー動画もやるし、雑誌の編集もする。いろいろ表現しようとするモチベーションはどこから湧いてくる?
常になんでもやってみたいって好奇心があるのかも。小さいときからピアノやウクレレも弾きたいと思ったらトライして独学でもある程度弾けるようになったり、それこそ編集の原点かもだけど好きな物を集めてスクラップブックとかも作ってた。そのなかでやっぱり雑誌を作ることがいちばんやりたかったことだから、こうして仕事ができるようになれてうれしい。
ーセンスがあればある程度はなんでもできる世界だけど、珠理ちゃんはあえてアシスタントになってみた。でも単に師匠につくこと=自分の表現ができるようになる、ということでもないはずですよね方法を学ぶことはできても。師匠についた経験をどう自分に活かそうとしました?
まずは師匠の仕事現場にたくさん行かせてもらって、どんなに大物の現場でもその空気感に負けずに取材ができるようになった。後は最初は全然好きじゃなかったり理解できなかった企画も、意図があるんだって学べたこともあってクリエイティブに先行しすぎないように、地に足付いてもうちょっと物事を捉えられるようになったって感じかな。

タミーのエシカルなアクセサリーブランド〈アースカラーズ(earthcolors)〉のネックレス、いっぱい持ってるよ!

ーその視点があるからこその、あのYouTubeなのかなと思いました。イメージや世界観を伝えるってことなら単に好きなことだけを発信してれば…と考えがちだけど、もっと2人のなかで大切にしていることをメッセージとして込めているように感じ取れて。見ている人のことまで考えて作っていますか?
もちろん考えているよ! そこまでケアするためにも常に新しい経験をしていたくて、動画だけ作るんじゃなくて、いろんな人に会えるように仕事を一つに絞らずにモデルもたまにやるし、雑誌の仕事もするし、ディレクションもする。動画という軸はありつつもバランスを取りながらいろいろやって、たくさんの人と会うなかでセンスを磨いていきたい!
ーさっきも貪欲になりすぎちゃダメって言ってたけどそれこそYouTubeは再生回数やチャンネル登録者数でもジャッジされる。周りを見れば近いモデルの人も発信していてライバルも多くて、脇見したらそれこそドツボにハマってしまいそうだけど、ブレずに表現し続けられているポイントってなんだと思いますか?
私たちらしさを忘れない事と人と比べない事は大切。それこそ、私たちって話して何かを伝えるのが苦手だったりするから、いま人気のYouTube動画がそういう内容で求められているとしても無理にそこにトライしなくていいと思っているとかね。それより毎回ひとつの短編映画のように仕上げていて、やっぱ私たちが作っていて楽しいと思いながらつくる事を忘れないようにしてる。いつも「この画角ヤバイ!」とか言いながら子供みたいに夢中に撮っているんだ!
ーキャロットケーキの回もまさにそんなムードが伝わってきました!
(笑)。星もかなりアイデアマンだからああいうのはノリだよ! 「あ、ここにカツラあるじゃん、使お?」みたいな。
ーあの動画、すごく新鮮だったけどコメントを見たらちゃんとファンが2人の世界観についてきてるんだなって、その関係もまた良いなと思ったり。
コメント欄の治安いいよね! 私たちの世界観を伝えることと同時に、地球環境に関する事もしっかり発信したいと思っているから、みんなが見てくれるような好きなテイストのなかで私たちなりに勉強した事を発信できたらなと思っているんだ。例えば今度、SDGs(持続可能な開発目標のこと。2015年に国連サミットで可決された17の目標。)についての回をやりたくていま準備してるんだけど、それこそ真面目に紹介してもつまんないから、星がセサミストリートみたいにパペットを使いながらかわいく紹介する、みたいな事を考えているよ! もちろん正しく伝えるために勉強もしてるけどね。支援機構の人と実際に会ってちゃんと話を聞いたり、紹介する上で打ち合わせをして内容についてちゃんと向き合ったりしてね!
ーパペットはかわいい! 題材としてはヘビーだしちゃんと発信しなきゃいけない内容だけど、でもそのシリアスさをそのまま発信するんじゃなくてちゃんと2人に落とし込んでいるんですね。
そうそう! タトゥーもセックスのことも、世のなかでタブーとされていることも私たちがあえて紹介したら興味を持つ若い子が増えると思うんだよね。SDGsもいまはTEDみたいな真面目な記事しかないから、それも大事だけどもっと若い子に興味を持ってもらうためにも別のアプローチが必要だと思うの。
ーそう思えます! 例えば味噌を作ってた回を観たとき、味噌のこと正直興味なかったけど、見たらめっちゃおしゃれじゃんって感じて…。
ね! そうやって「おしゃれじゃん」ってまずは感じて興味持ってもらえたらうれしいな。

今後の更新も楽しみにしていてネ!

自分のことは自分で紹介! ギーセン珠理についてのライナーノーツ。

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