Girls Just Want To Have Fun!
Newcomer, but classic Rock’n’Roll
スタークロウラーが奏でる、旧き良きロックンロール。
Photo_Satomi Yamauchi (Artist), Kazumichi Kokei (Live)
Interview & Text_Yasuo Murao
Interview & Text_Yasuo Murao
たった1枚のシングルをリリースしただけにも関わらず
爆発的な人気を獲得したスタークロウラーが、
ついに1stアルバム『STARCRAWLER』をリリース。
それに合わせてジャパンツアーで来日した彼らに話を聞けました。
- また新しいロックンロールの伝説が生まれようとしているのかもしれない。LAで生まれ育った若者たちによって結成されたバンド、スタークロウラーは、ネットにあげられたライブ映像で人気が爆発。デビュー・シングル『Ants』を発表すると、デイヴ・グロール(フー・ファイターズ)やエルトン・ジョン、俳優のイライジャ・ウッドまでがバンドにラブコールを送った。メンバーは、写真家のオータム・デ・ワイルドとドラマーのアーロン・スパークの娘、アロウ・デ・ワイルド(ヴォーカル)を中心に、ヘンリー・キャッシュ(ギター)、オースティン・スミス(ドラマー)、ティム・フランコ(ベース)の4人。激しいギターのリフ。荒々しいビート。そして、血糊を吐き、観客を挑発するアロウのヴォーカル・パフォーマンスは、ロックンロールのプリミティヴなエネルギーに満ちている。ライアン・アダムスがプロデュースを手掛けたデビュー・アルバム『Starcrawler』がリリースされてさらなる話題を呼ぶなかで3月に初来日が実現。観客を熱狂させた渋谷での初ライブの翌日、アロウ、ヘンリー、オースティンに話を訊いた。
- 先日のライブ、かなり盛り上がりましたね。
- オースティン:始まるまで、どのぐらい人が来てくれるか、どのぐらいノッてくれるかわからなかったけど、いざ始まってみるとお客さんが楽しそうに飛んで跳ねたりしてくれて最高だったよ。みんな笑顔で、キュートで。その顔を見てたらうれしくなって、ニヤニヤしてしてしまって演奏するのに苦労したくらい(笑)
- アロウとヘンリーは客席に飛び降りてましたね。
- ヘンリー:だいたい毎回やっちゃうんだ。お客さんのエネルギーでこっちも盛り上がっちゃって、ステージで自由に動ける2人(アロウとヘンリー)が最後に飛び込むっていう(笑)
- アロウ:ステージにあがるとスイッチが入るから。
- それってステージ衣装の効果も大きいのでは? スタークロウラーの場合、ステージ用にしっかりドレスアップしてますよね。
- アロウ:確かにステージ衣装は気持ちを切り替えるきっかけになってる。ステージ衣装で重要なのは、自分が表現できること。ステージを盛り上げてくれること。そして、何より目立つことね。
- 自分で衣装をデザインしたりもします?
- アロウ:デザインして作った服も何着か持ってる。昨日の衣装は買ったものだけど、パンツのフリンジは自分で長くしたの。
- そうやって工夫しているんですね。そういえば、アンプの上に子羊の置物が飾ってありましたが、あれは何かいわれがあるんですか?
- ヘンリー:あれは家にあったんだけど、聞いた話ではぼくの父親の兄、つまりおじさんが、子供の頃に初めておばあちゃんから買ってもらったおもちゃだったらしい。もうおばあちゃんは亡くなったんだけど、おばあちゃんの形見な感じで、いつも持ち歩いてるんだ。
- いつもおばあちゃんが見守ってくれる?
- ヘンリー:うん。ぼくらがヘマしないようにってね(笑)
- 心強いですね(笑)。
- スタークロウラーの音楽は、パンクやハード・ロック、グラムなど、70年代のロックからの影響を感じさせますが、メンバーが共通して好きなのがそういったサウンドなのでしょうか。
- オースティン:最初にぼくとアロウが一緒に活動してて、そこに別のバンドでやっていたヘンリーやティムが加わったんだけど、4人でやるようになっていちばん盛り上がったのがそういった70年代のロックだった。みんな大好きだったからね。
- ファッションに関しても70年代から刺激を受けることが多い?
- アロウ:そうね。いまの時代に比べて、自分がどう見られるかということにこだわっていた時代だったと思う。そのこだわりがファッションにも反映されているわ。
- いま身につけてるネックレスも素敵ですね。
- アロウ:ありがとう。これは昨日、原宿で買ったの!
- そうなんですか! もう日本を楽しんでるんですね。
- アロウ:昨日行ったカフェも楽しかった。私たちの好きな音楽がずっと流れてて。
- オースティン:ぼくたちは70年代のロック以外もいろいろと聴いてるんだ。例えばソニック・ユースとかニルヴァーナみたいなグランジ・ロックも、みんな好き。メンバーそれぞれの趣味は幅広くて、ヘンリーはビーチ・ボーイズとかハリー・ニルソンといった60年代ポップスも好きで、ティムはベーシストだからかモータウンとかソウル・ミュージックも聴く。アロウはヘアメタル(80年代にLAを中心にしてブームになった、派手な衣装を身にまとったヘヴィメタル)が好きで、ぼくはみんなが好きなものを全般的に聴いてるって感じかな。
- 過去の音楽を幅広く聴いてるんですね。いまの音楽との違いって感じます?
- オースティン:古い音楽ってのは、レコーディングのプロセスのこともあって、ものすごく集中して音楽を作っているような気がする。いまはいろんなことが簡単にできるから集中力が削がれてしまって、例えばぼくなんかも携帯をイジりながら曲作っちゃったりしてしまう。音楽作りに対する熱意という点では、昔のバンドから感じることが多いってのは言えるかも知れないね。
- そういえば今回、あなたたちは昔ながらのアナログ・レコーディングに挑戦していますね。やってみてどうでした?
- ヘンリー:すごく良かったよ! 有名な「サンセット・サウンド・スタジオ」で録ったんだ。そこはヴァン・ヘイレンの最初の2枚のアルバムとかボブ・ディランのアルバムをレコーディングした由緒あるスタジオで、立派な建物のなかで歴史の重みを感じながら作業できるのはおもしろかったね。ライアンの機材を持ち込んで、24チャンネルで2インチのテープを使って録ったんだ。プロツールズを使って、どこでも作れるような音とは全然違う。
- ベテランのミュージシャン、ライアン・アダムスのサポートは大きかったと思いますが、彼とのレコーディングで学んだことは?
- ヘンリー:まず、クリエイティブに物事を創作していくことを教えてもらえた気がする。初めてプロフェッショナルなスタジオに入って作業したから、最初はちょっと圧倒されるところもあったんだ。特にバックトラックを録っているときは落ち着かなかった。でも、ライアンが「オープン・マインドで新しいことやってみろ!」とか「変わったサウンドを出してみろ!」なんて言って後押ししてくれた。あと、もうひとつ今回のアルバムのヒントになったのが、シンプルさの重要性だね。スタジオには機材が揃っているからいろんなことができる。だから音を複雑に重ねたほうがいいと思いがちだけれど、そうじゃなくて、実はシンプルなものがベストだったり、シンプルなもののほうが聴く側の耳に届きやすいということをライアンは教えてくれたんだ。
- レコーディングで印象に残っているエピソードがあったら教えてもらえますか?
- ヘンリー:ギターのソロ・パートのレコーディング中に、ライアンが「何か物足りないな」って言い始めたんだ。そのときぼくはライアンから60年代製の素晴らしいストラト・キャスターのギターを貸してもらって弾いてたんだけど、ライアンは「ただ弾いてるんじゃつまらない。ギターを叩くとか投げつけるとか、そういう音を入れよう!」って言い出した。だけど、貸してもらったギターだから叩いたり投げたりするなんてできないってぼくが言ったら、彼は「いいからやれよ!」って。それでギターをガンガン叩きながら弾いてたら、ライアンが「それだよ! その感じ!」って盛り上がったんだけど、そのうち、なんだか焦げ臭くなってきて。調べたら、真空管のアンプのバルブが燃えてた(笑)
- 危うく火事に(笑)。曲はどんな風に作り上げていくんですか? 役割分担はあります?
- ヘンリー:全員参加なんだ。メンバーそれぞれが曲を持ち寄るけど、みんなで意見を出し合って作ってる。自分のパートは自分で書いてるしね。ぼくら4人で演奏するからこういう音になるわけで、だから曲のクレジットもバンド名義なんだ。ソニック・ユースとかストゥージズだってそうだろ?
- 全員が平等なんですね。
- 『I Love LA』のミュージックビデオを見ても4人の仲の良さが伝わってきます。4人がドーナツショップでバイトをしているという、LAっぽさ全開のビデオですね。
- ヘンリー:あれはアロウのアイデアだった。アロウのママのオータムが監督だったんだけど、撮影スタッフはみんなオータムの友達だったから、現場はすごく良い雰囲気で楽しかったよ。
- アロウ:LAといったらやっぱりドーナツショップかなって思ったの。いたる所にあるし、おいしいのよ。
- オースティン:ティムが撮影が苦手で。自分の姿をビデオで見るのが嫌だから最初は出たくないって言ってたんだ。でも、オータムとは気が合ったみたいで、無事撮影に参加することができた。ただ、完成したビデオを見るのは苦手みたい(笑)
- シャイなんですね(笑)
- ヘンリー:ライブで調子が悪いときは、ステージの隅の方に行って後ろ向いて弾いてることがあるんだ。前にライブが散々だったときは、ティムは演奏中に少しずつ後ずさっていって、最後には舞台袖の幕の後ろで弾いてたことがあったくらい(笑)
- ライブを見ると、アロウとヘンリーが盛り上げ役で、ティムとオースティンのリズム隊はバンドを背後からしっかり支えるっていう感じでした。
- オースティン:全員で暴れたらやり過ぎというか、お客さんも見てて疲れるんじゃないかと思って。これくらいがちょうどいいバランスだと思う。
- ヘンリー:普段のぼくらはおとなしいんだ。撮影のときなんか、よく「もっと元気よくして!」って言われるけど、いつもは静かで落ち着いてる。ただ、ぼくはすぐにこうなるけど(貧乏ゆすりする)。
- じっとしていられない?(笑)
- ヘンリー:子供だから(笑)
- 最後にスタークロウラーとしてやってみたいことや目標はありますか。
- ヘンリー:いっぱいあるよ! たとえばライブ・アルバムを作るとか。
- オースティン:日本で作れるといいな。ブドーカンとかで。
- いいですね! 『チープ・トリック at 武道館』みたいに。
- ヘンリー:それ、大好きなアルバムだよ。『スタークロウラー at 武道館』。楽しみにしてて!