濱尾ノリタカ、物語を紡ぐ眼差し
Seeing the Essence.
濱尾ノリタカ、物語を紡ぐ眼差し
2025.12.10
映画『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』で
主人公の敵対勢力“獅子頭連”の副頭取、
十亀条を演じた濱尾ノリタカさん。
役への向き合い方から共演者との関係性、
俳優として感じたことまで、
飾らない言葉で語ってくれました。
Photography: Yuto Kudo
Edit & Text: Shunta Suzuki
- ―原作を読んだときの、第一印象や本作の魅力について教えてください。
- 僕は、主人公たちと敵対するグループ(獅子頭連)の十亀を演じると知ってから読ませていただきました。なので、獅子頭連にフォーカスした感想になってしまうんですが、アンバランスな組織だな、というのが第一印象です。トップに山下幸輝さん演じる兎耳山がいて、その下に十亀がいるという上下関係がありますが、兎耳山が無理やりメンバーを従えているわけではなく、実質的には十亀が動かしている部分もあります。そんな「二番手の苦悩」が十亀にはあると思っていて。 この獅子頭連という組織自体も、悪に振り切ってしまえば楽なのに、根底には優しさがあるからこそ苦しんでいる。そういった組織のあり方や、主人公グループ(防風鈴)との対比がおもしろい作品だと感じました。
- ―もともと『WIND BREAKER』はご存知でしたか?
- はい、知っていました。以前、アニメ化されるタイミングで、大規模なプロモーションが渋谷の街で行われていて、SHIBUYA TSUTAYAや街路灯のフラッグなどで見かけていたんです。そこで自分も気になって、調べたことがあって。
- ―では、十亀役に決まったときの率直な感想を教えてください。
- 主人公の一番のライバルと言えるポジションだと聞いて、映画でそういった大役を任せていただけるのが初めてだったので、率直にうれしかったです。 萩原健太郎監督とは、『ブルーピリオド』でご一緒しており、実はそのときに「今後も一緒にやっていきたいね」と言葉をかけていただいたんです。そんな監督の期待に応えなければという強い想いがありました。
- ―原作があるキャラクターを演じる上で、意識した点はありますか?
- 原作へのリスペクトを第一に考えて、まずは外見を十亀にすること、体格を仕上げることを特に意識しました。彼は身体が大きいけど、顔はシュッとしている、現実離れしたスタイル。そのシルエットに近づけることや、アイコンでもある下駄を履いて歩く練習など、ビジュアルと動きから十亀条になっていこうと。
- ―内面的な役づくりについても教えてください。
- 僕と十亀の共通点は「手放すことが上手ではない」ところだと思います。諦めれば楽なのにと、わかっていても感情を捨てられずにもがいている。そんな彼が、同じようにもがいている主人公の桜に影響を受けていく過程を丁寧に演じました。最初は、桜に苛立ちを感じていますが、次第に彼のまっすぐな姿勢や表現に羨ましさも芽生えてくる。主演の水上恒司くんもまさにまっすぐな人で。僕自身が役者として感じる、水上くんへの気持ちも重なり、自然な心の流れで十亀と桜の関係になれたのは幸運でした。
- ―演じていくなかで高めあっていく、素敵な関係ですね。
- 水上くんの芝居は自然体というか、すごくリアルで。お互いに余計な調整をせず、役のことだけを中心においていたので、二人ともいい集中状態で臨めたと思います。持ち込んだものをその場でぶつけ合い、監督を含めて話し合いながらアウトプットする。もちろん、同年代かつライバル役なので、役者として負けられないという気持ちもありましたが、本当にいい仲間だと思っています。
- ―では、獅子頭連のトップでもある兎耳山との関係性はどう捉えて演じましたか?
- そうですね。彼とは、もともと仲の良い友達だった事実があることでしょうか。獅子頭連というシステムの中ではナンバーワンとナンバーツーの関係ですが、昔からの友達という過去の記憶が、常に十亀のなかに流れていることを意識して演じていました。
- ―荻原監督からの指示で、印象に残っていることはありますか?
- 撮影期間中のある夜に、翌日演じるシーンについて悩み、監督に相談をしにいったことがあって。自分が考えていたことをいろいろ話してしまったんですけど、監督は前日にも関わらず柔軟に受け止めてくださったんです。長く考え抜いたプランがありながら、現場での役者の感覚やフィーリングを信じて託してくれて。萩原監督のその強さと覚悟があったからこそ、本作品が仕上がったんだと思います。
- ―同世代の共演者が多い作品でしたが、なにか感じるものはありましたか?
- 同世代、しかも男性キャストばかりの現場で、毎日男子校にいるようでした(笑)。キャラやタイプ、演技に対しての向き合い方、それぞれ違っておもしろかったですね。 例えば、杉下京太郎を演じたBE:FIRSTのJUNONくんのように、普段はアーティストとして活動されている方も、役をしっかり研究して身体づくりでも表現されていて。いろんな人の本気を目の当たりにできたのは良い経験でしたし、無意識のうちに影響を受けていたと思います。
- ―本作で、特に注目してほしいシーンはありますか?
- 十亀としては、やはり桜との関係性の変化ですね。そこがすべてを変えていくのでぜひ見てほしいです。作品全体としては、どのキャラクターを推しても楽しめる作品になっています。メインで映っていないときでも、後ろにいるキャラクターの感情の機微まで丁寧に描かれているので、そこにも注目していただきたいです。
- ―最後に、濱尾さんの今後の展望を教えてください。
- 今回の『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』を通して、改めて映画づくりの楽しさを感じました。スタッフとキャストが一丸となって作品をつくりあげていく、あの素敵な時間を、これからもまた味わえたらうれしいです。
INFORMATION
『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』
原作:にいさとる『WIND BREAKER』(講談社「マガジンポケット」連載)
出演:水上恒司、木戸大聖、八木莉可子、綱啓永、JUNON(BE:FIRST)、中沢元紀、曽田陵介、萩原護、髙橋里恩、山下幸輝、濱尾ノリタカ、上杉柊平
監督:萩原健太郎
脚本:政池洋佑
音楽:Yaffle,桜木力丸
配給:ワーナー・ブラザース映画
公開中
公式HP
©︎にいさとる/講談社 ©︎2025「WIND BREAKER」製作委員会