Magic Hour Switches
若葉竜也と青柳文子、10年越しの「はじめまして」。
SHOOTING EACH OTHER in 下北沢.
かつて雑誌や映画を通して、
お互いの存在を知っていたという俳優・若葉竜也さんとモデル・青柳文子さん。
共通の友人を介した長い“伏線”を経て、
現在オランダを拠点に暮らす青柳さんの帰国をきっかけに、
初めての対談が実現しました。
今回の企画の舞台となった下北沢で過ごした記憶や海外での暮らし、
写真やファッションについて語るうち、思いがけない過去のエピソードも飛び出します。
対談の後はカメラを手に街へ。
互いの目線で下北沢を切り取りながら、変わりゆく街と、それぞれの今を撮影。
『GIRL HOUYHNHNM』では若葉さんが撮影した写真とともにお届けします。
Photo_Ryuya Wakaba
Text_Shoko Matsumoto
Edit_Shoko Matsumoto、Daiki Yamazaki
cooperation_CAFE TROIS CHAMBRES、hickory
Profile
青柳文子(右)
1987年12月24日生まれ、大分県出身。独創的な世界観とセンスで同世代女性から支持を集め、雑誌、映画、ドラマ、CMなどに出演。映画や旅行についてコラムを執筆、商品プロデュースなど様々な分野で才能を発揮している。二児の母。2021年に初のエッセイ本『あか』を出版。映画『サッドティー』『知らない、ふたり』などに出演。
若葉竜也(左)
1989年6月10日生まれ、東京都出身。2016年公開の『葛城事件』で、第8回 TAMA映画賞・最優秀新進男優賞を受賞。2024年、テレビドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』(KTV・CX)にて、第120回 ザテレビジョン・ドラマアカデミー賞・助演男優賞、東京ドラマアウォード2024・助演男優賞、第49回 エランドール賞・新人賞を受賞。作品によって違った表情を見せる幅広い演技力で、数多くの作品に出演。
意外な二人の、初対談が実現。
ーーお二人の組み合わせを意外に思う読者もいると思います。知り合ったきっかけを教えてください。
若葉竜也(以下、若葉):共通の友人を介して青柳さんの存在は昔から知っていたんです。今回青柳さんが帰国するタイミングで、一緒に仕事ができたらいいねという話になって。いきなり対談するのもあれだから、まずは共通の友人も含めてご飯を食べましょうか、というのが最初でした。
青柳文子(以下、青柳):私もその共通の友人から若葉くんのことを聞いていて。あるとき友人のインスタライブを見ていたら若葉くんが出てきて、『この人、好きな映画で見たことあるな』って。映画を観ていて、すごくいい芝居をする人がいるなと思っていたんです。
若葉:僕も、僕らの世代だったら青柳さんのことはみんな知っているんじゃないですか? コンビニに行けばいっぱい雑誌の表紙になっている青柳さんがいたし。ストリート誌とか、アメブロも見ていました。
ーー実際に会ってみて、お互いの印象はどうでしたか?
青柳:若葉くんは、もっともの静かな人だと思っていました。
若葉:意外と喋るって、よく言われます。
青柳:めっちゃ喋る(笑)。
若葉:人見知りだから、恥ずかしくていっぱい喋るようになって、それが癖づいた感じですね。現場でもそうです。
青柳:(対談している)今は?
若葉:今はちょっと俳優ぶってます。俳優ってこういう感じで喋らなきゃいけないのかなって(笑)。
青柳:私が短い期間で印象に残っている若葉くんの姿がいくつかあって。あるとき、若葉くんがチョコレートケーキを食べながら、『ガトーショコラってフォークに絶対チョコがつくよね』って話をしたんですよ。『あれ、フォークにつけずに綺麗に食べられる人いるのかな』って。
若葉:クソみたいな話(笑)。
青柳:そう。で、最初は普通に『そうだよね』って話していたんですけど、ふと見たら、すっごいプルプル震えながら、フォークについたチョコを力を入れて口で取ろうとしてて(笑)。みんなを笑わせようとしてくれていたんだと思うんですけど、それがすごく印象に残ってる。
若葉:自然にやったんですけどね。
青柳:それで、すごく安心したんですよ。『普通の人なんだ』って。みんなを笑わせようとする優しさがある人なんだなって。
変わりゆく街、下北沢の現在地。
ーーお二人にとって、今回の舞台でもある下北沢はどんな街ですか?
青柳:私は昔、古着を着ていて前髪をぱっつんにしていたから、『下北にいそう』ってよく言われていました。でも、実際はそんなに行かなかったんですよ。人が多くて狭いのが苦手で。むしろ『私も下北に行ったほうがいいのかな』って思っていたくらい。その後、舞台に出るようになって、下北で稽古したりするようになって。それが一番思い出として残っています。
若葉:僕は学生時代ずっと高円寺にいたので、下北は演劇とか役者の人たちが飲み会を開いている街、というイメージでした。高円寺はバンドマンがいっぱいいて、下北は役者がいっぱいいる、みたいな。
ーー街自体も大きく変わりましたが、現在の下北沢はどう感じますか?
若葉:僕は、下北沢を舞台にした映画『街の上で』を撮った頃にはもう都市開発が始まっていたので、今とのギャップはそこまで感じないんですよね。みんな『変わった、変わった』って言うけど、僕にとっての印象はあまり変わっていません。
青柳:私はすごく使いやすくなったと思うし、開発途中の下北にもいい思い出があるんです。すごく悲しいことがあって友達と電話していたとき、電話の向こうの友達の横にたまたま某ミュージシャンがいて。『ぶんちゃん、大丈夫だよ』って、アカペラで歌ってくれたんです。工事中の駅のホームで電話越しに聴きながら、もう号泣ですよ。映画みたいだった。泣きながら『これ、電話の音声って録音できないのかな』って思ってました(笑)。
海外で生活すること、
その場所の文化を感じること。
ーー青柳さんは現在オランダで暮らしていますが、日本を離れて暮らしてみて、感じる違いはありますか?
青柳:東京ではやっぱり仕事中心の生活なんですけど、オランダでは何者でもない状態から始めている感覚があって。小学生とか、赤ちゃんみたいな気持ち。『これから人生を作っていくぞ』みたいな。何者でもないし、何でもできるし、何もできない。可能性が無限大だけど、同時にゼロでもある。その状態をずっとやっている感じなんです。
若葉:異国の地に何もない状態で飛び出していけるのは、すごいと思います。僕にはちょっとできない。
青柳:今回、仕事で日本に帰ってこられたのがすごく嬉しくて。子どもと一緒に帰ってくるのは3年ぶりなんです。仕事で1、2日だけ帰ってくることはあったけど、こんなに長くいるのは久しぶり。やっぱり日本にいると、もっと帰ってきたくなりますね。
ーー若葉さんは海外に行かれたりしますか?
若葉:最近ようやく行くようになりました。実は飛行機が怖くて。映画祭とかで『もう行かなきゃいけない』って状況になって、年貢の納め時か、みたいな(笑)。それで行くようになりました。
青柳:最近はどこへ?
若葉:この間、韓国に旅行で行きました。韓国は映画祭で釜山には行っていたけど、ソウルは初めてでしたね。
青柳:海外に行くと、気持ちも変わりますか?
若葉:そんなに変わらないですね。『こういう文化なんだ』って、その文化の中で生きている人たちがいる、という感覚。自分の価値観がどうこうというより、その人にはその人の文化があるんだなって。それを体験させてもらいに行っている感じが強いです。
青柳:若葉くんって、いろんなことに変に影響を受けなさそう。
若葉:自分は自分、っていうのはあるかもしれない。でも、別にプライドがあるわけじゃなくて。日本人同士でも、同じ感覚の人なんてほとんどいないじゃないですか。その人にはその人の考え方、その人の文化があるだけっていう。言葉が通じなくても、今はAIもあるし。機能的なことは、昔より全然困らないですよね。
二人にとっての
ファッションと写真について。
ーーお二人のファッションについても聞かせてください。服を選ぶときに大切にしていることは?
若葉:若い頃はいろんなものを着たかったんですけど、いろんな服を着れば着るほど、取材とかで本当に伝えたいことがあるときに、服が余分な情報になっている気がしてきて。だから、どんどんシンプルになっていきました。自分の言葉や、自分が本当に好きなもの、嫌いなものがちゃんと伝わるような服を選ぶようになりました。俳優だからこそ、というのもあると思います。いろんな役を演じるから、着飾ることで言葉の輪郭がぼやけないようにしたいんです。
青柳:私は逆かもしれません。存在で仕事をしている、キャラクターで仕事をしているところがあるから。
若葉:青柳さんは存在感があるから。僕は割と個性がないんで、もういいや、みたいな(笑)。
青柳:個性なくないです。
若葉:自分が個性的だと思っている作品選びをしてるから個性派っぽく見えるだけで、僕自身はめちゃめちゃ凡人なんですよ。
ーー今回はお互いに写真を撮っていただく企画ですが、お二人とも写真がお好きですよね。
青柳:私は今回ライカのデジカメをオランダから持参しました。黒が引き締まっていて、すごく綺麗に写るんです。他にも、若葉くんからフィルムカメラを借りて教えてもらいながら撮影する予定。楽しみです。
若葉:僕が初めてカメラに触ったのは高校1年生くらい。フィルムカメラが好きな友達がいて、使わなくなったからってもらったのがきっかけです。そこからデジタルにも行ったんですけど、撮らされている感覚が強くなって、写真をあまり大事にしなくなってしまって。ここ3、4年くらいで、またちゃんとフィルムを触ってみようと思って。映画もフィルムからデジタルになったじゃないですか。35ミリとかスーパー16ミリに触れることがない俳優も増えているから、フィルムに触れておかないとなって。撮られる緊張感、撮る緊張感みたいなものを感じたかったんです。
青柳:写真すごく上手ですよね、ギターも。
若葉:いやいや。ギターもカメラも、始めた動機は割と不純で。モテそうだなって(笑)。
青柳:でも、私が聞くところによると若葉くん、本当にモテるんだよって。
若葉:どこ情報なんですか?
青柳:友人から聞きました。昔、事務所のお花見でギターを弾いていたって。
若葉:一芸があると『やれ』って言われるじゃないですか。それくらいのことですよ(笑)。
10年越しに回収できた、とある“伏線”。
ーーここまでお話を聞いてきて、二人が出会うまでには、もうひとつ長い物語があったんですよね。
若葉:そうなんです。実は、さっき話していた共通の友人が、昔、青柳さんのことをものすごく好きだったんですよ。恋愛的に。
僕は当時から彼の相談をずっと聞いていて。青柳さんに告白して、振られた夜も一緒にいたんです。そのとき、彼のために『文子』っていう曲を書いてあげたんですよ。
青柳:その曲を、この間10何年越しに初めて聴いて。めちゃくちゃいい曲でした。
若葉:2曲くらいあるんです。『文子の前歯が好き』みたいな歌も(笑)。ネタをもらって作らされてたんで。会ったこともない人のためのラブソングを。
青柳:その彼が話していた私とのデートのエピソードが、すごく印象的で。
若葉:水族館に行ったとき、薄い水槽を挟んで青柳さんと友人が向かい合っていて、クラゲがふわっと泳いでいたらしくて。彼はクラゲを見るふりをして、ずっと青柳さんを見ていたらしいんです。そしたら青柳さんが水槽の横からひょこっと顔を出して、『クラゲかわいいね』って言った。その顔が世界一可愛いくて、『おめえのほうが可愛いよ』と思ったらしいです(笑)。
青柳:でも彼は緊張して一言も喋らなくて。デート中私ばっかりずっと喋ってたんです。しかも青いジャージのセットアップで来たんですよ。
若葉:彼、当時はまだ何もかも初めてで。階段を二人で降りていて、青柳さんがアウターを脱いだときに香りがふわっとして、それで目眩がして恋に落ちたっていう話もしてました(笑)。そんな彼ももう35歳ですよ。大人になりましたね。
ーー10年以上前の、会ったこともない青柳さんの話を、若葉さんはずっと横で聞いていたんですね。
若葉:そうですね。僕はずっとその彼から青柳さんとの話を聞いていたし、彼が覚えている描写がすごくエモーショナルだったから。実際に友達と青柳さんが二人で話しているのを見ると、『やっとこのツーショットが見られた』っていう感動がありました。
青柳:なんか、長い友達の関係っていいですよね。友達の恋愛をずっと横で見守ってくれて。
若葉:応援はしてないですよ。面白がっていただけ(笑)。だから今回の企画が実現してよかったです。