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Tokyo Reality.

アーティスト小田原愛美の
パンク精神について。
Photo_Tetsuo Kashiwada
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SNSが生活に欠かせないツールとなったおかげで、
以前に比べて格段に個性や才能がフックアップされやすくなったこの頃。
いまストリートではどんな女の子が活躍し、
局地的に話題を集める彼女たちは何を考えて生きているのか?
今回は、イラストレーターとI&MEのデザイナーも務める小田原愛美さんにインタビューします。

誰かのマネはしたくないから、憧れのアーティストはいません。

まずは、自己紹介をお願いします。
小田原愛美 @aimiodawara(以下小田原):小田原愛美です。イラストレーターとして活動しつつ、〈アイ&ミー(I&ME)〉というブランドをやっています。
それぞれ始めてどのくらいですか?
小田原:ブランドは今年で3年目で、イラストを本格的に始めたのはその2〜3年前くらいかな。服は2番目っていう気持ちでやってたけど、最近はそっちの方が忙しいかも。
イラストレーターになったきっかけは?
小田原:小さい頃から絵を描くのが好きで、本格的に学ぶためにグラフィックデザインの専門学校入りました。でも就職活動する気が起きず、ちょっとずつ入ってくる仕事をこなしていたらイラストレーターに、っていう感じですね。
誰かに憧れて、とかではないんですね。いまでも好きなアーティストはいないんですか?
小田原:誰かのマネをしたくないから、あまり見ないようにしてます。でも、加賀美健さんの作品を観たときは驚いたかも。「こんなに自由に表現していいんだ」みたいな。皮肉めいた作品とか下ネタ的なモチーフも多いんですけど、わかってやってるじゃないですか? 技術云々ではなく、センス。加賀美さんには感化されましたね。私も小学生のときは変な絵ばかり描いてたので、「そのまま育ってよかったんだ」と(笑)。
自分としては少しセーブしている感覚なんですか?
小田原:仕事でNGがある時は従ってるけど、個展とか自分の絵を描く時は自由にやってます。最近は首チョンパされた絵とか描いてますし。
ブランドを始めたきっかけは?
小田原:父がずっとアパレルをやっていて。若い時はロカビリー系のブランドをやったり、〈ブラザーフッド(BROTHERHOOD)〉というブランドをやったり。いまでも〈ピンクドラゴン(PINK DRAGON)〉と一緒に服をつくってますね。で、私が大人になったから「お前もやってみたら?」と言われて。
ファッションブランドに関しても、好きなブランドとかはあまりない?
小田原:あまりないですね。とりあえずトレンドにはあまり興味ないし、あと私は冒険心がないから結局は普通の服を着ていると安心しちゃうんです。自分がつくった服以外はほとんど古着で、渋谷の「I&I」でよく買い物してます。
ブランドをやっていく上で、何か一貫したテーマはありますか?
小田原:特別なテーマはないですね。その時に着たいものとか、自分がつくったグラフィックをベースにしています。
いま着たいものというのは?
小田原:ロカビリーテイストのアイテム。父がその方面に明るいこともあって私自身ずっとサイコビリーが好きだから。ロカビリーブームが来る予感がしてるから、マッチしそうですね。
好きなバンドはいますか?
小田原:デスマーチ艦隊っていうバンド。やばいですね。小さいころからサイコビリーとかロカビリーのライブにもよく連れていかれてました。
それは何歳くらいのとき?
小田原:3歳のときかな? お父さんの腕に抱かれて聴いてましたね。THE COOLSとか横山健さんのライブもよく行ってました。
イラストも服も、常に新しいものを創り続けないといけないじゃないですか? それに難しさは感じませんか?
小田原:イラストは自分のペースで描けるけど、服は展示会をやるために年2回は絶対につくらないといけないですからね…。たまに休みたくなります(笑)。
次の秋冬は?
小田原:考え中です…。
逆に、やっていて楽しいと思う瞬間は?
小田原:展示会でみんなに見せて、反応がよかったときがやっぱりうれしいですね。イラストは描き始めて、どんどんアイデアが湧いてきて、没頭してるとき。
どんな人に自分のブランドを着てもらいたいんですか?
小田原:大人。若い子に着てもらえるのもうれしいけど、ただ「流行ってるから」という理由だけの人はあんまり。カルチャーをちゃんと理解している人に「愛美ちゃんわかってんじゃん」って言われたい(笑)。

日常レベルの不満がインスピレーション源(笑)。

少しプライベートなことも聞かせてください。普段はどの辺りで遊ぶことが多いですか? もしお気に入りのスポットがあれば。
小田原:渋谷と中目黒かな。出勤前に個展でもよくお世話になっている「Good People & Good Coffee」でコーヒー飲んで、夜は「Baja」とか「いろは寿司」でよく飲んでます。遊ぶといっても、クラブみたいなワイワイしてるところにはあまり行かないですね。外に出ないでゲームしたりとか。最近は『レインボーシックス』っていうテロリストのソフトにハマってて、イラストレーターのfaceさんとかと夜中の3時くらいまでひたすら。
faceさんとは一緒にイラスト描いたりしてますもんね。住まいもずっと東京ですか?
小田原:はい。事務所も道玄坂にあります。
東京は楽しいですか?
小田原:東京しか知らないからわからないです。とりあえず、人が多いのが嫌。
ほかにはどんな友達と一緒にいることが多いですか?
小田原:スケーターが多いかも。〈FTC〉のひととか。
愛美さんもスケートやるんですか?
小田原:私は見てるだけ。高校生のときはやってたけど、痛いから辞めた。あとスケートやってる女子はモテないんですって。
常にフラットなテンションのイメージがある愛美さんの口から“モテ”という言葉が出てくるのは正直意外でした…(笑)。
小田原:彼氏の前だと違いますよ。彼氏に「今日俺休みなんだよね」って言われたら、「なら休むね。どこいく?」みたいになっちゃう(笑)。
『レインボーシックス』然り冒頭でもお話していた首を切るイラスト然り、残虐的というか、どこかアイロニックな世界観を作品から感じるんですけど、そのインスピレーション源はどこからくるものなんですか?何かに対する不満とか?
小田原:もともと『シャイニング』とか『死霊のえじき』みたいな7,80年代のホラー映画が好きなのもあるんですけど、不満もたくさんありますね。
それは社会に対する?
小田原:いや、もっと日常レベルの話で。街中で遭遇する変な人とか、勘違いしててイケてないと思う人に対する(笑)。
例えば?
小田原:例えば…、

・ 短足のスキニー。一度鏡を見た方がいい。そして目をそらさない方がいい。
・ 男の伊達眼鏡。偽物おしゃれ眼鏡NG。ただし女子はOK。
・ THE 美容師。〈シュプリーム〉をダメにした種族。
・ 赤とか黄色の差し色の靴下。普通の色を履いた方がいい。
・ コート脱いでパーカー脱いで、コート着てパーカーを肩にかける矛盾。コート脱げば?
・ カーディガンを肩にかけてる人。その空っぽのバッグに入れれば?
・ デザート盛り合わせプレートにチョコペンでハッピーバースデー。安っぽい。
・ 展示会を服を安く買えるところだと思ってる人。
・ 着飾ることにしかお金を使わない人。アートも買うべき。
・ 髪にワックスつけ過ぎな男。街中を鏡にしすぎ。
・ リポストした写真のみで構成された空っぽなインスタグラマー。
・ 彼氏とのイチャイチャ写真をあげがちなサーファー女子。
・ “♯お洒落さんと繋がりたい“にお洒落さんはいない。
・ 一般人なのに、“○○_offi”というアカウント名。
・ よくわからないレセプションやイベントの写真をあげがちな女子。
不満だらけじゃないですか(笑)。
小田原:逆に言えば、大した不満はないってことで(笑)。
SNSの話が挙がりましたけど、愛美さんにとってSNSはどんな存在ですか?
小田原:良いところもあり、悪いところもあり。
良いところは?
小田原:SNSがなかったら、こんなにいろいろな仕事はできなかったかもしれない。実際にインスタグラムから仕事の依頼も来ますし。
では、悪いところは?
小田原:たくさん時間をかけて形成した自分のバックボーンを、すぐにパクられること。薄っぺらいやつ、大嫌い。
いまや情報収集のツールとしても欠かせないですからね。そういう使い方はしないんですか?
小田原:あまりそういう目的では見ないですね。いろんなものを吸収し過ぎて、無意識のうちに「あれ?これ○○っぽい」ってなるのが嫌なんで。フォローしてるのも友達ばかり。
将来について、具体的なビジョンはありますか?
小田原:結婚したいです(笑)…えー仕事については正直そこまで先のことを考えていなくて、もらえる仕事をこなしていきたいです。あと、がんばって型数を増やしたいです。いまは1シーズンで20型くらいなので。イラストは描きたいときに描けているから満足しています。
早く彼氏できるといいですね。
小田原:いや、彼氏できたら「もうこれでいいか」って言って多分10型くらいになる(笑)。なので、とりあえずは次の2017秋冬コレクションに向けてがんばります。