Freada goes WEST COAST.
「フリークス ストア」の元プレス、
小笠原希帆さんが始めた 〈フリーダ(Freada)〉をご存知?
「古着が好き」というピュアな気持ちで 己の道を邁進しているところが清々しく、
ほかとは一線を画したブランド(これは断言させてもらいます!)。
小笠原さんが〈フリーダ〉を引っさげてロサンゼルスで勝負した
5日間に同行させてもらいました。
ロサンゼルスに到着したその足で、ダウンタウンへ。ヴィンテージマーケット「インスピレーション」の設営に取り掛かります。
〈フリーダ〉のブースは入り口の目の前! 周りは無骨なメンズブランドやヴィンテージショップが並ぶので会場でもひと際華やか。
いちばん大切なブランドロゴを貼り付ける瞬間。緊張感が伝わります。
ヴィンテージの額に過去のルック写真を入れて飾ります。
2017年のデビューコレクションから、2018年春の新作までほぼフルラインナップを持ってきました。
ロザンゼルス2日目。この日は午後のオープンに備えて設営もスピードアップ。〈フリーダ〉のイメージであるフリーダ・カーロが愛した薔薇をディスプレイ。
いよいよ「インスピレーション」開始。この日はファッション業界の関係者が多く集まるいわば前夜祭。ブースを訪れたバイヤーやデザイナーに商品を説明します。中には男性客も。
タイのモン族の刺繍生地をふんだんに使用したガウンを気に入ってくれた女の子。〈ラグアンドボーン(rag & bone)〉のアシスタントデザイナーでした。
こちらは〈ダブルアールエル(RRL)〉のヴィンテージバイヤー。ミリタリーのランドリーバッグをリメイクした新作のスカートを試着。
来場者には〈フリーダ〉の感想をアンケート。コミュニケーションを取って細かいところまで印象を聞き出します。
会場には全身ヴィンテージ姿の女の子がたくさん。みな〈フリーダ〉のブースを興味深そうに覗いていました。
インスピレーション3日目は一般のお客さんも多数来場します。「ポパイズ ルイジアナ キッチン」で腹ごしらえ。
ロサンゼルス在住のインフルエンサーの姿も。写真は〈オッズ アンド ソッズ(Odds and Sods)〉のマネージャー、BRITTANY。
アメリカでも坊主ヘアは人気の様子。スタイリッシュなファッショニスタがたくさんいました。
ブースが落ち着いたタイミングで〈フリーダ〉のフェアに合わせる古着の買い付けも行います。
この日、イベント会場となったビルのほかのフロアでもヴィンテージマーケットが行われていました。そちらはコスチュームウエアをメインにしたイベントらしく、絵本から飛び出してきたようなファッションの子も!
イベント終了。撤収作業の合間にジンジャーエールで休憩を取る小笠原さん。英語は得意ではないそうですが、各国のバイヤーたちに一生懸命説明していました。
無事に2日間のイベントが終了。
ダウンタウンの〈ダブルアールエル〉でアフターパーティが行われました。ライトが幾重にも飾られ、まさに打ち上げにぴったりなショップの外観。
ブースに遊びに来てくれたお客さんとの再会もあり、終始幸せな表情を浮かべる小笠原さん。ですが、翌日は朝5時起きです…。
ほとんど寝ないまま翌朝を迎えました。まずは「クリスピー・クリーム・ドーナツ」で朝食をゲット。
まだ薄暗い道を走り、ロサンゼルス北部へ。
ようやく空が白んできた6時頃、目的地に到着。
この日はロサンゼルス、いやアメリカいちのフリーマーケット「ローズボウル」が行われる日。古着屋さんに混じって買い付けを行います。
早朝入場がいちばん高額で、ひとり20ドルかかります。それでもすでに会場には多くのバイヤーが!
もともとアメフトの会場であるローズ・ボウル。フリーマーケットはスタジアムの中ではなく、外周と駐車場で行われます。
ゲートを入ってすぐ手前はインテリアや雑貨のコーナー。
ジャンクなカメラなども並びます。
大きな橋をわたるとようやく古着の区画に。メインゲートから早足で15分以上はかかる広大なスペース。
出展者もトラックや大きなバンで乗り付けている人がほとんど。
買い付け開始! 2月ですが容赦なく朝日が照りつけます。
日本のフリマとは違い、ディーラーによるブースがほとんど。お店の特徴を掴みつつ、お宝探しへ。
リアガラスの汚れにメッセージが。こういうところがアメリカっぽいですね。
みんな本気で買いに来ているのでキャリーを持ってる人がほとんど。
出展側は案外のんびりした人が多く、気軽にディスカウントに応じてくれます。
試着スペースなんてもちろんないので、その場で着て、スマホで写真を撮ってシルエットをチェック。1枚1枚真剣にセレクトしています。
午前中いっぱい買い付けて、ようやくランチ。タコスが似合う陽気!
へとへとな後ろ姿。
午後3時、ようやく買い付け終了! 10時間ほど古着の山と格闘した努力の結晶がこちら。
自分へのお土産を買いに、夜はスーパーマーケットへ。
化粧品ラックを真剣に見る小笠原さん。〈フリーダ〉のフォックスファーコートが手放せないくらい夜は冷え込みます。
翌日、最終日は〈フリーダ〉の2018春夏のカタログ撮影! ロスから2時間ほど車を走らせて目的の地に。
こちらがカタログ撮影をしたエリア。モデルの写真は「フリークス ストア」のウェブサイトでチェックしてください。
「インスピレーション」の初出展を終えたばかりの小笠原さんに改めて、〈フリーダ〉を始めた動機と今後目指すことをたっぷりと伺いました。
誰よりも古着が好きだったのが
ブランドを作るきっかけになった。
―そもそも〈フリーダ〉はどのように始まったのでしょう。
私は「フリークス ストア」のPRを7年務めたんですけど、30歳をすぎたあたりから「もともと古着屋出身のショップだしお客様は古着好きが多いのに、提案するアイテムとのあまり親和性がないな」って気になって。メンズはアメカジ流れのアイテムが多いけど、レディースはトレンドの移り変わりが早いのでそこまで古着色が全面に出にくいんですよね。あるとき会社全体で「お店の原点である古着のエッセンスをもっと広めたい」という話が持ち上がり、MDが社内の女性でいちばん古着をよく着ていた私に商品部が「ブランドを作ってみたら?」と声を掛けてくれたのがきっかけです。
―〈フリーダ〉の名前の由来は?
名前の通り、メキシコの女性画家であるフリーダ・カーロです。
―ファーストコレクションでは貴重な生地を使ったこれまでにないアイテムたちが話題となりました。
70年代のアフリカンバティックやモン族の刺繍のことですよね。ヴィンテージを知っている人たちからはかなり驚かれました。「贅沢だね」って。ただ本家の「フリークス ストア」とは対をなす〈フリーダ〉の役目は「トレンドに左右されずにここでしか出会えないアイテムをリリースすること」なので。ほかにはないアイテムを作ろうと心がけています。
―デザインのインスピレーション源は?
昔の写真集から発想したり、個人的に欲しかったけど手が届かなかったヴィンテージを脳内再生して(笑)、デザインを起こしています。
―プレスとブランドディレクターの大きな違いは?
プレス時代は新作アイテムを紹介する役割でしたが、いまはデザイン発案からサンプルチェック、そして紹介も自分でする挙句に店頭にも立ってお客様にもご説明するんです。全行程に責任が生まれるから、ものすごく真剣に取り組むようになりました。いまはなにもかもが楽しいです。
私のことを知らない海外の方から
すごくいい反応がもらえて嬉しい。
―今回、ヴィンテージマーケットである「インスピレーション」に出店したのはなぜですか?
実は社内ですすめられたからで、私が言い出したんではないんです(笑)。出店の話は最初、「海外だし、無理でしょ」としか思ってなかったんです。私は石橋を叩いて渡るタイプなので、そんな冒険するよりまだ2シーズン目だし、日本で認知度をあげたいなと思っていたので。でも今回思い切ってチャンレジしてみたら海外のバイヤーさんもたくさん興味を持ってくれて。〈フリーダ〉は案外グローバルな動きができるんじゃないかって手応えを感じています。
―ロサンゼルスの人たちからの反応はどうでしたか?
欧米の人って自分がいいと思った根拠をはっきりと言葉で伝えてくれるからすごく励みになりました。しかも日本で反響があったものはあまり手にとってもらえなくて、モン族のガウンなど派手なものが受け入れられたのも新しい発見でしたね。
インスピレーションを経験して
もっと自由に作っていいって気づいた。
―新作について教えてください。
この春、リリースするのは〈フリーダ〉としては第3弾となるアイテムたち。これまでは生地にこだわってきたのですけど、今季は無地でもいいから「とにかくビビッドで着ていて楽しくなる服」を追求してみました。ルックブックの中でも着用しているビビッドなイエローのスカートはデッドストックのスノーパンツをリメイクしている、今回いちばんのお気に入りです。
―今後の〈フリーダ〉での目標を教えてください。
LAに来てみてわかったのが「もっと好きなものを自由にデザインしていいんだ」っていうこと。売れるか不安で少し守りに入っていたところもあるんですけど、海外の方々の反応を見ていたら「私にしかできないものを作ったほうが絶対いい」って再認識できました。今後も「取り入れやすさ」と「〈フリーダ〉らしさ」のバランスを取って服作りをしていきたいです。少し先の目標は〈フリーダ〉のオンリーショップを作ること。そしていつかは「〈フリークス ストア〉のブランドだって知らなかった!」って言っていただけるくらい〈フリーダ〉を大きくしたいですね。