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BIGOTREが放つ、柔らかくも怪しい光線。
BIGOTREが放つ、柔らかくも怪しい光線。

Pure Glow.

BIGOTREが放つ、柔らかくも怪しい光線。

2019.02.26

一言で説明すると、がま口と巾着。ですがクローズアップしてみると、ビーズや金具の置き方が
まるで原子を規則正しく配列した宝石のようで、柔らかくも怪しい輝きを放つ。
そんな魅惑のバッグを生み出すブランドが、〈ビゴター(BIGOTRE)〉です。
これらが纏う目に見えているようで見えない光を、写真家デュオTOKIが
美しい線とともに浮き上がらせます。純度100%の偽りなき世界がここに。

Photo_TOKI
Styling_Yui Sawada
Hair_Kurushima
Make-up_ANNA (S-14)
Model_Sakiko Tokunaga

見えない光を可視化して、写真のなかにファンタジーを表現。

ーTOKIというアーティスト名はどういう意味なんですか?
佐伯:鳥のトキからきています。トキって存在は知ってるけど見たことはない。そんな不思議な存在感と日本らしさ、耳への残りやすさ、あとは海外の人でも覚えやすいかなと思い、2人での名が必要になったタイミングでそう名乗り始めました。ちなみに夫婦です。
ー写真を撮るうえで大切にしていることはありますか?
佐伯:ぼくらが掲げるテーマは“純粋さ”を引き出すこと。それを光を使って表現しています。光のなかにある純粋さを被写体に当て、その被写体のもつ品の良さがより引き立つように意識しています。
ー鏡を使った撮影方法がとても印象的でした。その光の線を生み出すための施策を覗けたようでおもしろかったです。
眞鍋:あれが光を可視化するプロセスなんです。
佐伯:基本的に光というのは当てられるものだから、それを使って形を浮き上がらせるということをやっています。あとは、未来感を表現することもいつも意識しています。未来のイメージって反射光なんですよね、高層ビルが立ち並ぶなかで直射じゃなくてガラスに反射した陽を浴びるような。
ーTOKIさんの作品って観る人を引き込ませるものがあるんですよね。その理由が、目には見えないムードを写真のなかで可視化しているからだと思いました。
佐伯:ありがとうございます。ファンタジー、ユートピアといったリアルよりもわくわくするものに惹かれるんです。
眞鍋:リアルよりも美しいものですね。
ーユートピア(=理想郷)とか、超現実的シュールな発想は2人の根底にある考え方なんですか?
佐伯:そうですね。例えば旅行に行ったとき、訪れた先でがっかりしてしまうことが多いんです。それまで思い描いていた理想とは違った、なんだか狭くてリアルな現実が広がっていて。なので、海外に憧れるというよりも自分たちのなかに芽生えた感情を大切にして想像上の理想の世界を入れ込む表現に自然となっていきました。それがきっと観る人に写真以上のものを受け取ってもらえるんじゃないかと思っています。さらに言うとその表現の軸は、ぼくらが日本人であるということが大きく関わっています。それはジャポニズムじゃなくてもっと根幹の土地柄からくるようなもので。みんなが思うそういうジャポニズム像を取っ払った形だけを捉えると、モダンな要素が浮かび上がってくるんです。
眞鍋:噛み砕くと、日本人として既にDNAのなかにある感覚を現代に落とし込んでいる感じです。ユートピアはまさに私たちの理想。未来に対して不安な要素って山ほどあるけど、憧れとか希望は常に持っていたい。悲観した表現はしたくないなとはいつも思っています。
ーその日本人ならではの感性により磨きをかけるために取り組んでいることはありますか?
眞鍋:“日本人ならでは”というものをそこまで意識はしていないですが、華道は今年始めたいと思っています。展示や映画を観ることはもちろん、SNSやインターネットからもインプットすることも多いです。特に若い世代の感覚ってとても新鮮でおもしろいんですよ、荒削りでも純粋で美しいものが多くて。あと最近は昔の日本映画にもはまっています。
佐伯:宗教的な意味はないですが、よく神社に行きます。その土地に流れている純粋な空気と美的感覚があるようで。それは世界共通だと思うので、海外旅行に行くとモスクや寺院、教会など神聖な場所に行くようにしています。
ー写真で表現しようと思ったのはなぜですか?
眞鍋:もともと何もわからないところから写真を始めて、いちばん最初の時点で写真は光がないと撮れないことを知りました。めちゃくちゃ当たり前のことなんですけど、そこからスナップでも何でも光を無意識に追っていて。撮り方を探って行くなかで、いまここに至っているという順番でしょうか。
佐伯:あと、グラフィック、映像、絵画、いろんな表現媒体があるなかで、いちばん最初に未来を提示できるものが写真なんじゃないかとも最近思っています。考えていることをすぐにアウトプットできるので新鮮なんです。グラフィックや映像だとそれに時間を要してしまいますので。
ー撮影するとき2人のなかで役割分担はあるのでしょうか?
佐伯:TOKIは眞鍋のなかにある純粋な感覚が表現の根本にあって、ぼくがその感覚に共鳴し技術的な部分などを形にしていくというのが通常の流れです。さらに撮影は交互に行い、眞鍋の柔らかく光をとらえる女性的な目線とぼくの直線的かつ男性的な目線が交わることでニュートラルな世界観を表現していきます。
ー今回の現場でも2人で1台のカメラを取り合うようにして撮影していましたね。
佐伯:お互い撮りたい角度とか構図が違うんですよ。でも、2人で撮っていてもそれはバラバラな作品になることなく大きく膨らんだのちに、ちゃんとTOKIの作品へと着地するんです不思議と。観る人の意識を変えたいというのが根底にあるからブレないのかもしれません。
眞鍋:お互い気付かされながら、アイデアを盗みあっています。
ー写真のなかにファンタジーを織り交ぜると言ってましたが、SNSの写真についてはどう思いますか? 同じアプローチではないですが、見せたい自分を表現するために加工アプリを使ってまったくの別人になることもできるわけで。それもまたある種のファンタジーなんじゃないかなと。
佐伯:ネット(=理想)のなかで生きようとしてる人と、現実でも理想を追い求めている人。ぼくらは後者で表現したいし、現実でおもしろいことができたら、理想の中よりおもしろくなると思っています。なりたい自分にすぐになれちゃうネット社会だけど、「もっとこうなりたいのに…」っていうなれないもどかしさも無限に広がりますよね。一方SNSの写真はアプリさえあればどんな姿にでもなれる、言わばすぐ近くにドラえもんがいるようなものなんだけど、それに頼るようだと成長できないんですよ。で、ドラえもんがいないときにのび太が大きく成長するように。だからこそ空想と想像をもっと大切にしていきたいんです。
ーどんなときに空想と想像が浮かんでくるんですか?
佐伯:いつもです。SFはずっと好きでしたし、直線的なものにはずっと魅了されていました。
眞鍋:私、SFは佐伯に出会うまであまり観てこなかったです。写真に関してはもっと光や色の使い方に興味があって、人間味のある映画をみて空想していました。
ーこの2人の嗜好の違いも、作風に影響してるようですね。若干方向は違えど、最終的には同じ地点に着地しているような。
佐伯:そうなんです。私たちのいまの目標はBjörkを撮ること。もちろんお互い頑固なのでしょっちゅう衝突しますが、そこに標的が合っているのでお互い軌道修正して戻ってこれるんです。あとは、無理をしないで撮ることも大切かなって。ぼくたちの心地良い感覚で撮ることが、結果として良い写真に繋がると信じています。

PROFILE

TOKI

Instagram @toki_39
男女2人で活動する写真家デュオ。光線と柔らかい光を組み合わせた幻想的な写真は、アート、ファッションシーンでもファンが多く国内外から高評価を受けている。