26歳気鋭ジュエリーデザイナー Shana caveのつくる“かわいい”を知りたい


Talk about “Girly” & “Womanly”.
“ガール” で “強い”!
26歳気鋭ジュエリーデザイナー
Shana caveのつくる“かわいい”を知りたい
連なる花々、きらきら輝く大ぶりなジュエリー。ニューヨークを拠点に展開する
〈Shana cave(シャナ ケイブ)〉のデザインは、誰もがきっと子どもの頃に抱いた“ガール”な憧れにあふれてる!
デザイナーのShanaが来日したときいて、彼女の考える“かわいい”についてインタビュー。
海外での展開も増え、SNSを通した発信も魅力的に行き届いている。
心ときめく感覚の総称として“ガール”と冠する「ガールフイナム」は素通りできないのです。
Photography: Mikito Iizuka
- 2021年にスタートした〈Shana cave〉。自身の名前を冠したブランドをスタートしたShanaは当時まだ21歳の学生。シグネチャーといえる花のモチーフが生まれたのも同時だったそう。
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きっかけはコロナ禍での創作でした。2016年にバージニア・コモンウェルス大学でファッションと彫金を学んだあと、ロンドンのセントラル・セント・マーチンズに1学期留学していたのですがコロナで休校になってしまったんです。
自宅学習でできることを考えて、まずバージニア州の実家にスタジオを作り、長い状態の「チューブ」を短く切って加工する、シンプルな工程で作れるスタッズを繰り返し作りました。それが今も定番になっています。


- まるで幼少期に描いていた花のよう。なんてキュンと来るんでしょう!
- チューブで花を作り始めたのは必然のように思います。インスピレーション源はまさに子供の頃のスケッチブックの中。思えば私の作品はいつも花がテーマなんです。いろんな宝石や原石を集めましたね。幼心のときめきに正直に、毎日違う色で遊ぶのは本当に楽しくて。ベースが全てシルバーなのも、石の色を最大限に惹かれるものにしたいから。


- 石はどのように集めているんですか? ニュアンシーなカラーから、ときめきを誘うおもちゃのようなヴィヴィットカラーなど、さまざまですね。
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天然と人工、両方を使っています。ルビーやサファイアなどまず小さな本物の石を使って、液体の中で結晶を育てていきます。時間をかければいくらでも大きく育てられるし、欠けや不純物もなくとてもきれいなものが手に入る。採掘もしないし、人手も必要ない。水やその他の物質を使うだけなので、効率的にも人道的にもいい。
自然界では見つけにくい色のバリエーションもたくさん得られるし、量も多いので価格も下げられる。かつては裕福な人にしか手が届かなかったような色や宝石が、もっと多くの人に届くようになる。ジュエリーが好きな人たちすべてに意味のあるものになるんです。
- 理にかなった材料、工程で、目的を見据えて生み出されているのですね。
花のスタッズをはじめ〈Shana cave〉らしさといえる“ガーリー”な“少女性”について、もう少しおききしたいです。 -
宝石に施されるようなカッティング、大ぶりなサイズ感、そして “きらきら感”、“ゆらゆら揺れる”なんていうのも大切な要素ですね。例えば幼い頃に着ていたハロウィンの衣装や憧れのプリンセスが思い出されるような、子どもっぽいフェミニンさ。
どんな国の誰もが当たり前だと思ってる「女の子っぽさ」。「花」とか「リボン」「きらきら」…。説明なんてしなくても「女の子らしい」と伝わる、一種の共通言語なんです。


- ウェブサイトには “繊細でありながら粗野で、原始的な女性らしさ。これは少女であり女性である私の遺物” というメッセージがありますね。
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「粗野」というワードは自分のスタイルをよく表していると思います。私は伝統的な修行をしてきたわけではなく、まるで子どもが挑戦するみたいなやり方でやってきました。それでもちゃんと作品になるんです。ちょっと原始人的な、私の名字のように(笑)。
あとは「成長」や「蓄積」という概念が好きで。同じ物がたくさん連なることで、圧倒されるような、なんだか不安になるような感覚、でも同時にもっと見たくなるような、そんな魅力も表現したいと思っています。




日常で目に入った風景、特に自然や建築からデザインのインスピレーションを受けることが多いのだそう。


- 女性的な象徴性と少女時代の憧憬が混ざり合った作風にはストレートに胸打たれます。こういったデザインをデイリーに取り入れたい昨今のムードとマッチしているようにも思います。
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そうですね、デイリー使いして欲しいからほとんどの作品は小さめにしています。デコラティブなデザインや色使いだからこそ、小さくても特別な気分になれる。
これには実体験もあって、私自身ニューヨークに引っ越す前はもっとカラフルでガーリーな格好をしていたけど、大都市ではあまりにフェミニンだったり主張しすぎると注目されてしまう。でも花やレース、キラキラを身に着けることで満たされる、この欲求には正直でいたいんです。それを満たすことができるのが、ジュエリーのパワーのひとつだと思っています。


- 意図してデイリーユースとラグジュアリーのいいところが結びついているんですね。まさに人気の理由、ですね。
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あとはもちろん快適さ。ひっかかったり痛くなったりしないように、初期の作品より強く、長持ちするように工夫しています。毎回新しい作品を作るときには学び直しが必要です。
ひとつ作るのは簡単でも、それを量産して販売するにはビジネス的かつ工学的な工夫が必要。それを意識するようになったのは最近のことです。

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例えばこのレースデザインのバングル。見た目は同じですが、下がオリジナル、上が商品化するために中を空洞にしたものです。空洞にすると軽くて長持ちするし、型を作って量産できるようになります。
私は型取りや製造も独学なので、学ぶべきことが多いんです。今の目標は自分の作るすべてのものを再現できるようにすること! - これら全工程とブランディングやPRも、すべてご自身でやっているんですよね? とてもタフですね!
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自分でやらないと気が済まなくて(笑)。そもそもファッションでなくジュエリーの道に進んだ理由のひとつに、「強くありたい」という気持ちがあったんです。
はじめはファッションを勉強して布に向き合っていたけれど、授業でガラス吹きや金属加工にトライしてみたら、シンプルに布よりも力強さがあるように感じて。



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金属に向き合ってみたら、建物やいろんな構造物とも対話ができるような感覚があった。世界をもっと理解できるようになって、自分の身体や物理的なこともよくわかるようになった。それが自分を強くしてくれる気がしました。それに、自分の作るものが自分の人生より長く残るというのは、ファッション以上の「重み」に感じられて。火を使ったりハンマーを使ったりとフィジカル的に強くなれる感覚もあります。
とてもきれいで繊細な部分と、すごく力強い部分が同居していて、それを自分で作り出すというところが面白いんです。
- ここまでお話ししてきて、改めてShanaさんにとっての“ガール”、連想することを教えてください!
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「ガール」という言葉は、楽しくて、自由で、ロマンチックなイメージ。そして一種の特権。
例えば、女の子は子どもの頃から、花や夕焼けや、その色を好きでいることを男の子よりも当たり前に思われている。だから美しさを感じ取る力が育ちやすいのではないかと。
私にとって「ガール」とは美しさへの感受性。 女の子だからこそ、そこの感動、自分の気持ちを表現するのが簡単なのかも。それが「自由」や「繊細さ」につながっていて、ジュエリーへの表現にも通じていると思います。


- 最後に影響を受けているモノ、ヒト、場所、何かあれば教えてください!
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一番は今自分がいる「場所」ですね。ニューヨークは私にすごく大きな影響を与えました。気候もそうですし、ライフスタイルも。そしてアーティストの友達。特にローラには本当に大きな影響を受けました。
あとは周囲のジュエラーたち。40〜70歳くらいでほとんど男性です。彼らは何十年もこの仕事を続けてきているので、自分の立ち振る舞いや服装がどう見えているのかも気になるし、彼らの服装や姿勢を見ているのが好きで、彼らがどんなふうに生きてきたかを考えることで、自分の将来の姿をイメージするんです。そしてやっぱり「年齢を重ねること」も私のスタイルに大きな影響を与えていると思います。自信がつくと、他人からの影響よりも自分の人生そのものに影響を受けるようになると思うんです。 SNSに左右されてばかり、にはなりたくない!


カメラを向けたらパンチング。とってもチャーミングなShana。