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The world is crazy for LUXURY STREET.

続“ラグジュアリーストリートシーン”の現在。
Photo_Kisshomaru Shimamura
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メゾンブランドまでもがストリートに熱い視線を送るいまの潮流を作り出したのは、
従来のルールに縛られないニュータイプのデザイナーたち。
ストリート由来のアイデアと確かなクオリティーを融合させた彼らが牽引する現在のシーンについて、
『フイナム・アンプラグド』で久保光博と小木“Poggy”基史に語ってもらった
対談企画“ラグジュアリーストリートの現在”が、モデルの秋元梢を迎えてさらにパワーアップ!

(左から)
久保光博
セレクトショップ「GR8」の代表。今年4月には拡大リニューアルを果たし、国内外からモードとストリートの垣根を超えた様々なブランドを揃える。

秋元梢
アジアンビューティな容姿で注目を集め、モードからストリートからまで幅広いジャンルのファッションシーンで活躍。最近では海外のショーや雑誌にも多数出演。

小木“Poggy”基史
海外のファッションシーンからも注目を集める「ユナイテッドアローズ&サンズ 」のディレクター。“ポギー”の愛称で知られる。


現在のファッションシーンにおける世界的なトレンドといえば、“ラグジュアリーストリートブランド”が真っ先に挙がると思います。久保さんと小木さんには、2016年3月に発売された『フイナム・アンプラグド』のアメリカ特集号にてこのテーマについて対談していただいたわけですが、改めてこのムーブメントを取り巻く状況をお教えいただけますか?
小木“Poggy”基史(以下小木)
以前の取材でもお話した通り、ラグジュアリーストリートブランドの流行を作り出したきっかけの一つは〈オフホワイト(OFF-WHITE)〉のヴァージル・アブローだと思います。
久保光博(以下久保)
4年前くらいかな? 〈オフホワイト〉の前身となる〈パイレックスヴィジョン(PYREX VISION)〉というブランドをヴァージルがやっていまして、“PYREX”とプリントされたロゴアイテムを打ち出したんです。それをA$AP Rockyをはじめとするラッパーたちが着て話題になりました。それを機にファッションの流れがぐっと変わった印象がありますね。
小木
〈リック・オウエンス(Rick Owens)〉や〈アレキサンダー・ワン(Alexander Wang)〉といったブランドをリリックに入れていて、気になって見てみたら〈ステューシー(STUSSY)〉とかを着ているんですよ。でも色使いがワントーンだったりデザイナーズブランドとミックスしているから、モードに見える。カニエ・ウェストがモードに傾倒していったのも、その少し後だった気がします。
久保
カニエをヴィジュアル面でずっとバックアップしていたのもヴァージルですしね。
小木
あとこのジャンルで欠かせないキーワードといえば、“LA発”と“made in Italy”。ストリートらしいおもしろいアイデアとイタリア製の高いクオリティーを融合させたブランドが多いのも特徴ですね。ちなみに、“made in Italy”を初期に導入したのも〈オフホワイト〉や〈ブシェミ〉だったと記憶しています。イタリアに「ニューガーズグループ」という会社があって、そこが〈オフホワイト〉の他に〈HOOD BY AIR〉や〈MARCELO BURLON〉、〈Parm Angels〉などの企画・生産を請け負っていまして。
久保
もともと生産背景は整っていたので、あとは有能なデザイナーを連れてくるだけみたいな。最初は〈マルセロ・ブロン(MARCELO BURLON)〉からスタートして、マルセロがヴァージルを連れてきて、ヴァージルが〈HOOD BY AIR〉のシェインを連れてきてといった感じです。〈パーム・エンジェルス(Parm Angels)〉もそうですし、最近は〈ヘロン・プレストン(HERON PRESTON)〉も入りましたからね。
1月のメンズファッションウィーク、3月のウィメンズファッションウィークが終わって間もないですけど、彼らの影響力は1年経ったいまも変わらずですか?
久保
むしろ余計に強くなっているし、誰もがそこを真似しています。ビジネス面ではなく、表現の仕方を真似しているというか。
現地でも、それらのブランドを着ている人って本当に多いですよね。
久保
「GR8」主催でメンズウィーク中に毎回パーティをやっているんですけど、今回は日程が遅めだったこともあってバイヤーさんが疲れちゃってあまり来てもらえなかった(笑)。でもその反面、本当に音楽が好きなローカルキッズがたくさん来てくれてたんですけど、彼らの多くもそういうスタイルを好んでいましたね。
そのイベント、ぼくも伺いました。印象的だったのは、坊主の女の子が多かったことですね。
久保
たしかに。
秋元
カニエお気に入りのモデルにも金髪坊主の子いますよね。
久保
Braina Lavienaでしょ? 坊主の女の子ってかっこいい。
秋元
そうそう、あの子雰囲気があってすごいかわいい。最近は日本でもたまに坊主の女の子見かけますよね。
小木
メンズでも去年くらいに坊主流行りましたよね。
久保
ゴーシャ(・ラブチンスキー)の影響でしょうね。もともとの起源はロンドンのスポーツウェアシーンから生まれて、キャップを浅く被ってTシャツをタックインしてみたいな。
小木
髪型でいうと、今年はドレッドを上に束ねるスタイルを頻繁に見かけましたね。
久保
あれはラッパーの影響が強いのかな。Travis ScottやKendrick Lamar、A$AP Rocky辺りの。
秋元さんもメンズファッションウィークでお見かけしました。メンズも毎年観に行ってるんですか?
秋元
久保さんに「メンズを開拓しよう」と誘われて行くようになりました。だから特定のブランドの招待を受けてではなく、自分で勝手に行ってます(笑)。その方がたくさんのショーを見れるし、いろんなところに行けるから。
印象に残ったショー、ブランドがあれば教えてください。
秋元
〈オフホワイト〉はどこの国に行っても着てる人を見かけました。入れないけどとりあえず来ている人の多さでも〈オフホワイト〉のショーが桁違いで、しかもちゃんとファッション感度の高い子が集まっていたし。
久保
ここ最近女性がメンズブランドを買う現象が起きていて、ウィメンズのファッションウィーク中でも女性のバイヤーがそれらを着ているんですよ。男性がストリートテイストのスタイリングでコレクションに行くから、その影響がウィメンズにも現れている気がします。以前ほど、ウィメンズウィークにいてもアウェイ感は感じなくなりましたもん(笑)。
秋元
ウィメンズのファッションウィークはラグジュアリーだから、ある程度それを意識していかないと浮いちゃうけど、メンズは気軽に楽しむスタンスで行けるよね。
小木
ブランドでいうと、〈ミッソーニ(Missoni)〉は興味深かったですね。メンズのディレクターをやっているのがスティーブン・マンという人なんですけど、彼も「Gimme Five」と結構親しい存在で。彼が就任してからは音楽をマイケル・コッペルマンが担当したり、カルチャー面でも手を抜いていないんです。あとは〈エーメレオンドレ(AIME LEON DORE)〉。ずっとコレクションは見てはいたんですけど、来季は女性も着れそうなエレガントな雰囲気で凄くよかった。あと演出でおもしろいのは、やっぱり〈ピガール(PIGALLE)〉かな。相変わらずピガール地区で育った人をモデルに起用していて、初期からずっとブレない。
たしかに、インビテーションを持っているのに極寒の中でずっと待たされているプレスを尻目に、「○○と友達なんだけど」って言って入って行く若い子が多かったです(笑)。
小木
全体的にショーのキャスティングがそういう方向に流れていますよね。昔に〈コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)〉が、プロモデルではなくアーティストやミュージシャンを使っていたような。いかにもメンズらしいです。そういえば梢ちゃん、ミラノで1月に行われた〈マルセロ・ブロン〉のショーで歩いてたよね?
秋元
久保さんは普段からよく会うから「出るよー!」ってメールを送っていたんですけど、ポギーさんがインスタにアップしてくれて。
小木
見てたら梢ちゃんが出てきたから、「えー!」って(笑)。
それはマルセロ本人から声をかけられて?
秋元
ブランドが設立されてすぐの頃に初めてミラノに行っていて、現地で彼を紹介してもらったんです。その時ちょうど〈マルセロ・ブロン〉のTシャツを着ていたんですけど、「日本の女の子が、しかもメンズを着ている!」ってすごく喜んでくれて。それをきっかけに仲良くなって、彼が日本に来たときは一緒に遊んだりもしています。で、今回はイメージをちょっとラグジュアリーにしたいということで声をかけてもらえました。
海外の、しかもメンズブランドのランウェイを歩いてみてどうでした?
秋元
すごく自由な雰囲気でしたね。言葉はそこまでわからないんですけど、ここまでピリピリせずにショーって始められるんだと思うくらい。歩く順番もその場のノリで変えちゃうし。ウィメンズは勝負というわけではないけど、モデルもなんだかピリっとしています。
久保
メンズの特徴だよね。ちなみに、マルセロは梢ちゃんのことを「ジャパニーズワイフ」って会食の時に言ってた(笑)。
秋元
「ジャパニーズワイフ、ジャパニーズワイフ」ってずっと言ってるから、「秋元さんってマルセロと結婚したんじゃないの?」ってネットに上がったりして(笑)。そんなわけないんですけど、すごい愛情を持って接してくれるんです。〈パーム・エンジェルス〉のショーを一緒に観に行ったときも、「ぼくの友達を全員紹介するよ」と言って会場中を練り歩いてくれたり。やっぱりファミリーになってからの愛情の深さが全然違う。見返りなんか求めていなくて、単純に「この子が好きだから」と言ってもらえるのはすごい素敵なことですよね。ウィメンズブランドはもう少しドライというか、ビジネスライクかな…。もちろん全部が全部そういうわけではないけど。
『フイナム・アンプラグド』での対談でもお二人が話していましたけど、ビジネスよりも人とのつながりを優先するのは、このシーンで活躍するデザイナーの特徴なんでしょうか?
小木
ぼくの中でその先駆けとして記憶に残っているのは、〈ウミット ベナン(UMIT BENAN)〉がプロのモデルではなく自分の周りにいる人を使ってショーやプレゼンテーションをやっていたことですかね。結局いまはみんな、お金で買えないものが欲しいんだと思います。ヴァージルはDJをやる感覚で服をつくっていると思いますし、マルセロはパーティをやる感覚。そういったアイデアだったりファミリー感を求めているんじゃないかなって。
秋元
でも新しいことを始めたからか、ヴァージルを好きっていう人も多いけど、異端児扱いする人もいるっていう話は聞いたことがあります。
小木
少し前にA$AP RockyのTwitterが話題になったりね。
秋元
あとはエディ(・スリマン)やラフ(・シモンズ)も彼に言及したりとか。どっちが正しいのかは一概には言えないけど、新しい流れだからこそそう言われちゃうのも仕方ないのかな。
久保
トラディショナルなものを守り続けてきた人たちの気持ちもわかるんです。でもぼくは、ヴァージルが起こしたムーブメントとか、マルセロやニューガーズグループが作った基盤がいまの時代を象徴しているとも思っています。
ニューガーズグループが手掛けているウィメンズブランドはないんですか?
久保
ウィメンズだけのブランドはないですね。
秋元
メンズを中心に作りつつ、ウィメンズラインも展開するブランドが多いですよね。
久保
この前ウィメンズのファッションウィークで〈マルセロ・ブロン〉を見に行ったんですけど、本当にかわいかった。多分「GR8」は来季からウィメンズを強化していくと思います。
秋元
ショーもかわいかったよね。
久保
男の人が着るとオラオラした感じに見える時もあるんだけど、女性の人が着られるデザインになってきたんですよ。これまでメンズウェアの要素ってなかなかウィメンズに落ちてこなかったじゃないですか? それがうまく表情を変えた印象。〈オフホワイト〉もそうだし、〈パーム・エンジェルス〉も。
秋元
〈パーム・エンジェルス〉、かわいかった!
久保
〈ヘロン・プレストン〉もウィメンズを始めるって言ってたので、楽しみで仕方ないです。〈オフホワイト〉なんかもう、メンズの売り上げを上回ってる可能性がありそうなくらい。
そんなに人気なんですね。
久保
ぼくが見ている限りでは、彼らにとってはメンズもウィメンズもそこまで壁がないんです。「うわ、メンズで使ってたこのデザイン、ウィメンズのここに入れてる!」とか。実際に欲しいものも結構ありますね。
秋元
そう考えたら、女性の方がメンズ着やすいですよね。
小木
男では出せないシルエットになるからずるいんですよ!(笑)
久保
ぼくはスカート穿けないもん(笑)。〈ヴェトモン(Vetements)〉の最初のコレクションにしても、個人的に欲しいものはたくさんありましたし。ビッグサイズだからメンズも着れるじゃんと。最近は特に女性をうらやましく感じています。
秋元
私、ストリートとかモードといったジャンルはそこまで意識してないんですよ。昔から好きだから着るというスタンスなので。メンズブランドだけど、多分〈KTZ〉は日本で一番持っていたかも(笑)。女性の方が垣根を超えやすい分、当時から「なんでみんなメンズは着ないんだろう?」と思うこともありましたね。
ちなみに今日は何を着ているんですか?
秋元
実はこれまでデニムをほとんど持っていなかったんですが、ここ半年くらいはデニムが気分で。パンツは〈MM6〉で、ブーツは〈メゾン・マルジェラ(Maison Margiela)〉のタビブーツです。最近タビブーツの人気が再燃していますよね。上はどちらも〈ジョン ローレンス サリバン(JOHN LAWRENCE SULLIVAN)〉。やっぱり日本人のモデルとして普段から日本のブランドを身につけていたいという想いがあって、そのなかでも(柳川)荒士さんは特に好きなデザイナーだから。人を好きになってさらにブランドを好きになるというパターンが多いですね。それこそ〈ジョン ローレンス サリバン〉もメンズのイメージが強いですけど、ウィメンズもすごくかわいいので。
小木
梢ちゃんのように、本当に繋がって着ていないとかっこ悪いよね。
久保
それはまさしく。
繋がるというのは?
小木
ちゃんと彼らのマインドを理解して初めてかっこいいものになるというか。
秋元
いまはインスタグラムがあるから、「私これ着てるのよ」っていう写真をあげるためだけに着ている人が、特に女性に多いと思う。アイテムとして、ブランドとしてしか見ていない人たちには正直違和感はありますね。
久保
「ユナイテッドアローズ&サンズ」に置いてあるブランドはみんなポギーさんが親密にしているところだったり、お客さんもポギーさんのスタイルだったり考えに共感している人が多いんだと思います。そこにあるブランドをぼくが「GR8」 で扱いたいと思っても、もうポギーさんとのファミリー感を崩せる自信がない(笑)。
小木
ぼくもニューガーズグループは久保さんががっちり行くべきだと思ってます(笑)。
久保
ポギーさんと梢ちゃん、僕に共通しているのは、とにかく現地で展示会なりパーティなりに顔を出してハグしてっていうコミュニケーションをとって、理解するようにしていること。買い付けてる自分がわけもなく意味もなく扱っていては、ブランドの意志がお客様に絶対伝わらないですし。意外に無名なブランドでもぼくらが彼らを理解していれば、お客様にも魅力を伝えることができますしね。
秋元
それはお客さんが久保さんらしさとかポギーさんらしさを理解していて、それが好きだからわかるんだろうね。
お二人のお店は、海外からのお客さんも多いですよね。
小木
はい。特にラグジュアリーといえるメンズのブランドを、アジア圏の女性の方々が買ってくださることが多いです。
久保
海外の女性は、カテゴリーとかもほとんど気にしない。「良ければいいじゃん」という感じで、多少サイジングが合わなくても買っていかれます。どう見てもブカブカなTシャツでも「ベルト巻くからいいや」とか。メンズでも関係ないんですよね、みんな。
小木
ラグジュアリーストリートというノリも日本が一番遅かったですもんね。日本以外のアジアはすんなりと受け入れていましたし。それはきっと、“ブレザーを着るときはボタンダウンのシャツで”みたいなルールがなんとなく根付いているので、新しいスタイルにすぐに飛びつかないというのがあるんだと思います。さっきのヴァージルの話じゃないですけど、90年代に〈ナンバーナイン(NUMBER (N)INE)〉だった宮下さんとか〈アンダーカバー(UNDERCOVER)〉の高橋盾さんがストリートのアプローチでランウェイを始めたときも「ちょっと違うんじゃないか」という評価もあったのかもしれません。けどいまは、それが世界の主流になっている。ただ、あの時と今では服を学んでいない人達が作っている服という大きな違いはありますが…。
冒頭でも名前が挙がりましたが、メンズシーンにはカニエ・ウェストやA$AP Rockyのようなアイコンがいるじゃないですか? ウィメンズシーンで誰か該当する人はいますか?
一同
リアーナ?
秋元
メンズはたくさんいるけど、ウィメンズはリアーナの独壇場っていう感じ(笑)。私がセレブをチェックしていないだけかな? それこそ彼女はメンズの服をよく着ていますし。
小木
無名のブランドもいろいろ着ていますよね。ブランド名とかにこだわらず、良ければ着るという印象。
久保
“世界規模で“となるとなかなかいないですけど、局地的に強い影響力を持った人はいますよね。
例えば?
小木
Gildaはすごいおしゃれですよね。
久保
Gilda Gilda。昔から、ストリートものを取り入れてかっこよく着こなしていました。それこそヘアスタイルは梢ちゃんと似てたよね。最近は自分のブランドを始めたりして。
小木
あとはスタイリストのAleali。この子もストリートテイストの強いものをいち早く取り入れてましたね。
久保
彼女は何でも着ますよね。コレクションも全部観に来ているし。
秋元
私が好きなのはChristina Paik。彼女のコーディネートを見るのはすごくおもしろい。ブランド物を着ているんだけど、ちゃんと落とし込んで着ている感じに惹かれます。
小木
彼女、結構コアなところにちゃんといるよね。
デザイナーだと誰ですか?
久保
全体に影響を及ぼしたという点では、やっぱりデムナ(・ヴァザリア)。彼の功績はとてつもないと思います。〈バレンシアガ(Balenciaga)〉も彼が手掛ける前はアレキサンダー・ワンだったじゃないですか? どうしても閉塞感が拭えない状況だったのに、デムナは就任した瞬間に世界で最もホットなブランドにしてみせた。
秋元
メゾンブランドのデザイナーが立て続けに辞任したり、同じタイミングでいろいろありましたよね。
メゾンとストリートの距離がぐっと縮まったというか。つい最近は〈シュプリーム(Supreme)〉出身として知られる〈OAMC〉のデザイナー夫妻が、〈ジル・サンダー(Jil Sander)〉のクリエイティブディレクターに就任しましたしね。
小木
でも結局は人のつながりだと思います。これはあくまでも個人的な見解ですが、〈ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)〉と〈シュプリーム〉がコラボしたのも、もともとキム・ジョーンズがロンドンの「Gimme Five」出身で、そのときマイケル・コッペルマンと藤原ヒロシさん達の交流を見て育っているので、彼としては夢が叶ったんだと思います。ヒロシさんの〈フラグメント〉とのコラボもそう。それがメゾンにとってどうなのかはぼくはわからないですけど、人との絆で動いている。デムナも、マルジェラ時代に一緒に仕事をしていたマーク・ボスウィックを〈バレンシアガ〉で起用していますし。
ずばり、〈ルイ・ヴィトン〉と〈シュプリーム〉のコラボについてはどう思いますか?
小木
ぼくはいま話した通りです。でもそういう流れは〈ケンゾー(Kenzo)〉くらいから強まってきていた気がしていて。〈ニューエラ〉とコラボしてキャップを作ったり。そのなかでは、誰も勝てない最高峰のコラボが実現したと思いますね。
久保
昔は〈シュプリーム〉が〈ルイ・ヴィトン〉のファブリックを勝手に使って怒られていた記憶があるんですけど、いまはオフィシャルでコラボっていう。相当時代は変わりましたよね。でもぼくみたいな小売り目線でいうと、扱えない人が圧倒的に多いじゃないですか? 輪の中に入れないからコメントのしようがないというか。若干のジェラシーは入ってますけど(笑)。
秋元
すごく売れそうだし、〈シュプリーム〉にはこのまま勢いがつくけど、〈ルイ・ヴィトン〉がこの次に何をやるかは気になりますね。
小木
90年代に〈ルイ・ヴィトン〉が〈ヘルムート・ラング(Helmut Lang)〉とか〈ヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)〉とバッグを作ったのって覚えてます? そのときに〈ヘルムート・ラング〉とレコードバッグを作って、広告でスクラッチの産みの親、グランドマスター・フラッシュを起用したんですよね。そのプロジェクトにはマーク・ジェイコブスも絡んでいたらしく、すごく話題になったっていう話は聞いたことがあって。いま思うと、昔からそういうことをやっていたんだなと。100年以上続いたり歴史のあるところは、時にそういった大胆な仕掛けが出来る度量があるから続くんだと思います。
久保
〈ロエベ(LOEWE)〉のいまのクリエイティブディレクターも、マルセロの昔からの大親友なんですよね。〈J.W.アンダーソン(J.W.Anderson)〉から来たんだけど、かなりストリートを熟知している方らしく、だからどっちのブランドもここまで人気なんでしょうね。いまメゾンで活躍している人には、ストリート上がりの人が本当に多いです。
最後に。2017年秋冬のファッションシーンはどうなりそうですか?
小木
実際に海外に行って感じたことは、ミラノを中心にメンズのショー自体が減りましたね。ウィメンズのシーズンに合わせているんでしょう。片やメンズのタイミングに来るウィメンズバイヤーも増えていたり、そういった面でも垣根がなくなっている気がします。もっと細かい話をすると、デザイナーたちも生地展にいってそこで見た生地を基に「こういう服を作ろう」といった、いわば新しい傾向が生まれるわけじゃないですか? けどファブリックのメーカーも新しいビジネスを拡げるためにメンズの生地をウィメンズ展に出展しているし、その逆も然り。生地レベルでもメンズウィメンズのミックスが進んでいます。
久保
なるほどね…深すぎる…ポギーさんどこまで見てるんですか!(笑)。ぼくは、ここ最近はいろいろなファッションがミックスされることで急激におもしろくなっていた気がするんですけど、ちょっと停滞期に入った印象。前作の焼き回しというと言い方が悪いんですけど、ブランドもバイヤーも鉄板モノに頼らざるを得なくなる。おもしろいからというよりは、「これ買っておけばいいんでしょ」みたいな流れがすごいあって。バイヤーだから新しい流れを探してはいるんですけど、なかなか…。だからショップの次なる手として、いまはウィメンズに注目しています。でも本業の方々のやり方はできないから、自分なりの感覚でどうやったらウィメンズを売れるかを模索しているんですよね。
秋元
(マドモアゼル・)ユリアのポップアップは盛り上がってたよね。
〈FENTY PUmA by Rihanna〉の?
久保
あれは完全に試験的なポップアップだったんですけど、自分たちではウィメンズ物を扱うノウハウがないから、表現は女の子にまかせようと。スタッフはただ売るだけ(笑)。それで昔からの友人であるユリアちゃんに、〈FENTY PUmA by Rihanna〉のポップアップショップのディレクションを頼んだんですよね。想像を超える大成功でした。
秋元
日本ではなかなか見ない施策だったよね。営業中なのにショップ内にはインスタレーションのように女の子たちが並んでいるからフォトジェニックだし、買い物もできるっていう。
久保
女の子が店頭にいる様子がインスタグラムでバンバン配信されるから、その一週間はほとんど女性しか来ませんでした。今回の取り組みは、自分たちにとっても今後武器になる手応えを感じることができたのが一番の収穫で、将来的には、ギャラがあえば梢ちゃんにもお願いしたいと思っています(笑)。やっぱりファッションはおもしろくないと意味ないので、許されるならポギーさんにも…。ぼくらが売るので、キャスティングとかディスプレイをポギー色に染めてくれませんか?(笑)。
小木
(笑)。
久保
大げさな言い方かもしれないけど「GR8」は箱でいいんですよ。メンズウィメンズを本格的に両方やるとなったらもうこれまでのイメージは払拭して、誰かが何かをやったときに色が大きく変わったりその人の雰囲気が思いっきり出るような店舗作りを目指しています。
小木
それいいですね。
久保
なので、『ガールフイナム』のポップアップもいつかぜひ!
一同
(笑)。