日本と韓国を横断する新鋭シンガー、 yommが語る東京。
日本と韓国を横断する新鋭シンガー、 yommが語る東京。 日本と韓国を横断する新鋭シンガー、 yommが語る東京。

New face of music scene.

日本と韓国を横断する新鋭シンガー、
yommが語る東京。

2025.08.09

K-POPやオルタナティブ、クラブミュージック……。
近年の音楽シーンにおいてさまざまなカルチャーが交錯する韓国から、
気鋭のシンガーソングライターが来日したとの噂を聞きつけ
恵比寿の「BLUE NOTE PLACE」で行われたライブへ。
チャーミングな表情とは裏腹に内に秘めたシリアスな眼差しを捉えながら
自身の音楽性や東京への視点などを聞いてきました。

Photography: Shoya kitano
Styling: Kim Minji

yomm @moodyoon_

韓国出身。モデルや俳優としても活躍するシンガーソングライター。自身のSNSで公開したリール動画やショートパフォーマンス動画が話題を呼び、若者を中心に支持を拡大。オルタナティブ・ポップを軸に、ピアノの弾き語りやダンサブルなアプローチなど、多様な音楽性を展開している。2024年に「yomm(ヨム)」名義で日本での活動をスタートし、荒谷翔大やミツメの川辺素、YeYeなど豪華ミュージシャンが楽曲提供した1st EP『スクランブル – 東京』を昨年10月にリリース。

ファンからエネルギーをもらった日本公演。

ー昨年から本格的に日本での活動を始めているyommさん。ご自身の音楽のルーツを教えてください。
幼少期から音楽に興味のある父の影響でクラシック音楽を学び、中学校から高校までフルートを専攻していました。大学入学前には現代音楽をやりたいという思いが強くなり、バークリー音楽大学でオーディションを受けたのが、今の活動に繋がっています。
ー日本で活動をしようと思った理由は?
数年前に日本の音楽をたくさん聴くようになって、日本文化への興味が沸いたんです。その頃、大好きなアーティストであるTENDREさんの曲のカバーをInstagramに投稿しました。それがきっかけで現在のレーベルの代表者とつながり、そこから自然と日本での音楽制作のアイデアについて話し合うようになりました。
ー韓国と日本、それぞれの活動の軸となっている部分に違いはありますか?
韓国では「チェ・ジョンユン」として自分自身の色を明確に反映した音楽を作っていますが、日本では日本のインディシーンの雰囲気を持った作品が多いです。当初から日本のミュージシャンをプロデューサーとして起用してきたからかもしれません。
ー日本のファンのみなさんの前で楽曲を披露してみていかがでしたか?
本当に本当に緊張と興奮でいっぱいでした。正直「BLUE NOTE PLACE」での公演が決まってから、一度も安心して眠れず、心配と期待が半々でした。特に、普段のライブでは観客のみなさんとよく交流するのですが、日本語で同じようにできるかが心配で……。日本語の練習と曲の練習をひたすら繰り返しました。でも心配とは裏腹に、みなさんが私の音楽を楽しんでくれているのが分かって、すごく嬉しかったです。日本のファンとまた会いたいし、みなさんのおかげで私の原点の情熱を再発見し、パワーももらえました!

東京は混沌としつつも惹かれる街。

ー1st EP『スクランブル – 東京』では多様な日本のアーティストとタッグを組んでいますよね。
たくさんの方に参加していただき、各トラックがとても個性的だったことに驚きました。EP制作中に初めて出会ったミュージシャンもいれば、ずっと尊敬していたアーティストともコラボレーションできたので、本当に感謝しています。韓国で活動していた頃は、ほとんど自分で曲を作っていたので新鮮でしたね。
ーそれぞれの曲のエピソードや思い入れを教えてください。
最初にリリースされた『初恋』は録音するのがすごく難しかったので、私にとって特に思い出深い曲(笑)。 『Alice』は私の声にいちばん合うと思っています。YeYeさんが作った曲は、私がいつか作曲してみたいと思っていたスタイルだったので、歌えたことがうれしいです。キセルさんが手掛けた曲は、彼らにしか作れないユニークな曲だったと思います。歌えるかどうか心配でしたが、レコーディング中にFaceTimeでご本人からフィードバックをもらえたので、作業がとても楽しかった。『ミラコー』は夏にぴったりのビートとメロディで、韓国の音楽仲間でラッパーのLayoneがフィーチャーされているので、よりクールに仕上がったと思います。
ーご自身で作詞作曲された、EPの表題曲でもある『スクランブル – 東京』の楽曲紹介で「初めて東京を怖い街だと思った」とおっしゃっていたのがすごく印象的でした。どういった思いで作詞されたのでしょうか?
旅行で東京を訪れていたときは、そこで働いたこともなかったので、急かされるストレスや迷子になる経験はありませんでした。でも初めて仕事で東京を訪れたとき、働く人の視点から街を見たら、ソウルと同じように忙しく混沌としていることに気づきました。当時私は日本語を話せなかったので、東京はとても怖い場所のように感じて。その感情を歌詞を書く際に反映させたんです。渋谷の交差点をさまよい、日本語が話せないことに怯え、不安でいっぱいだったこと。それでも変わらない美しい東京の景色を見上げた瞬間をこの曲の中で捉えたかったんです。
ー東京は海外からだけでなく国内からもたくさん人が集う街ですが、外側から東京を見ていた印象はいかがでしたか? また、「怖い」と思いつつも東京を「美しい」と思ったのはどういった部分ですか?
外から見た東京は、とても活気がありダイナミックで、時折圧倒されるような感覚もあります。まるでジブリ映画の一場面みたい! 日本には7回ほどしか訪れたことがありませんが、毎回行くのは東京。何度行ってもいちばん惹かれる街です。伝統と最先端の現代性が共存する様子や喧騒の中で垣間見える他者の優しさ、予期せぬ場所に隠れた静けさ。そういった対比や混沌と秩序の融合に美しさを感じるんです。

音楽作りは自己と向き合うこと。

ー楽曲制作のインスピレーション源を教えてください。
主なテーマは自己反省や愛。これらのテーマをぼかすことなく、正直にまっすぐ表現しています。
ー影響を受けているミュージシャンやアーティストはいますか?
韓国のアーティストであるキム・ドンリュルです。彼の音楽は、いま私が追求している方向性とは異なるかもしれませんが、ミュージシャンとしての自分を思い描いていた時期に毎日彼の曲を聴いていたため、大きな影響を受けています。
ー音楽活動を通して、どんなことを伝えたいですか?
長い間、自分らしくいることがあまり楽しくなかったんです。今でもときどきそんな風に思うこともあって。でも音楽を作ることで、少しずつ「自分らしくいていいんだ」と思えるようになりました。私の正直な音楽を通じて、同じように感じている人たちに、私たちはそのままの自分で愛される価値があること、ときどき少し悲しかったり迷ったりしても大丈夫だということを伝えたいです。
ー関心のある日本のカルチャーはありますか?
日本のファッションと音楽にはずっと興味があったのですが、最近は特に日本のヘアスタイルに夢中になっています。先日日本に行った際にはヘアカットとパーマをしたのですが、これからはずっと日本でやりたいと思っているくらい!
ーyommさんといえば、Instagramで発信するキュートな世界観やファッションも印象的です。ご自身が気になっている韓国のファッショントレンドを教えてください。
韓国のファッショントレンドでいえば、いまはドット柄を取り入れたスタイルにハマっています。カラフルな服を着るのも大好き。ほかにも、パッチワークや刺繍を使ったリサイクルやカスタマイズや、韓国のヴィンテージのメッカであるドンミョでヴィンテージアイテムを探し回ったり。メガネもよく取り入れています!
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