GIRL HOUYHNHNMGirls Just Want To Have Fun!
シャルロット・シェネが創造する、パリ流“ニュークラシック”。
シャルロット・シェネが創造する、パリ流“ニュークラシック”。

To the dictates of the feelings.

シャルロット・シェネが創造する、パリ流“ニュークラシック”。

2018.11.13

キャリアの途中にジュエリーデザイナーに転身し、
現在世界中の女性を魅了しているシャルロット・シェネが、
自身のブランドのトランクショーのために来日。
彼女はこれまでどんな経験を重ね、
どんな想いであの唯一無二の造形美を生み出しているのでしょうか?

Photo_Mitsugu Uehara

ーファッションデザイナーとしての第一歩は「スタジオ・ベルソー(パリで1954年に設立されたファッションデザイン学校)」に入学したときだと思いますが、それよりも前からファッションに興味はあったんですか?
ファッションに限らず、デザインに興味を持ち始めたのはたしか10歳ころ。キッチンの模様替えをするときに、インテリアに興味のない兄妹に代わって私が率先して母親と一緒に家具を選んだり、壁の色をチョイスしたのは覚えています。
ーそのときに惹かれていたものは、現在のあなたの感覚とも共通していますか?
知識や経験がある分、当然いまの方が洗練されているけど、共通する部分はあったと思います。10歳のころに買ったチューリップチェアはいまだに愛用していますし。
ー学生になってからは、数学を学んでいたんですよね?
学生のころは数式ばかり解いていましたね。勉強としてではなく、もはや趣味と呼べるくらいに。
ーそのときはファッションへの興味は一旦薄れたり?
数学や化学にばかり没頭していました。父は薬剤師、妹は医者という家庭環境も影響していたのかも。当時は私も医者になりたかったんですよ。
ーそこから「スタジオ・ベルソー」に入ってファッションを学ぼうと思ったのはなぜですか?
バカロレア(フランスの国家学位のひとつで、中等教育の修了資格証明及び大学入学資格証明)を取得したあとも数学の勉強をしていたんですけど、半年くらい経ったころに突然飽きてしまって、自分が何をすべきかわからなくなってしまい…。そのとき直感的に選んだのがファッションでした。母親も「17歳とまだ若いし、もしファッションがダメでもまた違うことをすればいいんじゃない?」と背中を押してくれて。いろいろリサーチした結果、「スタジオ・ベルソー」を選びました。
ー直感的にファッションの道に進まれたんですね。その後長くファッションの世界で生きていくことを、当時は想像できましたか?
全く(笑)。「スタジオ・ベルソー」で学んでいるときは自分がジュエリーをデザインするなんて考えたこともなかったし、〈シャルロット シェネ(Charlotte Chesnais)〉がスタートする3、4ヶ月前ですら、自分がブランドを立ち上げることになるとは思いもしませんでしたから。正しいかはわからないけど、長く考えるよりも瞬間的なひらめきを常に優先しているし、私の生き方なんです。
ーいまのところその決断は常に成功してきましたと思いますか?
これまでのことに後悔はしていないし、結局は自分に自信があるかどうかに行き着く気がします。若いころは経験がないから、盲目的に自分を信じるのは危険かもしれない。でも、いろいろなメゾンを経たいまなら自分の直感を信じられるし、私にとってはそれがいちばん重要なんです。
ー〈バレンシアガ(BALENCIAGA)〉のデザインチームに加わったのが2006年。当時クリエイティブ・ディレクターだったニコラ・ジェスキエールからの依頼をきっかけにジュエリーのデザインを始めたそうですが。
ニコラはとても実験的な人で、とにかくどんなことにも挑戦するし、チームの全員がそれについていきます。あるとき彼が「ジュエリーを中心にしたショーにしたい」と言ったんですけど、ジュエリーを専門としてきたメンバーが誰もいなくて。それで、彼の実験的な精神になぞって、レディ・トゥ・ウェアを担当していた私がデザインをやることに。私のジュエリーデザイナーとしてのキャリアの始まりと言えますね。
ーとはいえ、ジュエリーのデザインは未経験。戸惑いはなかったんですか?
ニコラがいた〈バレンシアガ〉は、いつのシーズンでも新しいことにチャレンジしていました。ラテックス素材の上にアーティストにペイントしてもらったり、グラフィックアーティストと仕事をしたり。服をデザインすることに代わりはなかったけど、初めての経験の連続だったから、ジュエリーのデザインもその一環でしたね。「OK、やりましょう!」という感じ。
ージュエリーとウェアをデザインする上で、アプローチの方法に違いはありますか?
ニコラと一緒にやっていたときは、ジュエリーもウェアも特に変わりませんでした。それは、彼は素材にもシルエットにも、私たちの考え方にも常に実験的なものを求めていて、すべてが延長線上にあったから。でも、〈アー・ペー・セー(A.P.C.)〉でカジュアルなデイリークローズを作っているいまは、それぞれに対するアプローチは全く違うものですね。
ー〈バレンシアガ〉に在籍した9年間で学んだことは?
9年間をまとめるのは難しいけど…。20歳で〈バレンシアガ〉に入れたことは本当に貴重な経験で、デザインにおいても精神面においても、高いレベルでいろいろな分野の人から学べました。当時は社会経験もなかったし、無我夢中でやるしかなかったから、いまとなって感じられることですけど。
ー〈シャルロット・シェネ〉のジュエリーからは、彫刻作品のような印象を受けます。実際にブランドの公式サイトには“ジュエリーと彫刻の間”という記述もありましたし。アートからインスパイアされることも多いんですか?
ジュエリーのデザインに直結しているわけではないけれど、もちろんアートは大好きです。特に、南仏のサンポールドヴァンスにある現代アート美術館の「フォンダシオン・マーグ」は都合がつけば何度も足を運んでいるほど。
ーランダムにも、計算されたようにも見えるコンセプチュアルなフォルムは、数学のように計算して生まれるのですか? それとも先程おっしゃっていたように、直感で?
複雑な数式を解くときのような時間を要して、完成までに数週間かかるものもあれば、直感でデザインして1分ほどで完成するものもあります。でもやっぱり、フィーリングがいちばん大切ですね。
ー同じく公式サイトに記載されている“タイムレス”と“ニュークラシック”というキーワードも、あなたのデザインには欠かせないように思います。それらを表現するために必要な要素は何だと思いますか?
まず、シンプルでクラシックなデザインであること。そしてそこに、私が得意とする数学的、幾何学的な感覚をミックスすること。例えば、美しいフープピアスは好きだし素敵ではあるけど、それは多くのブランドがつくっているから、私らしいエッセンスを加えるような。ジュエリーも服も家具も、シンプルでクラシックなものが本当に好きなんです。そういえばこの前の週末にマーケットに行ったら、チーズを売っている女性が私のジュエリーを着けているのを見て、すごくハッピーになったんですよ。ファッショナブルな人からスーツを着て働いている人、さらにマーケットで働いている人までが身につけてくれることは、ニュークラシックであることの証明だから。
ー自身のジュエリー以外で、あなたにとってタイムレスでニュークラシックなものは何ですか?
普通すぎて申し訳ないのですが、ブルーデニム。性別を問わず誰でも、何歳でも、しかもどんなスタイルにも合うのは、まさしくニュークラシックと言えます。あとは、エッフェル塔。とてもシンプルで、本来はパリ万博に合わせて1年限定で建設されたタワーが、みんなに愛されて現在も残っているわけですし。

シャルロットが
常に持ち歩いている私物を公開!

イニシャル入りのジュエリーケースは、パリのバッグブランド〈リュニフォーム(L/UNIFORM)〉のもの。「そのときの気分に合わせて、お気に入りのジュエリーを入れています。常に持ち歩いているから、いろんな人に『これすごい素敵だね。どこで買えるの? オフィスに行くのはめんどくさいからこれちょうだい!』と言われて、その場で持って行かれることもあるんですけど(笑)」ということもあり、中身は頻繁に入れ替えているそう。
〈Manhattan Toy Company〉の人形は、長男のレオナくんから。「レオナがこのぬいぐるみをいっぱいコレクションしていて、旅行や出張で家を離れるときに『ママ、持って行っていいよ』と言っていつも貸してくれるんです」。
写真に写るのが、上のぬいぐるみの持ち主のレオナくん。「家族の写真はいつも持ち歩いています。写っているのが夫とレオナ。あと3ヶ月前に双子が生まれたばかりで、全員男の子です。仕事以外は常に家族と一緒で、1ヶ月に3、4回は田舎で過ごしていますね。彼らと遊ばないといけないから、財布もコンパクトに(笑)。〈エルメス(HERMES)〉のカードケースを財布代わりに使っているんですけど、惚れ惚れするほどシンプルで美しい。本当は『私がデザインしたんです!』と言いたいくらい」。

Charlotte Chesnais

www.charlottechesnais.fr/en/