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TOKYO MAP for GIRL

Vol.5 世界のクリエイターが口コミで訪れるセレクトショップRADD LOUNGE。
Photo_Ryosuke Yuasa
Text_ Kana Yoshioka

ストリートもモードも、
気づけばクロスオーバーしている最近のファッションシーンだけど、
デザインの背景にカルチャー(文化)が見え隠れすると、
その服の魅力がさらに価値の高いものになる。
IRIKIさんがオーナーを務めるセレクトショップ〈RADD LOUNGE(ラッドラウンジ)〉は
最先端のサウンドをファッションで表現した服が並び、
世界中のクリエイティヴな人々が交差するメルティングポットとして存在する。

他の店には置いてない、“ここ”でしか手に入らないもの。

音楽とファッション、いつの時代も切ってもきれない縁にあるこのふたつ。どちらか一方が好きだとしても、突き詰めていくと必ずどこかでクロスすることに気づく人も多いはず。IRIKIさんがオーナーを務めるセレクトショップ〈RADD LOUNGE〉では、そんな世界各国のコアな音楽とリンクしている洋服をメインに展開。アイデンティのある、他では取り扱っていない選りすぐりのブランドを取り揃えています。

「音楽とリンクしたファッションをやりたいなと思っているんです。質のいいものを取り扱いたいので、そのために新しいブランドに関しては、世界中とにかく調べて探していますね」。

幅広い人のネットワークを使って紹介してもらったり、そこから更に掘って探し当てたり。誰しもが目にするメインストリームではないブランドの数々は、コアな層に届く希少なものばかり。

マインドは90s~00s前半の渋谷宇田川町で知ったストリート。

ディグって(=掘って)、新しいものを探す…。この感覚をIRIKIさんが培ったのは、90s後半~00s前半。NITRO MICROPHONE UNDEGORUNDなどのヒップホップを始め、中学生の頃に出会ったストリート原宿カルチャーの熱気に惹かれたことがきっかけだったそう。

「90s~00s前半のカルチャーは実際に自分が通ってきた道でもあるんですけど、ヒップホップが好きで当時レコード屋が集まっていた渋谷宇田川町へほぼ毎日通っていたんです。そのときのレコード屋の雰囲気がすごく印象的で。店員さんはムスッとしているのに、でも格好いいから通ってしまうんですよ(笑)。音楽だけではなく、ファッションもそうだし、いろいろな情報を教えてくれる文化は宇田川町にはあったんです」。
90s~00s前半のレコード文化の中心である宇田川町で、音楽、ファッション、その他いろいろなストリートワイズを学んだIRIKIさんは、当時DJ HAZIMEさんの元で働いてたことから原宿にあった〈RADD LOUNGE〉で働き始めるように。そのときに店長として活躍していたIRIKIさんが目標にしていたことは「おもしろい人たちがひとつの場所に集える場所をつくること」。宇田川町で得た感覚を原宿の店へ落とし込み、2012年に店が渋谷へと移ったと同時に、さらに進化させた店作りを考えて“ほかの店が扱っていないおもしろいブランドを見つける”といういまのスタイルになったそう。

「ストリートとハイファッションが一緒になり始めてきたので、自分はもっとコアな方を目指そうと思ったんです。それまでの経験を一度リセットしてもいいかなと」。

ヨーロッパ、アメリカ、実験的な音楽アーティストとつながりのあるブランドをセレクト。

現在、〈RADD LOUNGE〉では、どれも音楽とリンクした世界中のコアなブランドの服が販売されています。

「〈VAJAS(ヴァジャス)〉のデザイナーであるヴァジャス・クルシェフスキーは、彼が高校生の頃からブランドをやっていて最初は3型しかなかったけど仕入れていました。でも2016年にLVMH PRIZEというファッションコンテストで特別賞を受賞してから、〈Pellemoda(ペッレモーダ」〉がバックにつくかもしれないという話になっているみたいです」。

〈VAJAS〉は坂本龍一の新アルバム async にもリミキサーとしても参加していた Yves Tumor が初期のプレゼンテーションの音を作るなどし、2017AWのコレクションで一度ブランドを終了。若干22歳のデザイナーはカナダからイタリアへ拠点を移し、早くも〈Pihakapi(ピーアッカピー)〉のクリエーティブディレクターに就任するのだそう。
「〈ECKHAUS LATTA(エコーズラッタ)〉はK-HOLEとともにノームコアの流れを作ったブランドなんですけど、シンガーのBLOOD ORANGEことデヴ・ハインズが毎回ランウェイでモデルをやっています。〈J’AI MAL A LA TETE(ジェマララテート)〉は、とあるメゾンブランドの元インターンとサウンドエンジニアをやっていた人が立ち上げたブランドで、僕からするとエンジニアの細かい部分がデザインの細部に現れている感じがするんです。ベルリンのブランド〈NHU DUONG(ニューズウォン)〉は、RABIT 主宰のレーベルHalcyon Veil からもリリースしていたWHY BEや、DINAMARCA 主宰の STAYCOREに所属しているmobilegirlも関わっていますね。ベルリンらしい無機質な要素が格好いいんです」。
その他、約4年の月日をかけて制作されたルイジアナ出身の音楽プロデューサーSUCIDEYEARと、〈RADD LOUNGE〉が手がけるオリジナルブランド〈ANTITHESIS.(アンチテーゼ.)〉とのコラボレーションアイテムや、ワルシャワやメキシコ、中国やカナダのレコードレーベル発のグッズなど、ひとつひとつ音楽の背景を匂わせるアイテムをセレクトして販売。

「音楽をやっている人は感覚のいい人たちが多いからか、おしゃれな人たちがたくさんいるイメージです」とIRIKIさん。確かにお店には、この人たち一体どんなことをしているんだろうと思わず尋ねてみたくなる、個性的な人たちがひっきりなしに訪れています。ちなみにブランドを通じて知り合った海外のアーティストが来日をするとお店に顔を出すだけでなく、ときには一緒にイベントを行うこともあるそう。

同じ匂いの人々が世界中から集まるミーティングプレイス。

「 90s~00's前半に僕がレコード屋へ通っていた頃、店に5枚程度しか入らないプロモレコードというのがあったんですけど、その感覚と僕の店に置いてある服は同じです。変態って言われがちですが(笑)、これからもどんどん突き詰めて、よいことをやっているおもしろいブランドを淘汰しながら発掘していきたいですね」。

90s~00's前半に知った音楽×ファッション、それをさらに奥深く掘るといった感覚を、時を経るごと進化させてきたIRIKIさん。〈RADD LOUNGE〉という店を通じて、アイデンティティのあるファッションはもちろん、新しい感覚を望む世界中の人たちのミーティングプレイスを提供し続けてくれています。