TOKYO MAP for GIRL

vol.1 リブートしたatelier ST,CATの向かう先。
Photo_Akemi Kurosaka(STUH)
ENGLISH

次から次へと新しいスポットが誕生し話題になる。
少し目を離しただけであっという間に置いてけぼりになりそうな東京で、
一体どこへ行けばおもしろいことに出会えるのか?
毎月ジャンルに関わらず、ガールフイナム編集部が気になる場所を訪ねます。
今月は世田谷にあるアクセサリーショップatelier ST,CATへ。
デザイナーである林 聖子さんにもお話を伺いました。

お店のようでお店ではないところ。

少し前から、耳元にごろっとした大きめのアクセサリーをつけるのがトレンドですよね。特に夏は装いが軽やかになるぶん、アクセントとして取り入れている人も多いのでは。今月オープンしたばかりのAtelier ST,CAT(アトリエエスティーキャット)はまさに「トレンドの大ぶりイヤリングが買えるお店」ですが、そんな単純な表現では決して紹介したくない、新しいインディペンデントな場所なのです。
打ちっ放しのコンクリート壁には写真が飾られ、プロジェクターで映像が映し出されています。ショップというよりはまるでギャラリーのような空間だと思ったら、実は本当にギャラリーとしての役割も果たしているよう! お店は月に一週間ほどしかオープンしないのですが、期間中はアクセサリーの販売だけでなく、様々なアーティストの作品を展示。月ごとに展示内容やアーティストは変わり、7月はフォトグラファーのTowa(@photowaforever)さんと映像作家の吉岡美樹(@oomikidayoo)さんの作品が展示されていました。

また、デザイナーの林さんとアクセサリーを一緒に作るワークショップや占い師を呼んでのイベントも開催し、“売る”ということだけを目的としない新しい形のお店を目指しています。そこには、林さんの「〈エスティーキャット(ST,CAT)〉のアイテムをただのファッションとして捉えるのではなく、ひとつの表現された世界観として感じてもらいたい」という思いがあります。
左から、¥10,200+TAX、¥12,220+TAX
左から時計回りで、¥12,220+TAX、¥13,200+TAX、¥8,200+TAX

オリジナルパーツへのこだわり。

〈ST,CAT〉という名をすでにご存知の人がいるように、ブランドが始まったのは3年前のこと。当初は買い付けのパーツを組み合わせて作っていたのですが、徐々に林さんがデザインしたオリジナルパーツを増やしていき、今回のオープンにあたってはオリジナルパーツがメインとなるように準備しました。

「私がもともと“物の形”にすごく興味があるんです。柔らかい曲線を持っていたり、微妙な非対称さがあったり、何とも言い表しがたい形に惹かれます。そういったことをダイレクトに表現したくて、オリジナルパーツにこだわりました」と林さん。パーツをつなげるだけという商品の構造自体はいたってシンプル。そこに林さんにしか表現できないアンニュイな世界観が落とし込まれているのが〈ST,CAT〉の魅力なのだと改めて感じました。

戸惑いから決断へ。

「私の作るアクセサリーが自分でも思いもよらないくらいトレンドになって、露出もどんどん増えて。とにかく生産して、卸しての繰り返しで…実際にどんな人に届いているのかということにまで意識がいかない時期がありました」と振り返ります。〈ST,CAT〉は林さんが自身のために作っていた物を、通っていた代官山の美容室に置いてもらったのが始まり。それがバイヤーやメディアの目に止まり、多くのセレクトショップなどに卸すようになりました。トレンドとして普及していくのが嬉しい反面、ただただ消費されて、廃れてしまって、いつかは“一過性のブランドだった”と認識されてしまうのではと次第にこのまま続けていくことに違和感を覚えたそうです。

思い切って卸しがメインだった販売の形を変えようと決めたのが今年の春。お客さんと対面できる場、〈ST,CAT〉の世界観に直接触れてもらえる場が欲しいと考えました。お店のオープンに合わせてオンラインストアも開設。お店自体は月に一週間ほどだけ開くポップアップショップのような運営を続けますが、オンラインストアではいつでも商品が買えるように。今後は、他のショップと一緒にイベントを開催するなど新しい取り組みも予定しています。

若いクリエイター達の勢い。

形を変え再始動するにあたって、前述したように、お店ではアクセサリーの販売とともに様々なアーティストの作品を展示することを決めました。それは、訪れた人に〈ST,CAT〉の世界観を知ってもらいたいということだけではなく、勢いのある若いクリエイター達に表現の場を提供したかったから。「知られていなくても、素敵な作品を作っているクリエイターは本当にたくさんいて。それが知られていないからという理由だけでどんどん表現の場がなくなったり、ビジネスに繋がらないのはすごく残念なことだなと感じていました」と林さん。

第一回目で作品を展示したTowaさんですが、実は18歳の高校生! インスタでたまたま見つけて、林さんが自ら猛アタック。これからも若いクリエイター達と色んなことを表現していきたいと話してくれました。ちなみに、いま気になるクリエイターは現役美大生のフォトグラファーRiku Hoshika(@akihsoh)さん。写真だけでなく、個展で見かけた彼のコラージュ作品にも心惹かれたそう。また、大阪で個展を開催中のアーティストRyota Nishikawa(@nishikawaryota)さんにも注目しているとのこと。今後、atelier ST,CATから新しいクリエイションがどんどん広がっていくのが楽しみです。林さんが気になるアートや、自身がインスピレーションを得たものなどについては〈ST,CAT〉が運営する「INSPIRATION SITE」でも紹介されています。

移り気で曖昧さのある世界観。

林さんは女性らしさとアンニュイさと繊細さが入り混じったような独特な表現がとても魅力的なのですが、最後にatelier ST,CATを一言で表すと? と聞くと「移り気で曖昧さのある感じ」と表現してくれました。「人の考えや表現したいものって年齢を重ねたり、時代に影響されたりすることによって変わっていくと思うんです。さっき話した物の形もそうなのですが、私はそういう曖昧なものが好きで。そうやって生き物みたいに形を変えながら存在し続けたいですね」。月に一度はここを訪れて、小さなアクセサリーに詰め込まれた林さんと〈ST,CAT〉の世界をもっと覗いてみたくなりました。