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Dig up! him & her. #7
ELAIZAが届ける『ライフ・ウィズ・ミュージック』。
シンガーソングライターのSiaが初監督をつとめた映画『ライフ・ウィズ・ミュージック』。
彼女の作曲した音楽と美しい映像が魅せる完璧なマリアージュは、
公開前から世界中で話題になっていました。
そんな本作の主題歌『Together』の日本版カバーソングに挑戦するのは歌手のELAIZAさん!
映画監督、女優としての顔も持つ彼女が歌に込めた「愛」とは?
Photo_Hidetoshi Narita
Interview & Text_Sumire Taya
Styling_Risa Kato
Hair & Make-up_Kenji Toyota(SHISEIDO)
『ライフ・ウィズ・ミュージック』
アルコール依存症のリハビリプログラムを受けながら孤独な日々を送るズーは、祖母の死をきっかけに、疎遠になっていた自閉症の妹ミュージックと暮らすことに。感受性豊かで周囲の変化に敏感な妹との生活に戸惑うズーに、アパートの隣人エボがやさしく手を差し伸べる。3人での穏やかな日常に居心地のよさを覚え始めたズーは、自身の孤独や弱さに向き合いながら少しずつ変わろうとするが…。
ミュージカルとは一味違う、
音楽と映画の融合。
- ―楽曲のオファーを受けたとき、どんなお気持ちでしたか?
- はじめは規模が大きすぎて、自分のなかで噛み砕くのに時間がかかりました。でも冷静に考えて、Sia自身がメガホンをとって伝えたい作品の手助けができる、と思ったらすごくうれしい気持ちになりました。
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- ―実際に作品を観たときは、どんな印象でしたか?
- 言葉ひとつひとつが選び抜かれていて美しいなと。ただ美しい言葉を並べているのではなく、日常のなかでも愛を感じられる、そんなセリフが記憶に残っています。例えば主人公のひとり、ミュージックの頭のなかを描いたシーンで流れる歌の歌詞。登場人物の本質を映し出していたり、音楽の取り入れ方も斬新な手法が使われていて。ミュージカル仕立ての音楽映画は好みが分かれるジャンルだと思いますが、本作の音楽と映画の融合はとても新鮮で、多くの人に驚きと感動を与えてくれるはずです。
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- ―本作の楽曲はSia自ら書き下ろしています。とくに印象に残っている楽曲は?
- 『Could I Love with No Fear』のパステルな世界観や扉から飛び出してくる表現など、ビジュアルを含め大好きです。ちなみに今日の衣装も映画からインスパイアされたような、カラフルでハッピーな気持ちになれるアイテムを選んでみました。
- ―映画のストーリーに、登場人物の空想というか、脳内の世界が広がるシーンが随所に差し込まれているのが独特ですよね。ELAIZAさんは空想や妄想をしたりしますか?
- むしろ、妄想してばかりです(笑)。散歩の最中に道の真ん中で立ち止まって、このプロットはどうかな? と空想したり。そこで遊んでいる子どもたちを見て、その子たちのストーリーを考えることもありますね。楽しそうにしている子も、昨日は悲しくて泣いたりしたのかな? とか。空想した世界をどんどん広げていくタイプかもしれません。
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- ―作品に出てくる登場人物がみんな個性的ですが、ELAIZAさんが共感したキャラクターはいますか?
- 主人公であるズー、ミュージック、エボ、この3人に惹かれました。寄り添える人がそばにいない状況で、弱さを積み重ねながら大人になってしまった彼女たち。それでも前を向いて生き続けることで、その世界が徐々に開いていく。物語のはじめから終わりまで、ずっとシンパシーを感じていましたね。
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- ―ズーがミュージックとエボを通して、自身の孤独や弱さと向き合い変わろうとする姿が印象的でした。ELAIZAさんがこんな状況に直面したとき、どんな人に支えになってほしいですか?
- ズーにとってミュージックがそうであるように、自分を鏡のように映し出す人がそばにいたら、それほど幸せなことはないですよね。自分が最悪な状態のとき、共感してくれる人がそばにいるってありがたいけど、危険な側面もある。悩みや不満を相談したときに、共感するだけではなく「考え方が偏ってるんじゃない?」と注意喚起をしてくれる人がわたしの周りには多くて。そのおかげで積み上げてきた価値観にもおごらず、客観的に考えたり、対処することができる。そんな人がそばにいてくれることが大事かもしれません。
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救いを求めるときは、
好きな曲のレコードに針を落とす。
- ―作品の大きなテーマである「救い」に音楽が重なるシーンが印象的ですよね。ELAIZAさん自身、音楽に救われていると感じるときはありますか?
- 毎日ありますね。音楽って耳をすませばすますほど身近になり、自分を救ってくれる大切なもの。サブスクで気軽に聴ける時代だからってプレイリストをただ流すだけじゃなく、一曲一曲検索してみたり、レコードに針を落として大切に聴きます。スティービー・ワンダーの『For Once in my Life』はそんな曲のひとつ。自分が救いを求めているときに再生すれば、答えまで導いてくれる気がするんです。
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- ―では、Siaに惹かれた部分も教えて下さい。
- とにかく歌詞が美しい。そして、彼女独自の切り口が好きですね。2017年にリリースされた『Snowman』は雪だるまが溶ける様子に恋人との別れを重ねた作品で、抽象的な表現でありながら、わたしの心にピトッと寄り添ってくれました。あとはやはり、彼女の叫び声というか、シャウトするパートです。電子を通してもエネルギーが伝わってくるのが凄い! 不思議な魅力を持ったアーティストだなと思います。
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- ―『Together』の歌詞にはlove(愛)というワードがたくさん使われてますね。
- ”I want love, I want to give it” ”I want love, please deliver it” を繰り返すパートがあるんですけど、歌い方によっては「愛がほしい」「愛したい」どちらの意味にもなる。表現の仕方で逆の意味になるっていうのがとても興味深い。実際、愛することと愛されることって表裏一体で、ちょっと視点を変えてみれば、自分はこんなにも愛をもらっていたんだなと気づけるんですよね。
- ―愛って奥深いですね。
- 「愛を受ける」って言葉にすると大袈裟に聞こえるかもしれないけど、臆せず、さまざまなものに対して「Thank you」と感謝できたほうが、ラッキーだなって思います。
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〈アナ スイ〉ドレス ¥81,400、ヘッドピース ¥20,900、グローブ¥23,100(すべてアナ スイ ジャパン 03-6635-6470)、〈ヴィヴィアーノ〉付け襟 ¥165,000(ヴィヴィアーノ03-6325-6761)、〈ぽこ・あ・ぽこ〉タイツ ¥3,300(ぽこ・あ・ぽこ 03-3477-5006)、〈ジャンヴィト ロッシ〉シューズ ¥116,600(ジージーアール ジャパン 03-3403-5564)
INFORMATION
『ライフ・ウィズ・ミュージック』
監督・製作・原案・脚本:Sia
出演:ケイト・ハドソン、マディ・ジーグラー、レスリー・オドム・Jr.
原題:MUSIC
配給:フラッグ
© 2020 Pineapple Lasagne Productions, Inc. All Rights Reserved.
公式サイト
Twitter
Instagram
PROFILE
ELAIZA
1996年生まれ、福岡県出身。池田エライザ名義で2009年よりモデルとして活動をスタート。2011年の映画出演をきっかけに女優として注目を集め、映画、ドラマと活躍の場を広げる。2020年にNetflixで配信されたドラマ『FOLLOWERS』で演技の幅を開拓し、同年には映画『夏、至るころ』で映画監督も務めた。昨年8月にELAIZA名義でシンガーとしての活動を開始し、11月にファーストアルバム『失楽園』をリリース。Instagram @elaiza_ikd