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猪塚さん、HARUちゃん最近のファッションについてどう思います?
猪塚さん、HARUちゃん最近のファッションについてどう思います?

Two Like That.

猪塚さん、HARUちゃん最近のファッションについてどう思います?

2020.04.14

ファッションが好きと一口に言っても、大事にするポイントがひとつ違うだけで
まったく異なる文脈になるのが、これ奥深い部分でもあるんです。
スタイリストとはその魅せ方を司る役目であり、師の技を学ぶためにアシスタントとなる。
大凡がそうして習得するのですが、そこには単に技を学ぶだけではない苦労もあるものですよね。
それを否定するわけではないものの、互いのジェネレーションを受け入れながら
もっとフラットにコミュニケーションをとり合っている2人がいます。
スタイリストの猪塚さんとDJとしても活躍するHARUちゃん。
師弟関係の新しい形を自然と提示しながら、そこで繰り広げられる有意義な会話。
こうやって聞けるファッションの話がいちばん為になったりしませんか?

Photo_Riku Ikeya
Styling_Keita Izuka, HARU
Model_Surah

PROFILE

師:猪塚慶太

日々スタイリスト。ブランドのディレクションやコンサルティング、広告、アーティストのスタイリングを中心に活動中。無類の音楽好きで、現場の音楽は猪塚さんが担当。

弟:HARU

DJ & スタイリストアシスタント。音楽イベントだけに留まらずファッションブランドのパーティやイベントでもプレイ。アシスタントについて5か月目、日々ものすごい勢いで吸収するバイタリティ溢れる姿勢には感服。

師弟スタイリングバトルから紐解く個性。

いま2人が何を感じてどんなスタイルを表現したいのか、その答えはやっぱりスタイリングで確かめないと!
デニムと黒ジャケット、ベーシックなアイテムで魅せるそれぞれの個性を感じ取ってみてください。

USE THIS!

アワーレガシーのデニム

ストレートでフルレングス。股上が深くてジャストサイズのものをチョイス。きれいなシルエットで穿くのがお互いのいまの気分。
(スタイリスト私物)

師匠:猪塚慶太

弟子:HARU

シンプルでセクシー。同じ要素でそれぞれ表現したかったこと。

ーまずHARUちゃんからスタイリングポイントを教えてください。
HARU:ゴリゴリのHIP-HOPスタイルが好きだったのですが、それだけじゃなくて大人っぽいセクシーさも出したくて、胸元と背中がしっかり空いたニット素材のタンクトップを選びました。先が尖ったヒールを合わせたのもモデル本人ともマッチしてそうだなと思っていて。やりすぎない程度に、あくまでシンプルにまとめました。
猪塚慶太:HARUっぽいシンプルなスタイルだね。
HARU:ごちゃっとしたくないっていうのは単純にいまの気分なんですけど。とにかくシンプルで大人っぽくてセクシーで、あと本人と馴染んでる、というところを大事にしています。
猪塚慶太:個人的にはネイビーのニットタンクトップをチョイスしたのは好きだったな。ただ、HARUがイメージしている新しいコンサバのようなスタイルがあるんだとしたら、もうワンアイテム、プラスしたコーディネートを見たかったですね。それと、ヒールはもうちょっと他の形を見てみてもよかったんじゃないかなと思ったけどね…?
ーと言いますと?
猪塚慶太:同じベーシックさを表現するのでも、ポインテッドトゥーで甲の空きにエッジがあるものをなぜ選んだのか気になったかな。
HARU:パンツが足にかかったときに見える甲の肌の出方が三角できれいだなと思い選びました。

弟子:HARU

弟子:HARU

ー猪塚さんのスタイリングポイントはなんですか?
猪塚慶太:僕はハンサムな女の子をイメージしました。まず師匠として、アドバンテージをひとつHARUにあげるということで、モデルのチョイスをHARUの友達のスーラちゃんにしたんですね。僕は今回初めて会って一緒にお仕事するのですが、HARUはもちろん何度も会っていてスーラちゃんがどんなキャラクターの女の子なのかもよく知っていて、何が好きかとか、何が似合うかは僕より知っているんですね。スタイリングするうえで、着る人のパーソナリティを知っているというのは個人的に大きく影響するものだと思っているので。そこを踏まえて今回は、僕のなかでもベーシックとセクシーさがポイントになっていて、ハンサムでセクシーな代表アイテムは何かを考えていたら黒レザーにたどり着きました。レザージャケットやコートではなく、レザーシャツをデニムにINして着せることをポイントとして。

師匠:猪塚慶太

師匠:猪塚慶太

ーアクセサリーのチョイスが、HARUちゃんはゴールドで猪塚さんはシルバーで対極的に感じましたがそれぞれどういう理由で選びましたか?
猪塚慶太:ゴールドのアクセサリーはHIP-HOPカルチャーの要素が見えちゃいそうだったので、今回はあえて使いませんでした。僕がイメージしている彼女自身のキャラクターからちょっとズラしてみたかったんですね。
HARU:私はそれこそ私自身にあるHIP-HOP要素が抜けきってないので(笑)。
猪塚慶太:でもそれでいいと思うよ、それこそパーソナリティは大事にすべきだし狙ってつくれるものでもないと思うからね。
ー猪塚さんのコーディネートは、黒のレザーシャツ、デニム、ウエスタンブーツとアイテム単体でみたらメンズっぽいのですが、女性的でセクシーさもあるように見えるのがまたすごい気がします。
猪塚慶太:ありがとうございます。サイズ感と肌の見え方ですかね? 胸元のボタンの開き方、袖丈は短めで全身タイトだったり。

USE THIS!

エイティーズのジャケット

かっちりしすぎず、テロっとした光沢のある素材感。ダイアナ・ゴードンのMVに出てくるような女性の強さを引き出すアイテム。
(スタイリスト私物)

師匠:猪塚慶太

弟子:HARU

正統な装いからの崩しと等身大の自分。

ーでは引き続き、HARUちゃんのスタイリングポイントから教えてください。
HARU:やっぱり90年代のHIP-HOPスタイルはどうしても好きなので、それといま好きなムードを混ぜたくて。モードで大人っぽいけどちょっとB-BOY感も匂わせてって感じです。 あと猪塚さんから教えてもらったシューレースの結び方を取り入れてみました。 服のシワの入り方だったり、日々間近でみて服への気の遣い方とか学ぶものがたくさんありますが、いちばん最初に習得したかったのがシューレースの結び方だったので今回トライしてみました。
猪塚慶太:こちらもやっぱりHARUっぽいですね。懐かしさといまっぽさがミックスしている感じが。等身大の自分っていうところが良くも悪くも出ているのかなって印象でもありますね。
HARU:そう思われてしまう部分を自覚しながらも、いまは仕方ないのかなって。いつか成長したときにまた見ていただけたらうれしいです(笑)。
猪塚慶太:(笑)。
スーラ:あ、モデルをしたスーラです(笑)。スウェットパンツかわいかった! HARUちゃんって感じがする。
HARU:うれしいありがとう! でもデニムのルックよりジャケットのルックの方がスーラちゃんっぽいなと思ったんですよ。なのでスタイリングを組んでいる時点でかなりイメージは沸いていました。

弟子:HARU

弟子:HARU

ーでは、猪塚さんのポイントは?
猪塚慶太:女の子のタイドアップですね。女性らしさに対して、男性の象徴ってネクタイを締めることだったりするじゃないですか、それを女の子でやってみたいと思ったんですね。さっきも話した最近のムードに加えて、トラッドとロックの要素を加えたのかな。スタイリング自体はベーシックだと思うんですね、ジャケット、白シャツ、レジメンタルタイ、デニム、ローファーっていうどれもトラッドのものじゃないですか。それをタイドアップ=セクシーだったり、サイズ感とかブランドミックスとかをして、いかにいまっぽく魅せるかっていうところは意識しています。それは普段の自分の格好でもそうかな。
HARU:いや〜もうめちゃくちゃかっこいいです。私がいま本当にマネできないなと思いながら勉強してるところがこの妙で、モデルとか服とか何かにフィットさせるのではなくて、ちょっとズラすところがすごすぎます。

師匠:猪塚慶太

師匠:猪塚慶太

ーそれって一回王道を知らないとズラすことってできないものなんですよね?
猪塚慶太:もともとズレっぱなしのスタイルはあまり好きじゃないので、ちゃんと正統なスタイルがあって、そこから崩すっていう考え方が好きなんですね。それは時代によって変わるけど、このスタイリングとスーラちゃんのキャラクターとのバランスのなかでの新しさや妙が何かを探る意識はしています。僕がおしゃれだと思う人は、高い服やブランド重視やトレンドを追いかけるみたいなことだけではなく、その人のキャラクターが出ていることだと思っているんですね。
ー自分にあったキャラクターを見つけるには?
猪塚慶太:勉強も大事だとは思いますが、自分が着たいと思うものを着てみるってことがいちばんではないでしょうか。例えば極端な話、アニメオタクの人が毎日同じスウェットを着ていたりするのも僕はかっこいいと思ってしまいます。着込んで馴染んでボロボロになっているのを見たら、「本当に好きなんだな」とか思うわけですよ。それは一般的なファッションではないんでしょうけど、僕はそう思ってしまいますね。

credit

  • Style 1

    〈ナヌーシュカ〉トップス、〈ジャスティーヌクランケ〉ネックレス、〈エイティーズ〉ベルト、〈ヴィンテージ〉ブーツ(すべてスタイリスト私物)

  • Style 2

    〈コス〉トップス、パンプス、〈アー・ペー・セー〉ベルト、ネックレス、一部リングはモデル私物(すべてスタイリスト私物)

  • Style 3

    〈エイティーズ〉シャツ、〈ヴィンテージ〉ネクタイ、〈アー・ペー・セー〉パンツ、〈ポートタンガー〉サングラス、〈ジャスティーヌクランケ〉ネックレス、〈オソイ〉ローファー(すべてスタイリスト私物)

  • Style 4

    〈ヨウヘイ オオノ〉トップス(O 代官山 03-6455-2033)、〈TNA〉パンツ、〈アワーレガシー〉ブーツ、〈ジンズ〉サングラス、ネックレスはモデル私物(他すべてスタイリスト私物)

ダイアナ・ゴードン

師弟関係でありながら、フラットにお互いの考え方や好きなものを交換する。

ー2人はいつもどんな話をするんですか?
HARU:音楽の話をすることが多いです。いいアーティストがいるって話だけじゃなく、あのMVのファッションが素敵だったみたいな話もします。
猪塚慶太:昨今、好きなアーティストがいても、顔まで知らなかったりすることが多くないですか? 僕はハマったアーティストはその人のバックボーンまでしっかり掘りたがる気質があって、スタイリストならではの視点かもしれないですが、どんな格好をしているのかまで見ちゃいます。

アマ・ルー

HARU:その視点で最近素敵だなと思う人は、アマ・ルーとダイアナ・ゴードンですね。
猪塚慶太:あとヴェネダ・カーターとか好きそう? きれいめなお姉さんみたいな。あとやっぱり、アマ・ルーはいいよね。昔からメンズの〈アワーレガシー〉を着てたりしてるんですよ。ジーパンにブーツ、サーマルを着てジャケットみたいな。僕はいまアーティストのジア・フォードが好きですね。ヴィンテージライクでクラシックなスーツを自分らしく着ている女の子で。なんとなく全体的にロックのムードがある人に目がいってしまうのかもしれないです。
ー他に、気になる人やこのスタイルかっこいいって人いますか?
HARU:パリのあの人…?
猪塚慶太:〈アフターホームワーク(AFTERHOMEWORK)〉のこと? エレナですね。もともとはデザイナーのピエールと一緒にブランドを立ち上げていたんですが、いまはスタイリストもやっているのかな?
HARU:この雰囲気が好きなんですよね。
猪塚慶太:エレナは2017、18年頃めちゃ見てたなー。
HARU:それ、わかります。私も結構前からチェックしてました。
猪塚慶太:僕も携わっている〈サルバム〉のパリコレのキャスティングを担当しているジェーンも〈アフターホームワーク〉と近い関係なんです。彼女はいつもゴリゴリのテクノしか聴かない人なのに格好がいつもヴィンテージヒッピーで(笑)。ずーっとブレないんです。その感覚が最高すぎです。HARUはミッシェルも好きそう。
HARU:そうですね。私もジェーンのように好きなスタイルはブレずにいたいです。そこに少しずつ味を付け足していくのが私の今後の課題です。
猪塚慶太:スタイリストならニューヨークにいるステファニーもヴィジュアルに共感できるな。
HARU:おもしろいなとは思うんですけど、共感は難しいです(笑)。
猪塚慶太:はははは。でも、こういう仕事もありますからね。自分とは違うジャンルのものにもトライして初めて分かることもあるんだよね。それをやることで自分がどう変わるかも含めてやってみないとですね。
ー確かに、この方のスタイリングは強烈ですね…!
猪塚慶太:前にガールフイナムでスタイリングしたときは、ちょうど僕もこんなムードだったんですよ。なんかArcaっぽい感じ。粘膜系! HARUも音楽はこっち系好きでしょ?
HARU:そうですね。アーティストで言うと、Kamixloは高校3年生のときに初めて聴いて、ハマってました。Endgameとかも似たようなムードのアーティストで好きです。
ーこれ系が登場したのはつい最近のことだと思ってました。
猪塚慶太:Kamixloの話で一回盛り上がったことあったね! 10年位前にもグロファイっていう似たようなジャンルがあったんですよね。白人だけどトラップの初期っぽいムードの音楽を作っている人が。
ーほう! 脱線しといてすみません。もう少しだけ気になる人やブランドもお聞きしたいです!
HARU:私の場合はやっぱり周りにいる友達が本当にかっこいい人たちばかりで、そこから吸収する事が多いのですが〈マジックスティック(MAGIC STICK)〉にいるかすみさんとか。一緒に出掛けるときの格好がおしゃれなんですよ。いろんなタイプの服を着るし、このバッグとか!
猪塚慶太:これ! 〈アンテプリマ(ANTEPRIMA)〉なんだよね! 意外でおもしろいチョイス。なんかそういうディグル感覚はB-BOYっぽくていいですよね。
HARU:あと、ルカはいまの私の好きなムードに近くてすごく共感できます。ブランドなら、話の冒頭にも出た〈アワーレガシー〉は常にチェックしています。最近の〈ボッテガ・ヴェネタ(Bottega Veneta)〉も、メンズ、レディース共にデザインのシンプルさと上品さが引き立って、いまの私のなかでは気になっています。
猪塚慶太:僕が好きなブランドや気になってるブランドはこんな感じです。HARUが好きそうなのも踏まえて挙げておきました。
HARU:かわいいですー! あと王道ですが〈オーラリー(AURALEE)〉のトレンチコートが素敵だったんですよね。メンズにあったもので。
猪塚慶太:その最初からメンズをチェックしにいく感じがおもしろいですよね。〈アワーレガシー〉もウィメンズじゃなくてメンズが好きなところとか。
HARU:メンズの方が気になっちゃうんです (笑)。でも〈ジルサンダー(JIL SANDER)〉に関してはウィメンズが好きです。例えばシャツの袖がメンズだと長すぎちゃうので。ただ、全部が全部ストリートじゃなくて綺麗めなパンプスやヒールブーツも好きです。〈サルヴァトーレ フェラガモ(Salvatore Ferragamo)〉の赤いパンプスも買いましたし!
猪塚慶太:僕よりベーシック思考ですよね。聞いてて思ったのはHARUのなかで、コンフォートが軸になっている気がします。

猪塚さんから貰ったスタジャンを着ているHARUちゃん

やりたいこと、できるようになりたいことは遠回りせずに近道を!

ーちなみにHARUちゃんがいましたい格好はありますか?
HARU:私自身もともと、短いトップスにダボダボのパンツを穿くような90年代HIP-HOPの格好をしていたんですが、猪塚さんの元でアシスタントについてからはそういう要素を引き続き取り入れながら、もう少しきれいな格好をするようにしています。私の好みが猪塚さんに寄ってきてるなという感覚もあって。
猪塚慶太:ジャストサイズの服を着るようになったかもしれないですね。
HARU:それが意外と難しいことだと気づきました。猪塚さんに頂いたジャストサイズの古着のスタジャンがいまのお気に入りです。
猪塚慶太:HARUはもともと〈C.E〉で働いていたのもあってかグライムでテッキーな服を着ていた印象があります。古着を着るタイプじゃなかったと思うんですが、最近よく着ているよね。
HARU:アシスタントについていちばん驚いたのは、猪塚さんがご自身の服のお直しをしてジャストサイズで着こなしているところです。細かい服への気配りの大切さを知りました。
猪塚慶太:同じアイテムでもその人によって合うサイズ感ってあると思うので、僕は割と“目に見えないスタイリング”をしているのかもしれません。
HARU:それがまだ掴みきれてない技術なので、早く習得したいんです。
猪塚慶太:でもスタイリストに必要な感覚はあると思うんですよ。服のリースに一緒にまわっているときに、HARU自身がどんなことを考えて仕事しているのかなと? と思って聞くことがあるんですが、僕の考えていることと一致することがあったりするんです。それって何か知識があってのことじゃなくて、感覚的に似ている部分があると思っています。知識はその仕事が好きで熱心に勉強さえすればついてくるものだから、それ以前に大切な感覚を掴めているのはまず合格点かなと。
HARU:場合によっては仕事で二重確認されなかったりするのが、いい意味でうれしかったりします。信用されてお仕事を振ってくれてるような気がしていて。その分ミス出来ないという自分のなかでの良いプレッシャーだったり。
猪塚慶太:いわゆるスタイリストのアシスタントって大量の荷物を持ったり、夜中ずっとスチームしたり車番したりすることが多いと思うんですが、僕たちはそこを強いるんじゃなくて普通に横に並んで歩いて話すし、フランクに「どう思う?」って聞きながら進めることが多いかもしれないです。それは僕が年齢を重ねて、昔と仕事のやり方を変えた部分もあると思うのですが(笑)…。
ーもちろんリスペクトがないわけじゃないと思いますが、師弟関係といえばもっと縦社会的なもののなかで何か一つ習得するのに時間をかけて師匠から学び取るという印象なのですが…。
猪塚慶太:もちろんそういうやり方もあるとは思いますが…。いつもHARUには「遠回りする必要はないよ」と言っているんです。逆にプレッシャーをかけてしまっているかもしれませんが、常に自分の仕事だったらどうするのかを考えておくべきだよと。
HARU:私が見つけられなかったら猪塚さんの仕事に影響するときもあるんですよ。
猪塚慶太:あったね去年! ある撮影でミリタリーの小道具を探してもらっていたときに、HARUはそのとき初めてそういうリサーチをしていたから苦戦していたんですよ。あのときはかなり詰めちゃったかもな。お店の人から聞いたことをそのまま僕に伝えてきているときがあって、実際に自分でも試したの? とかそういう…。
HARU:珍しいものを撮影で使うこと自体、猪塚さんならではだったりするので、他じゃ経験できないスタイリングを肌で感じているという意味ではかなり近道をさせてもらっている気がします。
ーHARUちゃんから見て、猪塚さんの作るスタイリングはどう感じるんですか?
HARU:さっきのジャストサイズの話もそうですが、猪塚さんは誰よりもその人に合っているかを意識されているなと思いました。私はまだ高いブランド服を着たい欲がそこまでないので、まずはその人に似合う服が何なのかについてをたくさん考えたいなって。
猪塚慶太:そういう部分でHARUはすごく東京出身感があるなと思うんですね。いい意味でブランドに固執してないというか本質主義というか。〈チャンピオン〉のリバースウィーブ、〈コンバース〉、〈ナイキ〉のエア フォース 1があれば最高! みたいな(笑)。
HARU:(笑)。ブランドももちろん好きだし、この仕事を始めてからはもっと見るようにはしているんですが、そのなかで好きなのは〈プラダ(PRADA)〉です。
ーただ、同じベーシックなアイテムを別のベクトルでおしゃれに魅せるスタイリストもいるじゃないですか。それぞれがかっこいい合わせ方をしているけど、比べて見て猪塚さんしか作れない何かがあって。その違いがなんだろうと思いまして…!
猪塚慶太:うーん多分だけど、「服が好き」という事に振り切って服とまっすぐ向き合っている前者か、そこに少しでもカルチャーの要素が入っているのが僕たち後者になるってことなのかな? わかりやすく言っちゃえば、映画や音楽やそのときの時代感とか。実際にHARUは普段からスケーターとかラッパーの男の子のなかにいる子だから、その影響が自然と出てくるというか。
HARU:高校生のときからそういう界隈のなかにいて、周りがやっていたことや見てきたものってずっと変わってないんですよ。でもそれが単に好きだったからこそ、他のことを無理に広げてディープに知ろうとは思わなかったんです。感覚的に自分がかっこいいと思って着たら、それがすべてだと思っていたので。でも猪塚さんについてから「なんでこういう服をこう着ているの? 」とふいに聞かれたときに答えられなくて。あまりに感覚的すぎて自分が好きで着ているのにその感じを答えられないのはよくないなと思って勉強し始めました。
猪塚慶太:答えられるようになってほしいですね。
HARU:はい! あと、前に周りの人から「HARUはそういう感覚だし、海外に行かないの?」と言われたんですよね。
猪塚慶太:ぜひ行ってきてくださいな。
HARU:ちゃんと一通りできるようになったら行ってみたいなと、密かに思っています。
ーどこに行きたいんですか?
HARU:ニューヨークですね。
猪塚慶太:絶対言うと思った(笑)。将来それでプリンセス・ノキアとかミュージシャンのスタイリングをできたら最高ですよね。逆に僕がアシスタントとしてついて行きたいですよ。