キーワードは90年代。DJ HASEBEとシンガーソングライターeillが初対面。
90s Flava! Japanese R&B/HIPOHOP DJ Mix.
キーワードは90年代。
DJ HASEBEと
シンガーソングライターeillが初対面。
2019.03.20
本文インタビューでも出てくるけど、DJ HASEBEはトップレジェンドというのが、世のクラブミュージック好きの一般常識。
みんな名前くらいは知ってるでしょ? そのHASEBEさんが、90年代をテーマに、現行のジャパニーズR&BとHIPHOPをDJ Mix。
タイトルが「TOKYO NEO 90s GROOVE」。なんともストレートな、そして気になるタイトルだよね?
というわけで、どんなMixなのか直接話を聞いちゃおう! そして収録されているアーティストのなかから、
HASEBEさんが(そして編集部も)いまいちばん気になっているシンガーソングライター、eillちゃんにも来てもらって、
その人となり、音楽感、今回のMixについてあれこれ聞いてみました。親子ほど年の離れたふたりに、果たして共通点はあるのか!?
Photo_Takao Iwasawa
Special Thanks_Manhattan Records
若い世代が作る曲には
90年代ぽいものが多い!?
- ーHASEBEさん「TOKYO NEO 90s GROOVE」のリリースおめでとうございます! 発売前にMixcloudにアップされてたメガミックス版を聴いて、これはかっこいいぞ! と思って速攻でメッセージを送って取材のオファーをさせてもらったわけですが。
- HASEBE:なかなかいいオファーの仕方だったよね(笑)。しっかり聴いてもらって声をかけてくれたのは嬉しかったですね。しかもこのMixに収録されているアーティストとの対談っていう切り口もおもしろかったし。それで何人か候補がいたんだけど、eillちゃんとやれたらいいなと思ってお願いしました。いま歳はいくつなんだっけ?
- eill:ありがとうございます! いま二十歳です。
- HASEBE:二十歳の子と喋れるだけで嬉しい(笑)。
- ーeillちゃんが二十歳で、HASEBEさんが47歳。その差27歳! これだけ歳の差があると音楽の聴き方や感じ方も違うんじゃないかなと思ったんですね。今日はその辺りの、もしかしたら噛み合ない感じも含めて話が聞けたらおもしろいなと思ってます。eillちゃんはこのMixを聴いてどうでした?
- eill:SIRUPさんとかMALIYAさん、iriさん、BASIさん。私が好きなアーティストの曲がとにかくいっぱい入ってるし、高校生のときに聴いてた人たちの名前も並んでいたので、もう青春って感じです! あと私、あんまりMixっていうものを聴いたことがなかったんです。だから今回聴かせてもらって、曲と曲のつなぎの部分とか…例えば私の『HUSH』にスッと入っていく感じとか、素直にかっこいいな~と思いました。
- ーHASEBEさん的にはどういう狙いで今回のMixを作られたんですか? 入っている曲はどうやって選んだんですか?
- HASEBE:ここ最近は、現代的なHIPHOPとシティポップを混ぜたようなMixを立て続けにふたつほどリリースしてて、今回もそういう流れにしようかなと思ってたんですね。でもスタッフと会話していくなかで、いまの曲だけど90年代的なアプローチをしてるものを、あえてまとめてみるのがおもしろそうということになりました。というのが、自分がクラブでプレイするときの邦楽が、自然とそういうものを選んでいて、ある程度形になっていたんですね。そう思って新しい曲や、自分が知らない曲を教えてもらったりしながら集めていったら、若い世代が作る曲に特にそれっぽいものが多いことに気がつきました。ビードの感じやサンプリング感、コード、メロディなどがなんとなく90年代な雰囲気で。じゃあそういうのをキュレーションしていって、この曲を聴くんだったらこっちのこの曲も好きなんじゃない? みたいな感じで、自分的に90年代な雰囲気があるなと思う曲をまとめてみました。
- ーeillちゃんの『HUSH』が3曲目に収録されてますが、もともとこの曲は知ってたんですか?
- HASEBE:この曲はレーベルのスタッフから教えてもらいました。90年代的というよりはもうちょっと新生的でパキっとしてる感じだなと思ったんだけど、メロディの構成とかが90年代を感じさせる部分もあって、いいな~と思ってぜひ入れたいということになりました。
- eill:あんまり意識して作ってないんです。いや、でも意識してるのかな…。90年代っていうと、私が生まれた年代なんですけど、J-POPに名曲がすごくたくさんあって。宇多田ヒカルさんの『First Love』なんかはめちゃくちゃ好きです!
- HASEBE:あれが出たころに生まれたってことだよね。それって結構衝撃的だな。僕が『adore』を出したのが98年だからね。eillちゃんはJ-POP以外だとどんな曲を聴いて育ったの?
- eill:小学6年生のときにKARAとか少女時代が日本に入ってきて、K-POPに“どハマり”しちゃったんです。周りの友達もみんな聴いてましたね。いま同世代の友達とお泊まり会をすることがあるんですが、みんなで騒いで、KARAの曲をかけだすと、そこにいる全員が踊れちゃうみたいな(笑)。
- HASEBE:お泊まり会ってワードがなんかときめくよね(笑)。じゃあK-POPばっかり聴いてた感じ?
- eill:中学のころにモータウンがすごく好きになりました。スプリームスを題材にした映画、『ドリームガールズ』を観たのがきっかけなんですが、フォー・トップスからボーイズⅡメンまで。グループ系をたくさん聴きました。K-POPはYoutubeとかで観られたんですけど、モータウンの古い曲とかはネットに全然なくて。その当時は、よく中古CD屋に行ってCDを探してましたね。
- HASEBE:僕が中学のときは85年くらいだったんだけど、テレビで『ベストヒット USA』がやってたころで。マイケル・ジャクソン、マドンナ、シンディ・ローパーあたりが流行ってたなあ。それをレンタルレコード屋で借りてきて、マイテープ的なのを作って。世代が違ってもなんとなく同じようなことやってたんだね。
どうしても二十歳になる前に
デビューしたかった。
- ーeillちゃんは曲を作るとき、歌詞を書くときに大事にしてることってありますか?
- eill:ん~、なんか…当たり前に自分がいいなと思うことを大事にしてるというか、自分が共感できないことはやらないようにしてます。あとは、変な壁を作らないようにしてますね。こうでなければならないとか、ここで転調したらダメとか、そういうのは一切考えない! 『HUSH』もDメロにいくときに変な転調の仕方をしてて、でもあれもよくわかんないまま感覚で作ったっていうか、そのときの感覚を大事にしてますね。
- HASEBE:いわゆる破壊の美学だね。いいと思うなあ。ある程度自分のなかに音楽的要素があって、そこを自由に泳いでいく感じ。それができてるんだろうね。楽器はできるの?
- eill:ピアノをやってたんですが小学校の途中で辞めちゃいました。コードとか全然わかんなくて。Cのキーをトランスポーズして曲を作ってます(笑)。
- HASEBE:なるほどね。俺もそれやるよ。なんていうか黒鍵を押したくない!的な(笑)。でもピアノやってたんならできるでしょ?
- eill:いやいや。苦手なんです!
- ーそうやって作った曲のなかで、eillちゃんがいちばん好きな曲はどれなんですか?
- eill:やっぱり『MAKUAKE』なんです。私、どうしても二十歳になる前にデビューしたくて。もう期限がない! やばい! ってタイミングでこの曲を必死で作って。「私の“幕開け”は、絶対に自分でするんだ!」と思って、強い意志を込めて書いた曲だったんで、いまでも私にとってヒーローみたいな曲なんです。
- HASEBE:その二十歳までにデビューしなきゃっていう気持ちは何だったの?
- eill:10代でたくさん曲を作ってたから、その証みたいなものが欲しかったんです。私はがんばったんだぞっていう。だからどうしても19歳のうちにデビューしたくて、たくさんわがままを言わせてもらいました。去年の10月にアルバムをリリースさせてもらって、最近だとSKY-HIさんの曲にフィーチャリングで参加したり、今度は輪入道さんのアルバムにも参加するんです。自分なりにおもしろいなと思うことにどんどん挑戦していって、その先にある自分の作品のリリースがいまの目標ですね。
いまのシーンにちょっと足りない要素をMixしたい。
- ーぼちぼち日も暮れ始めてきたんで、eillちゃんに最後に聞きたいんですが。HASEBEさんに会ってみてどうでしたか?
- eill:どんな声で話されるんだろう? って想像してきたんです。初めてお会いしたときはDJをされてたんでお話できなくて。そのときは、とにかくかっこいい~! って感じだったんで。今日お話してみて、やさしい人だなと思いました。あと周りからHASEBEさんはトップレジェンドだって聞かされてたんで、最初は伝説の人とお話するんだと思って、ちょっと緊張しました(笑)。
- HASEBE:まあ長くやってきたんでキャリアだけはあるからね。
- ー逆にHASEBEさんは、eillちゃんに会ってみてどうでした?
- HASEBE:あの歌声からこのキャラは想像できないというか、性格も話した感じもよくて、とってもキュートですね。
- ー最初に冗談交じりで「二十歳の子と喋れるだけで嬉しい」なんて言われてましたが、若い世代に向けて何か伝えたいとか、そういう意識ってあるんでしょうか?
- HASEBE:うーん。そうですねえ。去年は唾奇やおかもとえみちゃんとやらせてもらったんだけど、いま活躍してる世代からいろいろ吸収したいなって気持ちはありますね。自分が何かを与えるとか伝えるって感覚はあまりないんだけど、若い世代が僕とやることで、ちょっとおもしろいことができるんじゃないかなとは思うんです。やっぱり僕はDJなんで、フロアで曲をかけたときに、いまのシーンのなかに当たり前にあるものよりも、ちょっと足りない要素みたいなものをMixしたいって気持ちがあるんです。だからDJにしかできないことや、自分のキャリアをうまく活かして、強いキャラクターのある選曲やビードメイキングをしてきたいと思っています。そういう意味でも、昔よりぼーっとしてられないなと。若い世代がすごく元気いいからね。今回のMixはそういうことのとっかかりみたい感じかな。eillちゃんみたいな才能のある若いアーティストがいまたくさんいるから、そんな最前線の人たちと、もっと一緒にやっていきたいなと思ってます。
PROFILE
DJ HASEBE
eill