DOKI MIZUHO / 土器クリエイター
彼女のダンステリア
DOKI MIZUHO / 土器クリエイター
ドキっとするような存在感と機能美を求めて。
2021.01.09
“ガールとカルチャーがドッキング⁉︎”
これは私たちのアンセム、シンディ・ローパーの日本盤LPレコードの帯にあったキャッチコピーから。
一見むちゃくちゃに読み取れるけど、でもだんだん愛着が湧いてきました。
男子に負けず刺激的なクリエイションを提示する人たち。
編集部員が心からファンになったアーティストと向き合い、
彼女たちが何を思い、何のためにクリエイティブでいるのかについてしっかりと聞いてきました。
DOKI MIZUHO、土器クリエイター。京都の美大を卒業後、免許合宿のために訪れた新潟県へ渡る。そこでたまたま入った資料館で土器の美しさに惚れ、大阪へ移り発掘調査のバイトを始める。その後自らも土器制作に目覚め、いまは昼間の仕事をしながら作品としての土器作りに没頭中。どこかコミカルで愛嬌ある表情が魅力的な彼女の作品は、多数のアートイベントに出展され、人気を集めている。
Instagram @doki.mizuho
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- ーまずは軽く自己紹介をお願いします。
- DOKI MIZUHOという名前で活動しています。普段は働きながら、空いた時間に土器を作っています。
- ー土器に出会う前はなにをされていたのですか?
- もともと京都の美大で油絵を専攻していたのですが絵はまったく描かず、その代わりに置物やオブジェなどの立体作品を作っていました。昔からものに愛着があって、置物を集めたりしていたんです。なんとなく好きなものに囲まれ感じとかが好きで!
- ーなるほど! オブジェを作るという点ではあまり変わっていなかったんですね! ちなみにそこから土器を作り始めるようになったきっかけは?
- 大学を卒業してからもインスタレーションやビデオなど作品作りを続けていたのですが途中で息詰まり。そのタイミングで新潟にクルマの免許を取りに行ったんです。そしたら、たまたまそこで縄文土器の資料館を見つけたのが出会いでした。
- ーそこからは…?
- そのあと、いまでも考古学の調査で土器が発掘されるということを知り、ちょうど発掘調査のアルバイトの募集があったので大阪へ飛びました。そこで専門家の人からたくさんお話を聞いたり、現場で土をもらって帰ったりしているうちに土器を作ってみたいと思うようになったんです。そのあとは実際に長野の博物館へ土器づくり体験しに行きました(笑)。
- ーすごい! 日本各地を転々としてますね。土器のなにがDOKIさんの心をそこまで惹きつけたのでしょうか?
- 名もない土器職人が作ったものが、何千年と経ったいまでもいい状態で発見されていて、しかも当時の作りの丁寧さみたいなものが見られるところにまずは感動しました。ただの道具としてだけじゃなくて、気持ちが現れているなって。
- ーいまでは、いろんなイベントや展示に出展されてますが、実際に本来の土器を超えて一つの作品として作ろうと思うようになったのはどうして?
- 最初は時代ごとの形とかを参考にいろいろな土器を作っていたんですが、展示の依頼がくるようになってからはだんだんと「こういう形を作りたい!」とオリジナルなデザインを意識するようになってきました。それがひとつずつ完成する毎に、自分の味方のような存在が増えていってる感じがおもしろくって!
- ーそんな愛着がある子たちが、イベントで売れていくのはどんな気持ちなのでしょうか…。
- ありがたいことに展示があるたびに多くの土器子たちが連れて帰ってもらえているので、毎回さみしい気持ちもあります。
- ー買われていった土器たちは、どんな用途で使われるのがベスト?
- 本来の目的と同じように、使える土器を作りたいと思うので、基本は器の形にしています。
- ー鉢植えのものとか、土器に髪の毛が生えてるみたいでかわいいなと思いました!
- 素焼きなので水はけもよく、植木鉢にはちょうどいいですよ。ただ土器は釉薬も使わず野焼きで作られているので、陶器ほど強くはなく。なのでその昔、煮炊きに使う鍋としての土器なんかは壊れたら新たに作りかえるものとして作られてました。それをふまえてもどんな用途の土器を作るのがいいのかはまだ模索中です。植木鉢やオブジェとしての耐久性はありますよ。
- ーそれでいうとDOKIさんの土器はアート作品というよりも、ライフスタイルグッズに区分されるのでしょうか?
- 作品とは言いますが、目的は居間や生活の中にあるためのものなので… どっちも? たまに「守り神にします!」という方もいます。
- ー買手によって受け取り方が変わってくるんですね! ひとつひとつ顔もついているし、名前をつける人とかもいそうですね。
- なかには、どれを買うか迷うときに実際に土器に話しかける人とかもいますね! 逆に顔がついていると魂がこもってしまうので、あえて顔なしのものが欲しいという方もいたりいろいろですね。
- ーキラキラの目がついていたり、無表情だったり、いろんなキャラクターがいますが、それぞれに表情は作るときのDOKIさんの気分によって変わってくるんですか?
- だいたい思いつきです! 下絵とか描いても結局それ通りいは作れないし、作りながら決めています。ちなみに表情について言うと、関東と関西でも反応が違うんですよ! なぜか関西ではキラキラした表情のものが人気で、逆に関東では不機嫌そうな顔が人気なんです(笑)。
- ーそれは不思議ですね!
- ー土器は野焼きで作るとお話されていましたが、DOKIさんはどこでどうやって土器を制作しているんですか?
- 今は仕事で京都にきているので、形を作る段階までは京都にある共同のアトリエでやっています。そこで乾燥させたものをスーツケースに詰め込んで和歌山にある実家の空き地で火を焚いて焼いています。
- ーすごい! 焼きあがるまではどれくらい時間がかかるんですか?
- うまくやれば2、3時間。でも自分の理想の焼き目があり、顔の半分黒くしたいとか調整しながら時間をかけて火の中でこねくり回してます。
- ー焼き方も直接デザインに関わるんですね。
- 野焼きだと焼き色を均一にできなくて。温度によって赤みがなくなってしまったり、煤けて真っ黒になってしまったり。それが野焼き焼成の魅力で、偶然に焼きあがる色味や焼けムラによる模様をみながら理想の焼き加減になるまで火の中でこねくり回します。
- ーそれでは火を眺めてぼーっとたそがれるとか、そんなことはできたもんじゃないですね!
- ですね。火を焚いてからは、乾燥させた土器を周りに並べ、それをひとつずつ回しながら満遍なく水分を飛ばし、徐々に近づけて火に放り込むって感じでずっといじっています。とくに最後の仕上げ作業は忙しい!
- ーこの時代に愛を持って土器を作り続けるにあたり、目指しているところはありますか?
- 土器っていうと小学校の歴史の授業で出てきたなあというくらいのイメージの人が多いと思うんですが、土器ってこんな風に作られているんだとかちょっとした知識のひとつになってもらえたらいいなと思います。やっぱり本物の縄文土器や弥生土器も見てもらえるきっかけになると嬉しいですね。本当にかっこいいので。全国各地にその地で出土した土器を展示している小さな資料館があるのでおもしろいですよ。あとは自分の作品制作と並行して、いま文化財に関わる仕事をしているので、それがいつか自分の土器作りとも繋がっていけたらなと!
- ーその仕事は具体的にはどんなことをしているんですか?
- 前に発掘調査のアルバイトをしていた延長線上で、埋蔵文化財の記録写真を撮る仕事をしています。仕事の方もまだまだ修行中ですが、当時の土器や、さまざまな時代の暮らしの遺物を間近に見ることができるので、良い経験になっています。
- ー本業でも土器に携わっていたのですね、いずれは自分の土器を撮るのにも使えそう!
- むしろ最初は自分の土器をカッコよく撮りたくて、それをカメラマンに聞いたことがきっかけでいまの仕事に就くことになったんです!
- ーなるほど! 確かに土器さんの作品写真はどれも博物館とかで見るようなクオリティのものばかり。ちなみに土器ならではの美しく撮るコツなどもあるんでしょうか?
- やっぱりライティングは大事ですね! どこのデザインを見せたいかで全然変わってくるので。その点自分で作った土器だと、見せたい部分がわかっているので撮るのが楽しいです。
- ー実際に、DOKIさんの作品を買いたいときはどこで手に入るのでしょうか? ポップアップやイベント以外で手に入れる方法はありますか?
- 常に取り扱いして頂いてるお店は現在ないのですが、今年は関西でイベントや展覧会を開く予定です!やはり限られた時間の中で制作しているので、発表できる機会がどうしても不定期になってしまいます。
- ー確かにひとつひとつ丁寧に作っていたら需要に追いつくのはハードそうですね!
- ひとつひとつ手びねりで成形して削って装飾をして・・と工程が多いので。なので、いまは気軽に持って帰ってもらえるような小さな型押し土器フィギュアなんかも作っていきたいと思ってます! あとは焼いている途中に爆発して壊れちゃったものもあえて組み直してみるのも、ある意味出土品みたいな感じがしてかわいいかも。バイト時代に復元の仕事をしていたのも生かせそう!
- ーちなみに、以前イベントで土器の刺繍入りアイテムやステッカーなども売られていましたがあれはどういう経緯で作ったのですか?
- 刺繍は、大阪で発掘のバイトしたときに仲良くしてくれたおばちゃんが作って送ってきてくれているんです(笑)すごい数もらっていたので、日の目を浴びて欲しいと思いイベントでも出すようになりました。ステッカーはデザインの仕方とかは知らないので、パソコンにもともと入っている機能を駆使してがんばって作ってます。
- ーでは最後に、今後チャレンジしたいことがあったらぜひ聞かせてください。
- いまは販売展示が結構メインの活動になっているんですけど、販売となるとある程度制限がでてきてしまうので、こかれらはもっと自由に実験をして行きたいです。
- ー実験?
- 土器は焼き方次第で結構色や仕上がりが変わってくるので、そういうところをもっと模索していきたいです!
- ーなるほど! これからの土器の発展が楽しみですね。
- あとはまた少しアートの方面に戻っていけたらなとも思っています。自分の作った土器がどういう状況で使われていたとか、その発掘された状況を妄想で絵に描いたり…! それはインスタレーションとかにしてもおもしろいかも。とにかくいまはやりたいことがいっぱい!
自分のことは自分で紹介! DOKI MIZUHOについてのライナーノーツ。
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