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The Antoinettes / DJデュオ
彼女のダンステリア The Antoinettes / DJデュオ 半分観客として自分たちも楽しみながらプレイ。

彼女のダンステリア
The Antoinettes / DJデュオ
半分観客として自分たちも楽しみながらプレイ。

2020.10.02

“ガールとカルチャーがドッキング⁉︎”
これは私たちのアンセム、シンディ・ローパーの日本盤LPレコードの帯にあったキャッチコピーから。
一見むちゃくちゃに読み取れるけど、でもだんだん愛着が湧いてきました。
男子に負けず刺激的なクリエイションを提示する人たち。
編集部員が心からファンになったアーティストと向き合い、
彼女たちが何を思い、何のためにクリエイティブでいるのかについてしっかりと聞いてきました。

The Antoinettes、ManahaとHitomiで結成されたDJデュオ。2013年から活動をスタートし、クラブイベントやファッションブランドのパーティなどに出演を果たし、東京のクラブシーンの中心人物となっている。得意とするニューディスコやハウスを中心に多様なジャンルを詰め込むドラマチックなセットとプレイ。まるで80年代のSF映画を彷彿とさせるスペーシーさが一貫したスタイルが魅力的。

Instagram @manaha_hosoda@hi_this_is_hitomi

▶︎▶︎彼女のライナーノーツはこちら

ーThe Antoinettesの活動って長いことでもう7年! 結成したのは2013年だったんですね。
Hitomi:大学2年生のときかな、私たちはイベントで初めて出会ったんだ。
Manaha:そうね。
ー何のイベントですか?
Hitomi:「吟味」っていう「トランプルーム」とかで定期的に開催されていたパーティ。私がそこに初めて行ったときに出会って、「今度またおもしろそうなイベントあったら一緒に行こうよ」って連絡を取り合ったのがいちばん最初だったかも。Manahaが先に大学のサークルでDJしてて、「SOUND MUSEUM VISION」でやらないかって話になったんだけど、大舞台だから2人でやった方が楽しいし、気が楽だってことで私も誘ってくれてスタートすることになったんだっけ。
Manaha:そうそう。私は高校生からDJをやってて、「シスター」の元店長の吉田愛さんに誘われてバーで初めてプレイしたの。そこからタイミングよくさっきの「SOUND MUSEUM VISION」の話が来たんだけど、まだ周りに大人しかいないから一人で回すのが心細いなと思ってて。そんなときにHitomiと出会って、「Kitsuné」とかフレンチエレクトロを聴いてるって話になったの、Citizens!とかフェニックスとかね…。だから最初だしHitomiはDJしなくてもいいから一緒にやりませんかって誘って2人で出ることになったんだよね。
Hitomi:懐かしい!
Manaha:あ、そもそもだけどDJの名の由来は、イベントに出ることになって早急にフライヤーで使う名前が欲しいって言われたからで…突然、深夜だったけどHitomiに電話して決めたの。アフィってミュージシャンがソフィア・コッポラの『マリー・アントワネット』って映画のなかでスージー・アンド・ザ・バンシーズの『香港ガーデン』という曲をカバーしてたのが大好きで、私はそれをその日にかけたかったのね。逆に言えばそれしか決まってなかったから…2人ってことで、The Antoinettes。
Hitomi:ちなみに私もマリー・アントワネットが好きだったの、『ハプスブルク家の一族』って本も読んでたくらい。歴史が好きってかヴィンテージが好きだったのもあって、マリー・アントワネットのファッションの文脈とか好きだし、セックス・ピストルズの“GOD SAVE THE QWEEN”みたいな王室ネタを使う感じがパンクバンドみたいでいいなと思って。
Manaha:正直こんなに続くと思わなかったからいまはちょっと恥ずかしいんだけどね。
Hitomi:よくManahaの大学の部室を使わせてもらって練習してたよね〜。
Manaha:大学生のときは朝までDJして、部室が開く7時くらいまで粘って、そのまま部室で寝て結局授業を遅刻するってことがよくあった(笑)。卒業してから同じ部活の人に「話したことはなかったけど寝顔は見たことあります」って言われたことがあったりも…。
ー(笑)。ところで2人の音楽のルーツは?
Manaha:私は高校生のときはヤー・ヤー・ヤーズ、CSSとかインディロックのそこらへんが好きで、ヤー・ヤー・ヤーズが来日時に「トランプルーム」にいたのを知って「トランプルーム」のことも知ったってくらい最初はバンドが好きだった。DJもやってたけど始めたての頃はクラブよりもライブに行ってたし。
Hitomi:一方で私はお姉ちゃんがクラブミュージック好きで、小学校のときから家でかかってたりしたんだよね、それは時代的にユーロダンスというかトランスよりキラキラしてないメロディックなものなんだけど…。もうちょっと丁度いいものを欲してたら「ツタヤ」のレンタルCDで「Kitsuné」とかエイティキッズがおいてあって、このへんを掘ったらいいのかも?と思ってたときに上京したの。それですぐにManahaとその話ができたからさ!

K/A/T/O MASSACREのイベントにて。すみませんバッグで流れてたVJが飛んでしまいました。 by編集部

Manaha:私エイティキッズのスタッフとかやってたもん。
Hitomi:音楽感のコアな部分があってたのがわかったから、もっとManahaの好きな音楽を知りたいと思った。
Manaha:私たちは一曲ずつかけてるんだけど、いまでもDJしていてお互いの好きな部分がゼロになることはないんだよね。HitomiにはHitomiの感性があって、私の感性との重なりが多かったり少なかったりするけどっていう。お互いがプレイリストを持ってきたとき、「ああこういうの持ってきたんだ(笑)」ってくすぐられるときもあるけどそれがおもしろくて。
Hitomi:でも私の場合は最初の3、4年くらいは冒険しなかったんだよね。私が思う「The Antoinettesってこんな感じだよね、これだったら間違いないよね」ってところを探ってたというか。そこからもっと自分事として楽しむために真剣に向き合ったのは、Manahaが留学から帰ってきたとき。
ーManahaちゃんはグラスゴーに留学してましたもんね、その間は活動休止という形?
Hitomi:2人の活動はそうだね。私はその間もピンでやってたよ!
Manaha:私は向こうでダンスミュージックを聴きまくってたの! 東京のときからテクノも聴いてはいたし、イベントにもたまに行ってたけど、グラスゴーの友達とあっちのテクノ箱に行ったり、レイブパーティに行ったりしてたらすっかりダンスミュージック脳になっちゃって。だから帰ってきてすぐに「コンタクト」とか「サーカス」とか遊びに行くようになった。そうしたら同年代でDJをしてる友達と遊ぶことも増えていって。
Hitomi:そのとき土日も休めないくらい仕事が忙しかったから一緒に遊べてなかったんだけど…でもいま思えば、帰ってきてからのManahaの遊び方が変わったと思う!まあその頃くらいから同世代のクラバーの子が増えたのもあるし、遊び場が増えたのもあると思うけど。前はもっとお酒飲んで楽しく酔っぱらうって感じだったのがよりクラブにのめり込むような感じなんだよね。それを見て私も「ネジを外してみてもいいのかも」って思ったし。そこからDJをするときに自分自身も楽しめるようにやってみようって思った。

DJのミックスはHitomi宅で録ってます。

イタリアのブランド〈スンネイ(SUNNEI)〉のライブ配信でDJした時もここからお届けしました。

ーグラスゴー前後で比べるとしたらセトリに選ぶ曲も変化しましたか?
Manaha:もともとラウンジミュージック的なのをやってたんだけど…てかそもそもスタートしたてのDJは社交的な場で必要とされてたのもあったからでもあるんだけど…。
Hitomi:そういうパーティが多かったよね、音楽を聴くよりファッションブランド系のイベントというか。社交場として機能してるようなイベント。
Manaha:後はグラスゴーに行って、ひとりで踊るようになったってことも変化のひとつ(笑)。ずっと英語を喋ってるのが疲れるって理由もあったけど、ひとりでただただ音に浸って踊ることが楽しいことを学んで帰ってきたからこそクラブの楽しみ方もグッと広がった気がする。でもいまはHitomiの方がフロア最前線で踊ってるよね(笑)。
Hitomi:おしゃべりしながら踊るのも好きだけど! だから理想的なダンスフロアってとくに言葉を交わさず黙々と踊ってても、隣にいる同士で仲間と思える瞬間がきっとあって、そのグルーヴ感が出せたときが最高だよね。Manahaと向かい合って踊るのも好きなんだけど、プレイ中に私が気持ちよく踊ってて横で同じようにのってるのをみると、あっいいなって思うんだよね。
Manaha:多幸感ね。
Hitomi:去年の「レインボーディスコクラブ」でそれを体感した。みんな自分の世界にのめり込んでて経験したなかでベストなイベントだった…!
Manaha:全然携帯を触らなかったもん。
ーファッションブランドのパーティと音楽イベントでやるDJで何か感じる違いはありますか?
Hitomi:ファッションパーティはブランドのテーマがあったりするから、それに沿ったプレイにはなるよね。でも音楽イベントのときは時間も長くやらせてもらえることが多いし自由度も高いからお互いのなかで設定した事にトライするって感じで思考回路が違うのかも。
Manaha:今日はトライバルでいこう、ハウスでいこうって一応は設定して。後は呼ばれたイベントに来るお客さんがどんな人たちなのかを一応想像する。そこにぴったり迎合していくわけじゃないけどそのなかで私たちができることを考えるみたいな。でもそうは言っても現場の流れがあるから、想定してた曲を全然かけなかったな〜とかもあるあるだよね。
Hitomi:流れっていうとひとつManahaに言われた印象的な言葉があって。毎回のセットをひとつの物語のように作ろうって言われたの。当て付けっぽくても例えば、“Morning”とか“Reunion”とか、自分たち的なそのときの気分とか裏テーマを設けてやるのも後から振り返ったときに楽しい思い出になるなと思って。
Manaha:私たちはトラックメイカーではないから、The Antoinettesの色、音はありたいって思ったときに私たちのDJにはこういう上音あるよね、こういうピアノのコードを使ってるよねとか意識して入れたいなとはずっと思っていて。決めすぎると制限になっちゃうけど意識してた。それもそのときの好みによって変化するけど初期はハウスっぽいピアノ、いまは民族っぽいポコポコした音って感じ。
Hitomi:グラスゴーから帰ってきた後の私たちもまたなんか偶然マッチしてたんだよね。

Photo_Hayato Takahashi

サカナクションのパーティ「NF」にて! Photo_Hayato Takahashi

Hitomi:これはManahaとの総意じゃないかもだけど、ファッションから音楽を好きになったこともあって、服を好きになる流れでいろんなことを調べられるし本来はもっと近い関係であったと思ってたんだけど、現状は音楽とファッションってシーンとしてはいい融合をしていないのかも…? と身をもって感じる部分もあって。もっと壁なく一緒に楽しめるはずなんだけどなって思ってるんだよね。
Manaha:そこは私はあんま気にしてないかもね! ただただ楽しそうなところに行くのみ。ファッションも好きだけど音楽を聴いたときにブワーッとアドレナリンが出るんだよね。一方でブラック・マーブルってバンドにハマったときは〈グッチ(GUCCI)〉のキャンペーンを見たのがきっかけだったから、そう思うとファッションから音楽へハマるのは全然あるよね、実際に影響されたときはちょっとニューウェーブっぽいものをかけてたりもしたし。

ラブ♡

ーでは最後にクラブが今後こうなるともっと楽しいのに! って思うことはありますか?
Manaha:そもそもコロナで私たちの初めての自主企画イベントがなくなっちゃったんだよね。
Hitomi:でもそれも、日常で足りない何かを補うために企画したんじゃなくて私たちがいちばん楽しめるイベントをやりたいと純粋に思ったから。ただ今後はもっといろんなロケーションでやれたら本当はもっと楽しいのにって思う、法律とか近隣迷惑の問題でやれる場所が限られているんだけど、うまく試行錯誤しながらいろんなイベントを考えている人たちは東京にもいるからね。例えば、星空を見ながら聴けるとか、シチュエーションがもっといっぱいあったら楽しいし特別になるんだろうなって思う。フィットネスクラブでも誰かやって欲しい…。
Manaha:ファミレスでも!(笑)
Hitomi:やってほしい。「サイゼリア」でイタロディスコパーティ(笑)。ランニングマシーンを置いて、走りながらテクノ聴くとか…やってみたい(笑)。
Manaha:大小かかわらず箱によってプレイするDJが固定されてる印象があったんだけど、コロナがあってから、その垣根がなくなっている気がする。週末はだいたい外タレを呼んでる規模の箱の人からも、この状況をネガティブに捉えずに、いまこそ国内勢を盛り上げるチャンスだと思ってるって聞けたり。DJ陣も私たちより年下の世代が増えてきて、年齢とかで敵対することもないし、東京のシーンを盛り上げたいっていう仲間意識を持ってやってる人たちが多い。みんながそうやっておもしろいイベントを作っていれば、きっといい未来が待ってるはず! なんか昔はハウスとテクノでいがみ合ってた時代とかあったって聞くけど。かなりポジティブな気持ちでイベントにも遊びに行ってるし、DJしてます!

ハイチーズ by Manaha

自分のことは自分で紹介! The Antoinettesについてのライナーノーツ。

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