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Job Guidance from the 25-year-olds
やりたいことを仕事にするべき?
咲月と考える25歳からのハローワーク。
好きなことを仕事にすることだけが理想ではないし
毎日9〜5時まできっかり働いてオフの時間を充実させることも大いにアリだけど
もし、いまの仕事で“ガマン”しているなら、ここでひとつ向き合い直してみては?
『ガールフイナム』読者と同世代の咲月ちゃんが、そんな悩める同志たちを応援すべく、
実際に彼女の周りで活躍している方にインタビューを敢行しました。
出演者は、写真家の小林真梨子さん、ファッションデザイナーの横澤琴葉さん、バーオーナーのKaiさんの3名。
型にはめた正解はないけど、彼らの仕事に対する佇まいから感じ取れることはたくさんあるはずです!
[INTERVIEW]
Interviewee_kotoha yokozawa, Mariko Kobayashi, Kai
Interviewer_Satsuki
Photo_Cheng Chung Yao
[MOVIE]
Video_Cheng Chung Yao
Music_Bloomoon
Director_Satsuki
Special Thanks_RII and iri
STARRING
-
01
Mariko Kobayashi
PHOTOGRAPHER -
02
kotoha yokozawa
FASHION DESIGNER -
03
Kai
BAR OWNER
01
Mariko Kobayashi
PHOTOGRAPHER
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被写体とフォトグラファーという関係じゃなく、ひとりの友達として。
- そもそも25歳ってのは自分の年齢から来てるの?
- ー質疑逆転しちゃったけど(笑)。自分の年齢というより、ガールフイナムの読者層の年齢と同じくらいなのと、就職して2、3年が経ち悩み出す頃でもあるから。
- なるほどね。2年前に開催した『1993年展』は24、25歳の境目のときだったな。私のなかで25歳って大人だからその直前に自分たちが何を本当にやりたかったのかを振り返る展示で。まあでもいざ25歳になったらそこまでいままでと変化がなかったんですが。
- ーいまやっている仕事は本当にやりたいことではなくて、とりあえず食い繋ぐためにやっているんだと、よく周りから聞くんです。でも、そこでやりたいことを諦めずにもう一回トライしてみてもらいたいなと思ってて。なので、真梨子さんに今回はなぜ、そしてどうやってフォトグラファーになったのか聞きたかったんです。
- 大学受験のとき、洋服を作る学科に入りたかったから女子美術大学を受けようとしてたんだけど、親から共学に行ってほしいと言われて、学校の先生にすすめてもらった共学の大学も合わせて受けてみたんです。そこに写真学科があったから。結局どちらも合格したんだけど、やっぱり共学の方に通うことにしました。その大学で写真を撮り始めると周りに役者やモデルになりたい人が増えてきたんです。その子たちを撮って、SNSにアップするということを繰り返していたら、写真をちゃんとやろうかなと。
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- ー真梨子さんはキャスティングでもお世話になることがあるから、キャスティング兼フォトグラファーという新しい形で活動してる気がしました。
- マネージャー業も興味はあったから、写真と同じくやりたいことではあって、必要に応じてキャスティングの仕事もします。人探しは好きなので、モデルになりたい、俳優になりたいという子たちに声をかけて撮らせてもらったり。そういえば、大学卒業してしばらく経ったとき、「ビームス」40周年のムービーで、池松壮亮さん、小松菜奈さんらが出演してた、そのキャスティングを、それこそ『フイナム』経由でやりましたよ! それがいまでもいちばん大きな仕事かな。候補段階で男女200人くらいのリストを出して、スケジュール管理をして…。ムービーが出来上がったときは感動して泣きました。
- ー実際に真梨子さんってどれくらい知り合いいるんですか?
- わかんない(笑)。1000人くらいですかね? 知り合った人数はもっと多いです。
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- ー25歳のときはどんな状況でしたか?
- ある程度仕事が安定してきて、フォトグラファーとキャスティングをちゃんと極めようと思ったときかな。ただ私の場合は、たまたまこの歳で名前を広げることができましたが、いまだと正直シャッターを切れば誰でもフォトグラファーにはなれますよね。そこが私の葛藤でもあるんです。とくに10代の子もたくさん現れてきて、焦るし。同じスタイルでは戦えないと思っています。なので、いまはどうしたら長く続けられるのか考え中です。
- ーその若手とどういうところで差をつけていきたい?
- よく周りから言われるのが、被写体が自然体な写真を撮れると。その人の魅力をちゃんと伝えられてると言ってくれているから、それは自分にしかできないことなんだろうなと思っています。強みと言えばそれで、無意識に注意している点は、モデルとフォトグラファーという関係じゃなくひとりの友達としての関係として撮るようにしています。それは大切にしていることです。
- ーいまの仕事について、人生の転機は?
- やっぱり写真学科をすすめてくれた高校の先生に出会えたことですかね。いまでも連絡をくれる方なのですが、ひとつ嬉しいエピソードがあります。さっき言った「ビームス」のムービーを先生が「小林さんお久しぶりです。最近ぼくがいいなと思ったムービーがあったので送ります」と言って送ってきたんです。先生にその仕事のことを言ってなかったんですが、ついでになんでこれがいいのかを聞いてみたんです。すると「出演している人たちの自然体な雰囲気が小林さんがよく撮るモデルさんと似ていたからです」と。感動的でした。
- ーすごいエピソード!
- ね。あとは、インターンをしていたギャラリー「Rocket」との出会いも転機なのかな。もともとはそこの展示が好きで通っていたんですが、そこで「インターンでお手伝いをしませんか?」って声をかけてくれて。事務所に案内されたらいままで女性しか見たことがなかったのに男性の方がいて、中村俵太さんという美術とかプロップ作りをしている方で、私が大学卒業してからはその人のお手伝いで呼んでもらったりしていたんです。ものづくりって楽しいんだなっていうのを思わせてくれた人だから、中村さんに出会えたことも自分のなかでは大きな出来事だったなと思って。そういう人たちに褒めてもらうためにがんばっている自分がいます。恩返しではないけど何かを与えられるように。
- ー真梨子さんが問題や壁にぶつかったときは、どうやって解決していますか?
- 自分が仕事をもらえるために何をしたらいいのかをまずは考えてみます。基本的に仕事に対して落ち込まないのでいまのまま生きていければいいかなってくらいのテンションです。仕事が少ないときはお休みの時期だ、くらいに捉えてあまり考えないようにしてます。
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- ーもしフォトグラファーの仕事に興味がある人にアドバイスをするなら?
- 技術も後に必要になるかもしれないけど、まずは撮りまくる。ひたすら撮り続けることですかね。撮れば撮るほど自分の特徴が掴めてくるんです。正直、カメラ自体は私も詳しくないんですが、誰よりも回数を撮っていると思っていて、その成果で人との距離感を掴めたのかなと。
- ーそういう人にもしがんばれよってプレゼントするなら、何をあげる?
- とりあえず写ルンですとフィルムかな。ロモのフィルムは私が学生時代いちばん使っていたお気に入りです。いちばん安くて撮り慣れているものです。フィルムに限らず、これをきっかけに撮ってみてデジタルとか自分の好きなカメラに出会えるといいですね。愛着をわかせてもらいたい。一日一枚撮って習慣づけるともっと好きになると思います!
実は小林真梨子さんが、取材中に撮影してたスナップショット。
02
kotoha yokozawa
FASHION DESIGNER
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自分主体でやりたいことがたくさんあった。
- ーまず、ブランド〈コトハヨコザワ(kotohayokozawa)〉の成り立ちについて教えてください。
- 2015年に立ち上げて4年ちょっと経過したところ。主にウィメンズアイテムで、デザインが異なる一点ものと、既製品との中間みたいな作り方をしている商品が多く、買ってくれるお客さんは10代後半〜20代の人が多いです。日本と中国圏に卸していて、これからパリのショールームにも出店する予定です。
- ーなぜブランドを立ち上げることになったのでしょうか?
- 23歳でブランドを始めたのですが、その前は一年間企業でデザイナーをしていました。大きい企業で働きたいという気持ちもあったから、そこに就職して組織の構造やどういう仕組みで服づくりをしているのかをまずは覗いてみようとしました。で、実際に体感して思ったのは自分にしかやれないことをやるなら絶対に早いうちに実践した方がいいということ。人によっては会社のなかで自分のできることを発揮する方が得意な人もいるかもしれないけど、私はやっぱり自分主体でやりたいことがたくさんあったんです。そこから会社は一年足らずで退社し、ブランドを立ち上げる準備のため学校に通いました。
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- ー23歳でブランドを立ち上げるって早い気がします!
- そうかな? いまの子はもっと早い気がする。
- ー計画はいつから立ててたんですか?
- 実は全然立ててなくて、でもなんとなく自分が25歳のときまでを区切りに考えてたくらい。四半世紀生きてたらこんだけのことができちゃうんじゃないか、とかそんなこと。例えばショーをやるのにどれくらいの金額がかかるか見当もつかなかったんだけど、周りにやりたいことを宣言していくうちに結果振り返ったら実現できてたって感じ。
- ーとにかく行動せよってこと?
- そう、行動した方がいい。
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- ー周りの人にどうやって宣言してたんですか?
- 大きなことでも小さなことでも自分がやりたいことができたらとにかく話す。話題になるだけで、それを聞いた人が何かのきっかけで思い出してくれたりとかで可能性が広がるから。
- ーそうやって実際に実現したケースがあれば教えてください。
- ワークショップとかはそうですね。あと、こいつはなんか言ったら臨機応変にやってくれるんじゃないかみたいな、期待を持ってくれているような気がして、いただいたお仕事はなんでもトライするようにしているんです。すると、お店のイベントとかプロデュース商品だったりとかに携われるチャンスがありました。自分で作った服以外にも古着とかリサイクルショップの話で声がかかることもあります。咲月ちゃんもたんぽぽハウスの特集記事をやっていたように。私もデザイナーだからって自分の作っている服にばかりフォーカスしてほしいんじゃなくて、一人のファッションが好きな人間としてもなんか話したり、紹介してみたい。そういうのも、やりたいって言ってたら実際に雑誌の企画でお声がかかったりしたんです。
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- ーじゃあ25歳のときの状況はどうでした?
- いろんなことがあった。まず結婚したんですよね。別に何かが大きく変わった訳じゃないけど、夫も自分でブランドをやっている人で、お互い当時はフリーランスということもあって周りから信頼してもらいたかったし覚悟あるなと思ってもらえるような気がしたからノリで結婚しました。とにかくブランドを始めて1、2年が経とうとしてるときで、デザインを企画したり、展示会の時期、どんなことが起きてお店に卸されるのか、納品書の書き方…すべてのことが手探りでわからないことだらけだったけど、周りの人が優しくて教えてくれました。それでちょっとずつ取引先も増えていって。なんとなくサイクルが掴めてきたのが25歳。
- ーファッションデザイナーという職に就くことになるきっかけというか、何か人生をも変えてしまうような大きな転機的な出来事はありましたか?
- ブランドを始めるしかない! って一念発起して学校に通い始めたとき、学生みんなで「国立新美術館」の休館日の夜に、ショーをやったことですかね。現役の学生がそれだけすごい場所でショーをやって、私が前に働いていたオフィスと美術館が近い場所にあったにも関わらず、やってることがあまりにも対照的なことに気づいて。会社で求められていたこととイベントをやったときの熱気が数字とかで測れないけど圧倒的に違くて、すごい説得力がありました。なんか自分の心が動いて、こういうものにエネルギーを注いでいくべきなんじゃないかって思えた日でした。
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- ー最後に、ファッションブランドをスタートさせたいと思っている人に一言贈るとしたら?
- 年齢が離れると時代の流れとかも違うから、私の体感でしかないけど、大きい会社に勤めることとかネームバリューのある会社に勤めることとか毎月のお給料が保証されていることとか、大切なことだけどそれがいちばんの優先事項じゃなくてもいいムードになってる気がしてます。そういうところに入ったとしてもずっと安泰ではないだろうし。ってなったら、どんな環境下でも自分がアクションを起こせるような人にならないとしんどくなるような気がするんです。やりたいことがあったら早くやった方がよくて、人間力を高めることが大事。自分のやりたかったことと近い会社に行くことも大切だし、なんか頭で考えなくても自分がやりたいって思うのはどうしようもないことだから、それに従うことがいちばん健康的だと思うんです。
- ーアシスタントの子にどんなことを教えたり、プレゼントしているんですか?
- 作業に慣れてきたらここの生地とパターンを使って、自分の好きなようにまず一着作ってもらってるんです。最後にブランドタグも付けてもらって。それをそのまま本人にプレゼントしています。
03
Kai
BAR OWNER
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お店を始めるのは簡単。やりたくなったらやればいい。
- ーバー『the OPEN BOOK』をオープンしたきっかけは?
- きっかけはなくてノリです(笑)。
- ーでは、どのタイミングで?
- 24歳くらいのときにお店じゃなくてもよかったんだけど、何かしらの場所を作らないと稼ぎ口がなくなるなと思って始めました。
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- ーKaiさんに後輩がいたとして、そのひとに同じようにお店を持ちたいと相談されたときにどう説明しますか?(笑)
- 出せばいいじゃんって(笑)。でもお店出すのに経緯って本当にないんですよ。
- ーじゃあ「明日始めよ!」って感じでもいいんですか?
- はい。 自分の人生を生きてる上でお店をやる人生だと思ったならお店をやる、モデルをやる人生と思えたならモデルをやる。
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- ーなるほど。では、そんななかでKaiさんはなぜバーにしたんですか?
- おじいちゃんとお母さんが死んだ後、家には残された本がいっぱいあって、せっかくだし読んでもらいたいと思い最初は図書館をやろうとしていました。ゴールデン街はおじいちゃんからの所縁があったから、やるならゴールデン街で。おじいちゃんの本のコレクションを世に出すことに、社会的な意義や家族との繋がりはちょっと感じていて、これがある種の家業とも思っていたんですね。で、その図書館で水を100円で売ろうかなと思ってたんですよ。でも、それじゃあんまり経済性がないから、やっぱりお店にしないといけないって訳でバーにして。飲食店に関しては素人だったけど、お店をやる以上は流行らせないといけない。その戦略を考えたときに、ひとつだけのコンテンツでバーを繁栄させるのはどうか? というアイデアでレモンサワーに辿り着きました。
- ーKaiさんが25歳のときは何してました?
- このお店を始めてたところかな? 目まぐるしかった。毎日お店に来て、がんばって運営してました。
- ー人生に転機はありました?
- 強いていうなら、親が死ぬというのが転機だったのかな? 相続するお金がいっぱいあったからお店を始められました。
- ー逆にそれがなかったらお店をやっていなかったということ?
- 絶対にやってないですね。学校の先生になってたと思う。
- ー先生⁈
- はい。数学の教員免許を持っています。数学の教員やるか、大学どこか入って研究をしたかったんです。
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- ーKaiさんがお店を始めるときにリスペクトしてた人っています?
- 同年代で飲食店をやってる人はみんな尊敬しますよ。僕なんかスキルもなければ下積みもないなかで始めてしまっているだけだけど、みんなもっとちゃんと土台がやってお店を出しているわけで、そういう人こそもっと尊敬されるべきだと思う。
- ー飲食店を将来やりたいという方へアドバイスするなら?
- やればいい。政策金融公庫いけば個人でも1000万円借りれる訳だから、場所どこか借りて始めればいいんだと思います。要はアイデア次第。日本ほど飲食店を始めやすいところはないんですよ。ライセンスも比較的簡単だし、お金も借りやすいし、リスクとってやってください。
- ー入り口で止まるか、その奥にいる極めたところに行くかは…?
- その人次第。結局仕事論とか、テレビで誰かの人生をみたところで参考にはならないし。社会の99%はやりがいのないようにできているんだから、やりがいなく生きちゃダメって風潮もよくないですよね。別に週5朝から晩まで働いて、飲みの席で上司の愚痴をこぼすとかも別にいいわけだし、住宅ローンを70歳くらいで返済する人生だって間違いは無いわけだから。だから別に無理やり行動行動! ってしなくてもいいと思っています。映画でもお酒でも本でも、それぞれ人によってドラッグが違うわけで、自分の好きなように生きることがまずは大事な気がしています。
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- ーお店をやるときにターゲットを定めることは必要?
- それは超重要、とくに経済性が大事。ロジックやセオリーをちゃんと考えないと商売は成立しないし、その先にアイデアの世界がある。そうすれば、ひとりでも生きていけると思います。
- ーKaiさんのようになりたいという後輩に向けて何かプレゼントするとしたら?
- なりたいと思っているだけでは絶対になれないという残酷な一言を(笑)。とりあえず、飲みに来て欲しいです。 ここでの時間をまずは過ごして欲しいというか。
MOVIE DIGEST
小林真梨子
写真家。総勢30名の1993年生まれのクリエイターが参加した「1993」展を企画するなど、写真家としての活動のみならず、ユースシーンの中心人物として活躍している。横澤琴葉
ファッションブランド〈コトハヨコザワ〉のデザイナー。大手アパレル企業でのデザイナーを経て、自身のブランドを立ち上げる。いま10〜20代から支持を集めるブランド。Kai
新宿二丁目のゴールデン街で素敵な本と美味しいレモンサワーを嗜めるバー「the OPEN BOOK」を経営するオーナー。