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進化を遂げる韓国ポップシーンで、LIM KIMが辿り着いた新境地。
進化を遂げる韓国ポップシーンで、LIM KIMが辿り着いた新境地。

Re-connect with the scene.

進化を遂げる韓国ポップシーンで、LIM KIMが辿り着いた新境地。

2023.06.16

K-POPシンガーからアーティストにキャリア転向し、韓国のポップシーンで活躍中のLIM KIM。
力強いサウンドで新しいアジア人女性像を表現したアルバム『GENERASIAN(2019)』で注目を集めた彼女が
いま新たに向かう先は? 新曲「VEIL」を発表したタイミングで来日した彼女にインタビュー。
アーティストとしていま彼女が表現したいこと、そして一度は離れたK-POPシーンとの
現在の新たな関係性についてお話いただきました。

Photo_Adi Putra
Coordinator_Yoshiko Kurata

ー最後に来日されたときは、アルバム『GENERASIAN』をリリースした頃でしたよね。
そうですね、その時期は自分のキャリア的にも大きな変化のタイミングだったので覚えてます。
ーK-POPシンガーから一転し、よりご自身にフォーカスした内容で、新しいアジア人女性像を表現した強いサウンドとリリックは印象的でした。
その前はサウンドもアイデンティティもまったく異なるキャリアで活動してたので。そこからK-POPシーンの助けなしに自分自身でアルバムを制作したことはかなりチャレンジングでした。サウンド、ビジュアルなどすべてを通してハードな印象に仕上がっていたので、韓国人のファンもびっくりしたのではないでしょうか?
ーご自身のなかに感じられた変化はありましたか?
個人的にはいつも自分の一部にこういったエネルギッシュさを持っていたので慣れていたし、とくに驚きもなく、これと言った変化はありませんでした。でもこれまでの私を知っている人にとってはこのアルバムが新しい私を知るきっかけになって、私の楽曲をいままでとは違う視点から、よりひとつの作品として楽しんでもらえるようになったことは嬉しかったですし、自分にとっても大きな変化ではありましたね。
ーそれによって、以降の楽曲制作にも影響が?
自分にとって居心地のいい道を見つけられて、より自己表現しやすくなりました。いまは個人としてではなく事務所に所属しチームでプロジェクトを動かすようになったけど、その環境でも自分が作りたいものを引き続き作れていますね。
ー最近では11月に新曲「VEIL」をリリースされましたが、『GENERASIAN』を通してあった力強さとはまた違った、伸び伸びとしたエレクトロニックの心地よいムードが新鮮でした。制作中はどんな心境だったのでしょうか?
『GENERASIAN』では、自分が表現したいことをすべて出しきっていたから、その後は「いまならやりたいことは全部できそう! 」みたいな気分が続いてました(笑)。精神的にも余裕ができて、アグレッシブなサウンドよりももっと軽いものを求めるようになって。ある日プロデューサーから送ってもらったデモビートをいくつか聴きながら家の周りを散歩していたときに「もっと心地よいサウンドが欲しい! 」と明確に思い立ってすぐに連絡しましたね。
ーなるほど。
とはいえ、ただゆっくりとした音だけではもの足りなくて。やっぱり一貫してちょっとしたエネルギッシュさは欲していたので、心地よさのなかに自分好みのパワフルなテイストも加えていまの曲が完成しました。
ー心境の変化とともに、曲作りにおけるモチベーションにも変化はあったのでしょうか?
これまでの私の音楽は、ストーリーを伝えるためのひとつの手段になっていましたが、いまはただピュアに表現したかった音とビジュアルに立ち返ることができていて、それが音楽作りにおけるいちばんの原動力になっています。なにか確固たるものをシェアしたいという気持ちよりも、ひとつのアートプロジェクトと向き合う、そんな気分です。
ーLIM KIMさんの楽曲は、音楽はもちろんですが、MVの演出、そして衣装まで一貫したひとつの世界観が創り上げられていて、作品としての見応えを感じられます。そういったストーリーメイキングにおいて、普段からどんなものに触れてインスピレーションを得てるのでしょうか?
ひとつのジャンルに絞らずに、多岐に渡るイメージをひたすら日々リサーチしていますね。例えばファッションブランドのビジュアルムービーやコレクションの舞台セットからアイデアを得ることがあれば、気になる建築物を調べてみたり、そうやってどんどんイメージを膨らませています。
ー今回のMVの冒頭から登場する大きな月のアイデアはどこから?
あれは、とにかく大きい演出がしたくて! ディレクターに相談しました。
ー「VEIL」ではプロデューサーとしてSUMINが参加していたり、他にも作詞家、ムービーディレクターそれぞれにおいて有名なクリエイターが手がけていることも気になりました。先ほどおっしゃってましたが、これまでのような個人のプロジェクトとしてではなく、ビッグチームで作り上げることに対してなにか意図したことはありますか?
たしかに、メジャーシーンで活躍しているアーティストとタッグを組んで作品を作っていくことは自分のなかでも新しい試みでしたね。もちろんそのなかで自分のバイブスは保ちながらだけど、今後は作品をより大きいものにしていきたいなと思っています。
ーとくに今回参加しているムービープロダクション「flipevil」が気になってリサーチしてみたのですが、普段からよく耳にするようなグループのMVをたくさん手がけていて、その規模感にびっくりしました!
彼らは今回初めて一緒に仕事をするチームだったんですが、普段はK-POPアーティストのMVを手がけていたり、メジャーな仕事が多い方々です。韓国ではK-POPと一緒にムービーシーン自体も大きくなっているのでかっこいいアーティストがいまたくさん存在してるんですよ。
ー過去にはK-POPフィールドから離れて活動しつつも、いま改めて自分のやりたいイメージを明確に持ちながらメジャーシーンと関わりを持ちはじめているという流れがおもしろいですね。
前までK-POPというと、音もビジュアルも独特なひとつのカルチャーとして確立されていてジャンルとしての境界線がはっきりありましたが、いまはもっと混合的になってきていると思います。
ーそれは、ローカルなポップシーンで活躍するクリエイターがアイドルの楽曲をプロデュースしたり?
そうですね、そしてその逆もまた然りです。これまでのK-POPって、世の中のトレンドをただただミックスしていたような印象ですが、いまはそういったトレンドに対する姿勢が変わったというか、そのまま取り入れずに一度消化して新しいものを創り上げたり、もっと挑戦的なイメージです。世界的にも有名になってリソースも増えたことで、クオリティもどんどん上がっているし、それがポップシーンに作用していることも少なからずありますし。アイドルグループならではの文化など異なる点はまだまだありますが、音楽だけでいうと、これからもより密接な関係性になっていくと思います。