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日本と韓国にルーツを持つYonYon がEPに込めた思い。
日本と韓国にルーツを持つYonYon がEPに込めた思い。

What is“The Light, The Water”?

日本と韓国にルーツを持つYonYon がEPに込めた思い。

2021.05.14

ソウル生まれ東京育ちというバックグラウンドを持ち、DJ、シンガーソングライター、
音楽プロデューサー、ラジオパーソナリティとしてマルチに活動するクリエイター、YonYon。
3月にEP『The Light, The Water』をリリースし、4月4日にはリリースパーティ「よんよんの日」を開催しました。
表舞台だけではなく、裏方仕事も精力的にこなす彼女が一体何者なのか、そして「アーティストとして、
メッセージを届けることへの決意表明を込めた」と語る今回のEPに込められた思いなど、イベントの写真とともにお届けします。

Photo marisa suda
Text Ryo Takayama

YonYon

ソウル生まれ東京育ちというバックグラウンドを持ち、歌うDJとして幅広い世代に親しまれ、どこか聴きやすくかつ踊れる、エッジの利いたサウンドで多彩なBPMを縦横無尽にプレイするマルチアーティスト。ソングライティングも精力的に行い、ジャンル・言語の垣根を越えて直感的に組み立てていくそのリリックは、ポップで中毒性のあるグルーヴと裏腹なリアルでメッセージ性の強い言葉が世界中のリスナーを虜にする。全国各地を飛び回りながらも音楽を通じて愛と平和を広め続けている。

音楽を軸にさまざまなアプローチ、きっかけは800人規模のイベント。

「よんよんの日」でのライブパフォーマンス。

ー先日EP『The Light, The Water』をリリースされましたが、DJやシンガソングライターの顔があったり、リリースを記念したパーティ『よんよんの日』ではオーガナイザーも務めていたり。YonYonさんって、何者なんでしょうか?
たしかに、いろいろやっているので、何者かわからないですよね(笑)。一言でいえば、音楽に携わる“なんでも屋さん”というか。形を問わず音楽を通じて人と人を繋ぐ人ですかね。シンガーソングライターやDJ、音楽プロデュース、ラジオDJ、イベントオーガナイザー、海外アーティストの呼び屋など割となんでもやっています。
ー本当に多岐に渡って活動されていますよね。どういうきっかけでマルチに活動していくことになったのでしょうか。
きっかけは大学生になったときですかね。新歓のときに、DJサークルから声をかけられて、爆音で好きな曲を繋ぐことに魅力を感じ、DJを始めていきました。だんだん現場も増えていく中で、集客の問題に悩まされていて。同級生を誘っても、クラブ=チャラ箱だから行くの怖いという子がほとんどだったんです。もちろんチャラ箱も存在するけど、そうじゃない場所もたくさんあるってことを伝えたくて。自分が主催すれば友達も安心してイベントに来てくれるんじゃないかと思い、イベントをオーガナイズすることを考え始めました。まずは勉強からということで、サーキットイベントや野外フェスのボランティアスタッフとかをやっている内に、ご縁があって渋谷のWOMBというクラブで音楽イベントを主催することになりました。

不定期ですが年に2回ほど、クラブミュージックを主体とした音楽イベントを開催していたんですけど、最初は50人規模で1フロアでやっていたものが、最終的には4フロア全部開けて800人くらい集まるイベントへと成長していきました。いろんな大学から学生たちが集まって、友達になっていく様子を見守ったり、DJやゲストライブで良質な音楽をたくさんの人に届けられることにやり甲斐を感じていました。
ー今のオーガナイズとDJがそこでつながってくるわけですね。
そうですね。DJやオーガナイズでも結構忙しかったんですけど、もともと歌を歌うのが好きで、同じく新歓で声かけてもらったバンドサークルにも入ったんですよ。だからDJサークルではオーガナイズやDJをして、サークルの友達と組んだバンドではキーボードボーカルとして、ライブハウスで歌も歌っていました。
ー音楽という軸で、いろんな表現が同時多発的に始まっていたんですね。でもそうなると、当時からかなり忙しかったんじゃないですか?
そうですね、学生時代の頃は色んな界隈を入り浸っていました。ただ、就活の時期に入ると私もすごく悩んだんですけど、新卒で社会人になる必要があるのか自分の中で問い続けて、両親にも相談した結果「とりあえず原点に帰れば」と言われて。自分が生まれた韓国へ交換留学することになったんですよね。
ーなるほど。
留学期間は短かったんですけど、積極的に現地のクラブでDJをしたり、イベントに遊びに行ったりしているうちに、つながりがまたできていって、日本に帰ってきた後でも、韓国のイベンターやDJが「うちのイベントで呼んでいる海外のアーティストや、現地のルーキー達を、日本でも何かできないか?」と連絡をくれるようになったんです。そのとき、私が動くことで、韓国と日本が音楽でつながる機会があるなと思ったんです。そこからアーティストをシェアしていくような橋渡しをする役割に自然となっていったんですよね。それがプロモーターとして活動していた「BRIDGE」名義や、「The Link」というプロジェクトに発展していきました。

日本と韓国のいいところをブレンドして化学反応を起こしていく。

ーYonYonさんのやっているプロジェクト「The Link」は今回のEPにつながってくると思うのですが、どういったものなのか教えてもらえますか?
はい。「The Link」は日本と韓国のアーティストを楽曲制作という形で繋ぎ、私が軸となって、3人で曲を作っていくプロジェクトです。もうしばらくこのプロジェクトではリリースしていないんですけど、楽曲に参加したアーティストや、両国で行ったリリースパーティーでブッキングしたアーティスト達が、個々で繋がって新しく別の楽曲でコラボしたりしていて。そういう和をどんどん広げていきたいですね。最近リリースされた、SIRUP – Keep in Touch feat. SUMIN [prod. by Slom]とか良い例ですよね。

EPで楽曲プロデュースでも参加しているgrooveman SpotさんのDJ。

ー「The Link」を通して、これまで韓国と日本のリスナーからどんな反応がありましたか?
The Linkの音楽を通じて日本の方にはK-POPを、韓国の方にはJ-POPやシティポップシーンに興味をもってもらえるきっかけになっているのをすごく実感していて。韓国で「日本のアーティスト誰か知ってる?」と聞くと、「The Linkのあの人だったら知ってる」と言ってもらえる機会がちょっとずつ増えてきたので、そういう瞬間は嬉しいですね。
ーYonYonさんが歌う歌詞も、韓国と日本をつなぐかのように、日本語と韓国語、両方入っているのが印象的ですよね。
お互いのリスナーに聴いてもらうためには日本語も韓国語も両方入っていた方がいいなと思っていて。韓国のシンガーが客演で入ってくれるときは自分が日本語で歌って、日本語のシンガーが入ってくれるときは自分は韓国語で歌っています。一人で歌う際には両国の言葉が入る、今のスタイルにつながっていきました。

いろんな問題があるけれど、本当に大事なものを思い返せるようなEPにしたい。

ー今回のEP『The Light,The Water』はSARMさん、D.A.Nの櫻木大悟さんがフィーチャリングに、grooveman SpotさんやShin Sakiuraさん、韓国からNo2zcatさん、UNEさんが楽曲のプロデューサーに参加しています。このEPにはどんな思いが込められていますか?
タイトルにもなっている“Light(光)”と“Water(水)”って私たち人間が生きていく中で、すごく根源的で、本当に必要なもの。この1年は、世界がコロナになってしまって、そういった「いちばん大事なものってなんだろう?」ということを考えさせられた年でもあって。

感染症による恐怖に加えて、Black Lives Matterやアジア系ヘイトクライムなどの人種差別による分断、コロナで顕著になった貧困問題など、数えきれない程のいろんな問題がある中で、一人一人が光と水のように、自分の中の大事なものを忘れずに温かい心を持っていれば、みんなでこの凍ってしまった地球を温められるなあって思ったんですよね。だから、この忙しい日常の中で失ってしまった、本当に大事なものを思い返せるようなEPにしたかったんです。

楽曲『capsule』にて参加したDaigo Sakuragiさん(from D.A.N.)。

ーコロナになってからはイベントが軒並み中止になり、YonYonさんの活動も苦しい状況が続いたのではないでしょうか。
そうですね、苦しいのは皆同じなんですけど。イベントが全く無い月が続いたり、一時期はレコーディングスタジオも感染防止対策の一環で閉鎖されされたりと、当たり前だった日常が当たり前じゃなくなった時、色んなことを考えさせられました。私にできることは何があるのか、私に伝えられることはあるのか考えているうちに、EPのテーマが定まってきて。

無理に進めるよりかはタイミングを見計らいながら、いま書きたい言葉が見つかるまでゆっくり作ってこうと、結構長い時間をかけてこのEPに打ち込みました。この作品は、自分にとってもアーティストとしての決意表明みたいなもので、自分だからこそ書ける言葉を紡いでいくことを意識して作りました。
ー緊急事態宣言が解除された4月4日にリリースパーティ「よんよんの日」が開催されましたね。
はい。衣装から会場の装飾、照明など、EPの世界観を表現するために、いろんな人に助けてもらいました。出演もイベントの企画・制作もやったので、さすがに大変でした(笑)。ただ、EPで表現したかった、人の温かさや、人と人のつながりの大事さをお客さんに体感してもらえるイベントになったんじゃないかなと思います。
ー約100人という人数制限をしながらも、会場全体が温かさに包まれているような、そんな空気感がありました。
ありがとうございます!しばらくの間ずっと緊急事態宣言が出ていたので、ああいうパーティ感とか多幸感というものをひさしぶりに体感した人も多くて、私自身も温かい空気感の中でイベントができたのが嬉しかったです。あと、今回のイベントはライブアーティストとDJを半分くらいの割合でブッキングしていて、私自身もライブセットとDJセット両方やってたんですけど、普段クラブに来るお客さんってあまりライブハウスに行く機会がないし、その逆も同じで。1ヶ所に集まって、ライブもDJも、両方楽しんでもらえたのが良かったですね。
ーYonYonさんが人と人や、人と場所の架け橋になっているなと改めて感じました。さきほども少しお話に出ましたが、DJやシンガソングライターとして表舞台にも立ちながら、イベントのプロモーターとして裏方仕事もされていて、とても大変だと思うんですよね。その中でも活動していける原動力って何なんでしょうか?
韓国生まれ日本育ちという環境で、幼い頃から受けてきた差別や嫌がらせに対してずっと疑問を持っていて、そういうものを払拭したいという思いはずっと変わってなくて。みんな喧嘩とかしてないでピースにいこうよ!という思いが、‘人を繋ぐ’原動力になっているのかもしれません。もちろん大変なこともあるんですけど、無理してやっているというよりか自然体でできていますし、自分の音楽を聴いて救われると言ってくれる人や、イベント楽しかった!という反応がやりがいにもなっています。
ー最後になりますが、YonYonさんがこれからやりたいこと、今後の展望を教えてください。
昨年の12月に“平和の枝”という意味が込めた「Peace Tree」というレーベルを立ち上げて、自分のEPだけではなく、福岡のアーティストのPEAVISくんのアルバムも出しています。音楽を通じて平和の輪が広がっていくといいなと思って作ったものなので、これからもこれに賛同してくれるアジア各国のアーティストと、どんどん音楽を作って、発信できていけたらいいなと思います。