サーヤ / お笑い芸人・現役OL
彼女のダンステリア
サーヤ / お笑い芸人・現役OL
オールマイティな才能で、風の時代を駆け抜ける。
2021.03.05
“ガールとカルチャーがドッキング⁉︎”
これは私たちのアンセム、シンディ・ローパーの日本盤LPレコードの帯にあったキャッチコピーから。
一見むちゃくちゃに読み取れるけど、でもだんだん愛着が湧いてきました。
男子に負けず刺激的なクリエイションを提示する人たち。
編集部員が心からファンになったアーティストと向き合い、
彼女たちが何を思い、何のためにクリエイティブでいるのかについてしっかりと聞いてきました。
- ー年末はガールフイナムのインスタライブにご出演いただきありがとうございました! ニシダさんが途中で入ってきたりと、かなり盛り上がりましたね。
- またやりたいです、ぜひ!
- ーそちらが先になってしまいましたが、もともとはこの企画のインタビューをお願いしたいなと思っていたんです。サーヤさんがガールフイナムのTwitterをフォローしてくださってからずっと気になっていて。
- 私、結構「いいね」してますね(笑)。 物欲NONストップのツイートとか。
- ー普通のツイートなのにめっちゃバズってるな、という投稿はたいていサーヤさんが「いいね」してくれてます(笑)。ありがとうございます。ちなみに媒体を知ってくださったきっかけは何だったんですか?
- 社会人一年目のときにアパレルのブランドさんがクライアントだったので、ファッションやカルチャーのメディアをいろいろ探して見ていて。メンズ媒体のフイナムさんとはお仕事で何度かやりとりもさせていただきましたね。ガールフイナムさんもその流れで知って「自分にドンズバなWEBマガジンだ!」と思ってチェックするようになりました。
- ーありがたいですね〜。現役OLとしてのお話も後ほど伺うとして、まずはお笑いとの出会いから教えてください。小さいときはどんなお子さんでしたか?
- 気付いたら子役のお仕事をしてました。しまじろうと踊ったり、ディズニーの雑誌にレギュラーで出たり、不倫相手との間にできた子供の役のときは相手の家族を睨むシーンがあったりして(笑)。
- ー小さい頃からいろんな修羅場を(笑)。
- そのまま子役としてやっていくのかなって思ってたんですが「義務教育はちゃんと受けた方がいい」という親の意向で小学校に入る前には辞めてました。当時は同い年くらいの子がテレビに出てると嫉妬しちゃって。続けていたらどうだったのかなとか考えることもありました。
- ー芸能界を離れることへの葛藤もあったと。
- でもその頃からダウンタウンさんの「ごっつええ感じ」のDVDを見るようになって、お笑いに興味を持ち始めたんですよね。母親がすごい好きだったので「ドラマ見てないでこっち見なさいよ」って。あとはお笑いばっかり見てた従兄弟のお兄ちゃんもにも影響を受けましたね。
- ー中高時代は何が好きだったんですか?
- 引き続き「ごっつ」のDVDは見てたんですけど、その頃は「爆笑レッドシアター」が好きで。
- ー分かります!
- ネタ番組の全盛期でしたよね。はんにゃさんやしずるさん、マヂカルラブリーさんとかもレッドシアターを見てファンになりました。あとは中学2年のときに文化祭で初めて友達と漫才をやって。笑い飯さんリスペクトでいきなりダブルボケをやってたんですよ。シスターがいる女子校で相方も女の子だったんですが、2人とも「ボケ倒す」みたいなのをやってました。
- ー人気者になりそうですね。
- そのときは先輩からも後輩からも「おもしろい」ってチヤホヤされてすごい楽しかったです。漫才がウケたのがうれしくて、それが本格的にお笑いをやりたいと思うようになったきっかけですね。高校卒業後はNSCとか、絵も好きだったので美大なんかも進路に考えたんですが「目立ちたい」という理由で四年制の大学を選びました。普通の大学に入っておもしろいことをしようと。
- ーそこから上智大学に入学してお笑いサークルに入ったんですね。
- 入学前から何回かオープンキャンパスや文化祭でお笑いサークルのライブを見てて、絶対ここに入りたいって決めてました。
- ーラランドの相方、ニシダさんともサークルで?
- ニシダは同じ学科だったんですよ。サークルの先輩に「友達に体の大きい子とか外国人がいたら連れてきて」って言われてたときに思い浮かんだのがニシダで。教室の後ろの方で「俺は早稲田受かってんだよ」みたいなことを大声で言ってる態度も体もでかい奴がいるな〜って。
- ーいろいろ大物だぞと。
- そういう濃いキャラがほしかったみたいで、先輩に好かれたい一心で声かけて連れてきました。個人的には中学のときの漫才の流れでまた女の子と組むのかなと思ってたんですけど、上智入ったら男の子しか演者いないし、ニシダがすごいしつこかったんで、泣く泣く…。
- ー(笑)。サークルでお笑いやりながら、卒業のタイミングでは就職活動もしようと?
- いろいろ考えた結果、就職した上でお笑いをやろうって決めました。家に安定したお金を入れたかったのと、新卒は一回しか経験できないので会社員もやってみたいなという気持ちもあって。相方も同じタイミングで卒業できてたら一緒に事務所や養成所に入れたんですけど、ニシダはずっと大学を辞めたり復学したりしてるから、いつ卒業するんだろうって思ってて。キリが悪いので一旦私はちゃんと身を固めようって思って就職しましたね。
- ー在学中からニシダさんとやっていこうと思えるくらい仕上がってはいたんですか?
- 大会の戦績とかは結構よくて。他の子とも組んではいたんですけど、大会で成績残していると就職に有利になるんでみんな大企業に行っちゃうんですよ。
- ーそうなんですね!
- だからそのままお笑いの道に進む子はすごい少なくて。そんななかニシダは「未来のことなんか考えてません」って断言しててすごいなって(笑)。実家も金持ちなんで何の心配もせずスッキリした顔をしてて、何かそこはいいなって思ってなあなあで一緒に続けてました。
- ー人生の転機をいくつかあげるとしたら、そのなかにニシダさんは…?
- 上智での出会いはデカかったですね。私がこの大学のお笑いサークルに入ってニシダを誘ってなかったら一緒にやってないんで。あのとき教室で威張っていたのとかも必要な要素だったのかもしれない。
- ー運命的ですね。
- 占い師の星ひとみさんにも言われました。2014年でかい転機があったって。
- ーきっとそれですね! 占いはお好きですか?
- 結構好きですね。医療のセカンドオピニオン的な感じでいろんな方の話を聞いて、こいつは嘘っぽいなとか、この人は本当っぽいなとか。霊視とかオカルトとかもすごい好きです。
- ーYoutubeで怪しい都市伝説を語るお客さんが次々に来店するチャンネル「まゆつBAR」もやってらっしゃいますよね。
- 第1回目のゲストが『月刊ムー』の編集長の三上さんで。都市伝説も大好きで言いまくってたらお仕事がいっぱいいただけたので、これからも口に出していきたいなと。
- ーサーヤさん、お仕事につながるポテンシャルをいっぱいお持ちのイメージです。
- 本当ですか?
- ー英語も喋れるし、歌もうまい。あとは『小説新潮』に寄稿されていたコラムを拝見したんですけど、書くお仕事もされていて多彩だなって。
- うれしいです〜。ありがとうございます。いろいろやりたいですね。
- ー歌はボイストレーニングとかされていたんですか?
- 全然です。でも音楽はすごい聴いてましたね。女子校にいたら結構みんな洋楽聴くじゃないですか? レディー・ガガとかニッキー・ミナージュとか(笑)。大学に入ってからはニシダがヒップホップ好きですごい聴いてたので私もいろいろ聴くようになりました。Fla$hBackSとかPUNPEEとかBIMとか、バトル系じゃないちょっとチルなラップが好きですね。
- ーちなみにいま注目してる人とかいますか?
- 最近はフィメールラッパーも熱くてAwichさんとかZoomgalsもよく聴きます。海外も若くてラップがうまい人がいっぱいいて、NORTHSIDEっていうPVがめっちゃくちゃかっこいいアマ・ルーとか、あとはオードリー・ヌナも好きです。あとはラッパーじゃないんですけど佐藤もかさんも気になってます。岡山出身の方で、声がすごいかわいい。
- ーご自身ではラップしないんですか? 歌も上手で言葉を紡ぐセンスもあるので聴いてみたいなと。
- 一回「nana」っていうアプリに投稿したことがあるんですよ。どこにも公表せずにひっそりやっていたんですが、それがいま見つかりはじめて。本当にコアなファンの方だけ知ってるラップは一個あります(笑)。でも音楽はちゃんとお仕事として頑張りたいなと思っていて。いろんなところで言ってるんですけど「女版・藤井隆」になりたいなと。
- ー女版・藤井隆! 歌にお芝居にお笑いに活躍されてますもんね。
- 藤井さんみたいにいろんな分野を本気でやる人になりたいなと思ってます。昨日初めてお会いしたんですが、お話させていただいてすごい刺激を受けましたね…!
- ーサーヤさん、いずれ声優のお仕事なんかも来そうです。
- やりたいんですよ、いつか! ドラえもんとかクレヨンしんちゃんとか。ちっちゃい男の子の悪ガキ役とかやりたいです!
- ーいま声ビジネスが熱いらしいです。区の警報アナウンスを声優がやってたりとか。
- 中学は八王子だったんですけど、そのバスのアナウンスがファンキーモンキーベイビーズの声でした(笑)。私も地元のバスのお仕事とかやってみたいですね。
- ーちょっとお話が戻るんですが「演者」と「裏方」両方の世界を知っておいてよかったと思う場面は多いですか?
- すごくありますね。大学時代から表と裏どっちも経験した上で相乗効果で他の人より秀でることができたらおもしろいかなと思ってました。両方知って無双したいというか。
- ーなるほどなるほど。
- 実際に演者として広告案件をいただいたときも業界のトンマナが何となく分かるので、それは助かってます。私が広告代理店で働いていたときの「こういう風にしてほしかったな」を思い出しながらやるというか。現場でいただく資料なんかもまとめる大変さが分かるので余計にありがたみを感じますね。
- ー求められていることを察する能力が高くなりそうですね。
- ネタをCM用にやってくださいって言われても、私はズバズバカットしたり何の情もなくいじれたりするんですけど(笑)。 逆にニシダはポカンとして「何でそこ削るの!」みたいな。で「いやこれはね、今回はこういう意向があるから….」みたいな説明をして。
- ー汲み取り上手(笑)。
- 相方はまだ社会に出たことがないので、お仕事をいただいた商品の話をしてても競合の話をしちゃったりするんですよ。「あ〜ここ絶対カットだな」って裏でまた説明したりとか。
- ー芸歴十数年目みたいな空気の読み方ですね。2歳からお仕事されていただけある!
- そのときは睨む演技をしてただけですけど(笑)。
- ーお笑い芸人と会社員を両立している感じがやっぱり今の世の中にマッチしているというか。「風の時代」も到来しましたし。
- 出た! 風の時代! 占い師の方も言ってますもんね。いまは自由さが大事ですよって。
- ー価値観自体が変わってきてるんで。そういう意味ではお笑い業界のなかではかなり先駆者なんじゃないんですか?
- 異例っちゃ異例ですね。だいたいまずは事務所に入って、辞めてから事務所を立ち上げるとかはあるんですけど、私は最初から入ってなかったので。
- ーそのスタンスがラッパーみたいでかっこいいなと思いました。ちょっとクルーっぽいというか。以前取材したんですがTohjiくん率いるMall Boyzとかも、マネージメントしてくれる友達やビート作る友達が集まって自然と組織化してて、そんなイメージに近いなと思いました。
- それはうれしい! でもそれが楽でしたね。どこかの組織に入るより性に合っているというか。Youtubeも今は知り合いの作家さんや信頼できる友達と一緒に考えていて。好みが合う人と仕事ができてるので、それはすごいやりやすいかもしれないです。
- ー昔はいまと比べて大変なことも多かったと思いますが、最近は風向きが変わったと感じますか?
- 「こうあるべき」の価値観が急に変わったなと。最初はそれこそ「趣味でお笑いやってる感じ?」とか言われたりしましたが、ここへきてコロナの影響もあって「ダブルワークをした方がいい」とか「フリーの方がいいよね」って言われはじめたり。急に流れが変わってびっくりしてます。
- ー2020年は激動でしたね。
- リモートワークになったのも大きいですね。いまはお笑いの仕事が8・9割を占めるんですが、転職先が完全リモートで裁量制なので、さらに働きやすくなりました。自分たちは活動の仕方含め何も変わってないんですが、社会の価値観ががらっと変わったのは大きかったですね。
- ーご自身たちはあまり意識されてなかったと思いますが「時代がやっと追いついてきた」感じがします。
- 向かい風はずっと感じてたけど、間違ってるとは思ってませんでしたね。生きやすいように生きた方がいいと思って働き方も選んでたので。大学ではダイバーシティ系の授業が多かったんですけど、私もジェンダーや宗教の講義をいっぱい取ってたので、考え方のベースはそこにあって。最近はやっと「女性芸人を使おう」という追い風もあって。過渡期ですが少しずつやりやすくなってきてます。
- ーお笑い芸人としてはどういうポジションを目指したいですか?
- 藤井隆さんもそうですけど、全部できる立ち位置にいたいです。MCもできればロケにも行く、ひな壇にいても企画物をやってもおもしろい、とか。オールマイティにお仕事できたらいいなって思います。いまは「女性芸人」というポジションで求められることも多いですが、男女関係なくおもしろいと思えることをやっていけたらいいかなと。いろんなジャンルにチャレンジしたいです。結論、藤井隆さんです。憧れますね。
- ー最近はいろんなメディアで活躍されている印象です。
- ちょっとずつですね。この一年はテレビ含めて初めてのお仕事が多かったので、地盤を固めていろいろ経験していきたいです。今年はお笑いでちゃんと評価されたいですね。中途半端に見えちゃうのがいちばんよくないので、まずは賞レースで実績をきちんと残して活動できたらなと思ってます。
- ー最近お気に入りのネタはありますか?
- 喫煙所のネタですかね。喫煙所のコミュニケーションをテーマに火を借りるところから始まって、何でもない話をするのがかっこいいよねっていう。いろんな人が訪れてタバコきっかけで話が始まるそのネタは2人とも好きです(笑)。
- ータバコのネタよく出てきますよね。
- そうなんです(笑)。ニシダがヘビースモーカーなんで。「はじめてのおつかい」っていうネタでも初めてのお使いでお母さんのピアニッシモ買いに行っちゃう、みたいな漫才がありますね。
- ー(笑)。ネタはどういうときに思い浮かぶんですか?
- だいたい即興でボケて「どうやって突っ込むの?」というパターンが多いんですけど、大本のアイデアはシャワーを浴びてるときによく降りてきますね。聞くところによると、科学的にもシャワーは日常生活のなかでいちばん無でいられるタイミングらしいです。あとは人のライブを見たときや映画見たときにひらめくことも。
- ーシャワーの効果! ちなみに衣装も毎回かわいいなって思って見ていたんですが、スタイリストさんは決まった方がいらっしゃるんですか?
- 自前のことも多くて固定の方はいないんですが、大きい現場で「ここは決めたい!」というときとかは都度スタイリストさんに声をかけて借りていただいたりしてます。それができなかったときは友達が服をつくってくれたり。最初に「アメトーーク!」に出たときの衣装とかもそうです。
- ーすごい!
- その子は最近〈ノリ(nori)〉っていうブランドも始めて雑誌にも取り上げられたりしてます。彼女は本当にセンスがよくて。お兄ちゃんが学生のときに芸人をやっていたのかな? 明治のお笑いサークルになぜかスタッフでいたんですよ。とにかくかわいいんですよね。私も洋服を自分でつくれたらいいなって思うんですけど。
- ー好きなブランドを言い続けてたらコラボとかもそのうちありそうですよね。
- いいですね(笑)。
- ー最後に今後の目標を教えてください!
- 2021年はテレビもラジオもたくさん出て、Youtubeもたくさん上げていろんな方に知ってもらいたいなと思ってます。あとはやっぱりちゃんとお笑いを見てもらった上でいろんなことをやりたいので、今年は大阪進出しようと思っているんですよ。いまでも仕事で行ったりはするんですけど、大々的に「進出します!」って発表しようと思ってて。
- ーおおお!
- いまは「二足のわらじの新世代芸人です!」と肩書きばかりがフォーカスされることが多くて…。せっかく爆弾みたいな相方がいるのに、お笑いの中身よりも外側ばかりに注目が集まっちゃうのがすごい危険だなと。この先もやりたいことを続けていくために今年はお笑いの部分をしっかり鍛えていきたいので、その挑戦のひとつとしての大阪進出です。お笑い偏差値が高い関西でネタ番組やトーク番組に出て、英才教育を受けていきたいなと。しっかり学んだ上で東京でまたいろんな番組に出させていただきたいなって思ってます。
- ー楽しみですね。期待してます!
- 記者会見もやろうと思ってるんで! そこで事務所設立と事務所名を発表をして、関西進出についても発表しようかなと。かわいい名前にしてちゃんとデザインして、グッズ化して…とかいろいろ考えてます!
- ーさすがのブランディング力! そういうのって全部サーヤさんとマネたくさんで考えてるんですか? ニシダさんは…?
- ニシダは破天荒なプレイヤーなんで。多分記者会見の現場で初めて全貌を知るんじゃないですかね(笑)。
自分のことは自分で紹介! サーヤについてのライナーノーツ。
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