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ベイブひかり / コラージュアーティスト
彼女のダンステリア ベイブひかり / コラージュアーティスト ブレイキングハートをアートに!

彼女のダンステリア
ベイブひかり / コラージュアーティスト
ブレイキングハートをアートに!

2020.10.16

“ガールとカルチャーがドッキング⁉︎”
これは私たちのアンセム、シンディ・ローパーの日本盤LPレコードの帯にあったキャッチコピーから。
一見むちゃくちゃに読み取れるけど、でもだんだん愛着が湧いてきました。
男子に負けず刺激的なクリエイションを提示する人たち。
編集部員が心からファンになったアーティストと向き合い、
彼女たちが何を思い、何のためにクリエイティブでいるのかについてしっかりと聞いてきました。

コラージュアーティスト。スティーヴ・ブシェミやレオナルド・ディカプリオ、ユマ・サーマンといったハリウッドスターたちをモチーフに作ったピンクでドリーミーな世界観、そこにちょっとしたブラックユーモアを含めるところが特徴的❤ 「TOKYO ART BOOKAKE FAIR」「TOKYO ART BOOK FAIR:Ginza Edition」に出展したこも。ガールフイナムではこの記事でお世話になりました!

Instagram @babehikari

▶︎▶︎彼女のライナーノーツはこちら

ーおひさしぶりです! タランティーノ監督に会えた日ぶりの再会ですね。今日はきっとすでにあの記事でベイブひかりさんのこと大好きになってるかもだけど改めてひかりさんの作品の魅力深掘りできたらなと思っています!
おひさしぶりです! 宜しくお願いします。
ーそもそものスタートについて聞きたいんですが、最初からハリウッドスターをモチーフに作品を作ることをしていたのでしょうか?
いいえ、最初はあることをきっかけZINEをつくっていたんです。

ベイブひかりさんが作ったZINE(左から)『グローリー』『Rolling in my sweet dreams』『ヘイトあんどスラッド』『no happyend.』『DRAMA QUEEN』

ーあること? 聞いてもいいでしょうか?
もちろん。最初に作ったZINEは『ヘイトあんどスラッド』という“憎いアバズレ”というやばいタイトルで作っちゃったんですが、当時付き合ってた彼氏に二股をかけられていて…その恨みをはらす形で制作した作品なんです。
ー二股!(涙)
全然気がつかなかったんですよ、むしろ「お互い進む道は違うけどがんばろう」とか言って円満に別れたと思ってたので、後から友人から聞いてショックで…。ドン底まで落ち込んでいたんですが、見かねた会社の先輩が「ZINEを作ったら? しおりの作る工程とまったく一緒なんだよ」と言ってくれまして。あ、私普段はOLをしてて、社員旅行のしおりとかを作っているんです。確かに複合機で印刷して、それをホチキスで綴じていたから中身さえ変えればZINEだ! と思って。その先輩がいろんなアートイベントを教えてくれて、とにかく行ってみたらアートブックの世界にどハマりしちゃって。二股かけられて本当にムカついたしめちゃくちゃ傷ついた、でもその怒りを本人に直接ぶつけるんじゃなくて、ZINEにぶつけてやろうと思ったんです。もう「ファック!」「あんたが憎い!」ってテーマでブワーッと勢いで作ったのもあって英語もGoogle翻訳を使ったりして結構適当だし、黒歴史に近い作品なんですけどね。
ーパッと作品だけを見ていたら、そんな怒りが込められていたとは感じられないかも…。その会社のしおりを作る過程だけでZINEは完成したんですか? 何か勉強したりも?
会社のしおりを作る工程のなかでできましたよ! 私はいまもコラージュは全部エクセルで作っていて、印刷所とかの入稿もすべてエクセルデータにしちゃってます。でも最初はムカつきながら作っていたんですが、だんだんコラージュを作ってることが楽しくなってきちゃって。怒ってるというよりかは最終的にはただただコラージュをずっと作ってましたね。
ー普通に生きていたら二股されてムカついた出来事をそうそう拭えないというか、引っ張られそうだけど作品にその気持ちを昇華することでデトックスっぽくなってるのがおもしろいですね!
この作品を横浜のアートブックフェアに出してみたんですが、意外と内容をおもしろがってくれて買ってくれる人がちらほらいたんです。それで「怒りが創造物になってお金に変わった!」と思って。で、このイベントが終わる頃にはすっきりしててデトックスもできちゃったんです。そこから恋愛面で何かが起こるとZINEを作るってことをやるようになりました。
ーということはこれまでの作品はかなりひかりさんの恋愛経験が背景にあるということですね。次の作品は…?
ほぼそうです!(笑) 次は『DRAMA QUEEN』っていって新しい彼氏と付き合いたてのときに頭のなかがピンク状態のときに作ったもの。ドラマクイーン、楽しい…! みたいな。モデルを使って、ZINE以外に作ったアイテムを着てもらったりしました。
ーあ! もうブシェミとか登場してますね!
そうなんですよ、実は最初に出展したときに物自体は作ってたんですがインスタに載せたら意外と反響があってみんなが買ってくれたんです。だから今度はこれを使ってモデルと一緒に撮影をしてみようと思ったんです。そのときのテンションがとにかくハッピーで「恋愛たのしい、ピンクー!」って気持ちが出ちゃってたんですよね。
ーそれにしても恋愛の波というかひかりさんドラマチック!
そうかもしれない(笑)。かなり恋愛に左右されちゃってますね。でも初回に作った作品がトラウマすぎて。いままでもドラマはあったけど、こう「本当に二股ってやる人いるんだ」ってZINEにするほど憎しみがうわーーっと湧いたのは初めてだったかもしれない。いま見ると恥ずかしいし、ZINEを作るほどのことだったのかと思うときもあるけど、でもその人のお陰で、何かを作るリズムができたから。
ーなるほど。
で、あのハッピーなZINEを作った人にフラれて作ったものが『no happyend.』。“MOVE ON(次へいこう)”みたいなテーマで。

あなたは誰派?❤

ーいつからアートに関心ありましたか?
実はアートやものづくりが好きで「文化女子大学」に通っていたんですが、とくにそこでグラフィックを勉強していたわけではないんです。でもとにかく毎日がたのしかったんですよ、学校は新宿にあって放課後は毎日原宿の竹下通りで。ファッションスナップ全盛期のときに髪の毛を緑とかオレンジに染めて、学校の友達とよくスナップしてもらってはしゃいだりしました。原宿のおしゃれピーポーたちとローソン前でだべる、みたいなことばっかりやってて。
ーそんな時期があったんですね。
あったんですよ〜、しかも卒業してからもしばらくそんなことを続けていて、あのカラフルな格好で地元から原宿まで通っていたから地元では浮いちゃってどこのバイトにも受からなかったんです。だからこれはまずいと思って髪の毛も暗く染め直して家の近くのパソコン教室に通い出しました。おじいちゃんとかおばあちゃんが通ってておやつにこぶ茶とかもらえるところ。そこでエクセルで図を入れるってことを教わり、これでコラージュ作れるじゃんって思ったんですよね。
ー文化在学中ではなくまさかのパソコン教室で辿り着いたんですね!
在学中は絵を勉強していて、卒論もワープロで出したかったくらいアナログな人だったんですよ。
ーそこから就職してOLになり、ZINEを作るようになるまでのプロセスがおもしろいです。
あのエピソードくらいドラマチックなことがないと、あと発表する場もなければ創作意欲に火がつかなくて。「いますぐZINEにしてお金にしてやる! この話をみんなに言いふらしてやる!」って思いながら2万人もいる「TOKYO ART BOOKAKE FAIR」に出展してみたり(笑)。
ーその発散方法にしかり、落ち込み方にしかり、メンヘラとは違った陰を陽に転換させる力があるような。
逃した魚は大きいじゃないけど、基本的にただ落ち込むんじゃなくて「見とけよー!」って思っちゃうタイプなんです。だからSNSとかもむしろそのままフォローしておいてほしいし、こんなおもしろい活動をしててキラキラしてるんだからー!って。
ーまさに反骨精神。そこからの4作目はどんなZINEの内容ですか?
当時〈ヤミーマート〉のPRをしてたYukikaちゃんから展示のお誘いもあって、それに向けて制作したZINEです。これは恋愛関係なく作った唯一と言っていいZINEでソフィア・コッポラの映画『ロスト・イン・トランスレーション』の舞台となったパークハイアットの部屋で撮影しました。
ーおお、確かにオマージュの表現もありますね!
冒頭のシーンですよね。でも撮ったはいいけど実際にエクセルでコラージュしていくなかでほとんどその“らしさ”を消してしまって、もったいないよっていろんな人から言われました(笑)。全然伝わらなくてもったいないことしちゃったな。でもこのときがいちばん夢中になってものをたくさん作っていたのかもしれないです。だし、一生懸命続けていくいちにこうして「やりませんか?」と声をかけてくれることも増えていって。「TOKYO ART BOOKAKE FAIR」には2回出てて、あとソニーパークでやってた「TOKYO ART BOOK FAIR:Ginza Edition」にも出しました。んで、そのあとに付き合った彼氏と付き合ったときじゃなく別れたときに作ったのが『Rolling in my sweet dreams』。その人が巻きタバコを巻く人で、なぜか吸いもしないのに私が巻いてあげてて、どんどん巻くのがうまくなってて、お願いされる度にキュンとしてたんだけど…。その彼にも浮気されてフラれて、落ち込んだので…その巻きタバコをモチーフにして、綿菓子を巻いて“私の甘い夢”みたいな(笑)。
ーなぜこう何度もそんな目にあってしまうのか…。
すぐ好きになっちゃうのかも。ちょっとお兄さんに優しくされたりしたらもう…あれ? って思っちゃうかも(笑)。そのまま落ちて泥のなかでもがくのも楽は楽なんだけど、ずっとそうしてるのもしょうがないからとりあえず出す! そうしたらちゃんと浄化できたというかスッキリできたからいまがあるって感じです。逆に言うと、そうでもしないと作れないなとも思っています。
ー恋愛の波がないとZINEを作るモチベーションにならないということ?
これまではそうでした。そうじゃなくても作ってみたくて、いま取り掛かってみてます。いまはコロナの影響で催し事がないし、自分で販売してみるってのもいいかなと思って。で、いまお皿を作っているんですけど、お皿を付録にして付録がメインになってるZINE。付録は豪華なのにZINEはしょぼいってものを作ってみたいんです。やっと純粋なクリエイティブだけのZINEができるかもしれないです。これまでの作品はOLを終えた後に、家に帰ってきてすぐブワーっと作り上げていたんですが、いまはそんなメンタルでもなく平和ボケをしてる感じ。

次回はお皿を付録にしたZINEを作ります!

ー難しいですよね、平和ボケでいるのはひかりさん自身にとっては幸せなことかもしれないけど、クリエイティブに関しては刺激が足りなかったり。
いまの彼にちょっと冷たくしてもらったら作業が捗るのかな?(笑)
ーつ…辛いですね。
本当ですよ(笑)。でも私は遊びとしてやってる感覚があって、利益を考えることが苦手なんです。いままでも通販をやってほしいとか買いたいとか連絡をもらってたけど、作っててロスになったり失敗したりで結局損しちゃうみたいなことがあるから。
ーでも苦しみながら作って、でもたのしいって思えた部分があるからこそ、また作りたいって思えるってことですもんね。
自分のZINEをみて、おもしろいって言ってくれたときに、自分のやってきたことは間違いじゃなかったんだと思えるんですよね。肯定された気持ちになって。うまくいかなかった恋愛も、もしかしたらこうなってよかったのかもと思えるというか。ドン底の気持ちになってても。
ーちなみに学生時代に原宿にのめり込んでいったように、これまで他にのめり込んでいったことありますか?
高校生のときはアイロンビーズにハマってて、ユニコーンのキーホルダーを作って友達に一個10円とかで売ってました。でも結局お金の計算できてなくて、キーホルダーの金具だけでも一個90円はしてたからむしろ損しちゃってるみたいな(笑)。それは置いておいても、人に何かをあげるってことが好きだったので、展示をするときもステッカーを作ったり、手軽に買って帰れるものを一緒に用意したりしてたんですよ。ステッカーも手作りです。

エクセルでなんでも作れるっ!

最近うれしかったことは、海外の人がたまたまアートブックフェアのタイミングで日本にいたのかで、私の作品を爆買いしてくれて、イギリスに持って帰ってたんだけど、後日その人じゃない別の人がそのキーホルダーをつけてくれてインスタに載せてくれて! 私の知らない間に自分の作品を遠くの知らないとこに連れてってくれてて誰かに刺さって買ってくれるこの感じ。ガールフイナムでやらせてもらったタランティーノの記事もそう、好きで作ってたものでまさか本人を見ることができるとは。私としては「いつか絶対に本人に会うんだ」って念じながら作ったんじゃなく、ただ楽しくて作っていたから。
ーそもそもなぜタランティーノなどハリウッドスターをモチーフにしていたんですか? どういう選び方?
自分の好きなものやウケると思ったことを入れています。タランティーノも作品が好きなのはあるんですが、それ以前に彼の顔が好きなんです。ジャスティン・ビーバーが逮捕されたときの写真もウケる。そういうものをモチーフにしてるだけなんですよ。
ー見方によってはタランティーノのファンアートっぽいなと思えきますが。
捉え方としてはむしろ逆かもしれないです。前に知り合いに「このアメリカンアイドルが好きだから試しにコラージュ作ってよ」って言われたことがあったけど、作れなかったんです。自分の作品としてはもうちょっと皮肉を込めたいんです。この自分が気になっているモチーフをもっとこうしたらおもしろくなるみたいな。でも言われた素材や人で作ってもその皮肉が思い浮かばなくて、全然ダメなんです。興味も湧かないし。
ー皮肉って具体的にはどんな?
ちょっとしたものなんです。意地悪はいやだけど、ブラックユーモアが好きで。ドリーミーなものに自分しかわからない皮肉を入れる。『Rolling in my sweet dreams』も元カレが巻きタバコを吸ってたところからで、「あのときは自分の甘い夢を包んでたな、そのときは楽しかったのにな」って自分のなかでの皮肉をおもしろく込める感じ。
ー作るモチベーションとしてはその時々のプライベートで起こった出来事がきっかけになってるんですよね?
そうですね、それがいちばん熱を持っているのが恋愛なのかな。
ー趣味としてのバランスは取れているのかもしれない。
いまのところこれで食べていこうって思ってなくて、単純におもしろいことをやりたいと思っているからこそ。純粋に好きなこととして取り組むことができるのかなと思った。
ーこれからやりたいことは?
正直いって、いつ辞めてもいいや、趣味だしと思っていました。パンをつくったりお菓子つくったりも同じような趣味で、やってたけどでも急に飽きちゃう。パンなんてこねたくないし、小麦粉も触りたくもないってくらい飽きちゃうから、このコラージュもいつかはそうなっちゃうのかなって思ってたんですが、そう思う前に展示のお誘いとかをもらえて、そこからまた作ってみようかと手を動かしているうちに新しいステッカーができたりして、またおもしろくなっていくというか。だからこの活動での目標はないし、自分がこの活動でどうなりたいかとか、何をしたいかってことはわからないんです。そしていつまで続けているのもわからない。でも、作ったことによっていろんな繋がりができて、ちょっとした承認欲求は満たされる感覚はある。だからメンタルには良さそうだなって思えるんです。かなしい思い出も結局はおもしろくなるから。妊娠検査薬を買って震えるくらい不安になってたときも過ぎてみればこういう思い出として残すことができる。あとからZINEにしておもしろく話せたりするから、どんな辛いことも自分のなかでネタっぽくできたら楽しいなって思います!

自分のことは自分で紹介! ベイブひかりについてのライナーノーツ。

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